遺伝詞が見える少年   作:リボルビングバンカー

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1st Days

 

「さて、と」

 

 体を解し終えたので会場へと向かう。

 

『3,2,1,Duel』

 

「ハァッ!」

 

「ふむ」

 

 薙ぎ払いを鞘で跳ね上げ、踏み込んで膝で顎を射貫き、逆足でしっかりと鳩尾を貫く。

 吹き飛びもせずにその場で崩れ落ちた。

 

「おいおい、"通し"も使ってないぞ?」

 

『ダウン! 離れて離れて』

 

 復帰は無理だと思うんだけどなぁ。

 

『6,7,8,9,10――K.O.アルフレートwin』

 

「アル君、どうだった?」

 

「あの程度なら刀もいらん。今後は様子見しながらだな」

 

 付き添いのすずかに返答し、ガッカリした。

 ちょっとここ数年優勝が絞られてて大会が盛り上がらないから暴れてきてね、なんて言われて優勝候補とあたって意気揚々と来たら大して強くない。

 

「クロノくんにも言われてたよね。安心しろ、ガッカリするからって」

 

 クスクスとすずかが笑っているが、こちらは全く笑えない。

 このままこの大会をお遊びのままクリアしないといけないのかと思うと何故あの日の自分はあんな甘言に乗ったのかと悔やむほどだ。大会報酬の賞金とリンディが確保している空き地の値段が良くなければこんなことにはならなかったんだ、とさえ思う。

 

 

2nd Days

 

 

 昨日の試合のありえない(らしい)勝ち方のせいで一度全部検査が入ることになった。

 小太刀型のアームドデバイスで中身はバリアジャケットの登録だけ。

 しかも外装強化型プランの成れの果てという恐ろしくも自分たちのせいで生まれたこいつに日の目を浴びせてやろう、なんていうそれだけの思惑。

 

 昨日の今日で秒殺。今度は蹴り三発だけで終了。

 体格はいいしスピードも年齢の割に悪くなかったが如何せん打たれ弱すぎる。

 

 

3rd Days

 

 

 ついにいろいろ考えて攻めて来るようになった。

 攻撃を弾かれるのなら広域魔法で攻めればいいじゃない、なんていう魔法型の坊やと当たった。

 悪くはないのだが、一撃食らっても構わず突っ込んでくると思わなかったのだろうか?

 

 正面から一撃を『通し』てワンパンK.O.

 ただし、クラッシュエミュレートではなくマジのクラッシュ。顎が折れていたらしい。

 もう一度術式の確認をされ、仕方がないので実演してやった。

 三十センチ間隔の板を吊るして狙った場所を当てる遠当てと呼ばれる鎧抜きの技術の一つ。

 バリアジャケットなんて意味がなく、直接攻撃ができるので本来なら有用なのだが、今大会では使用禁止とのこと。まあ、別にいいんだが。

 

 二人目は隙を見せないための待ちの構えだったので、遠慮なく急加速からの背後から一撃で仕留めた。

 

 

4th Days

 

 

「何か、警戒されてるね」

 

「あー、怪我させたしな。手を抜いてもアレなんだから本腰も入れれないし……」

 

 

 実際は刀型デバイスなのに攻撃方法が打撃のみ、というあたりに腹を立ててるらしいという話を運営から聞いていた。使わせる相手がいないだけだ。

 

「俺と闘いたいなら最低限ザフィーラクラスの腕じゃないとなぁ」

 

「はっきりと遊びに来てる人間じゃ無理って言ったら?」

 

 さて、な。本気になれるようないい腕の相手ならいいんだが……。

 槍使い、か。開始と共に突っ込む。

 背後からの不意討ちを防いだので実力者かあるいは対策をたててきたのか。

 高速移動からの側面蹴り……対応が遅れた。

 

「なるほど」

 

「くっ」

 

 背後からの急襲に訓練を割いてきたか。悪くはない判断だ。数日の対策にしては十分だ。

 

「刀を抜いてやる。それだけの実力は見せてもらった」

 

「やっと本気ですか?」

 

「いや、」

 

 正面から歩法を用いて急接近し、

 

「本調子には程遠い」

 

 すれ違いチン、と鍔を鳴らした。

 

『ダウン! 離れて、1,2,3……』

 

 そのままK.O.これまで全試合ノックダウン勝ちというのが本当につまらない。

 今日の残り二試合は刀を抜くこともなく終わった。

 

 

 

5th Days

 

 

 決勝トーナメントが始まった。とはいえ今年はダークホースばかりだという。

 少し期待してもいいだろうか?

