堅い。武器を破壊することも機動力を削ぐこともできない。
正しくは、
やりにくい、鍛えてはいても生身の肉体とバリアジャケットごときじゃこの攻撃は凌ぎきれない。
既に左腕は骨が砕けている。が、明らかにこちらを狙っていない。
そのせいで、無駄な被弾が増えている。ままならない。
「ソレを守らなかったら随分とましな戦いになっただろうに」
「馬鹿か貴様、そんなことさせたらはやてに合わす顔がない」
「それもそうか、そういう人間だったな、おまえ」
全く、
「そら、憂さ晴らしには付き合ってやるから今後を考えろ」
ガチリ、と刀と神形具が噛み合う。アームドデバイスはとっくに壊れた。
「今後だと?」
「はやてがああなって終わり、というわけじゃないだろう。
少なくともそう聞いている。地球が滅びるか、彼女を殺すか、あるいは彼女を救うか、だ。
ウチの上層部のネコの飼い主は殺そうとしていた。それを力尽くで止めてあの様だがな」
「地球が滅びる、と言うのは?」
「文字通りだ。最終的に手段がなくなった場合、この惑星ごと夜天の魔道書を破壊するらしい。
無論、俺たちも巻き添えだがな」
「それで、」
軽く弾かれ、振り抜いたのに合わせて体を一回転させて鍔を合わせる。
「救う、と言うのは?」
「二通りある」
そう言って、腹を蹴って間合いを取る。
「俺の運命と引き換えに彼女を元に戻す。もしくは彼女自身に制御を取らせる。あるいは両方。
この三択だ」
「勝率は?」
「一割から七割。結局は彼女が前を向くかどうかだ。それでも」
それでも、
「それでもなお、彼女を信じ、彼女のことを案じるのなら俺は力を貸そう。葉山俊介」
「……結構、その案に乗ろう。彼女が生きているのならそれに越したことはない」
一先ずの戦線共闘
「二人共、逃げて! なのはの大技が飛んでくる!」
大規模砲撃か。多少相性が悪いな。エネルギー量からして持続型だろうし。
「処理しきれるか?」
「相殺はしきれない」
「残りはこちらで受け持とう」
「全員、こちらの後ろに回れ。叩き落とす」
「庇う、からの『受け太刀』」
「……ァアアアアアアアアアアアアアアア!!」
砲撃の初段を五行し、砕く。
「詞変! 百九十万の詞階よ! ラ」
砕いた遺伝詞をアリサが風水し、レッサーサーペントとして砲撃に突っ込ませて減衰させる。
残りのふざけたエネルギーを俊介が前に出て防ぐ。
「っ! 『現象改変』!」
砲撃に飲まれ、容赦なくダメージが襲いかかる。
とはいえ、大分減衰している。予想より被害は少なかった。
「動けるか?」
「ライフが三割も削れた……」
「上出来だ」
あれだけの攻撃でブロテクション無しで耐え切れるとか、流石だ。
「やあ、手伝いに来たよ」
「飛か、助かる。悪いが、治療中のフロントを任せていいか?」
「ああ、男ふたり大怪我だし仕方ないか。了解した。
『聖銀を核に固定、外鋼に氷結鏡界の蒼氷をコーティング、破壊限界を十倍に設定』」
抑揚のない読み上げと共に手に剣が齎される。
「アル、左腕治すわよ」
「犬にでも変えておいてくれ」
「はいはい、詞変! 百五十万の詞階よ!」
砕けた感覚は治った。この結界の中でしばらくおとなしくしますか。
眺めていても状況は変わらない。暴走が始まるまでに手を打つ必要がある。
胸元をあさり、砕けた剣の柄を取り出す。
思えば、随分と遠回りをしたものだ。
彼女を救えなかった自分に嫌気がさして、力を封じた。
今度こそ、救うのだと。
改めて胸ポケットにしまい、ふうと息を吐く。
行こう、あの日を超えるために。
斬りかかったフェイトが取り込まれた。
「フェイトちゃん!」
「いい加減、目を覚ませバカ娘!」
「お前も、夢の中で眠るといい」
「すずか、悪いな。世話になった」
「アル! ちょっと! 嫌だよ! ねぇ!」
意識は微睡んでいく。それでも、今度こそはと……誓ったのだから。
「ねぇ、ベルガー。天気もいいしお出かけしましょう?」
確か俺は――
「聴いてるの、ベルガー!」
「元気そうだな、エリンギウム」
待て、おかしいだろう。彼女は――
「せっかくの晴天だもの、楽しまないと損だわ」
そう言って手を引く彼女に連れられて、伯林の街を歩く。
公園で子供たちを見て、異族が楽しそうに笑っていることに違和感を感じる。
まるで、何かが欠けているようで、
「なんだか、つまらなさそうね」
「どうだかな。何かを忘れてる気がしてな」
そう言って、何に戸惑っているのかさえ忘れた。
――アル、遊びに行こう――
その一言が、唯一の気がかりだった。
喫茶店に入って、コーヒーとケーキを食べて、カイザーブルグが壊した伯林大学を見に行って、決心がついた。
「ありがとう、エリンギウム。少しの間だったけど、楽しかったよ」
「行っちゃうの? 外は辛いことだらけよ?」
それでも、
