遺伝詞が見える少年   作:リボルビングバンカー

33 / 48
33

 トレーニングルームに入ると同年代くらいの人間が案内してくれた。

 特に事情を聴いていなかったのか、たいそう驚かれた。六年も眠ってりゃそうか。

 

「えっと、体の方はどのくらい動きますか?」

 

「寝ている間にストレッチとかマッサージしてくれていたみたいでな、動くには動く、くらいだ」

 

「そうですか、じゃあ軽いメニューの筋トレとランニングからですね」

 

 魔力スキャンとかいう装置で体の状態を確認された。

 リンカーコアはともかく、ほかはまるっきりの不健康者だ。知ってた。

 

「それじゃあ、ちょっとずつ始めていきましょうか」

 

 筋トレしながら話しかけてくれる内容の中に、エースオブエースが来たことがある、というものがあった。あいつそんな大げさな人間になってたんだな、と思いつつ話を聞いていく。

 

「ところで、リアクションが薄いんですけど、知ってたんですか?」

 

「小学校の頃のあいつ知ってるからな、大して驚けない」

 

「幼馴染だったんですね」

 

 そうだな、三人の無茶にはさんざん巻き込まれたな。

 

「ついでに言えば、なのはには十戦十勝だったかな。何でもアリで」

 

「お強かったんですね」

 

「これ証拠の写真な」

 

 後ろから首を踵が仕留めている写真だった。アリサが見せてくれた当時の写真のコピーだ。

 

「……うわっ、合成じゃなくて?」

 

「合成にしても誰かを背後から仕留めていることには変わらんだろうに」

 

「それもそうですね。格闘技とかを?」

 

「少しな」

 

 チェストプレスを終えて大きく息を吐く。

 次はアブドミナルクランチだ。

 四十kgしか動かせない、というあたり随分と筋力が落ちてる。

 ランニングは20分しか走り続けられなかった。

 

「随分と体力が落ちてらっしゃいますね。どのくらいの頻度で通われますか?」

 

「一日おきで頼む。流石にこのままというのもまずい」

 

「確認しました。では、今日はここまでです。ストレッチを忘れずに」

 

「おう」

 

 フリーコーナーでストレッチをする。可動域の限界あたりは随分と固まっていた。

 体をほぐしたついでに逆立ちをしてみる、体幹も鈍っていることがわかった。

 

「はあ、前途多難だな」

 

 

 

 

 なんか見覚えのあるピンクのポニーが教導している。

 

「あっちの武器振ってるの下手くそだなぁ。体幹ぶれてんじゃねえか」

 

 俊介からは復帰祝いにメガネを送られている。

 意識しなければ変な線は見えないのだが、念の為にかけている。

 

「あー、あっちのは見所ありそうだな」

 

 帰る前にダウンのついでに歩いていたのだが、暇つぶしに教導を見ることにしたのだった。

 基礎訓練なのか、走ったり格闘術を習ったりと基本的なことしかしてないが、そこで差が出てる。

 才能は入るときの差でしかないが、劣等感は一生付いてくる病だ。

 

「あんた、目がいいのな。なにかしてたのか?」

 

 職員の制服を着た青年に尋ねられた。

 

「怪我で意識不明になるまでは格闘技とか剣術を教える立場だったな」

 

「やるじゃんか、そんなに若いのに。武装局員にでもなるか?」

 

「とりあえずリハビリが先だな。随分と長いあいだ動いてないせいで全身が筋肉痛だ」

 

 大変だな、頑張れよ。と言われて彼とは別れた。

 こっちに向かって意識を向け、突進してくる気配を感じたので歩法を使って雑踏に紛れる。

 

「え? うそ、さっきまでおったような……おーい、アールー」

 

 はやてだった。面倒事になる前にそこから離れる。

 20分しか走れないが、それだけあれば逃げるには十分だ。

 許可敷地に入って、地球へと帰る。

 

 その間際、こちらをなのはに目撃された。

 

「ん?」

 

「げっ」

 

 転移は始まっていたのでそれはそこまでだったのだが、サングラスもしていたしバレてないと思うのだがどうだろうか?

 とはいえ、アリサ以外は多忙の身。そこまで気を使う必要はないだろう。

 

 

 

 翌週--

 

「こんにちは、お久しぶりです」

 

「お久しぶりです、なのはさん。体調でも崩されましたか?」

 

 どうやら情報を集めてきたらしい。幸いにして、これから俺は酸素カプセルだ。

 

「いえ、友達が来てるかもって情報が入ってきたので」

 

 ギープシュッ。

 

 都合がいいことにバレることなくカプセルが閉じた。

 ついでに言えばカプセルは使用者の姿が確認できないタイプだ。

 

 

 

 

 

 

「はーい、アルフレートさん終わりましたよ。ついでにお客様です」

 

「やっほー、元気そうで良かった」

 

「ヤッホーじゃねえよ。トレーニングしながらでいいか?」

 

「ああうん。そこまで治ってるんだ」

 

 ほぼ健全者だ、と答える。

 

 逆立ちしてそのまま肘を曲げ伸ばしする。体幹と腕の自重トレーニングだ。

 

「よくそんなのできるね」

 

「近接武術の範囲だと基本のレベルの一つだ。

 これができないと背後からの不意打ちを躱せないことも、希にあるからな」

 

