インフィニット・ストラトス~鉄と榴弾~   作:3×41

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第六話 紺碧の海

朝。シチリア学園都市のビル群や車や人の往来が激しくなっていた。

道行く人はせわしなさげに目的地に歩いていく。

白い朝日が鮮やかにビルと道を照らしている。

話ながら歩く人々や新聞を読んでいる人々でうねっているようだった。

 

と、ふいに道が黒くそまり、街を巨大な黒い影が覆った。

 

人々が上を見ると、なにか巨大な建造物が上空を横切っているのが見えた。

 

全長700Mの飛空学園艦アレキサンダーの姿である。

日本を出発した飛空艦が先ほど中東地域を横切り、地中海を越えてシチリア島に到着したのである。

 

アレキサンダーはシチリア学園都市を横切ってその先のシチリアIS学園に向かっている。

 

 

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飛空学園艦アレキサンダー内談話室

 

「あれがシチリアのIS学園ですの?」と談話室から窓の外を見てセシリアが続ける。

「海がきれいなエメラルドグリーンですわね」

 

談話室の生徒たちもすこしざわついているようだった。

 

セシリアがつぶやくようにいった。

「天気も快晴でよかったですわね。これで雨でしたらせっかくの到着に水をさされるというものですもの」

「そうね、天気予報では1週間ほどはずっと晴れるらしいから、ちょうどよかったね」と別の女生徒。

 

談話室で生徒たちがざわめいていると。天井のスピーカーから艦内放送が聞こえてきた。

 

『アレキサンダー司令室の織斑だ。本艦は目的地のシチリア島に到着した。各員アレキサンダーから降りた後整列するように』

司令室の千冬が艦内放送で生徒たちにつげた。

 

 

セシリアたちが荷物を持ってアレキサンダーの昇降口から出た。

アレキサンダーの昇降口から高い階段を下りていくと、

カモメたちの鳴き声とともに紺碧の海と抜けるような空、湿気のない乾いた気持ちのよい風が彼女らを迎えた。

そこからはるか眼下にはシチリアIS学園が見えた。

 

 

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セシリアたちがアレキサンダーから降りてシチリアIS学園の校庭に整列すると。

あとから千冬たちの教官たちが下りてきて、

ホスト側のシチリアIS学園の生徒と関係者たちの前に並んだ。

 

ホスト側の列からサラが歩み出てきた。

サラがIS学園の生徒を見回す。

「ようこそシチリアIS学園へ、みなさんの来訪を心から歓迎いたします」

 

そのあとサラの後ろから一人の男性が現れた。

年齢は40前後だろうか、180cmほどの長身でゆるくウェーブした髪が肩から腰の間くらいまで伸びている。

男性がIS学園の生徒の前に立っている千冬の前まで歩いてきた。

 

「シチリアIS学園都市市長のウィリアム=バークレーです。ようこそシチリアへ。皆さまを歓迎します」

そういいながら千冬の前に来て手を差し出す。

 

「IS学園指導教官の織斑 千冬です。こちらこそ、光栄です。短い間ですがお世話になろうと思います。よろしくお願いします」

そういうと千冬は手を差し出しウィリアムと握手を交わした。

 

ウィリアムがおもむろに上空を見上げる。すると飛行学園艦アレキサンダーの巨大な艦体が眼前に広がる。

 

「飛行学園艦アレキサンダー。実にすばらしい飛行艦ですな。実際にこの目で見るのははじめてですよ。この飛空艦が地中海に一艦でもあれば地中海のパワーバランスはすぐにも大きく変化することでしょうね」

 

「ありがとうございます。我が日本ではこの飛行学園艦アレキサンダーならびに飛行艦アトモス、トールを運用し、自国の防衛、脅威への対処ならびに世界秩序の形成に寄与しています」

 

千冬がウィリアムにいって、次にIS学園生徒の列に向きなおった。

「本日は自由行動とする!シチリアIS学園の見学やシチリアIS学園都市等の観光に時間をあててもいい。シチリアIS学園都市はここから南へ7キロほどだ。そちらに向かうものはここから出ている電車等を活用しろ。では一時解散!1800時までには戻るように!」

 

 

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シチリアIS学園都市

 

シチリアIS学園の近郊に建設された紺碧の地中海に臨むこのシチリアIS学園都市はIS開発の企業がひしめいている。

やりのように伸びるビル群の中でひときわ長いのは全長230mのシチリアIS研究開発ビルである。

巨大な木々のように伸びるビル群からシチリアIS学園都市の中心に伸びていた。

 

セシリアは女生徒たちと電車でシチリアIS学園都市に訪れ、

セシリアは白いワンピースに身をつつみ、はの長い白い帽子をかぶり、

午前はシチリアIS学園都市を観光した後、午後は地中海が一望できるカフェで紅茶とスコーンを注文していた。

 