「それでも、前に進むと決めたから」
「そっか、バイバイ。好きだったわ、ベルガー」
風景は一変し、ベルリンの郊外へと変わった。ヘイゼルからの手紙が届いた場所だ。
ああ、もう大丈夫だ。だから、
だが、それでもいい。自分にこの先がなくとも、道を作ることはできるのだから。
切り離していた神としての力を得て苦笑し、強制的に外にはじき出される。
だが、その前に
「悲劇のヒロインは終わりだ。陽気に笑え、八神はやて。
周りのことを気にするのが君の趣味だっただろう。たまには周りに迷惑もかけるといい」
その掛詞だけを夢に残して。
そして、現実に回帰する。
「よっ、どのくらい取り込まれてた?」
「二十分くらいだ」
「そうか。夢は晴らしてきた。あとは彼女次第だ」
「アル! 今からでも遅くないから、それを切り離して! じゃないと……」
「いいんだ、すずか。月村すずか。これが俺の選択だ」
「そんな、そんなことって……」
消費流体量が増えているのが実感できる。
この大気量では足りないというのがよくわかる。
この騒動が終わったら――いや、どうでもいいか。
「今はあれの処理が先決だ。それが終わってからでも遅くはないさ」
多分、間に合わないけど。
はやてとフェイトが遅れて分離する。
「リィンフォース、セェットアップ!」
さて、これから始まりで、ここから終わる。
再会を祝しているところ悪いが、生憎と時間がない。
「水を差して悪いが時間がない。
時空管理局執務官、クロノ・ハラウオンだ。
時間がないので簡潔に説明する。あそこの黒い淀み、闇の書の防衛プログラムがあと数分で暴走する。僕らはそれを何らかの方法で止めないといけない。
停止のプランは現在二つある。一つ、極めて強力な氷結魔法で凍結させる。二つ、衛星軌道上のアースラに搭載されている魔力砲、アルカンシェルで破壊する。これら以外にプランはあるか?」
「暴走プログラムの本体のサイズは?」
「子供の頭一つ分の大きさのコアです」
飛が基本的な質問をする。
「コアだけ転移させてそこをアルカンシェルで砲撃するのは?」
<いけるよ、どんな射角だろうと砲撃はできる>
「じゃ、そのように。転移の手伝いならできるから」
「こちらは物理破壊の準備だな」
「お、おい君たち!」
「他に手段を選んでられない事情が有ってな。悪いがそのプランで頼む」
「アルフレート?」
「葉山俊介、結界の改変を。力有るものだけ切り離せるか?」
「簡単だ。 月匣展開」
「あ、皆傷ついてるやん……シャマル」
「はい、クラールヴィント。『静かなる風よ、癒しの恵みを運んで』」
骨折が治ったか。
「湖の騎士”シャマル”と風のリング”クラールヴィント”癒やしと補助が専門です」
では、
「始めよう。オーダーは救済だ」
「チェーンバインド!」
「ストラグルバインド!」
「縛れ、鋼の軛!」
「ア」
まずはバインド系と五行で道を造る。
「行け、脳筋ども!」
「行くぜ、合わせろよ、高町なのは」
「ヴィータちゃんこそ」
「いくぞ、テスタロッサ」
「はい、シグナム」
ポンとすずかの頭を叩いて、
「良かったんだよ、これで」
震える声でそう告げた。
息が乱れるのを必死で堪える。
二層砕いた。
復活した外殻を再び破壊する。
――すずか・草薙/剣術技能・対抗重複発動・草薙射撃・大成功!
足が崩れそうになる。必死にこらえた。
四層全部破壊した。攻撃される前にと襲いかかる外殻を草薙が薙ぎはらった。
「
「彼方より来たれ宿木の枝、銀月の槍となりて撃ち貫け!
石化の槍――ミストルティン!」
「まだっ! デュランダル!」
『eternal coffin』
はやてが石化させ、クロノが凍らせて外装を剥ぐ。
「スターライト」
「雷光一閃プラズマザンバー」
「ごめんな、おやすみな――響け終焉の笛、ラグナロク」
「「「ブレーカー!!」」」
砕く潰す、砕け散る
「本体コア露出――捕まえた!」
「長距離転送」
「術式展開」
「目標、衛生軌道上!」
一瞬、意識が途切れた。アリサがとんでもない顔をしている。すずかにもバレた。
外の連中には気づかれていない。特に、はやてには見られたくなかった。
足場が不安定になる。1分か2分か、或いはもっと短かったのか、それすらも分からないが
〈やったよ皆、無事破壊できた。後は復活しないか監視しておくから。皆お疲れ様〉
はやてが緊張と疲労で倒れた。
もう、大丈夫だろう。俺の仕事も終わりだ。
「あんた、大丈夫なの!? さっきから死にそうな顔してるじゃない!!」
「嘘でしょ、アル! ちょっと! ねぇ!」
「お疲れさん、すまないが、後は任せた。
忍に謝っておいてくれ。悪いな、迷惑かける」
崩れ落ち、海へと落下した。
もうひとついけたら行きます。それで丁度A'sが終わってその後空白期です