遺伝詞が見える少年   作:リボルビングバンカー

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だれだよ、来週の月曜日まで授業にしたやつ。
お陰で微妙に余る時間を持て余すだろうが。


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「悪くはないといったところか。良くもないがな」

 

「全員が全員回避も防御もうまいわけじゃないんやで」

 

「仕事はどうした」

 

「休憩中や。で、どの辺が良くないん?」

 

 そう聞いてくるはやてに、

 

「まず、自分のスタイルがよくわかっていないあたりだな。

 ガード盾役のスバル、回避盾のエリオ、一般射撃型のティアナ、特殊バッファーのキャロ。

 この中で自分の練度を最も重点的に上げないといけない奴が一番焦っている。

 上げるべきは思考速度であって、戦闘スキルじゃないんだがなぁ」

 

「うー、ちょっと妬けるなぁ。んで、ほかは~?」

 

「お疲れ様です、主はやて」

 

「ちょっと気になる話っすね。聞いても?」

 

 暇人どもめ。

 

「あとはそうだな、自分の最終地点を決めてないのが悪いだろ」

 

「ん?」

 

「なるほど」

 

「ん~?」

 

 やれやれ、

 

「適正云々で決まることが多いが、基本と応用が違うという話だ。

 おいこら、首にキスマークつけんな!」

 

「やー、つまらない話なんて聞きたくないんや~」

 

 というか、

 

「はやて、お前今日外回りだろうに」

 

「うっ、せやな。行ってきますー。ギンガと俊くんに何かある?」

 

「さっさと嫁ぎ先見つけろとギンガに行っておけ」

 

 もっと構えという視線で睨んできたが手を振って送り出す。

 で、

 

「さて、何の話だったか」

 

「最終地点がどうとかいう話ですね」

 

「ああ、それか。

 まず、あいつらはミッド式か近代ベルカ式だ。当然全員が遠距離手段を持っている。

 が、ティアナとキャロは近づかれたらどうするか、というところまで進んでいない。

 逆にエリオとスバルは遠距離からハメ殺しにあった際どうするか、というのもだ」

 

「私の場合はハメ殺しに遭う前に接近して、という流れだな」

 

「なるほど、基本と応用は違うってそういう……」

 

 よくある話で、

 

「相性がいいもの同士をぶつけるのが戦術の基本だ。逆に言えば一方的に相性が良ければその時点で勝利を掴みやすい。当たり前の話だ。スナイパーの敵はジャミングと超長距離射撃だろう?」

 

「らしいっすね。同期が悩んでました」

 

 流石に面の皮が厚いか。だが、

 

「とぼけるんなら指についたタコを消してから言うんだな」

 

「あっはっは、経歴を知ってるんじゃないんすね」

 

「パンピーが知ってる訳無いだろうが」

 

 何度も何度も引き金を引く際についたコブ、それが右手にある。その時点で察せる。

 後は、そうだな。

 

「空き缶あるだろ」

 

「は、はぁ」

 

「あれに連続で六発打ち込んで同じ穴を通す、なんて訓練があるらしいぞ」

 

「へぇ」

 

 まあ、ホーミングを切って手動照準だからラグが生まれるんだが。

 

「格闘術を学びたかったら暇なときに俺の研究室を尋ねるといい。

 多分、素手やライフルを使った応用格闘はなのはよりも詳しいからな」

 

「おっかないんで結構です」

 

「まあ、気が向いたら訪ねてみるといい。六課で一番格闘に詳しいのはコイツだからな」

 

 スタイルが似通ってるってだけで教えるのもアレだがな。

 

「問題はティアナだな」

 

「やはり、そう思うか」

 

「あー、どういうことっすか?」

 

 有体に言ってしまえば、

 

「劣等感で悩んでいる。それは成長を阻害する病だ」

 

「劣等感、ね。あんなに優秀なのに?」

 

「隣の芝は青いのだろう。どんな技術があっても悩みは消えないということだ」

 

「シグナム姐さん?」

 

「かつて、主はやても悩んでいたことだ。それを見ていた身としてはわからんでもない。

 何か一つ、突出したものがあれば違うのだろうが……な」

 

「俺やアリサの身体スペック、すずかの絶対切断、隊長陣のランクと経験値とかか」

 

「あるものに満足するしかねえんだけどなぁ」

 

 そう呟いたヴァイスの一言は、実感がこもっていた。

 

「全くだ」

 

「身体スペックが高い人のセリフじゃねえですよ、それ」

 

「代わりに非殺傷設定なんてものが使えないんだがな、これが」

 

 ヴァイスがシグナムのほうを向く。

 

「事実だ。素のスペックが高すぎて魔法を使わなくても高威力が出せる。言い換えれば魔法を使わずとも殺しかねないということでもある。また、射撃魔法の適性もほとんどない。結果として一撃で殺すかもしれない状態で戦っている」

 

「だから武装局員入りしてないんすか。

 それなら二種キャリアならワンチャンあるかも、といったところですね」

 

「まあ、入る気もないんだがな。ハイランダー、コード2043表示」

 

《Ja》

 

 開かれた情報は次元犯罪者に管理局が情報を流している、というもの。

 殆どが最高評議会、となっているところもミソだ。

 

「げっ、どこからこんなもん拾ってきたんですか」

 

「ハッキングしてサルベージしてみた。

 ついでにレジアス中将はスカリエッティと情報交換してるぞ」

 