カフェの丸テーブルを囲んだ中で、セシリアが一口紅茶のカップを傾けた。

坂の中腹にあるカフェからは眼下に青く光る地中海が一望できた。

「すばらしい眺めですわね。地中海はなんど見ても心をときめかせますわね」

セシリアと一緒に丸テーブルに座っていたIS学園生徒が尋ねる。

「ほんとに素敵だわ。あとで海岸までいってみない?セシリアさんは何度か地中海にきたことがあるの?」

「ええ、シチリアはヨーロッパで有名な観光地でもありますから。パレルモの大聖堂は歴史的な価値がありますし、ファヴィニャーナ島の海はとてもきれいですわよ。あとでそちらに向かってもよいかもしれませんわね。それに夜には劇場のオーケストラがおすすめできますわね、こちらのサレルノ楽団のヴィヴァルディは傾聴の価値がございましてよ」

セシリアはそういうと、白い帽子を傾けて紅茶を一口飲んだ。

「じゃあ大聖堂にいってみない?セシリアさんはいろいろ知ってるのね」

「ヨーロッパのことでしたら土地勘というものがありますわ。でもわたくしは日本のことはまだまだ知らないことばかりですわ。そちらのことはいろいろと教えてくださいね」

セシリアは少し笑って話を続けた。

 

 

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セシリアたちが話していると、隣に誰かが立っているのに気づいた。

そこには身長の高い男たちが立っていた。

「ねぇねぇセニョリータたち、シチリアへの旅行かい?もしよかったら俺たちと一緒にしない?」

男たちが話しかける。同級生たちはどう答えたらいいのかわからず困っている様子だ。セシリアはそちらに目をやらず紅茶を飲みながら答えた。

「もうしわけありませんがお断りいたしますわ。わたくし自分より弱い男性には興味がありませんの」

 

セシリアがそういうとその男たちの後ろから一人の男があらわれた。

「なんだってぇ?誰が弱いだってぇ?けんかぁ売ってんのかじょうちゃん?」

その男は2mはあろうかという大男で、丸太のような腕でセシリアの腕をつかむとギリギリとしめつけた。

 

「なにをされますの?その手をおはなしになってくださいな」とセシリア。

 

それを見たカフェの店員があわててこちらに来ていった。

「お客様、店内でのもめごとはおやめになってください」

 

大男が店員に顔を向けていう。大男の顔は弾丸をうけた跡があり右ほほがえぐれている。

「あぁぁっ!?なんだてめぇ?俺たちの邪魔をすんのか?俺たちトラキアファミリーに文句をつけようってのか?あぁっ!?」

店員はそういわれると、小さい声ですみませんといい店のうしろに下がっていった。

大男はそれをみて軽薄な笑みを浮かべると、再びセシリアたちに向き直った。

 

(これはどういたしましょう)

セシリアが逡巡する。大男はセシリアの細い腕をつかみながら、口をひらいた。

 

大男が何か言おうと口を開こうとした瞬間、突然大男を含む数人の男たちが地面につっぷした。

地面に頭を打ちつけながら大男がうめくように言う。

 

男たちは地面に吸いよせられるように地面に倒れこんでいる。

 

突然のできごとにセシリアと同級生たちが驚いていると女性の声が聞こえた。

 

「私の友人に何をしているんだい?きみたち」

 

声がするほうを見ると専用ISグラビティカに身を包んだサラがゆっくり歩いてきているのがわかった。

サラが男たちをグラビティカで低出力で重力を加速して男たちを地面にはりつけたのだ。

サラは黒い全身鎧のようなISに身を包んだ姿で言った。

 

「セシリアさんたちに手を出すってことは、私に手を出すということなんだけど、そういうことでいいのかな」

 

そういうとサラのグラビティカがさらに重力を加速させ、男たちはさらに地面に押し付けられる。

男たちは小さくメキメキと音をたて、地面にプレスされる。

 

「いいいっ、いだいっ、いだいいいいっ、やめてくれっ、ハースニールさん!やめてくれっ!あんたの友人だと知ってたら手を出さなかった!!」

 

男たちが地面にはりつけられたまましばらくすると。

カフェの前に黒塗りの車が止まって、そこから数人の男たちが降りてきた。

 

その中の車から降りてきた黒いスーツを着た長身の男がいった。180cmほどと長身で、髪は黒く短く切っており、左目に眼帯をしている。

「ハースニールさん。申し訳なかった。うちのものが何か粗相をやらかしたようだ」

 

