種火が足りないよぉ。
さて、周回するか。
羅生門? ……頑張る。
キィン、キィンと土蔵内に音が響く。
神形具を鍛えている音だ。
神形具は、五行師が壊しきらないようにほどほどに五行し、金属の修復力を利用して鍛える。
鍛える詞色を間違えないように慎重に叩いていく。
集中力が続く限り鍛え続けた結果、三時間ほど続けることができた。
「入って大丈夫?」
「ちょうど作業が終わったとこだ」
すずかが入ってきた。
キリもいいし、本邸に戻ろうかと思っていたところに紅茶と菓子を持ってきてくれたのでそのまま土蔵でいただくことにした。
チラチラと置かれている刀身をみて、気になっているのだと理解したが、とりあえず糖分が欲しかった。
紅茶を飲み終え、クッキーをいただいたあとに疑問に答えることになった。
「どのくらいの
「軽く六十万くらいだな。
それ以上は俺の集中力がもたん」
「神形具って何日かかけて作るものじゃなかったっけ?」
「その通りなんだが、余り間を開けすぎても遺伝詞が固まって鍛えるのが難しくなるからな。
土日の二日でできるだけ鍛えるしかないかなぁ」
固まった遺伝詞は五行するのも
風水五行の基礎だ。
無理やりすることもできるが、その場合はもっと高い詞階をぶつける必要があるし、間違った詞色と詞階をぶつけると鍛えるどころか壊してしまう。かなり慎重な作業だ。
自分じゃ百七十万詞階までしか手繰れない。手記に残された人物は軽く百七十万詞階以上手繰れたらしいのだが。
「あんまりよくわからないんだけど、そういうものなんだ」
「まあ、風水五行に関わらないとわからないよな。
風水は直し、組み替える。五行は壊し、鍛える。
まあ、すずかにはあまり関係がないかもしれんがな」
「神器は適合率が重要だもんね」
遺伝詞の変換という意味では同じだが、過程が違う。
包丁を作るのに型に入れて作るのと鎚を使って作るくらい違う。
神器は音楽を媒体に事象を起こすのに対し、風水五行は
「まあ、俺の五行も正しい五行じゃないからなぁ」
自分は
というか、この二つは馴染まなかった。
拡大定義した風水五行のほうが使いやすいと感じたから諦めたというのもある。
「で、何のようだ?」
「明日、なのはちゃんとアリサちゃん、恭也さんが遊びに来るから出来れば……」
「了解。できるだけ早く仕上げる」
ああ全く、泣いてる女のこと困ってる女の子には勝てないな。
居候だということを加味しても。
「じゃ、これ持っとけ」
革を鞘にしたナイフを渡しておく。
出来栄えはそこそこといったところだが、無いよりはましだろう。
「これは?」
「春休みに作っておいた分だ。
ナイフだから草薙との相性はイマイチだが、護身用程度にはなるだろ」
軽く刃を叩いて出来栄えを確認している。
というか、草薙を使う前提なら切れ味を確認する意味なんてないはずなのだが。
「うん、いい出来だね。五十万詞階くらい?」
「確かそのくらいだな。制御はまだまだ高くないからこれからどんどん練習しないとな」
ぷぅっと顔を膨らませて、
「今のうちにいろいろ遊んでおこうよ!
ただでさえ引き篭もりがちなんだから!」
まあ、それを否定する要素なんてない。
「はいはい、後三時間くらいしたら飯くいに戻るから」
「遅れないでよね」
「努力はする」
さて、出来るだけ鍛えておくか。
最近の街の様子的に何があってもおかしくはないからな。
「変なことがなければいいんだけどなぁ」
自分はともかく、すずかは訳ありだからなぁ。