遺伝詞が見える少年   作:リボルビングバンカー

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「で、何事だ?」

 

「何事って……のんきだな」

 

 記憶が正しければさっきまで土蔵にいて、呼び出されて外に出ただけのはずなんだが。

 どういう訳か、謎の和室らしき変な部屋にいる。鹿威しは室内に設置するものではないはずだし抹茶は砂糖を入れるようなものでもないはずだが……

 

「のんきも何も、おかしな空間にぶち込まれて変な夢でも見てる気分だ」

 

「あ、あはははは……」

 

 笑ってないでどうにかしろよ、誘拐犯と原因ども――

 

「んんっ。さて、説明してもらおうか、色々と」

 

「色々、ねぇ……」

 

 どこから話したものか、あるいはどこまで話したものか、

 

「まあ、知ってる範囲を教えていい範囲でなら話していいか」

 

 そこで反応するのか、そっちの訳知り顔で笑ってる女を見習えよ。

 

「どこまで話を聞いている?」

 

「とりあえず、話していい範囲の内容を全部話してもらってからでいいかしら?」

 

「結構、あんたの方が話し相手としては面白そうだ。

 じゃあ、知りたくなかったら途中で止めてくれ」

 

 では、

 

「ある程度編集(アレンジ)して話す。元の情報が知りたかったら俺以外に聞くことだ」

 

 それは、フェレットもどきが弱々しいメッセージを送ってきた日からの出来事だ。

 

 

 

堕ちてゆく螺旋

 

 

「そうだな、まずは何があったか、からだろう。

 先月頃、そこのフェレットもどきが弱々しい遺伝詞のメッセージを送ってきた日からだ。

 大したことはない、力ある人に助けを求めるというそれだけのものだった」

 

「それで?」

 

「俺は面倒事には関わらないつもりだった。

 そういうのは生前に味わい尽くしたからな」

 

「生前?」

 

「気にするな、滅びた世界の話だ。

 で、その日から暫くはツレが怪我をしてそれの治療の手伝いと看病をしていたな」

 

「……そうか」

 

「で、治療が終わった二日後、街で巨大な樹木が急成長するという事件が起きた。

 それが初めに関わったジュエルシード事件だ」

 

「……危険だとは思わなかったのか?」

 

「特には。もっと危険な目にあったこともあるしな」

 

 主に忍関連で、だが。

 

「その日のジュエルシード事件の方は恙無く終焉を迎えたんだが、変に絡んできた奴がいてな。

 そいつが背骨を叩きおって皮膚を貫通するという大怪我になったために治療してもらったわけだ」

 

「……初耳だな」

 

 だろうな、まあ、わざわざいう理由もないしな。

 

「で、強制的にすべての治療を行ったから歪めていた自身の元の姿を取り戻す羽目になって、警察に突き出すことにした」

 

「ああ、そんなこともあったね」

 

 忘れてたのか。いや、そのほうが建設的だが。

 

「そいつから聞き出したキーワードは、魔法と特典、というものだ」

 

「心当たりは?」

 

「ないな。遠隔魔法師ならともかく」

 

 聞き覚えがないらしい。当然だろう。千年以上昔の話だ。

 

「その後、目を怪我した少女となのはにある程度手ほどきをして言っていたわけだ。

 最低限自分の命くらいは守れるようにな」

 

「関わらせなければ良かったんじゃないのか?」

 

「関わるかどうかは個人の自由だ。そこまで否定するのは親の仕事だろう。

 で、ある日の午後、俺が関わった二つ目のジュエルシード事件が起きる」

 

 とはいえ、特筆することはない。

 

「金髪でフェチズムな少女が襲いかかってきただけだ。

 多少強かったが、そこまでだ。そっち二人の姉と兄に比べればただの雑魚だった」

 

 Aランクはあったんだが……と言われてもよくわからん。

 あれでAなら英雄(デア・ヘルト)は何処まで行くというのか。

 

「で、適当にあしらって追い返した。大したこともなかったしな」

 

「数日後、急に温泉に行くという話になって慌てて荷物を作る羽目になった。

 で、そこでもまたジュエルシードが関与していた」

 

「えっ、初耳なんだけど」

 

「知らなかった」

 

 二人には言ってないからな。

 

「そこで、オレンジの毛をした異族以外の人外と金髪とまた遭遇した。

 で、そこで尋問してある程度の情報を入手した。

 名前と、目的辺りを入手することに成功した」

 

「後でそれも聞かせてもらおう」

 

「その際、情報を吐かせたあと撤退させてジュエルシードを破壊した」

 

「はっ、破壊!?」

 

「……その後音沙汰もなく、もう関わる必要がないと思っていたら依頼が来てジュエルシードで実験をすることになった。それが今回連れ出された元凶だと思われる。――以上だ」

 

 まずは黙ったか。情報をまとめるのだろう。

 

「異族以外と言ったか。どんな奴だった?」

 

「狼に変身したな」

 

「ああ、あの使い魔か」

 

 へえ、あれが使い魔か。戦闘向けか?

