遺伝詞が見える少年   作:リボルビングバンカー

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三話目


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「で、案の定空中に投げ出されると」

 

「あははは、そんな気はしてた」

 

 ジュエルシードと置換魔術で入れ替えられ、空から落ちていく。ついでに雷撃も降ってきた。

 

「やっぱあのババア録でもねえ。ったく、ア!」

 

 五行で降ってきた雷撃を砕き、体制を整えて両足から着地して三回転して衝撃を殺す。

 

「あー死ぬかと思った」

 

「どこが死にそうなんだ。

 それで、なんで今空から降ってきたんだ」

 

 なんでって、

 

「プレシア・テスタロッサとかいう紫ババアに拉致られてたからだよ。

 まったくもって碌でもないぞあいつ。死すら安息にならないだろうしどうしようもない」

 

「そっちの君は?」

 

「投降しようかと。一宿一飯の恩は果たしたし、この先は邪魔になるから。

 ああ、とはいえ仮にも元宿主ですから捕縛とかは手伝いませんので」

 

 やれやれ、といった顔をしている。クロスケも大変だな。

 

「で、ただ捕まってただけじゃないんだろ?」

 

「……ああ、知りたくもない情報なら手に入った」

 

「この場で言えることか?」

 

「Neinだ。金髪の嬢ちゃんがいなければ話してもいいんだがな」

 

 態々、自分の正体を知る必要もないだろう。

 

「私、になにか、あるの?」

 

「……ある。知りたくないであろう真実と知ってもどうしようもない現実が、だ」

 

「取り敢えず、場所の捕捉をし終わっているアースラに向かおうか」

 

 

 

 

 

 

 艦橋、か。前回はここまで案内されなかったな。自体が自体、ということか。

 

「エイミィ、状況は?」

 

「バッチリ捕捉完了したよ。いま先遣部隊を送ったとこ」

 

「……クロスケレベルの実力者じゃないと捕縛できんぞ」

 

「え?」

 

「プレシア・テスタロッサ発見……なに、これ」

 

『見て分からないかしら、クローンよ。全て出来損ないだけどね。

 フェイト、あなたもこの中の一つだったのよ。力があったから記憶を写してあげたというのに……。

 とんだ期待はずれだったわ」

 

「だろうな。

 卵子のミトコンドリアDNA配列が違うのか、あるいは別人の卵子を使ったのかしらんが、同じ人間は全く同じ状況でない限り存在しない。簡単な答えだ」

 

『フェイト、貴女はもう不要よ。好きに野垂れ死になさい。

 私はこれからアルハザードに向かうの。ジュエルシードの数は足りないけど、魔力炉で増幅すれば足りるでしょう』

 

 フェイトが呆然と崩れ、ショックで意識を失った。

 

「……これが、君の知った真実か?」

 

「ああ、後はフェイトのオリジナルはアリシア、というらしいことだけだ」

 

「そっちの君も知っていたのか?」

 

「ああ、飛青(フェイ・ラン)です。ジュエルシードを集めていること、フェイトがクローンだということしか知りませんでした。それ以上はこちらの知識も足りない上に邪魔されたくなかったようで」

 

 なるほどな、と呟き状況を把握している。

 

「アル、だったか。手を貸してもらえるか?」

 

「壊すことしか能がないぞ」

 

「構わない。防衛の機神兵の対処を手伝って欲しい」

 

「報酬は今後便宜を図ってくれればいい」

 

「了解しました。その報酬でお願いします」

 

 ナイフと運命の柄をカバンの中に入れて、ふぅ、と息を吐く。

 

「これを頼む。解析は自由だが、壊さないでくれ」

 

「中身を聞いても?」

 

「神形具のナイフと壊れた運命のパーツだ」

 

「デバイスを持っていたのか?」

 

「風水五行に使う増幅器のことを神形具と呼称する。

 それに入っているのは俺が作ったものだ。見るなり分析にかけるなりは好きにしろ」

 

 さて、

 

「手を貸すのは機神兵団の破壊までだ。話によると殺すのは御法度なんだろう?」

 

「そうだ。ついでに言えば無闇に他人を傷つけるのもな」

 

「じゃあ、道だけ作る。後はそっちに任せる」

 

 

 

 

 

 

 相変わらず、転移の感覚は気持ちわるいな。

 

「さて、じゃあ道を作りますか」

 

「手伝うよ」

 

「下がってろ」

 

 え、と言ってる間に機神兵が襲ってきた。

 

「ア」

 

 赤色の遺伝詞を増幅して五十万詞階ほどで飛ばす。

 触れた端から機神が斬り捨てられていく。

 

「ほら、行くぞ」

 

「一度に何十体も、か。化物じみてるな」

 

「これでも壊しすぎないように手を抜いてるんだぞ」

 

 伏兵が出てきたら神形具で叩いて起動系を五行していく。

 分岐路まで来た。

 

「じゃあ、帰り道を作っておくからさっさと働いてこい」

 

「言われなくとも」

 

「よろしくね!」

 

 

 

「さて、来た道を五行していきますか」

 

 五米ずつに神形具で地面を五行して道を鍛えていく。

 多少の損壊に負けないように、何度も。

 

「よ、覚悟は決まったのか?」

 

「うん、行ってくる」

 

 拳を軽くぶつけ合い、幸運を祈る。

 

「とはいえ、空間歪曲は強まってきたな」

 

「そのために、私が来ました」

 

 リンディ艦長だった。

 

「分岐路のとこまでなら多少壊れにくくしてあるから目指すならそこだな」

 

「いろいろ助かるわ。将来管理局に入らない?」

 

「気が向いたらな」

 

「そう、まあ好きな職を探すのも若者の楽しみだものね」

 

