最近薬を変えたので生活リズムが崩れてます
朝の4時に目を覚まし、平日のトレーニングをこなす。
ストレッチ、ジョギング、筋トレ、ラン、ストレッチ、五行と行っている間に、
離れたところで茜色の遺伝詞が走り、鳳が空を駆け抜けた。
「アリサか。今の感じだと八万詞階くらいか」
徐々に制御可能域を増やしている。
そろそろ初心者用では物足りなくなる頃だろう。
幸いにして今日は金曜日。都合はいいはずだ。
強い遺伝詞が飛び交うことが滅多に無いため、多少遠くても感知しやすい。
「おはよー」
「おはよう」
「うっす」
バスに乗ってしばらくすれば眠そうなアリサが乗ってきた。
「アル、朝五行してなかった?」
「ああ、五十万詞階くらいだったかな」
「六倍くらいか。ぐぬぬ」
負けず嫌いは相変わらずのようだ。
生活サイクルが変わって不慣れな風水も練習していれば疲れも出るだろう。
「あ、そろそろ練習用以上の神形具とか欲しいんだけど」
「今作ってるところだ。後はこの三日で刀身を仕上げれば、後は組み上げるだけだな」
パーツは完成しているので刀身と組み上げを待つばかりだ。そのせいで授業中によく夢の中にいるが、授業についていけているので問題はあまりないはず。
「あ、刃はつけないで。管理が面倒になるから」
「ああ、分かってる。
刃をつけてるのはナイフとかの小物くらいだ」
物騒な話だが、風水五行は人殺しの物騒な兵器だ。仕方ない。
「おはよう。 アリサちゃんは眠そうだね」
「ああ、うん。睡眠時間を一時間早めて二時間早く起きてるからね」
「全く健康によろしくないがな」
知ってるわよ、とボヤくように呟き。
バスが発車した。
「おはようなのは。今日もいい天気の上に何時にも増して美しいではないか」
「あ、あははは」
面倒事が起こった、とかなり嫌がってる雰囲気だ。
遺伝詞もだいぶ乱れている。
「入口で止まるな」
「俺のなのはに命令するのか、貴様!」
えっと、水無月ワカメだっけ?
髪の毛モッサリしすぎなんだよ。
「とりあえず邪魔だ」
ワカメを軽く押しのけて教室に入る。
作ったスペースですずかとアリサも入ってきた。
いやはや、返ってきて苦しむのは自分なのに。
「あ、そうそう。これプレゼント」
アリサに布で包んだ神形具を放り渡す。
「ん? ……ああ、ありがとう。当分の間はこれを使えってことね?」
「そういうことだな。来週には渡せると思う」
「待ってるわ」
珍しく可愛らしかったが、男より漢らしいからイマイチ魅力が……。
「と、いうわけで。
いろいろな仕事があることを皆さんに知ってもらったわけですが……」
興味もなく外を見る。
空はどこまでも高く、雲は不純物を含まないかのごとく白い。
ああ、なんだか眠くなってきた。
ゴスッっと手刀を頭に叩き込まれて目を覚ます。
「昼ご飯よ。屋上に行くから準備なさい」
「……うっす」
いや、授業を寝てた自身の問題なのはわかる。
が、手加減位してほしかった。
「ふぇ、ふぁにふぉふぁふぁふぃふぁ?」
ムシャムシャと弁当を食いつつ尋ねる。
ジトリと白い目で見られるが、まあいい。
「んっ。
用もなく起こしたのか?」
「えっと、昨日の夜何か変なことなかった?」
ふむ、
「あるにはあった。弱々しい掛詞だったな」
「変な夢なら、見たかな」
「ああ、あれ現実だったんだ。夢だと思ってた」
なのはがふってきたのは昨晩の掛詞の遺伝詞のことだった。
というか、旧世界じゃないんだから掛詞で送ってくんなよ。
「あの夢、何が起きたんだろう?」
「さてな。ただ、」
「ただ?」
言いかけてやめたことを聞いてくるので仕方なく、
「間違いなく面倒事だ」
そう告げた。
苦笑いが二つとため息がひとつだった。
放課後、トレーニングとばかりに走って月村邸に帰る。最近は走りっぱなしでも平気になった。
本邸の自分の部屋に見つからずに入り、最速で宿題を終える。
その後当時だと希少な、現在だと加工出来ない金属を加工して五行する。八十万詞階ほどで拍詞よく、丁寧に、正確に繰り返す。
メールが届いたようだが、今気をそらすと塵になってしまうので放置。
キィンキィンと鈍色の遺伝詞と自分の翡翠色の遺伝詞がぶつけ、鈍色の遺伝詞を少しずつ鍛えていく。さながら超回復のように少しずつ強くなっていく刀身は、まるで芸術品のようだ、と言う人間もいるだろう。が、その用途は芸術とは程遠い。嘗ては戦争の道具だったこともあり、そういう認識は持てない。自分の中だと風水五行は暴力だという扱いだ。
しばらくして、強度が上がり、うっすらと形が決まってきた。
ここからはより正確に鍛えるので先に野暮用から終わらせようと携帯を手に取った。
メールは、すずかとアリサが拐われたというものだった。そして、アリサと恭也に多少の傷を残したと書かれているが多少の傷なら風水で治せるはずだ。
忍に専属医と二人をつれて土蔵の奥につれてこいと返した。
恭也は応急治療された痕跡があり、大したこともなかったが、アリサは右目を失っていた。