0200時エジプト東部上空
エジプト空軍兵がロシア製戦闘機ブローツァを操縦していた。
こんな日に夜勤だとはついていない。昨夜は空軍のみなはパーティに行っていたに違いない
戦闘機が空を切って滑空する。
かなりの高度を高速でとんでいるだけあって、ゆれる体に冷気がかみついてくる。
今日は冷える、早く家に帰って、熱いシャワーで体を熱してから、冷えたイェールを流し込みたい。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
異常、空軍兵がはねるようにブローツァのディスプレイを確認する
ロックドオン? ロックドオンだと!?
管制システムはこのブローツァがミサイルのレーダーにロックされているというのだ。
このエジプトの上空でいったい何にロックオンされるというのだ?
「メーデー!メーデー!管制室!現在当機はロックされている!メー・・」
爆音。ブローツァにミサイルが着弾し、ブローツァはきりもみ回転したあと爆発して四散した。
黒く塗りこめられた空の中に小さい赤い火がともる。
そのそばを8つの影が高速で飛びさっていった。
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1機のブローツァが撃墜されたのとほぼ同時に、
東部のエジプト空軍基地から8機のブローツァがスクランブル発進した。
エジプトの黒い夜空を揺らして8機のブローツァが高速で疾走する。
「通信、エジプト東部を哨戒中のブローツァが正体不明の戦闘機に撃墜された」
別の戦闘機の男がうめいた。
「やってくれる。いいか、神にかけてそのパイロットは八つ裂きにしてやる」
8機のブローツァがバーニアを加速して夜空を疾走する。
と、レーダーが正体不明機の機影をとらえた。
「通信、レーダーが糞野郎の機影を2機とらえた。まもなくミサイルの射程圏内に・・・」
次の瞬間、爆音。
編隊を組んでいたブローツァが3機吹き飛んだ。
「なんだ!?何がおこった!?」
叫んだ男のブローツァの正面から高速でミサイルが疾走し、そのブローツァに突き刺さり、
ミサイル内の信管が作動、ミサイル内の爆薬が調合され、瞬間的に火を噴き爆発し、
揺れるブローツァを爆炎で粉々に引き裂いた。
「散開!散開しろ!!」
叫んで、4機のブローツァがチャフフレアを撒いて散開する。
そこに2機の戦闘機が加速してつっこんできた。
「2機でブローツァ4機とやろうっていうのか?」
ブローツァを旋回させながら男がうめいた。
しかし先ほどのミサイル攻撃。あれは向こうのミサイルの射程がブローツァよりはるかに長いことを意味する。
ロシア製のブローツァの有効射程を上回るのは、ユーロファイターか、あるいはF18か、準最新鋭機に限られる。
仰向けになって旋回するブローツァの後ろに戦闘機がつける。
「くそっ!尻につかれた!!」
うめいて、さらに加速する。
ブローツァの描く円の軌道がバーニアの加速で半径を長くする。
「ふりきれん!!」
ブローツァがランダム移動しても、後ろの敵機はピッタリついてくる。
そのまま後ろの敵機が重機関銃を掃射した。
6銃身のガトリングが高速回転し、強力な20mmライフルが嵐のように発射される。
超高速の質量弾が前方のブローツァの翼につきささり、
そのブローツァは機体を傾かせ、風圧で羽を折り、きりもんで爆発、四散した。
それと同時に、もう一方の敵機にブローツァが2機撃墜されていた。
残った1機のブローツァのパイロットが叫ぶ。
「なんで、なんでこの空にF18が飛んでるんだ!!?」
そのブローツァにはるか遠方からミサイルが着弾。
ブローツァを爆散させた。
先行していた2機のF18と合わせて
あとから後続してきた6つのF18が、
空中を併走して8機編隊を組み、さらにエジプトの夜の空を加速した。
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同時刻0210時 飛行学園艦アレキサンダー内 司令室
中東地域を航行中、千冬はアレキサンダー内司令室の司令官のイスに座り。
何事もなく航行できるよう祈りながら警戒していた。
司令室前方の情報官が声を上げる。
「織斑指令!エジプト上空で異常を感知しました」
千冬がそちらをみて続きを促した。
「なにがあった」
千冬が情報官に言うと、その情報官がいう
「所属不明の戦闘機F18が8機、エジプト東国境を越えて飛行中。警戒中のエジプト空軍所属機ブローツァが撃墜されています」
情報官がディスプレイを見て続ける。
「さらにエジプト空軍は発進できる戦闘機を8機スクランブル発進させましたが、2機のF18に全機撃墜された模様です」
ブローツァでF18の相手をするのは難しいだろう。千冬は指令の椅子に座って思考をめぐらせた。
F18が?アメリカ製の準最新鋭戦闘機が8機もなぜエジプト上空を飛行している?
