「たかなみです、いずもさん、不明船団の後方に新たな船団を発見。数は大型艦4、中型艦4、小型艦6です。
主力・・・でしょうか?」
しかし、いずもの頭の中に浮かんだのは全く別の事態だった。
「いずもより偵察中のシーホーク各機へ、第二集団を確認、第一集団と戦闘中の可能性があります。注意してください。
また、戦闘中だった場合、状況の把握ができるまで攻撃は控えてください。」
と言っても、今はいずもがひとりでやっているため、いずもが気をつければいい。
これは癖のようなものだ。
しばらくすると、シーホークが目視で不明船団を捕捉できる距離まで近づいた。
そして、シーホークから送られてくる映像を見た時のいずもは絶句した。
それは、別に、初めに見つけていた方の船団が船団ではなく、数十年も前の船のような大きな船体に大きな砲や魚雷を積んでいたからではない。
いや、本来ならそこに驚くべきなのだろうが、今回の問題はそこでは無かった。
つい数分前まで第二集団と呼称して船団として識別していた12隻。
それは、紛れも無く戦闘艦だった。
しかし、戦闘艦であっても軍艦ではない。
その船体には信じる正義の為の旗も名前もなく、ただただ黒塗りの旧式軍艦としか言いようがなかった。
旧式と言っても、追われている第一集団とさして変わらず、第二次世界大戦の軍艦その物だった。
そして、漆黒の艦隊をシーホークという“目”を通して呆然と眺めていたいずもは漆黒の艦隊から放たれた発砲炎によって現実に引きずり戻される。
そして、初めて追われている軍艦が日章旗を掲げていることに気がついた。
「いずもです。皆さん、リンクした映像を見ていますか?
現時刻より、日章旗を掲げる艦艇群を友軍艦隊であると仮定、8隻をシルバー01~09、後方の敵艦隊をブラック01~12と識別、識別信号の割り振りはリンクします。
また、大型艦を航空母艦と戦艦、中型艦を巡洋艦、小型艦を駆逐艦と識別します。」
そう、いずも達から見れば今どき巨艦に巨砲を搭載している船や飛行甲板が木製の空母を含む艦隊が至近距離で砲戦を始めた姿など違和感の塊でしかないが、目の前で起こっている以上信じざるを得ない。
この状況から見て、両艦隊とも風下へ向かっているためか空母は艦載機を発艦していない。
逃げるシルバー艦隊をブラック艦隊が一方的に追いかけながら砲撃しているような状況だ。
たまに、シルバー艦隊の方も反撃してはいるが、狙いはお粗末でどちらかと言えば牽制をしているような感じだ。
この状況から、明らかな脅威目標は戦艦だが、まだそこそこ距離があるからか命中はしていない。
ならば、と。いずもは、いつ風が変わるか、転舵するかして艦載機を発艦するかも分からない空母を最優先攻撃目標と考えた。
「皆さん、リンクは出来ましたか?」
「「はい」」「「できてるよー」」
「では、最優先攻撃目標をブラック01、02とします。
対水上戦闘用意に入ってください。」
「待ってくれ。」
「どうしましたか。きりくま。」
「きりしまだ!
