発:海軍省 宛:トラック泊地鎮守府司令長官   作:戦闘工兵(元)

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桂木と海兵同期の会話

同期「よぉ桂木。そっちのホはどうだ?」
桂木「ホットヒーターだがマンリーナイスだ」
同期「そうか。あぁ、そういやこっちのグンチュウがルッキングしたんだ。リクサンのアフターらしいんだが中々のボディーナイスでしかもスキンナイスだと。おまけにピラミッドも良しと来た。どうだ?」
桂木「ほぉ、そいつはスタンするな」
同期「だろう?ただそのグンチュウはチョンガーの癖にバーなんだよ」
桂木「…まぁマリッた後のファーストナイトでペンダンしてもらえば良いだけだろう」


※語訳は後書きにて。活動報告にて簡単な桂木幸一についての裏話(?)を書きましたので暇潰しにどうぞ。


24

ーー【若き俊英の司令長官 新たに就任す】ーー

 

ーー去る六月五日。麗らかな日和の佳き日、宮中にて親補職式が挙行された。司令長官が長く不在であった我が帝国海軍の大泊地を擁するトラック諸島。その鎮守府司令長官に桂木幸一海軍中将が補された。弱冠二八歳と云う異例の若さの海軍中将であるが、海軍大臣 山本五十六元帥海軍大将曰く「桂木中将はその若さに反して老将の如き戦術眼あり。また個人の武勇にも優れ、古の英傑を彷彿とさせる益荒男なり。未来の帝国海軍を背負うに相応しき将帥の片鱗をその相貌と眼光に見ゆ」と称す。成る程と頷かんばかりの眼光の鋭さ、そして身の丈六尺 体重十九貫はあるという猛将の如き恵まれた堂々たる体躯に圧倒され弊社撮影者、記者は震え上がった。新司令長官 桂木中将曰く「畏れ多くも大元帥陛下の股肱の臣たるに相応しき将となるべく日々精進を重ねると共に隷下将兵、ならびに艦娘達を良く指揮し、一刻も早い敵撃滅と本戦役の終結を此処に誓う」とのこと。この新風が停滞する本戦役の神風となる事を祈るばかりであるーー

 

 

 本土から届いた新聞を桂木は執務机の机上へ興味を失ったのか雑に折り畳んで放り投げた。

 

 新聞の一面には彼の写真付きで過日の親補職式での司令長官着任に関する記事が掲載されていた。

 

 新聞を届けてくれたのは本日の秘書艦である赤城だ。

 

 彼女も自身の執務机で桂木と同じ新聞を微笑みを浮かべつつ読んでいた。

 

「ーー若き俊英の司令長官ーーだそうですよ提督?」

 

「いくらなんでも誇大に過ぎる。目に見える結果を出さねば身内は勿論、陸軍と政財界からも突っつかれること請け合いだ」

 

「ですが写真は素晴らしいですよ。この険しい表情…益荒男と称されるに相応しいです」

 

「……それは誉めているのか?」

 

「勿論ですよ。……この写真と記事、切り抜かないと…」

 

 赤城が抽斗から鋏を取り出し、新聞に掲載されている記事と写真の切り抜きを始めた。

 

「キミ、新聞の切り抜きが趣味なのかね?」

 

「そういう訳ではないですが……やはり私達の提督がこうして新聞に載ったのですから切り抜かないと………あの…駄目でしょうか…?」

 

 鋏を片手に赤城が桂木へ潤んだ瞳で視線を向けて来る。

 

 女はそういう所がズルい、と桂木は嘆息する。

 

 男というものは女性の潤んだ瞳ーーそれも美人の涙には滅法弱い。

 

 それを知ってか知らずかーー勿論、知っていてするのならば尚更に質が悪いのだが、男という生き物が女の最終兵器とも呼べる涙に勝てる訳がない。

 

「……好きにしたまえ」

 

「ありがとうございます♪」

 

 その最終兵器の前には桂木も諸手を挙げて降伏するしかなかった。

 

 桂木の溜め息混じりの許可を聞いた赤城は花が咲いたような笑顔を浮かべ、嬉々と切り抜きを再開する。

 

 彼は再び新聞を手に取り、記事の本文を流し読むとーーまたそれを机上へ放り投げる。

 

「古の英傑か……英傑の英傑たる由縁は、その最期の悲劇だろうな。…九郎判官義経公しかり大楠公しかり…」

 

 桂木の呟きは切り抜きに没頭する赤城の耳には届かなかった。

 

 

 彼は赤城が淹れてくれた茶を一口啜り、それを机上の隅へ追いやると暫しの小休止を終え、再び執務に戻る。

 

 処理する書類の殆どは先日、本土から輸送された物資の受領に関する物だ。

 

