「はぁ、今日も今日とて魔法の練習か。正直飽きてきた」
「私も……あ、はやてちゃん」
隣にいるピンクの紙の女性……いや、断定するには早いか。
「こんにちは、二人共よく一緒にいるけどカップルなん?」
「残念ながら居候兼荷物持ちだ」
「なんやおもろない……ん~ほほぅ?」
「な、なにかな?」
急にすずかがうろたえる。質の悪い酔い方をしたおっさんのような絡みっぷりだ。今度からこいつのことを豆狸と呼称することにしよう。
「いやいや、ええんよ? 女の子の華やし?」
「はぁ、何やってるんだか。その辺にしておけ、騒音で追い出されたくないだろう?
……ふむ、やはり侵食が進んでるな。放置すると臓器まで停止することになるだろう」
「前も言よったけど、なんでそんなに詳しいん?」
「ちょっと、人と違う目を持っててね。世界を情報として見れるんだ。
流石にあの目を持った
「はい?」
「まあ、多少便利な目を持ってるって認識でいい。
なあ、そこの
「へ?」
「え?」
気づかないほうがおかしいだろう。人間ではなく、感情も擦り切れているし記憶容量の方もおかしい。
そのくせ改造手術のあとはないから間違いなく人外。
「よく気がついたな。二千は超えていたと思うが……あまり昔のことはな」
「そっちもか。最近昔のことを思い出すのが難しくてな。
おかげで喪失技術を探して回る旅をするのが大分長引いてしまった」
「二人共、知り合い?」
「いえ、初めてだと思います」
「ああ、話すのは初めてだな。どっかですれ違ってた可能性はあるが」
「の割に仲ええね」
まあ、似た者同士ってことか。
「多分、似た者同士ですから。
過去に何かを抱えてるのも、今を必死に楽しもうとしてるのも、自分より誰かのために生きれるところも」
「其の辺、本当に似た者同士だと思うぞ。多分得意レンジも一緒だしな。
体鍛えてるだろ、骨格の出来方でわかる」
「そちらも、年齢の割に体が仕上がってますね。身長はあるから問題ないのでしょうけど」
「おかげでランドセルを背負えなくてな」
ピシリと、なにか固まった音がした。
「嘘、小学生なん?」
「身長が160超えていようが小学生だ。座席は常に一番後ろにされるし扱いはひどいものだがな」
「いや、席前にしたら後ろの子可哀想やろ」
「知らんよ。身長が足りないほうが悪い」
無いものを持って人は生まれる、とのことだしな。
天は二物を与えず、というんだったか?
俺には平穏がなかったが故にこの今がある。
「因みに、ご両親の身長は?」
「母親が160後半の父親が190だな。大したことはない」
「はー、お父さんに似たんやねぇ」
さて、な。肌は母に似て黄色系だけどな。
まあ、
「将来の夢は学者だがな。体を動かすのも嫌いじゃないが、競い合うのはあまりな」
命の価値を競い合った身としては、そういうのはもう要らない。
せっかく平穏になったんだから、そっとしておいて欲しいものだ。
「あー、小学生のいざこざでもあったんか。そんなん気にしたらあかんで?」
「まあ、そんな感じのことはあったな。だがまあ、大したことはない」
「そうなん?」
「ああ。自分の価値は自分の中にだけあればいいのでな」
「ストイックなんやね」
どうかな、
「諦めた、だけかもしれないがな。
とはいえ、一番を追い求めることはもうやめたんだ。故に、だ」
周りに聞こえぬよう、だがはっきりと意思は伝わるように、
「世界で二番目に君のことを心配しよう。人が減ってしまうと世界が寂しくなる」
「そこくらい一番でもええやんか~」
「一番心配しているのは君自身の運命だ」
へ? なんて言って呆けている彼女に
「知らないのか。ならばここで覚えていくといい、八神はやて。
いきなり現れて、君の手を取り離さず、常に君の傍らで君を信じているもの、それが運命だ。
それに従えないというならそんなものは放り出して自分で切り開くといい。二度は言わない、忘れるな」
「……はぁ、ええ人やね。なら、うちも頑張ろか」
「結構。足掻きもせず諦観しただけの人生なんてつまらないだけだ」
「そな、私はこれから診察やからこれで。
あ、すずかちゃん?」
「なに?」
「負けへんで?」
そう力強く言って、彼女は図書館から出て行った。
「負けないって、何の話だ?」
「し、知らない!」
その後ビンタを食らった。