 

「じゃあジュエルシードが使い物にならなくなるような実験とは?」

 

「機密事項だ。知りたかったら依頼主に問え」

 

 またピクリ、と反応した。まだまだ若いな。

 

「では、尋問で入手した情報を噛み砕いてもらえるかしら」

 

「了解した。まずは……金髪の少女からか――名前は」

 

「あ、アル君。あの子のは私が聞き出したいんだ」

 

「ふむ、じゃあ他の情報でいいか?」

 

「ええ、少しでも情報を集めたいから」

 

「後大きな項目はひとつだ。

 使い魔らしき方が鬼婆と認識している金髪の母親の命でジュエルシードを集めているらしい。

 で、母親の名前はプレシア・テスタロッサ、だったか」

 

「……かなり大きな情報だな」

 

 そうなのか。

 

「かなり前進するわね……それで、非殺傷設定で魔法を使っていたことに関しては?」

 

「何度も言わせるな。魔法なんて使えないし、非殺傷設定というのも知らん」

 

 また黙り、か。

 飽きてきたな。

 

「記録が正しければ竜を召喚していなかったか?」

 

「違うな。あれは風水という世界法則に則った遺伝詞の変化による結果だ」

 

「……そこが噛み合ってないのか。

 わかった、君たちが使う風水、というものを説明してくれ」

 

 ああ、そこも聞いてなかったのか。

 

「風水は遺伝詞を変化させる手段の一つだ。

 遺伝詞とは世界を構成する流体を特定の形にしている情報だ」

 

「えっと、見せたほうが早いんじゃないかな?」

 

「……神形具も呪符も持ってないぞ」

 

「あー。アリサちゃんも捕まえるべきだったね」

 

 そこまでバレているか。

 

「まあいい。風水とは風水五行と呼ばれる技術の側面でしかない。

 俺が使うのは五行寄りだし、説明も上手くないだろうから適当に聞き流せ」

 

 俺の知るもう一つの20世紀の話を語る。それは神秘がまだあり、世界が今よりもはっちゃけていた頃だ。

 

 

 

 

 

 

 

「……頭が痛くなってきた。つまり、大昔に魔法以外にもそういった技術があったわけか」

 

「その認識がわかりやすいならそれでいい」

 

 人間はわかり易い解釈がないと理解できないものだから、すべて丸のみ、というには年をとりすぎている。

 すべて丸のみできるのは幼子くらいのものだ。

 

「で、どうやってそんな技術を知ったんだ?」

 

「前世の記憶がある程度あってな。

 後はそれを頼りに各国をブラブラと旅していただけだ」

 

 暇人め、と言われてもなぁ。

 

「でまあ、ある程度集め終わったから復元とか試しているところだ」

 

「ふむ、それで……その技術はなんで廃れたんだ?」

 

「世界が滅んだからだ」

 

「ほろっ、いや、滅んでいたらこの世界は残っていないはずだろう」

 

「ほかの次元世界がどうかは知らないが、少なくともこの星は六度は滅んでいる」

 

 FORTH,AHEAD,EAGE,GENESIS,OBSTACLE,CITYと時代を変遷してきている。

 現代はFORTHに一番近いらしいが、詳しい情報は残っていない。

 

「貴方は、どんな時代に生きた人ですか?」

 

「都市理力、という都市毎に違う効果を持つ、現代だとCITYと呼ばれる時代に生きた逃がし屋だ」

 

「そんな高度な文明が滅んだのは、やはり科学の発展で?」

 

「いや、地殻変動らしい。

 それ以前だと世界合一で滅んだこともあるらしいが、記録は残っていない」

 

「そう、中々変わった世界ね」

 

 真っ黒な坊やの方は納得してないようだがな。

 

「僅かに残った人類が何度も立て直してきた世界だ。

 多少の出来事なら笑って手の空いてる連中が騒動を潰すような世界だよ、ここは」

 

「そう。では、改めて。

 危険だから今後関わるのは遠慮してもらおうかしら。よく考えて行動して頂戴。

 そういう風にもうひとりの女の子にも伝えてもらえるかしら?」

 

「はいはい、どうせ厄介事が降ってこない限り関わる気はないからな。

 仕事も無事に終わったし問題なしだ」

 

 そういって、袖に隠してあったナイフで縛っていたロープを切り裂く。

 

「驚いた、そんなギミックもあったんだな」

 

「武器がなかったら戦えないとは言わんが、戦略が減るからな」

 

 用心は当然だろう?

 と、そう告げた。

 

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