 米、麦、味噌、醤油、塩、砂糖、茶葉、コーヒー豆、冷凍された牛豚、等々の糧秣の品目が書かれた書類の上段には確認した担当の上長毎に印鑑が捺されており、桂木の印鑑を捺す欄、彼自身の姓名を署名する箇所、司令長官印を捺す箇所だけが空白となっている。

 

 最終確認者である桂木が署名と捺印を済ませ、晴れて糧秣は書類上は受領となった。

 

 軍隊もお役所仕事だ。

 

 受領の書類一枚だけでも補職されている上長毎に裁可を仰ぎ、印鑑を捺して貰えなければ突き返さてしまう。

 

 だが別の言い方をすれば“印鑑さえ捺されていれば”どうとでもなるのだ。

 

 例え話として、何者かが桂木の印鑑を捺した新たな物資の受領を申請する書類を本土へ送ったとしよう。

 

 受領を申請した品目は防衛火器として連装の対空機銃10基、高角砲5門、沿岸砲2門、付随して相当数の弾薬。そして航空隊で運用される機体の発動機等の部品。

 

 本土側は余剰分や員数外の品目を探し出し、それらをトラックへ輸送するが受領の段になって申請者である筈の桂木が知らぬ存ぜぬと言い始め、それらを本土へ送り返す。

 

 申請したのは桂木本人なのだから知らぬ存ぜぬは有り得ないだろう、と本土側も言い始め、両者の間でトラブルが発生してしまう。

 

 詰まる所、捺印さえあれば書類の偽造すら可能なのだ。

 

 万が一、偽造書類ーーそれも軍事作戦の命令書が作成された場合、動員される部隊の将兵にその気はなくとも反乱すら可能である。

 

「ーー井上軍務局長からお預かりした本に書かれていたのだが終戦直前に陸軍の青年将校らが近衛師団の一部隊を動員して宮城を占拠せしめたという反乱事件があったらしい。…書類を偽造されぬよう印鑑の管理は徹底せんとな」

 

「そうですね。…もしかして…提督のこのハンコの捺し方はワザとなのでしょうか?」

 

「あん?……あぁ…やや左へ傾けて捺している所かね?その通りだよ。大体の奴は真っ直ぐに捺すからな」

 

「それも…こうして透かすと寸分の狂いなくピッタリ合うという徹底ぶり…」

 

 赤城は桂木が捺印した書類同士を重ねて、日光に透かして見ると感嘆の言葉を吐いた。

 

「偽造するとしたら…ガラス板の上に俺が捺した書類を置いて下から光を照らし、その上へ偽造する書類を重ねてピッタリ合わせて捺さねばならんな。御苦労な事だ。…まぁ尤も俺の印鑑を使おうとする奴がいるとも思えんが」

 

「用心はなさった方が確実ですよ」

 

 桂木の言葉を聞いた赤城は苦笑いを零しつつも暗に注意を勧告した。

 

 それに彼は頷くと別の書類へ再び自身の印鑑を捺した。

 

 

 

 

 

「ーー新聞は向こうに届いた頃かな」

 

 海軍省庁舎の三階には海軍の軍令を司る軍令部が詰めている。その組織の長が部屋の主となる軍令部総長室では応接用のソファへ腰掛けた二人の将官が差し向かい将棋を打っていた。

 

「ーーえぇ。桂木の奴の苦い顔が目に浮かびます」

 

 一人は纏った二種軍装の肩章から将官飾緒を提げた軍令部総長 山口中将。

 

「ーー次に会った時は文句を言われそうだ。私を広告塔にしてどうなさるおつもりか、ってな」

 

 そしてもう一人は海軍の軍政を司る海軍大臣 山本元帥海軍大将。

 

「若き俊英の司令長官、という見出しでしたかね。私がMIで死んだ後、奴は?」

 

「俺が戦死する直前までは南方だな。ソロモンでは霧島に乗り組み、ケ号作戦ーーあぁガダルカナルからの撤退だ。その作戦では愛宕乗組だった筈だよ」

 

「霧島…確か、海兵同期の多田が艦長をやってましたなーーどうぞ大臣」

 

「ーーむぅ……」

 

 山口が駒を動かすと山本は盤上の戦況を俯瞰しつつ唸る。

 

「艦娘の霧島は可愛い娘ですね。聞いた話じゃソロモンで米戦艦相手に砲戦をやったらしいじゃないですか。あんな可愛い娘が拳闘に例えれば真正面からの殴り合いを経験しているとは…人は見掛けによらないものですなぁ。まぁ乗組んでいた桂木が何処ぞの誰かと殴り合いをしていてもさして違和感はないのですが……長考ですか?」

 

「長考だ…少し待て」

 

 腕を組む山本に対して山口は余裕綽々とでも言いたいのか饒舌に語る中、傍らの湯呑を取って茶を啜る。

 