千冬が顔を上げて情報官に告げた。
「中央ディスプレイに映像を映せるか?F18の進行先に何があるか調べろ」
千冬に言われて
情報官がマニピュレーターを操作する
「はっ、映像映します」
すると司令室の中央の10m四方の立体映像装置から8機のF18の映像が映る。
上空から夜の闇をとどろかせて疾走する8機の戦闘機の映像が映された。
分析を続けていた情報官が報告した。
「出ました。F18の予測進路先にはエジプトの大都市がすう箇所、加えて核実験施設があります」
核実験施設?
千冬の右下に位置する副官席に座っていた山田まやが言った。
「このF18はこの核実験施設を攻撃するつもりでしょうか?」
千冬の体をつめたいものが通った心地になった。
一瞬平衡感覚を失ってグラつきそうになる。
「所属不明のアメリカの戦闘機がエジプトの核実験施設を爆撃するつもりか・・・戦争になるぞ」
「織斑教官、どうしますか?」山田が尋ねる。
聞かれて、千冬は逡巡し、すみやかに言った。
「F18を阻止する。F18はあとどれくらいで核実験施設をミサイルの射程に入れる?」
「F18が施設を射程に捕らえるまであと30分ほどと予測されます」と情報官。
「織斑教官、チハを準備しますか?」と山田。
現在のアレキサンダーの位置からエジプトまでの距離は数百キロある。
「いや、今からじゃチハでは間に合わない。ラウラ=ボーデヴィッヒとセシリア=オルコットを起こせ」
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0220時 飛空学園艦アレキサンダー内寝室0341号室
暗い寝室のベッドの上で寝巻きのセシリアが寝言をつぶやきながら寝返りをうっていた。
「・・・さん、いけません。いけませんわ。わたくし、わたくしは・・・」
ビーッ!ビーッ!
室内に警報音が響く。その音を聞いてセシリアが目を覚ました。
「んにゅぅ、なんですのぉ?今何時ですのぉ?」
セシリアはムクリと上体を起こして寝ぼけて目をこすった。
『起きろオルコット!緊急事態だ!至急第一兵器ドックに向かってブルーティアーズを装着しろ!内容はおって説明する。大至急だ!』
艦内放送から響く千冬の声を聞いてセシリアは飛び起きた。
「は、はい!わかりましたわ!」
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0225時 飛空学園艦アレキサンダー第一ドック
セシリアが急いで兵器ドックの扉を開けると、すでにラウラ=ボーデヴィッヒが彼女の専用ISシュヴァルツェア・レーゲンを装着しているさいちゅうなのが見えた。
司令室の千冬から通信が入る。
『内容は今言ったとおりだ。至急専用ISを着装したのち、エレベーターのカタパルトとドッキングしろ』
セシリアが専用ISを装着すると、兵器ドックの中央柱のエレベーターに向かった。
「私はF18の所属を確かめるためにアルバニを1機乗せていく。所属不明のアメリカ機がエジプト上空を飛んでいるだけで火種としては十分すぎるという教官の判断だ。セシリアとハースニールは先にF18をおってくれ」
ハースニール?セシリアがそういわれて中央柱を見ると、専用ISグラビティカを着装したサラ=ハースニールが中央柱の第二エレベーターとドッキングしているのに気づいた。
頭を出した黒い全身鎧のような専用ISの機体に身を包んでいる。
「話は聞いたよ。私も協力を申し出させてもらった」とサラ。
中央柱近くに来ていたアルバニたちが話していた。
「はわわわわ、F18がもし核施設を爆破して、核爆発がおこっちゃったら、、これって戦争だよね?」とアルバニ1号
「もしかしたらアメリカまで巻き込むことになるかもしれない、下手をすると第三次世界大戦にまで発展するかもしれないよ」とアルバニ5号
自律思考戦車たちが話すのを聞きながらセシリアはブルーティアーズを第一エレベーターとドッキングした。
「ブルーティアーズ、ドッキング完了しましたわ。佐藤田さん、カタパルトに送ってくださる?」
