遺伝詞が見える少年   作:リボルビングバンカー

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黒き森の暗き闇
深淵にて生まれ
深淵にて転輪す
 疾風を巻きて竜と語り
 風を読みては詩を朗じ
 手には力を抱いて逡巡


6

 術後経過の観察も兼ねて医者とアリサには月村邸に泊まってもらった。見たこともない義眼に戸惑っていたが、腕は確かのようで傷の治療は早かった。

 なのはも心配そうにしていたが、何やら面倒事に巻き込まれたらしく忙しそうだ。

 

 アリサには睡眠薬と鎮痛剤を処方しているらしい。目を貫かれる瞬間がフラッシュバックして恐怖と幻痛が襲うのだとか。

 それよりは、『視覚情報』が増えたことのほうが辛い気もする。

 今までよりも、見えるものが多くなったのだから、その制御もしなくてはならない。

 だが

 

「まあ、苦しむのは俺じゃないし」

 

 遺伝詞の感応量も増えるから実力は上がるだろう。

 遺伝詞を肌で感じるのではなく、目で見れるということはそれだけでアドバンテージになる。

 制御に慣れれば一足飛びに高い詞階の遺伝詞を操れるようになるだろう。

 それこそ、数百万の詞階を。

 

 

 手袋をはめた手で、アリサのために作った神形具を握る。

 一応内燃詞(クローズ)で遺伝詞を抑えて手に取る。素手は怖いので手袋をつけて。

 朝早く、4時に庭に立つ。少し深呼吸して、

 

 ア、から始まる翠色の遺伝詞を五行する。

 

 限界値の百七十万詞階の五行も問題なく行使できた。

 

「完成、か。とはいえ」

 

 肝心の使い手が未だに復帰していない。

 倉庫の肥やしだな。

 そう思ったし、実際に口にした。

 時計を見れば6時だった。朝食にでも向かおうか。

 

 

 

 

 

「おはよう」

 

「おはよう……うっぷ」

 

「おはよ。家主としては朝一で風水五行しないでくれるとうれしいな」

 

Guten Morgen(おはようございます)

 時間は以後気をつけま、す。

 アリサ、起きてきて平気なのか?」

 

 リビングには昨日までベッドで固定されていたアリサの姿もあった。

 顔色は悪く、正直まだ復帰というわけではなさそうだ。

 

「アンタがくれた目、見えるものが多すぎて気分が悪いのよ」

 

 ああ、『名前』も言ってなかったし、そこまでだと想像もしてなかったか。

 まずは、だ。

 

「とりあえず食べよう。冷えるともったいない」

 

「そうね。運んでちょうだい」

 

 ノエルとファリンが朝食を運んでくる。

 女性陣用の軽い食事と自分用の重めの食事。

 自分の朝食を見て、アリサが驚愕する。

 

「そんなにガッツリ朝から食べるわけ?」

 

「ん? ああ。流石に健康的にバターは塗らないけどな」

 

 そう言って、黒パンにハムと野菜、チーズをのせて周りを気にせず食べていく。

 

「……チーズ貰っていい?」

 

「どうぞ」

 

 クワルクだが、いいのだろうか?

 プロセスチーズと異なったために変なリアクションをしているが放置で。

 パンを食べ切り、黄身だけ半熟のゆで卵を食べ、コーヒーを楽しむ。

 

「さて、色々することがあるから取りあえずは俺とアリサが休みだな。

 忍も暇なら残っていてくれると助かる」

 

 プクっと頬を膨らませたすずかにまあまあ、と忍が宥め。

 

「すずかじゃなくて私ってことは強臓式機械(アインゲヴァイデ)の説明よね」

 

「そうなるな。

 ただ、忍と違って使ったのが本人の肉体じゃないから駕発動(オーバーベヴァイゼン)は多分できないだろうが……」

 

「私抜きで話に納得するのやめてよね」

 

 見せたほうが早いというか、体験してもらったほうがいいと言うべきか。

 ひとまず見せることから始めるか。

 

「じゃあ、すずかを見送ってから訓練を始めるか」

 

 ポコポコと背中を殴られているが放置で。

 

 

 

 放置で!

 




本日二回投稿となります。先日の帳尻合わせです。
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