城ヶ崎家の長男はめんどくさがりのプロデューサー?   作:all

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番外編

6月14日

これが、何を意味するか知っているだろうか?

この日は一人の女性がこの世に生まれた日だ。他人にとっては、だから?それがどうしたの?というような反応しかないだろうが、俺、城ヶ崎涼太郎にとって、一人の女性こと高垣楓が生まれたこの日は、それだけで一年間365日どんな日よりも大切な日となる。…と思う。多分。

 

 

 

「楓さん、良かったんですか?」

「?何がでしょうか?」

 

6月14日夜7時、俺と楓さんは二人で居酒屋に来て呑んでいた。

 

「何がって、誕生日なのに友人とかに祝って貰ったりしなくていいんですか?ってことですよ。パーティー的なのがあるんじゃないんですか?」

 

楓さんは焼酎を一口ごくんと飲むと、俺に笑顔を向ける。

 

「大丈夫ですよ。パーティー等は昨日346プロの人達に開いてもらいましたから」

「へぇ、どうせなら今日すればよかったのに」

「みんな、気を使って今日はプロデューサーさんとの時間を作ってくれたんですよ」

「俺との時間、ですか。よく誕生日なのに仕事が余りなかったですね」

 

俺は特になにもしていないように言ったが、今日楓さんとの時間を作るために割りと死ぬ気で働いた。そのせいで誕生日2日前位までは楓さんは仕事漬けになってしまい、大変な思いをさせてしまったが。

本当なら、誕生日と言うことで今日もたくさんの仕事が入る予定ではあったが、生放送は無理でもその他は出来る限り違う日に回したのだ。

 

「ま、俺も役得ですねえ…楓さんみたいな人と酒呑めるなんて」

「そうですか?」

「そうですよ。世の中の男だったら大体喜びますよ」

 

冗談目かして言ったのだが、楓さんの顔は真っ赤だ。あれえ?こんな真面目な反応してくれんの?

楓さんは恥ずかしさを紛れされるためか焼酎を煽って、中に入っている焼酎を飲み干す。

その光景を見ながら、俺も飲もうか、と思い焼酎の入ったコップを手に取るが、そこに入っているのは氷のみ。

そういえば飲み干してたなと思いだした。

 

「あ、全部飲んじゃいましたね」

「そうすね、追加で何か頼みますよね?」

 

さも当然という風に聞いた俺。楓さんはこれぐらいでは酔わないだろうし、飲み足りないだろう。

 

「いえ、そろそろ店を出ましょうか」

 

しかし、楓さんが言ったのは俺の予想を百八十度逆を行く言葉だった。

 

「もうでるんですか?珍しいですね。これぐらいで終わりなんて」

「はい、この店はこれぐらいにして、今からは宅飲みにしましょう!」

 

ダイヤモンドすらも霞むような笑顔を向けてくるトップアイドル。これ断るのは無理だな。うん。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それじゃあ、改めて、乾杯~!」

「乾杯」

 

ところ変わって高垣家。クソ、やっぱり無理だった。

高垣さんは独り暮らしのようでマンションに住んでいる。彼女の家に上がるのはこれがはじめてなのだが、きれいに片付いていて大人の女性の部屋、という感じがする。

 

「それにしても、楓さんも有名になりましたよね」

 

高垣さんのアイドルになってからの写真を二人で見ながら飲んでいると、ふとそんなことを思った。

最初のライブの時の写真。初めての握手会にテレビ出演、ラジオ出演。それだけでなく事務所でのアイドル達との写真に俺との写真。見ていると当時のことを思い出してしまう。

 

「そうですね。これも涼太郎君のおかげでしょうか」

「なにいってんすか。俺は仕事を持ってきただけで、楓さんがそのチャンスを掴んだんですよ。俺はプロデューサーとしての仕事をやっただけですしね」

 

楓さんじゃなかったらここまで上手く行く筈が無い。

 

「なんか、シンデレラ見たいですね。私がシンデレラ役で涼太郎君が魔法使いでしょうか」

 

楓さんが言った今のセリフは、奇しくも俺が先日武内さんと話していた時に言ったセリフと同じだった。

俺はふっ、と思わず笑みがこぼれてしまう。

 

「面白い例えですね。じゃあ王子様は誰なんすか?」

「うーん…ファン、でしょうか?」

 

まあ、無難な答えだな。

 

「…でも、もしかしたらそれは涼太郎君のことかもしれませんよ?」

「えっ」

 

いきなりの楓さんの言葉に俺はそんな惚けた声しか出なかった。だんだんと言葉の意味を理解していくと、一つの回答にたどり着く。

自分の頬に熱を感じる。おそらく今の俺の顔はリンゴのように赤くなっていることだろう。

…さすがに、不意打ちはずるかないですかねえ。

 

「え、いや、その…」

 

まだ整理がついていないし、どう返すかも決まってないのに、口だけはボソボソと動いている。

くそ、はずい。なんというか、告白されたりというのは何度か経験した事はあるが、そんなものよりも百倍嬉しいし、恥ずかしい。

胸の高鳴り、これは嬉しさや感動から来るものだろう。そうだ。俺は目の前の高垣楓が好きなんだ。彼女と過ごした日々、彼女の笑った顔、彼女の下らないだじゃれ。それら全てを俺は好きなのだ。前からわかっていたことなんだろうが、プロデューサーとアイドルという関係にあるからか、ずっと自分自身に対してまで隠してきたのだろう。

女性にここまで言わせておきながらヘタレみたいな返答はできない。だから俺の正直な気持ちを伝えよう。

 

「楓さん」

「は、はい!」

 

最近ではあまり見なくなった緊張した様子の楓さん。

 

「俺、楓さんのこと好きです」

「っ!…はい!私も涼太郎君が大好きです!」

 

涙を流しながらも楓さんはそう答える。

 

俺はプロデューサーで彼女はアイドル。普通は許されるものじゃあないだろう。だが、まあ、

彼女のこんな笑顔を見れるのならいいのかもな。




高垣楓さん誕生日おめでとう!
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