女性士官がマニピュレーターを操作すると、
ゴウンゴウンと音をたててエレベーターが上昇する。
しだいに兵器ドックの高い天井が近づいてくる。
兵器ドックの天井が開き、さらにエレベーターが上昇すると、上からカタパルト甲板がすこしづつ見えてきた。
ガウン、と音を立ててエレベーターがあがりきると、セシリアの眼前に200Mあるカタパルト甲板が広がった。
薄暗い夜の甲板が誘導ライトで10m間隔で照らされその先には深い夜の闇が広がっている。
セシリアはブルーティアーズの脚部がカタパルトに接続していることを確認する。
ブルーティアーズの第一戦闘モードを起動、シールドを展開、ブースター機能をスタンバイする。
ドキン ドキン ドキン
セシリアの心臓がしめつけられるように収縮していた。
そしてセシリアの隣20Mのところにサラ=ハースニールの専用ISグラビティカがエレベーターであがってきた。
サラに兵器ドックの佐藤田が通信する
『本当に発射していいの?その専用ISにはブースター機能がないんでしょう?』
通信を聞いてサラが応答する
「問題ありません。もし高速射出してそのまま落下しても、ケガなんてしませんよ。それとセシリアさん」
サラがブルーティアーズのセシリアに言う。
「むこうについたら私のISの半径50Mには入らないでくれるかい。巻き込むとわるい」
セシリアはグっとかまえた、目の前には200Mの滑走路とその先の暗い空が広がっている。
「セシリア=オルコット、ブルーティアーズ発進しますわ」
そういってスイッチを起動する。
カタパルトが高速で前進し、それにおされて高速でブルーティアーズの機体が加速していく。
滑走路の誘導灯が高速で後ろにすぎていく。
ブルーティアーズは弾丸のように加速し、飛行艦アレキサンダーの滑走路から暗い空へ第二速度で射出された。
ブルーティアーズの機体が高速で暗い夜空を疾走する。
ブルーティアーズのブースターを起動さらに加速していく、ほどなく第三速度に到達するだろう。
夜の闇を切り裂いて高速で飛んでいく、
眼下では中東の大地が高速で後ろに過ぎ去っていった。
と、隣にサラの専用ISグラビティカが併走してきた。ブルーティアーズの速度についてきている。
セシリアがサラのグラビティカを見るとまったくブースターが起動している形跡は見られなかった。
サラがセシリアに通信する
「私のグラビティカは重力操作に特化してるんだ。高度慣性制御機能によって運動エネルギーを減じさせることがほとんどない」
サラがそういうと高速で滑空するグラビティカの足の先にリンゴほどの黒い球が発生し、サラのグラビティカはそれを強力に蹴ってさらに加速した。
ブルーティアーズのさらに先に飛行し、セシリアはブルーティアーズをさらに加速させた。
つまりグラビティカは重力に引かれることなく空を走っているのである。このISに飛行ブースターは必要ないのだ。
二つのISはミサイルのようなスピードでエジプト上空を高速飛行するF18を追った。
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0240時 エジプト上空
「見えましたわ!」
セシリアのブルーティアーズとサラのグラビティカのセンサーがF18をとらえた。8機のF18はすべて無人機で遠隔操作されているようだった。エジプトの上空では電子ハッキングをすることもできなかっただろう。
その先にはエジプトの核実験施設の明かりが見えている。
セシリアはブルーティアーズをさらに加速させた。
「先に行くよ」
サラがそういうとサラのグラビティカの脚部に大きい黒球が出現し、それをISで強化された両足で斥力を発生させながら蹴ると
サラのグラビティカがさらに加速し、弾丸のようにF18に迫った。
サラのグラビティカが核実験施設に迫るF18を追い抜く
とサラのグラビティカが通り過ぎた瞬間近くを高速飛行していた二機のF18に縦に大きな縦穴があき、
二機のF18は制御を失って大破した。