 そう言ってその項目を拡大する。

 

「あー、知りたくなかったっすわ。これ公表したらどうなるんすかね」

 

「良くて管理局への不信、悪くて秩序の崩壊だな。どうでもいいけど」

 

「この情報、ほかに誰が知っている」

 

 静かで、冷たい声だ。

 

「アリサじゃないか? 俺の部屋によくやってきてこのプロテクトを抜ける人物は」

 

「なら、そちらの口止めはこちらでしておこう。くれぐれも」

 

「はいはい、黙っておきますよ。面倒だ」

 

「わかってますって」

 

 そう言って仕事に戻っていった。

 まあ、自分から面倒なことを起こす気はさらさらないのだが。

 面倒事がやってきた際の手札として手に入れただけだし。

 

 自分が狙われるのが一番面倒だ。次点でアリサ。

 アリサはまだ神としての力の使い方を知らない。それが救いで欠点だ。

 そのままでも寿命は長い。スカリエッティに攫われても不死兵として扱われることはないだろう。

 

「はぁ、この事件さっさと終わらねえかな」

 

「心配事っすか?」

 

「ちょっと、俺たちの肉体の問題がなー」

 

「高すぎるスペックがです?」

 

「いや、まあ異族としてみればそこまでおかしな運動能力じゃないんだが……」

 

「グラゾリアン? ああ、特秘事項なら詳しく聞きませんが」

 

「ヒトではあるが、人間ではない。別の種族の力が混じってる人間のことだ」

 

「はぁ、使い魔ってわけじゃないですよね?」

 

「もっと質が悪いな。わかり易いので第97管理外世界、地球の神話に登場する神魔妖怪の仲間だ」

 

「妖怪、って怪物の?」

 

「そんな認識でいい。ともかく、俺とアリサはかなり死ににくい。

 今の俺でもミンチから今の状態に復活できるくらいにはな」

 

「知りたくなかったんで、聞かなかったことにしていいっすか?」

 

「其の辺は個人の自由だろ。

 問題は、寿命の方もバカにならなくてな」

 

「……もしかして、非常にやばい案件抱えてます?」

 

「変なところで攫われるより監視できる場所においておきたい、ってのが上層部への言い分だな」

 

「だから嘱託なんて名義で置いてるんですね。

 一般人は勝手に魔法とか使ったら犯罪者になりますし――もしかして軟禁?」

 

「そういうことだ。

 変に犯罪者に捕まるくらいなら自分たちの場所に置いておこう、って算段だ。

 上層部的にはいざとなったら便利に働いてもらおう。位には考えてるだろう。強欲な連中は管理局入りさせて便利にこき使おうとか思ってるんじゃないか」

 

 室内に戻ってコーヒーを奢ってやった。話し相手の対価だ。

 

「ところで、隊長陣と仲いいですけどいつから知り合いなんすか?」

 

「すずかは五歳の頃から、アリサとなのはは六歳、フェイト、はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラが九歳だな。九歳の時の話は機密事項だから個人的に話すわけにはいかないがな」

 

「我らがエース・オブ・エースってどんな人だったんですか?」

 

 ふむ、

 

「ん~」

 

「説明しにくいですか?」

 

「いや、話していいものかと。

 取り敢えず、運動音痴で学力平均はそこそこ。流体感応力は大凡二万詞階。

 特筆すべきは空間認識能力の高さによる運動系授業の立ち回りだな。走るのが遅いからほとんどわからなかっただろうが」

 

「へぇ、なんでもできる無敵のヒーローってイメージが強いんですけどね」

 

「比較対象が悪すぎる。同じクラスに中学生と同じ速度で走るすずかがいたからな。

 運動は体幹は出来てないし体の使い方がわかってないしで見るも無残だったな。

 ただ、小学三年生……こっちの言葉で初等三年目だったか? そこで人生は大きく変わる。空間認識の高さは空戦での立ち回りに生かされ、おまけに収束魔法のレアスキルとやらがあって火力には困らなかった」

 

「そんな幼い時から収束魔法ってことは」

 

「無理を積み重ねてたらしいな。生憎と俺も重症でその時のことを知らないんだが」

 

 飲みきった缶をゴミ箱に放り込んで、

 

「そこからリハビリのついでに体を鍛えて無理をしない立ち回りを学んだらしいぞ。

 近距離とクロスレンジはまだまだお粗末だが」

 

「近距離とクロスレンジって違うんですか?」

 

「詳しく言えば違う。とはいえこれは格闘技の話だがな。

 射撃にしては近く、打撃戦が始まっている間合いではないのがクロスレンジ、打撃戦が行われる間合いが近距離、通称ショートレンジだ。クロスカウンターを狙える間合いだからクロスレンジと呼ばれるな」

 

 説明ついでに、基本的に魔法なしでザッフィーがショートレンジ、シグナムがクロスレンジだというと納得した。

 

「因みに、得意レンジはどこなんです?」

 

「ショートかクロス。ミドルレンジも出来ないわけじゃないんだが、非殺傷がどうとかあるからな」

 

「はっはっは、マジで模擬戦相手として優秀ってわけですね」

 

「そういうことだ。仕事に戻るよ。話し相手になってもらって悪かったな」

 

「いえいえ、退屈はしませんでしたから。次は機密事項を話さないでくださいよ」

 

 善処はする。反省はしないが、というとやれやれと言ってあっちも仕事に戻った。

 

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