ぶっ飛び系のギャグ展開には持ち込まないつもりです。
(*)1.2.3話のサイタマの言い回しや展開など、違和感しかなかったので修正しました。(2017.10.7 土)
一撃男 / One Punch Man
6月末のとある日。
とあるショッピングモールにて。
客は恐怖に顔をこわばらせていた。
「──オラァ!! 真ん中に集まれお前ら!!動くんじゃないぞ!!!!」
武装集団から逃げられなかった百人弱の客達が1階のひらけたフロアに集められ、銃を突きつけられながら囲まれていた。
武装集団とは即ち《解放軍》のことだ。
マシンガンなどにより武装した非伐刀者10人弱と、彼らを統括する《使徒》と呼ばれる伐刀者で構成された者達だ。
全ての客の顔は絶望に染まっている。
当然だ。
4月にも似たような《解放軍》によるショッピングモール占拠という事件は起きたという話はニュースでも扱われた。
その時は数人の学生騎士が居合わせた為に、大事には至らなかったという。
しかし今回はどうだ。
見渡す限り伐刀者らしき影は無い。
確かに学生も中にいるが、着ている制服が普通高校のもので『貪狼学園』『破軍学園』のものでは無い。
ここまで「人質の中に助けてくれる
さらに彼らを前に不審な動きをすれば撃たれる訳で。
「貴様、動くなと言っただろうがァァ!!!!」
銃弾の雨が降る。
「きゃぁぁああ!!」
「うぁぁあぁああ!!!」
密かに携帯を取り出し、警察に連絡しようとした男性は警告の意味も含めて撃ち抜かれる
───はずだった。
弾丸が打ち出された直後に1人の男が動き始める。
撃たれるはずだった男の前には誰かが立っていた。
発砲した《解放軍》に向けて、握られた拳からは煙が上がっている。
「な、あっ…、えっ?」
マシンガンから放たれた全ての弾丸を掴んだのだ。
その証拠に掌を広げると中から幾つもの銃弾が落ちてくる。
「……はぁ?」
男の神業を目にして《解放軍》の面々が唖然とする中、携帯を片手に忍ばせていた男性客に声をかける。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございま…す。」
男にはその場にいる誰もが困惑する。
それは何故か。
撃たれたはずの男が無傷だったからだろうか?
それも理由の一つだろう。
他には何故か。
弾丸の悉くを片手で掴み取ったからだろうか?
それも然り。
しかしながらそれらを全て含め、その凄まじい行動をした"男の容姿"にほぼ全ての理由は帰結する。
余りに緊張感が皆無だった。
顔に恐怖一つ浮かべず、気の抜けた顔をしている。
そして何よりインパクトが強いのは───「ハゲ」である事と並びに着ている「Tシャツ」。
彼の頭には毛髪がただ一本も存在していない事だ。つるっ禿だ。
そして着ている服の胸には「○PPAI」とプリントされている。
そんな緊張感が皆無の男が人間離れした行為をしたのだ。
人質ですら唖然としたのに、《解放軍》が困惑しないわけがない。
しびれを切らした《使徒》は男に名前を聞いた。
「…何者ですか。」
「俺はサイタマだ。」
名をサイタマというらしい。
「埼玉?……ふざけているのか。」
「別にふざけてねぇけど…。」
「まあいいでしょう。貴方は伐刀者ですよね?」
「だったら何だ?」
「…どうやって素手で銃弾を──」
サイタマと名乗る男ははっきり言って怪物だ。
時間を稼いで、確実に人質を利用できる状況を作り出すために話を続けようとする。
しかしサイタマは手で制する。これ以上話を続けるな、と。
「あー、もう話長くなりそうだし、早くかかってくるなら来い。あと20分で近くのスーパーでタイムセール始まるんだ。構ってる暇はねぇ。」
曰く、今日は卵が格安になるらしい。
一人一パック60円。しかも、サイタマはある少年と待ち合わせする予定があると言っていた。
つまり2パック120円で手に入る計算になる。
これを逃さない手はない。
「…は?なんですか……それは。」
問答をスーパーのタイムセールだから早くしろ、などと半ギレされながら言われれば《解放軍》の怒りを買うに決まっている。
「もういい。お前ら、撃て。」
怒りと同時に半分呆れもあった《使徒》の指示で人質を取り囲んでいた武装非伐刀者も"彼"に向け一斉に射撃を開始する。
「「「きゃゃややぁぁああああ!!!!」」」
銃撃音と同時に人質が顔を全員が伏せ、フロアに悲鳴が轟く。
……しかし何秒も射撃が続く中、客が一人として傷を負っていないことに気づく。
人質の輪を挟んでサイタマと発砲者がいるのなら当然その線分上の人質は流れ弾を喰らう可能性はほぼ100%だろう。
それで尚、誰もが無傷。
これもまたサイタマのおかげだ。
人質の一人が勇気を持って伏せていた顔を上げると、再度衝撃の光景が目に入る。