 

 

 そう思っていた時期が自分にもあり、

 

 

 そんなことはこれっぽっちもなかったのだが。

 

 

 

 

「四日目の一発目が一番マシだった。名刺も渡しておいた」

 

「助かる。眼鏡に適ったのなら陸士として立派に育つだろう」

 

「で、レジアス中将の依頼は終わりか?」

 

「聞いている限りではな。取り敢えず優勝おめでとう。

 賞金と手持ちの資本で家を建てるんだったか。さて、書類はっと」

 

 右手は書類を、左手はフレームをいじっている。

 

「何をしている」

 

「もう終わった。丁度休憩中の二人を呼び出しておいたんだ」

 

 嫌な予感がする。

 通神――通信欄には異常な程メッセージが殺到し始めた。

 

「なあ、後日ってことでいいか?」

 

「なに、もう遅い」

 

 許可を出していたのかノックもなく扉が開いて三人が駆け込んできた。

 

「家建てるんだって?」

 

「うちらも資金出すからおっきい家にしよか」

 

「お庭も欲しいかな」

 

 ……。恨めしい目でクロノを見てみる。

 半笑いの同情の視線が飛んできた。

 ものすごく細い魔力の針を作って首に打ち込んで気絶させた。

 とはいえ、敷地面積が狭すぎる。工房を立てれればいいサイズだったからだ。

 

「というか、敷地狭いわね。大所帯になるんだしもっと広いところにしないと」

 

「あのさ、俺の工房を作るための敷地なんだけど」

 

「「「へっ?」」」

 

「工房。メンテナンスとか強化に一々地球に帰るのが面倒なんだ」

 

 後頭部をガシガシと掻きつつ事情を話す。

 

 

 

 

 

「あー、なるほどなぁ。

 ……ん? お金は余っとんやろ?」

 

「一応な。全財産突っ込んだり、工房の運営ができなくなるようなヘマはしない」

 

「後どのくらい残ってるん?」

 

「地球のは三十万ほど、こっちの金銭は運営費以外で二十万ほどだ」

 

「別々に?」

 

「別々に」

 

 はやてがパンと手を叩いて、

 

「よっしゃ、とりあえず金策や。アルくんは今年の大会総ナメしてきて」

 

「おい」

 

「すずかちゃんとアリサちゃんはもう就職していいんちゃう?」

 

「私はその予定なんだけど」

 

「アルがウェディングドレス着せてくれるなら……キャッ★」

 

「あ?」

「うん?」

 

「おい」

 

 そして俺の意思とは関係なくキャットファイトが始まった。

 一番強いアリサにクロノをぶつけて止める。

 

「そこまでにしておけお前ら。人様のスペースだぞ」

 

「その人様を一番蔑ろにしておいてよく言ったわね」

 

 どうやら投げられたショックでクロノが目を覚ましたようだ。

 

「……ああ、なるほど。で、次の要望は広い敷地と賞金の率のいい大会の情報と見た」

 

「ASAP」

 

「えっと、次は来月だね。土地の方はクラナガンにかなり古びたそこそこ広い家があったはずだ」

 

「取り壊しは使えるとこだけ取って五行で風に流しちゃえばいいから――」

 

 

 

 

 勝手に盛り上がりだしたのでもう知らん。

 権利書だけ執筆して小切手を残してその場を去った。

 




キャッ★

白くしなかったのは発言が白くないからです
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