遺伝詞が見える少年   作:リボルビングバンカー

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 ズドン、とお仕置きビームが飛んで行った。

 たーまやー!

 

「馬鹿だなぁ、安全マージンも取らずに突っ込むなんて何考えてんだ?」

 

 コーヒーを飲みながら観察する。

 すりすりぺたぺたクンクン。

 

「で、何をしている。はやて、八神はやて。はっきり言って今の君は痴女だぞ」

 

「えへへへへへ、アル君の匂い~」

 

『野犬:おい、部隊長の精神が崩壊してるぞ』

 

『烈火:そのままもらってくれると助かる』

 

『鉄槌:責任取れよなぁ?』

 

『賢嫁:私を愛してくれるなら何人囲ってもいいけど、程々にね』

 

 度量が広い分、面倒ごとが起きるのだと察してほしい。

 

『野犬:あ、今なのはが私刑終わらせた。ティアナが運ばれるぞ』

 

『賢嫁:はいはい、シャマル先生にも伝えておくわ』

 

「構えにゃ~! このこの! 寂しくて死んじゃうぞぉ?」

 

 トストスと背骨をつついてくる。休憩時間長いな。

 ひょい、と持ち上げて胡坐をかいてる前に持ってきてかわいがる。猫のように。

 

「わふわふ……クゥーン」

 

 ニャーニャー言ったりワフワフ言ったりと、(ラビット)なのか(ドッグ)なのか(キャット)なのかはっきりしろよ。

 人差し指に指輪がはまっていることを確認し、右手を前に出して、

 

「ア」

 

 と、正面から飛んできたビームを風水する。結構な詞階を積んでいたのか、鳳が生まれた。

 

「わっ、大きいなぁ」

 

 興味がそっちに移ってしまったのか鳳にちょっかいをかけに行った。

 過剰にべたついては嘴で折檻されている。何をやっているのだろうか?

 ついでだし動画を撮って流しておこう。

 

『野犬:http://~~~~~

 

『鉄槌:ブハッ!?』

 

『魔王:二人して何してるの?』

 

『烈火:アルフレート、不意打ちとは卑怯だぞ……!!』

 

『閃光:真面目なところだったはずなんだけど……あ、エリオ見ちゃダメ!』

 

 大人のいけない通神(チャット)枠にエリオが気付いたらしい。

 痴態が結構上がってるから見せられないだろう。

 南無南無

 

「はやて、そろそろ時間だ。仕事に戻らないとグリフィスが説教することになるぞ」

 

「うっ、了解。大人しくしておきます。んっちゅ」

 

 大人しく、とか言っておきながら平然と俺の唇を奪って去っていった。

 右手を口元に添えながら。

 

『紫鬼:アル~、おやつ一緒に食べない?』

 

『約全員:空気読め!!』

 

『襟男:こう、かな?』

 

『野犬:ようこそ、溜まり場へ。とりあえずこれでも眺めてろ#35269.gif

 

『閃光:あー! ダメ! ダメだってばあ!! ってなのはも巻き添え!?』

 

 さて、痴態を流したところで――仕事に戻るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後のデータを確認し、問題点、疑問点、改良点をまとめ入力し、上に提出する。

 これはあとですずかが検閲し報告書として仕上げるのを待つばかりだ。

 

「飯にするか」

 

 

 

 何人かに声を掛けられ、やりすぎはやめておけと忠告される。

 食堂へ向かい、列に並んでいる時に通神が鳴った。

 

『夜天:隊長とアル君集合。ちょっと意見頂戴』

 

『鉄槌:あたしらはいいのか?』

 

『夜天:出撃待機だけしておいてなぁ』

 

『野犬:今から飯にするから後でな』

 

『約全員:今すぐだよ! 仕事しろ!!』

 

 ため息を一つつき、列から離れる。どうした、と後ろに聞かれ、仕事が入った。と告げるとポンポンと肩をたたかれる。それを聞いていた周りの人間からはサムズアップを食らう。

 最近、扱いが軽くなってきた気がする。

 

 

 

「うーっす、呼ばれたから来たわけだが……邪魔だったようなら出直すが」

 

 胸に顔を埋めてる高町と、なすがままのテスタロッサ。テスタロッサは若干顔が赤い。

 

「ふぇ!? あ、だ、大丈夫だから! なのは、とりあえず離れて? ね?」

 

「うう、もうちょっと……」

 

 何があったか知らないが、疲れているらしい。

 ここは優しくしてやるのが優しさだろう。

 

「何があったか知らないが、疲れてるときはペットを撫でて癒されるといい」

 

「私はペットじゃないよ!?」

 

「というか、アル君のせいだからね!! エリオがこっちをまともに見てくれなくなったの!!」

 

 はて?