二機のF18の爆発とほぼ同時に残りの6機のF18が前方の核実験施設に向けて12発のミサイルを発射した。
「撃ちましたわ!」セシリアが叫ぶ。
セシリアのブルーティアーズがさらに加速し、F18を追い抜くと超高速で12発のミサイルに併走し、ブルーティアーズの背部から青いチャフフレアを発射した。
高速で飛行する12発のミサイルの前方に青いチャフフレアが撒かれた。
4機のミサイルが青いチャフフレアで対象をロストし上空にそれて爆発した。
ブルーティアーズはさらにビームライフルを抜き青いビームを発射する。
ブルーティアーズの青い光が二機のミサイルを打ち抜き、爆発させた。
6機のミサイルが核実験施設に向かう、そしてその間にサラのグラビティカが高速飛行していた。
4機のミサイルがサラのグラビティカの付近をとおりすぎると
その4機がすべて消失した。
サラのグラビティカが付近に超重力加速場を発生させてミサイルを叩き潰したのだ。
グラビティカのはるか下方の地面で爆発が起こった。
さっきの二機のF18も超重力加速場をすれちがいざまに形成して
機体を円柱状に叩き潰し、こそぎとったのである。
サラのグラビティカは重力子ライフルを抜き、一機のミサイルを打ち抜く。
さらにグラビティカの右腕に重力子を発生させながら左に反転し
それで強力に目の前の空間を殴りつけると、
グラビティカの右腕から高速ではなたれた重力子がはるか遠方で高速飛行するミサイルで炸裂しそのミサイルを消失させた。
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核実験施設の上空がミサイルの爆発で明るくてらされる。
上空をブルーティアーズで疾走し横顔を赤く照らされながらセシリアがつぶやいた。
「すごいですわ」
セシリアのはるか眼前には6機のF18が飛行している。
サラのグラビティカはすでに背部の球体型のビットを二機射出していた。
高速移動するF184機にそれぞれ併走し、強力な重力加速場を発生させると
重力加速場にF18の機体がこそぎ取られ、大きなたてあながあいて墜落、大破した。
残るF18は2機である。その1機をセシリアのブルーティアーズの青いビームが撃ちぬいた。
セシリアのブルーティアーズとサラのグラビティカに通信が入る。
『こちらシュヴァルツェア・レーゲンのラウラ=ボーデヴィッヒだ。アルバニを持ってきた。最後の1機は武装だけ無力化してくれ』
F18にラウラのシュヴァルツェア・レーゲンが迫る。レーゲンの両足をアルバニ1号の手がつかんでいる。
「ラウラちゃん。もげる、手がもげちゃう~」とアルバニ1号。
F18が最後のミサイルを二機発射すると、サラのグラビティカが重力加速場を発生させ二つのミサイルを消失させた。
ラウラのシュヴァルツェア・レーゲンが高速でF18と併走し、アルバニ1号をF18に乗せる
「うわ~すごい風。んーそれじゃぁちょっと失礼してーっと」
アルバニの右腕からコードがのび、F18とドッキングする。
アルバニの電子制御でF18の電子情報を探す。
「んー、んー、わかりましたー。このF18は宗教武装団体カザーフのデータの痕跡を残しています。アレキサンダーに転送しますねー」
アルバニ1号が再びラウラのシュヴァルツェア・レーゲンにつかまると、ほどなくしてF18が自爆した。
夜の闇の中、エジプトの核実験施設の上空を3機のISが飛行していた。
しばらくしてアレキサンダーのチハ38式とユーロガイツⅡが数機むかえにやってきた。
3機のISにアレキサンダーから通信が入る
『アレキサンダー司令室の織斑だ。よくやった。データは整理したあと日本に送信する。全員速やかにアレキサンダーに帰投しろ』
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0320時 飛空学園艦アレキサンダー内
それぞれアレキサンダーに帰投しISを兵器ドックに設置したあと。
セシリアは寝室にもどりベッドに倒れこむと、ほどなくして寝息をたてはじめた。