「ああ、マッツィーニさん、きたのかい。困るよ、部下の教育はしっかりしてもらわないと」

つぶやくように言うと、サラはグラビティカの重力加速を停止した。地面に貼り付けられていた男たちがよろよろと起き上がる。

大男がマッツィーニと呼ばれた男にいった。

 

「マッツィーニさん、ありがとうございます。お手数おかけしてすいませんでした」

 

大男が言い終わる前にマッツィーニと呼ばれた男が大男の顔面を殴りとばした。

大男が誰もすわってないイスに突っ込んで倒れる。

 

「馬鹿野朗!!ハースニールさんのご友人に手ぇ出してんじゃねぇ!!ぶっころされてぇのか!!」

 

セシリアはそれを見て思った。どうやらサラとトラキアファミリーというマフィアは以前からの知り合いらしい、

それもどうやらサラのほうが優位にあるようだ。

それはそうかもしれなかった。マフィアが一個師団集まってもサラのグラビティカには傷ひとつつけることはできないだろう。

 

「すまなかったハースニールさん」

マッツィーニがサラに向き直って続けた。

「ところでうちのビックダディがあなたにあいたがってる。どうだい今週末、うちの屋敷のパーティに来ないか?海上クルージングでもいい」

 

マッツィーニがサラに持ちかける。

このマフィアたちはサラと良好な関係を保ちたがっているようだ。

それもそうである。もしグラビティカの能力を意のままにあやつれれば、それは地中海の勢力を握るのと同義といっていいだろう。

 

 

マッツィーニにいわれてサラが答える

「シチリアIS学園の生徒がマフィアのパーティに出席するのかい?それはまずいだろう。悪いけどおことわりするよ」

「そこをなんとか、ダディが楽しみにしてるんだよ」とマッツィーニ

 

サラが続けていった。

「聞こえなかったのかな?私はことわるといったんだ」

「そうか、わかったよ。今回は本当にすまなかった。どうか許してほしい」

マッツィーニがうめくようにいった。その後男たちはカフェから出て行った。

 

 

サラがグラビティカを転送して私服になるとセシリアたちに言った。

 

「だいじょうぶだったかい?乱暴はされてない?」

 

セシリアが笑って答える。

「ええ、大丈夫ですわ。ありがとうサラさん、たすかりましたわ」

 

「みんなで休憩してたんだね。よかったら私も加えてもらっていいかな?」

 

「ええ、もちろんですわ。どうぞおかけになってくださいな」

 

 

 

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シチリアIS学園都市の地中海が展望できるカフェテラスで

紺碧に輝く地中海を背にセシリアたちが話を続けていた。

 

「神隠しですの?」

 

「端的に言うとそういうことだね。最近IS学園都市内で女性がいなくなる事件が頻発してるんだ。」とサラ。オレンジジュースとハニートーストを注文してテーブルに運ばれている。

 

サラが続けて言う。

 

「それに1月ほど前シチリアIS学園都市の生徒も神隠しにあったみたいで、行方不明になってるんだ」

 

「それは大変ですわね。警察の捜査は進んでおりますの?」とセシリア。

 

「警察は一応捜査してるみたいなんだけど、あてにはならないのさ。シチリアの警察はマフィアと癒着してるし、だからってわけじゃないけど、まともに捜査されてるのかすらあやしいものなんだよ」と残念な様子でサラ。

 

サラが続ける。

 

「それで私たちも独自に何か調べられないかと思ってるんだけど、シチリアIS学園都市側の許可が下りない。どうもこのシチリアIS学園都市からずっと南の地下研究施設建設予定地があやしいんじゃないかと思ってるんだよ」

 

そういってサラがシチリアの観光地図を取り出して丸テーブルに広げる。

 

「ここだよ。3週間前にもこの近辺で女性が行方不明になってる。ここは地下研究施設の建設予定地でね、でもその計画は途中で凍結されたみたいで、ここの巨大な地下空洞内は警察も把握していないんだよ」

 

「それは調べてみる価値がありそうですわね。シチリアIS学園都市を中心に行方不明事件が相次いでいる以上、どこかになんらかの原因がある可能性がありますわ」とセシリア。

 

「そういうことだね。だからそこでIS学園のみんなにお願いしたいことがあるんだ。われわれがここを捜査するといっても市長の許可が下りない。でもIS学園側が独自に調査を申し出れば話は別だ。織斑教官にはすでに話をしてある」

 

IS学園に急な要請があったのはこのことがあったのだろうか。

頭の片隅で想像しながらセシリアが言う。

 

「そうですわね、私はぜひ協力させていただきますわ」

 

「ありがとうセシリアさん。あなたたちにお願いしてよかったよ」

セシリアが言うと。サラは顔をほころばせた。

「調査が始まるなら早くて5日後くらいになると思う。その間もよろしく頼むよ」

 

 

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