 

「寝ぼけたなのはが私のベッドにもぐりこんだ時の映像をエリオに流すなんて!!」

 

 ……あー、gifのリンクを張った気がするな。

 ちょっとエッチィやつ。寝ぼけたなのはがフェイトを襲う系の。

 はやてが暇つぶしにこっちに流してきたから持ってたんだったか。Amen.

 

 それはともかく、

 

「一体何用だ、それなりの事情だと思っているわけだが」

 

「あーうん、これなんやけど」

 

 そういって、モニターに沖で飛び回っているガジェットの群れを映す。

 スルー!? という突込みが飛んでくる。俺は世界で二番目に忙しい。遊んでいる暇はない。

 

「……いつもどおりに処理すればいいんじゃないか?」

 

「アルくんも同意見かぁ。手の内を晒さないってこと?」

 

「それだけじゃないが、わざわざ晒す意味もないだろうに」

 

 リスクを回避する、という意味だけではないが

 

「だが、バリエーションは増やしておいたほうがいいだろう。

 これしか手段がない、なんてなめられるのも癪だ」

 

「ふむ、ならヴィータをシグナムに変えてみよか」

 

「いいんじゃないでしょうか? シグナム副隊長も一応空戦型ですから」

 

 

 

 

 

 トントンと話が進んで出撃、なのだが……

 

「私が言うことを聞かないから連れて行かないって言うんですか!?」

 

「そりゃそうだろ」

 

「なっ!」

 

「命令違反の末に味方を巻き添え、挙句訓練で無価値な危険行為。

 頭を冷やせと言われても仕方ないだろうな。

 腕のいいアグレッサーで良かったな。下手をしていたら半身不随だぞ?」

 

「……何が分かるんですか!」

 

「知らないな。何に焦ろうと個人の自由だし、何に悩もうと個人の自由だ。

 だが、怪我をするのが自分ひとりなら自業自得だが――相方ごと怪我をさせるのは指揮官として役立たずだろう?」

 

「ア、アルくん……」

 

 当たり前で、当然の意見をぶつける。

 

「アルフレートの言うとおりだろ。

 やっていいこととやっちゃいけねえことくらいは分別つけろよな」

 

「だけど……だけど!!」

 

 殴ってでも止めようとして、先に打撃音が鳴った。

 

「すまんな、手間を掛けさせた。俺の仕事だったんだがな」

 

 ガシガシと頭を掻く。

 

「あまりにも見苦しかったのでつい、な。

 ヴァイス、出られるか?」

 

「乗り込んでいただけりゃいつでも」

 

 パン、と柏手を鳴らし

 

「取り敢えず、三人はガジェット潰してこい」

 

 そう言って搭乗口を指す。

 

「了解した。行くぞ、高町。アレコレするのはあとだ」

 

「ティアナ! あとで話し合おう!」

 

「アホタレ、下手に付き合うからつけあがるんだよ! さっさと行け」

 

 副隊長と隊長のショートコントらしきものもおかしな話だ。

 

「あの!」

 

「どうした、スバル二等兵」

 

「二等陸士です!