「お前ら、客に当たれば危ないだろ。」
円を描き、人質を背にして取り囲むようにサイタマが
そしてその一人一人が銃弾を掴み取っている。
「なっ!?……お前、本当に何なんだ!?分身がお前の伐刀絶技か!!!!?」
「ただ反復横飛びしながら弾を手で掴んでるだけだ。」
「な、んだ、と…!?いや、それでも魔力放出で身体能力を上げたところで有り得ない!!」
確かに銃声の中「シュタタタタタタタ」と音が聞こえてくる。恐らく地面を蹴る音だ。
段々と分身が描く半径が広がり、発砲者に接近する──
「うわぁぁぁ!!!!く、来るなぁぁぁ!!!!」
幾十にも分身したあのやる気のない顔が迫ってくる様子を想像してくれ。
恐らくそれは大変な恐怖だっただろう。
しかしその恐怖を一心に叫んだ武装非伐刀者の嘆きは聞き届けられること無く、サイタマはただただそのまま通り過ぎた。
(本人曰く)反復横飛びをして、そのまますり抜けただけなのに。
それだけなのに威力は絶大。
(本人曰く)反復横飛びの余波だけで彼らの肉は割かれて骨は折れ、マシンガンは砕ける。
10人程いた武装非伐刀者は反撃はおろか立っていることさえ許されなかった。
残ったのは伐刀者である《使徒》のみ。
「残ったのはお前だけだな。」
《使徒》の目の前で仁王立ちをし、告げたその言葉は"死刑宣告"と同義だった。
《使徒》もそれが分かってるから命乞いを始めた。
「そ、そうだ!!!私の命を助ければ──」
「別に命まで奪う気はねぇよ。」
「な、なら私に危害を加えなければお前を名誉市民にして差しあげましょう!
どうですか!?魅力的じゃないですか!!?」
「なんだ典型的な捨て台詞は…。別に名誉市民なんていかにも怪しい市民権はいらねぇよ。俺が欲しいのは安定した生活だ。」
「ぐぬっ…話の通じない愚か者ですね…。し、…死ね!」
命乞いはもう通じない。
だったら活路を開くために、霊装を顕現させ"彼"に手加減無しで伐刀絶技を放つだけだ。
「《
《使徒》は思い切り右手で以て一切の防御を取らない"彼"の腹部を殴りつける。
すると大爆発が巻き起き、爆風の一部は人質の輪にまで吹き込む。
「うわぁぁ!!」
「す、すごい爆発だ!」
「なんだ!?」
「彼は大丈夫なのか!!!!?」
《使徒》である彼の伐刀絶技は、グローブ型の霊装で殴りつけるとその接触面で爆発を起こすことが出来るという代物だ。
もちろんグローブで防御するため自らにはダメージは、はね返ってこない。
「オラァ!!!!オラ!!!!
はははは、ひひ、はははは!!!!どうだ!どうだぁ!!!!」
人間離れしたことを何度もした謎の男。
そいつ相手なら保険をかけるべきだ。絶対な自信を持つ伐刀絶技で仕留めた方が安心できる。
顔、胸、腹……何度も何度もストレートを打ち込む。
十秒ほどパンチを打ち込んで巻き起こった爆発は数十回。未だ煙が舞っている。
「フゥフゥ……。十秒弱。私の提案を聞き入れなかったこの愚か者の全身は煮込んだ豚バラのように全身グズグズ。私を相手にしたのは些か悪手でし──」
スッ───。
すると煙の中から中指を曲げ、親指で押さえつけてデコピンの用意をした右手が唐突に突き出される。
「!?」
「この服、おれのお気に入りだったんだぞ。ふざけんな。」
煙が晴れると中にいるのは服が焼け焦げ、肌が少し煤けただけで、怪我を一つも負っていないサイタマの姿。
「な…んで…?」
サイタマに攻撃した時に魔力防御の検知が一切されなかったために《使徒》は勝利を確信した。
だからこそ疑問だった。
《解放軍》の下部組織と言っても彼は伐刀者。伐刀者ならば殴れるほど近距離ならば魔力防御の検知は普通にできる。
この男は己の肉体のみで伐刀絶技を全て防いだのだ。
「何…!?き、貴様はいったぁぁげぼふッッ!!!?」
《使徒》の質問が言い終わる前にデコピンが放たれ、先程の爆音以上の凄まじい音が轟く。
それは俗に言うデコピンとは程遠い。
その埒外なデコピンが直撃すると、衝撃で《使徒》である彼の体は数十mは軽く吹き飛び、柱に直撃する。
だがそれだけでは衝撃の完全なる吸収はされない。
地面に何度も跳ねて店を幾つも貫通して自動ドアを突き破って外へ飛び出す。
そこからさらにショッピングモールを包囲していた警察達がまるでボウリングのピンであるかのようにぶち当たる。
「ストライク!!」と叫びたくなるように、警察官が吹き飛んで《使徒》の運動エネルギーはようやく0になる。
「この服、着替えなきゃ行けないじゃねぇか。」
───後に助けられた客の1人がこう呟いたという。
「ヒ…ヒーローだ………!!」
ワンパンマン原作のサイタマと全く同じ人格ではなく、若干違います。
サイタマが落第騎士の世界に異世界転生したのではなく、このサイタマの生まれは落第騎士の世界ですので。