 背後からの攻撃を避けるのは反応能力と体幹の高さを必要とする。

 

「みんなに内緒で来てるってことはバレたくないの?」

 

「こんな無様な姿なんて見せれる訳無いだろう。

 少なくとも、現役レベルに復帰してからだ」

 

 戦闘狂が何人かいるからな、と言うと、あー、と困ったふうに笑われる。

 赤とかピンクとか青い犬とかだ。

 

「だいぶ落ち着いてきてるんだけどね」

 

「どうだかな。少なくとも、俺の納得いくところまでは鍛え直したい」

 

 トン、と腕を一気伸ばして空中に跳ね、足で着地する。

 

「お兄ちゃんのリハビリ見てるみたい」

 

 苦笑されるが、

 

「ああ、メニュー組んだのは俺だ。忍経由で依頼が来たからな」

 

「えっ!?」

 

「年齢の割に仲が良すぎるとは思わなかったのか、高町なのは」

 

「……そういえば」

 

 せめて目上として扱え位の注意しかしてなかったような、と呟いた。

 

「ふむ、ようやく四割か。恭也の時に知ってはいたが長いものだな」

 

「まるで肉体の限界に挑戦してるみたいだね。あ、すずかちゃんが今日暇だって」

 

「会いたくない理由がある。面倒事は御免だ」

 

「酸素カプセルに入ってるって言っちゃった♡」

 

「なるほど、状況は理解した。くたばれ、なのは」

 

 すれ違いざまに"後ろから"頚動脈を抑えて意識を奪った。

 

「さて、(なのは)を餌にして逃げるか」

 

 トレーニングルームから出たらドタバタと足音が聞こえてきた。なのはを地面に横たえて距離をとり、助走の間合いにする。

 

「アル!」

「アルフレートテメェ水臭えぞ!」

「アル君!」

 

 すずか、ヴィータ、はやてが入口に殺到してきた。

 

「なのは!?」

「なのはちゃん!?」

 

 ヴィータとはやての意識がそちらに向いたのを確認し、歩法で壁走をしてトンズラする。

 

「しまった、トラップ!?」

 

 すずかよ、正解だが判断が遅い。

 タタンと軽い足音だけ残してそこから撤退した。

 転移装置は今頃残りのヴォルケンリッターが待機していることだろう。

 と、なると、だ。

 

 

----ドッグ

 

「クロノ、お客さんだって」

 

「誰だ、ヴェロッサ」

 

「アルフレートだって。こんな人、知り合い?」

 

「ああ、闇の書事件の関係者の一人だ。最近まで意識がなかったんだがな」

 

「入っていいってさ」

 

「よっ、背伸びたな。コンプレックスは治ったか?」

 

「お陰様でな。仕事で忙しくなったらいろいろ気にしている暇がなくなった」

 

「そりゃ結構。そっちのワケアリの男は?」

 

「初めて会った人には軽薄そうって言われるんだけどね、そうは思わないのかい?」

 

「そいつらは人間観察が下手なだけだ。大方幼少期に面倒事があったとかだろう?」

 

「こんな奴だ。人の思考を読むのはうまいし、頭も悪くない」

 

「そのようだ。それで、今日は挨拶かい?」

 

「ついでに逃走中だ。はやてとすずかからな」

 

 手元を動かそうとした緑髪に、

 

「そこまでだ。少なくとも挨拶くらいさせてくれ」

 

「えー」

 

「勘弁してやれ。六年も眠っていたんだ。

 本人と周りとのギャップが耐えれないんだろうさ」

 

「なるほど、それなら仕方ない。

 今回ははやてを見捨てることにしよう。恋愛はフェアじゃないとね」

 

「一先ず、提督就任おめでとう。これプレゼントな」

 

「ありがたい。蜂蜜?」

 

「無添加の高級品だ。長期保存できるし栄養価も高い。

 長期の任務の時にでも取っておくといい。喉にもいいけどな」

 

「で、なんで三瓶?」

 

「エイミィにでもくれてやれ。妊娠中は食事の調節が大変らしいからな」

 

「お気遣い真面目に助かるが、余計なお世話だ」

 

「一本はそっちの兄さんも持っていけ。睡眠不足が目元に出てるぞ」

 

「……気づいてた?」

 

「……若干テンションが低いくらいなら」

 

 有り難くもらっておく、と言って瓶を受け取った。

 

「さて、どのくらい感覚は戻ってきた?」

 

「四割が精々だな。身長も変わってるから感覚をつかみなおすのが大変だ」

 

「そんなに変わってない気もするが……」

 

「四センチ伸びてた。重心の位置が変わって転けそうになる」

 

 お互いに大変だな、と言って笑われる。

 

「さて、この後会議なんだ。この後はどうする?」

 

「ここから転移して帰る」

 

「あっはっは、大胆だね。よし、男の友情だ、はやてには黙っておこう」

 

「じゃあ、仕事頑張ってくれ」

 

 そう言って、転移していった。

 

「隙とかなかったよね?」

 

「いや、あれでも十分に能力落ちてるぞ。六年前は身体能力だけでフェイトと戦えてたらしいからな」

 

「いやはや、おっかない御仁だ」

 

「同感だ。よし、行こうか」

 




ステを上げて殴る。足りないならバフ積んで殴る
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。