 あの、努力することが間違いなんですか?」

 

 なるほど、納得いっていないらしい。

 

「続けろ」

 

「命令違反は悪いことだし、さっきのティアのことを止められなかったのも悪いとは思うんですけど……。

 でも、強くなろうと努力することは悪いことじゃないと思うんです!」

 

「青いな」

 

「なっ!」

 

「はいはい、話が進まないからそこまでね。

 ちょっと、昔話しようか」

 

 シャーリーが仲裁した。少し落ち着けということらしい。

 

「まあ、構わんがね。あとで謝っておけよ」

 

「うっ、はい……」

 

 待機場所であるロビーにぞろぞろと入り、柱に背を預ける。

 ほかの連中はソファに座った。

 

「さて、どこから話そうかな。やっぱり初めから、か。

 私は比較的長くなのはさんたちと付き合ってるから、色々聞いたりしてるんだよね。

 勿論、なのはさんの教導の意味も。

 

 じゃあ、少し長い話だけど、ね」

 

 いつ入手したのか、初めての海鳴市の道路破壊事件の映像すら残っていた。

 

「まあ、この時点で無事に闇の書事件は解決できたの。

 犠牲の元に」

 

 いやはや、少し懐かしい話だ。随分寝ていたから実感は薄いがな。

 

「え、アルフレートさん?」

 

「犠牲者のアルフレート・マルドリック・陽阪。

 当時小学三年生で、肉体状況は中学校入学程度。

 今そこに立っているんだけど、当時からしてみれば一番被害を背負った人かな。

 数年に渡る昏睡、このまま植物人間として生を終えるんじゃないか、なんて診断されていたの」

 

「そんな……」

 

「ふざけているイメージしかなかった……でも、今は平気なんですよね?」

 

 そうやって、笑って聞いてくるが――

 

「そうでもねえぞ、これでも全盛期より遠い。んで、一生元に戻らない」

 

「お前が謝ることじゃない。すべての責任はあの選択を取った自分にある」

 

 またロビーに沈黙が降りる。

 

「そして、そのことに責任を感じてたなのはちゃんは、中学校入学とともに入局。

 入局二年目にして、重症を負って撃墜される」

 

 あっ、と声が漏れる。

 自分としてはそんなことがあったのか、くらいだが。

 

「ずっと無茶してた代償に自分の限界を超えてしまってた。その結果――何気ない、普段なら余裕を持って対処できた一撃を回避できずに、数カ月の入院生活が始まることになったの。

 もう二度と、空をとぶこともできないかもしれないという恐怖と戦いながら」

 

「笑って、へましちゃった、なんて言ってがな。

 周りに同情を抱かせないようにしてたみたいだ。リハビリでは随分苦しんでたそうだ」

 

 ああ、不屈のエース・オブ・エースってそういう……皮肉だな。

 

「で、当時最高の治療技術を持ってたアリサちゃんは、自分の星、第97管理外世界の事件で動けなかったの。

 でね、結局右腕に違和感を背負ったまま今も戦ってる」

 

「アリサさんでも治せないんですか?」

 

「アリサの治療には条件があってな。体が異常を認識していないと治せないんだ。

 風水治療、といって今では廃れた遺伝詞干渉能力による副次効果だからな。脳が異常を覚えていても、腕が異常を覚えていなければ治せない。もっと言うと傷があっても傷自体が異常を覚えていなければ治せない」

 

「そんなわけでね、なのはさんの教導は自分と同じように後悔しないためにって大事に大事に育ててくれてるんだよ?」

 

「で、お前のあの特攻に、そうしなければならない事情はあったのか?

 アレは、どうしても引くことが許されない死地だったのか?」

 

「……」

 

 沈黙、か。

 

「もっと言うと普段のオーバーワークにも価値が無いけどな」

 

「アルフレートさん?」

 

「判断力が鈍った状態で高速処理なんてする意味がない。

 そういう時にするのは平時と同じ状態を作ることだ」

 

 後は知らん。俺は銃士じゃないからな、そう言って沈黙を保った。

 

 ポロポロと涙を流し、俯いて、何も言うことができなかったのか、そのまましばらく続いた。

 

『各員へ、状況終了。繰り返す、状況終了』

 

「後は自分で考えろよ」

 

「ヴィータ、奢ってやろうか?」

 

「マジで? ステーキステーキ!」

 

 

 

 

『鉄槌:あー、なのは? 後でシャーリー絞めておけよな』

 

『魔王:何があったの!?』

 




Lineくんのデータを弄っていたらロストと思っていたキャラシが出てきたので。


Keepって意外と便利ですね……。今後はonedriveに保存しておきます。

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