遺伝詞が見える少年   作:リボルビングバンカー

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「さて、帰って寝るわ」

 

 やっと事情聴取という名の監禁から解放されてそう告げた。

 深夜0時。生活リズムをなんだと考えているのやら

 

「アル君は、これで満足?」

 

「俺は世界で二番目に平穏が好きな男だ。わざわざ厄介事に首を突っ込む気はない」

 

 放っておいていいなんて言われたんだから放っておくに決まっている。

 

「世界で一番じゃないの?」

 

「世界で一番だなんて、そんな自信過剰な」

 

「なるほど、お大事に……」

 

 前にも言われたが、どういうことだろうか?

 

「とはいえ、腹黒に頭を下げる気はない」

 

「腹黒?」

「腹黒だったね」

 

 どうやら心当たりが無い様子。世界は美しく見えるのだろう。

 

「えっと、すずかさんはどうするんですか?」

 

「私? ん~アルが参加しないなら私も遠慮しようかな。

 技能がまだまだ使いこなせてないし」

 

 下手な神器使いより十分強いんだが、総長連中と比べるとやはり劣る。

 草薙は最強のリズムの一つだ。発動はほぼ最速に近く、威力も殆どの右神器に比べれば高い。

 それで負けるのなら、腕が悪いということになる。

 

「すずかは暫く士郎氏に剣術を学んで来い。

 MDなしに神器を発動できるのに弱いってことは熟練度が足りてない証左だ」

 

「そうだね、技能は身体スペックがモノを言うから鍛えるしかない、かな」

 

「俺も仕込んでおいた風水紋章を作り直さないとなぁ」

 

「あっ! あの時の竜って!?」

 

「ん? 俺の仕業だが、何か?」

 

 とぼけた風に答えるとゴスッゴスッと鈍い蹴りが飛んできた。

 

「仕方ないだろう。

 逃げたいのに逃げ道を塞がれるわ、相手は話を聞かないと踏んだり蹴ったりだったし」

 

「おかげで私たちも竜に襲われたんだけど」

 

「馬鹿どもが散々遺伝詞を乱しまわってたからな。

 術者が消えても発動し続けるなんて考えもしなかったんだろう」

 

「あー、金髪の子砲撃しかしてなかったもんね」

 

「えっ、放置が正解だったの!?」

 

 知らなかったようだ。すずかは逃げに徹していたようだしある程度悟っていたのだろう。

 

「さて、どう動く、腹黒女」

 

 

 

 

 

 

 

――アースラ艦内――

 

 

 

「ん~、敏い子達は気づいて手も貸してくれないでしょうね」

 

「それが一番なんじゃないですか?」

 

「金髪の子と使い魔、さらにもう一人となると一人じゃどうしようもないでしょう?」

 

「そう、ですね。双剣の少年は魔導師の能力はともかく、肉弾戦は得意のようですし」

 

「そうなると、ちょっと厳しいのよね。転生者っていうのがほかにもいる可能性があることだし」

 

 どうしようかしら?

 

「少なくとも、敵対はしないと思いますよ」

 

「……そうね、二人は手伝ってくれるかもしれないけど、高望みはしないほうが賢明ね」

 

 さて、テスタロッサというのは多分彼女のことだろうし……

 

「あの子、もしかすると」

 

「可能性はありますね」

 

 そんな悲しいことはないと願うのだけれど……。

 念のため、エイミィに本局に調査依頼を出してもらっている。

 

「それにしても、魔力反応があったのに魔法が使えないってのはレアケースですね」

 

「そうね、多少訓練でもすれば使えるようになるかもしれないけど、わざわざ引き込むのもおかしな話よね」

 

 チャポチャポと砂糖を入れ、ミルクを加えてお茶を飲む。

 

「まあ、今後何かあったら手を借りるにはちょうどいいでしょう」

 

「余り好きじゃないですけどね、飄々として裏表がありそうで」

 

「あんなの可愛いものよ。身内に手を出すな、って言ってるだけだもの」

 

 まあ、これも経験かしらね。

 

「多少ああいう人間にも揉まれなさい。

 どんなことを考えて、どんなことをしているのか。

 サンプルケースとしては珍しい分経験は増えると思うわよ」

 

「そうしてみます」

 

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