いや、どう見ても空母は何もしてないから戦艦を優先させるべきなんじゃないのか?」
そう。
きりしまはイージス艦ではあるが、そこら辺の頭はいずもよりちょっと残念なのである。
「空母は現状何もしていませんが、何か始める前に仕留める必要があります。
恐らく、まだ私たちの存在を認識していませんが、攻撃を開始して認識されてからでは最悪の事態を招く可能性があります。」
「なるほど、そういう事か。了解だ。」
「その後、順次ブラック03~12まで戦闘不能にします。」
「空母の後は戦艦から順にですね。合理的です。
ですが、あの船がフォルム通りの性能だった場合、私達の攻撃では沈めてしまうかも知れません。」
「確かに護衛艦としてあまり沈めたくはありません。
しかし、この状況に陥る前は1度戦争に参加する事を覚悟した身、それに、あの日章旗が私達の今持てる最大にして唯一の希望です。
ですから、目標は敵戦力の壊滅。やむを得ない場合は撃沈を許可します。」
いずも、きりしま、たかなみの作戦会議を他の艦は皆静かに聞いている。
「ですが、私達は護衛艦です。
なるべくではありますが、大破航行不能を目標としましょう。」
『了解!』
通信機から聞こえた全員の声にいずもは安心し、最後の命令を出した。
「対艦ミサイルの終末誘導はシーホークより行います。
全艦、攻撃始め!」
「加賀さん!ちょっとマズイっぽい!」
「くっ!赤城さん。」
「加賀!どうするネ!このままだと私達は海の藻屑デース!」
「提督は敵の存在を知っていたの!?」
「加賀さん、私達の司令官さんはそんな事しないっぽい。」
「そうですね。あの人は・・・そういう人ですね。
それにしても、ヲ級2隻にル級2隻は酷いわね。エリートやフラッグシップじゃ無かったのがせめてもの救いかしら。」
「どうしますか!?戦いますか?」
「いいえ、吹雪さん、とにかく逃げましょう。
援軍要請は送っているわ。もう少しの辛抱よ。」
「でも!」
「ブッキー大丈夫ネー!
何かあっても私が守ってあげるネー!」
「金剛さん・・・はい!私、頑張ります!」
「みんな!あれみるっぽい!」
「あれは・・・深海棲艦?」
「加賀先輩、でも、あんな形の艦載機・・・
それに、“隊衛自上海”って言うのは分からないですけど、日の丸を付けてますし、うちの新型機じゃないですか?」
「でも、そんな情報・・・」
加賀達は、偵察に来たシーホークに援軍への希望と一抹の不安を覚えた。
15分後、逃げる加賀達の速力は金剛の被弾によって20ノットにまで下がっていた。
「ブッキー、sorryネ。守ってあげられなくて。
加賀、私を置いて全速力でこの海域を離脱するネ。
私が殿をしマース!大丈夫デース!このくらい、提督やブッキー達のためならなんてことないネ!」
「いけません!提督の命令は全員で帰ることです。
それに、あなたにだって守りたい人がいるでしょう。
提督の他に、あなたを待っているのが3人もいるでしょう。」
「提督、比叡、霧島、榛名。私、バルハラから見ているネー。」
そう言い残すと、金剛は一人反転を始めた。
が、次の瞬間、ル級の放った8発のうち、6発が金剛に命中。
轟沈は免れたものの、大破した上に航行不能に陥った。
「あぁ、提督。みんな、最後にお別れを言いたかったデース。」
そう呟きながら金剛は「必ず助けに戻る」と言い残してところどころ煙を上げながら、それでも全速で、離れていく加賀達を見たあと、回避もできなくなった自分に狙いを定めているル級を見つめる。
ル級達の方に爆炎を見た金剛はそれがル級の発砲炎だと思い、身構えた。
しかし、実際には弾が飛んでくることは無かった。
最初の爆炎は発砲炎ではなく、たちまち傾斜したヲ級から立ち上る黒煙が何者かによる深海棲艦への攻撃を物語っていた。
そして、その爆炎を金剛ではなく、深海棲艦の方から上がっていると見た加賀は援軍が来たと判断。
全速力で反転し、金剛救出へ向かった。
金剛は、目の前で起こる後継に頭が追いつかず、ただ呆然と眺めていた。
この状況を神が微笑んだと言うのだろうかと。
しかし、その光景は神のそれとは違った。
水面ギリギリを航空機に似た何かがありえないほどの速さで深海棲艦に向かって飛翔し、その手前で急上昇、そして、深海棲艦目掛けて急降下してその大きさからは考えられないほどの爆発を起こす。
また1本、また1本と水平線から現れては高速で深海棲艦をなぎ払っていく。
その数が20本にもなる頃には深海棲艦は小型艦5隻と巡洋艦2隻がゆっくりと沈み、残りも何とか浮力を保っているという状況だった。
「敵戦力の壊滅を確認。皆さん、全弾命中。日頃の訓練の成果が良く出ています。
まずは、救出した艦隊と接触しましょう。
残りのブラックへの警戒を緩めないように。」
いずも達は再び速度を12ノットまで落として加賀達の元へと向かった。
あぁ、期間限定でいいから、護衛艦実装されないかなぁ。