「覚えておられるとは思いますが私が勝ったらーー」

 

「あぁ判ってる。昼飯だろう……二人前ーー」

 

「四人前で」

 

「…それは酷くないか?」

 

「私にとっては一人前です」

 

 山口の健啖ぶりは海軍省、軍令部内でも有名だが度が過ぎていると山本は指先に挟んだ駒を弄りつつ思う。

 

「…今の内に言っておくが…俺が好きな蕎麦屋で勘弁してくれ」

 

「では、たぬきで」

 

「……判ったーー参りました」

 

 降伏の条件を確かめ合った後、山本は素直に投了した。

 

 勝ち誇った顔となる勝者を見た山本は、次こそはと内心で打倒の誓いを立てる。

 

「ところでーーあぁ真面目な話です。作戦の件なのですが」

 

「…ふむ…長考ーーと言いたい所だが、そうもいかんな」

 

「えぇ。この戦は泥沼と化そうとしています。いえ…もはや泥沼と言っても過言ではないでしょう。戦線の拡大は止まる所を知らず、補給線も芋蔓の如く伸びきり、加えて彼我の戦力差すら判らない。これほどやりにくい戦はありません」

 

 海軍の軍令を司る長が深々と溜め息を吐く。先程までの勝者の余裕は何処にも無い。

 

「仕える国が違うとはいえ同じ“人間”を相手に戦をする方が遥かにマシではあるが…深海棲艦による攻撃で先の欧州での大戦のような人間同士で総力戦をする余裕がなくなったのは、ある意味で僥倖とも言える」

 

「または、大いなる皮肉、とも言えますな」

 

 山本は山口の言葉に頷いた。

 

 有史以来、同族殺しーーもしくは共食いを寝ても覚めても続けて来た人類が初めて、その唾棄すべき行為を一旦ではあるが中止したのだ。

 

 もっとも皮肉な事にそれをもたらしたのは同じ人類ではなく、得体の知れぬ存在ではあるが。

 

「この状況は宜しくない、とても宜しくない」

 

「えぇ。この停滞した状況は打開せねばならない。この戦に勝つ為には敵に先んじて行動をしなければならない」

 

「そうだな。先攻は敵に譲ってやったのだ。こちらが遠慮する必要はない」

 

「現在、作戦課で作戦を立案中です」

 

「そうか。それで……やはり?」

 

 山口は頷くとソファから立ち上がり執務机へ歩み寄ると、白紙の帳面へ鉛筆を走らせた。

 

 それを破ってソファへ腰掛けたままの大臣へ見せると山口は直ぐ様、細かく千切りゴミ箱へ投げ捨てる。

 

「…一度は失敗した作戦だ。やるのか?いや…やれるのか?俺は再び亡国への道をこの国に辿らせたくはない。俺は死ぬのは構わない、軍人として覚悟はとうに出来ている。だが未来を生きる子々孫々が後ろ指さされるのは耐え難い」

 

「…敵の大泊地となっている彼処を占拠せねば、いつまで経っても制海、制空権は脅かされたままです。このままジリ貧で戦を続けても亡国への道行きは揺るぎません。無論、作戦の立案や準備、外交折衝には時間が掛かりますがーー十中八九…いえ七八で成功させてみせましょう」

 

 山本は溜め息を吐きつつソファの背凭れへ背中を預けると対面の山口へ視線を向ける。

 

「この作戦が失敗すれば…海軍が滅びるどころか国が滅びるな…」

 

「その時は……海軍首脳の生き残り全員で皇居前にて腹を切りましょう」

 

「やれやれ……やり合って生き残っても待っているのは死か。不退転の覚悟でやるしかなかろうな。作戦立案は懇ろに頼む。入り用はなんでも言え。なんとかしよう」

 

 深く頭を下げた山口が直るとーーその顔に笑顔を張り付けていた。

 

「では手始めに昼飯をお願いします。腹が減っては頭が動きませんので」

 

「…国が滅びるより先に俺の財布が滅びるな」




※以下、語訳となります。尚、ヘル談(猥談)になりますので伏せ字の箇所がありますがご了承下さい。

同期「よぉ桂木。そっちの砲術長はどうだ?」
桂木「瞬間沸騰器みたいな人だが男らしい人だ」
同期「そうか。あぁ、そういやこっちの軍医中尉が見合いしたんだ。陸軍の後家さんらしいんだが中々の肉体美人でしかも餅肌美人なんだと。おまけに胸も良しと来た。どうだ?」
桂木「ほぉ、それは勃○するな」
同期「だろう?ただその軍医中尉は独身者の癖に童○なんだよ」
桂木「…まぁ結婚した後の初夜で筆○ろししてもらえば良いだけだろう」

 若者の言葉遣いや略語に苦言を呈する方は多いですが70年以上前から日本は日本でした。
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