 温存してあったすべての兵力をリンディにぶつけてディストーションフィールドを止めようってわけか。

 

「機械相手なら気にしなくていいからな」

 

 軽く振りぬきながら、

 

「ア」

 

 五行して機神兵を手前から順番に壊していく。

 

「面倒になってきた。リンディ、巻き込まれるなよ」

 

「へ?」

 

 

 

『新世界は勝利の先にあるものなり』

 

 

 

「アアアアアア!!」

 

 百七十万詞階の全力を振り抜く。

 塵一つ残さず、動いている個体を全て破壊した。

 

「ふむ、こんなものか」

 

「これは、手加減とか難しそうねぇ」

 

 さて、ちょっと話題に上げるか。、

 

「ところで、さ」

 

「何かしら」

 

「過去を変える方法があるって知ってるか?」

 

「え?」

 

 だよな。

 

「風水五行の秘奥、失われた三法ってのがあってな。

 陰陽の遺伝詞、竜の作成、時虚の遺伝詞の三つだ。

 このうち、時虚の遺伝詞を操れると過去を変えることが出来るんだそうだ」

 

「それは……」

 

「まあ、もう誰も知らない技術だけどな」

 

「そう、なの。それで貴方を?」

 

「知ってか知らずかは捨て置いて、少なくとも俺じゃできん」

 

 空気が悪くなったので、吸っていいか、と尋ねてみたが

 

「バカおっしゃい、子供がすることじゃないでしょうに」

 

 そう言って取り上げられた。

 

「……はあ、ガムは遺伝詞を発生させるのに邪魔になるからあまり好きじゃねえんだけどな」

 

「もうすぐ終わるわよ。ディストーションフィールドの効果も薄くなってきたし」

 

「そうかい、なら適当に待ちますか」

 

「先に帰ってていいのに」

 

「阿呆、なのはを放って帰ったら後で面倒なんだよ」

 

 ガシガシと頭を掻きつつ、

 

「ほら、終わった奴らから連れ戻せ。

 このブロックはともかく、ほかの区画はそう長くもたんぞ」

 

 リンディのフレームから見える映像では、プレシア・テスタロッサが落下していく姿が見えた。

 

「エイミィ! 転送して」

 

 私は失いたくない

 何も失いたくない

 

 ふと、新世界の少女の駕発動の詞を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 数日間、次元震の余波の影響を避けるためにアースラで待機することになった。

 フェイト、アルフ、フェイの三名は重要参考人として、

 なのはとユーノは功績を讃えられる側として、

 

「で、いい加減返してくれないか」

 

「えー、もうちょっと、先っぽだけ!」

 

「何の話だ。いい加減神形具と運命を返せ」

 

「ブーブー! 作れるならくれたっていいじゃない!」

 

「神形具は一つ三十万円、運命に至っては値段すら付けれんぞ」

 

「え?」

 

「だから言っているだろう、返せと。壊す前にな」

 

「で、神形具は買い取っても?」

 

「即金ならな」

 

「ちょっとここで待っててね?」

 

 

 面倒なことに、CITYの品は貴重品としてサンプルが欲しいのだとか。

 変に触って運命が壊れるようなことがあったら自分に力が返ってきてしまう。

 それは避けたかった。

 結局、給料の前借りで即金で払ってきたので神形具のナイフはくれてやった。

 

 

「会話を盗み聞きしたようで悪いんだが、魔法では過去改変ができないのに、そちらでは出来るんだって?」

 

「正しくないぞ、クロノ・ハラウオン。

 正確にはできた、だ。今となっては方法も理論も残っていない」

 

「あー。それで、証拠でもあるのか?」

 

「過去を変える方法は二つある。

 数千年分の遺伝詞を風水か五行すること、この場合特殊な条件が必要になるが割愛する。

 もう一つは時虚の遺伝詞を風水して過去に遡ること、こちらは香港で実際にあったらしい」

 

「それで、どんなふうに世界を変えたんだ?」

 

「歌を一つ残し、都市の寿命と自分たちの寿命とを入れ替えたそうだ」

 

 まあ、伝聞だがな、と付け加える。

 頭を悩ませていたクロノが気がついて、

 

「要するに、失われていてどうしようもないと」

 

「その通りだ。軽く二千年以上前の技術だぞ?」

 

「残っている方が不思議か」

 

 それで、納得したらしい。

 

「それと、ごめんなさいね。無理を言って武器を売ってもらったらしくて」

 

 今度はクロノが「は?」といい、固まった。

 

「構わん。どうせ予備の武器だ」

 

「予備とは言え、随分と価値があるんでしょう?」

 

「使える人間から見れば、だがな。

 使えない人間にしてみればよく切れる不思議な形をしたナイフだ」

 

「でも、強度は並みの金属を超えているんだとか。サンプルには丁度良いでしょうね」

 

 作れる側からしてみれば、集中力さえ途切れなかったら作れるので大したことないのだが。

 豪皇とか無銘とかに比べれば安いものだ。

 

「えっと、フェイトちゃんたちはどうなるんですか?」

 

「今回の事件の重要参考人だ。手荒な真似はしないが、自由な行動を取ってもらうわけにも行かない」

 

「そう、ですか」

 

 なのはは目に見えて落ち込む。

 

「自分のことを自分で決めなかった罪の結果の罰だ」

 

「優しいのね」

 

「どうだかね」

 

「そうだ、なんなら遊びに来たらいいよ。しばらくはこの宙域に留まってるし」

 

「エイミィ」

 

「そうね、巡航中は暇だもの」

 

「館長まで……」

 

「じゃあ、時々遊びに来ます」

 

 

 

 

 こうして、自分のPT事件は幕を閉じた。

 

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