城ヶ崎家の長男はめんどくさがりのプロデューサー?   作:all

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2話

楓さんの撮影に同行した俺は、会社に戻ってプロデューサーに与えられた部屋で、撮影に行く前に終わらせたはずなのに帰ってくると何故かあった仕事を淡々と機械のように片付けていく。部屋に響くのは俺がキーボードを叩く音のみ…のはずなんだよなあ。

 

「コーヒー、おかわり要りますか?」

「あ、お願いします。…って、何でまだ居るんすか?楓さん」

「何でって、涼太郎君の仕事が終わったら一緒にご飯にでも、と思ったんですが…。もしかして、ダメでした?」

 

俺のデスクの近くにあるコーヒーメーカーのそばにいる楓さんがそう言ってくる。楓さんが俺を呼ぶときはだいたいプロデューサーさんか涼太郎君なのだが、年下扱いされた気がして、少し苦手だ。

というか、ダメかオーケーかで言われたら、妹達が居るんでダメなんですけど、そんな上目遣いで見られたら、断るものも断れないじゃないですか…。

 

「あー…、そうすね。妹に連絡してみて聞いてみるので、仕事終わるまで待っててください」

「ふふ…、やりました。私が美嘉ちゃんに聞いておきますね」

「え、楓さんが?」

「はい、私が」

 

うーん…これは家に帰ったら色々と聞かれるパターンか?うちの兄妹はシスコンブラコンしかいないしな。

特に莉嘉。アイツはお兄ちゃんお姉ちゃん大好きだから。え?俺?俺はまだましな方だよ?普通にお兄ちゃんやってるし、妹にドキドキするようなこともない。

 

「じゃあ頼んでもいいですか?」

「はい」

 

楓さんがスマホを取り出したのを確認して俺は仕事に戻る。何なんだろう…流石に俺楓さんに甘くない?下手すると妹達と同レベルかそれ以上に甘やかしてる気さえする…。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

仕事が終わり、楓さんに美嘉と莉嘉に許可をもらったことを確認して俺の車で焼き鳥屋に入る。そして注文をして、品が届くと、二人揃って乾杯をして食べ始める。

 

「楓さん、飲み過ぎないようにしてくださいよ?」

「大丈夫ですよー、お猪口にちょこっとだけですから」

 

焼酎を片手に何時ものようにダジャレをぶっこんでくるが、だいたいこういうときは俺が酔っ払った楓さんを家まで送ることになるのだ。あ、因みに俺は呑んでないよ。飲酒運転、ダメ。ゼッタイ。

 

 

数十分後。

 

「りょーたろーく~ん…」

 

結論、楓さんは酔いました。…だから言ったじゃん。あぁ…今日も家まで送ることになるのか。

 

「楓さん、そろそろ帰りますよー、会計済ませたんで車まで歩けます?」

「無理でーす…、りょーたろー君が担いでつれていってくださーい」

 

こ、こいつ…。めんどくさいなあ、マジで。いや、まあ美女の介護なんて、役得かもしんないけどさあ、と内心文句を言いながら楓さんに肩を貸して、店に出て車にのせる。

 

「楓さん、大丈夫ですかー?」

 

後部座席にいる酔っぱらいに問いかける。

反応が無い。ただの屍のようだ。

 

「楓さーん?」

 

もう一度話しかける。今度は何か言っているのは分かるが、それをはっきりと聞き取ることができなかった。

 

「はい?何か言いました?」

「だから…大丈夫じゃないです!涼太郎君、私トップアイドルになりましたよ?」

「…はい、そうすね」

「でも、私まだなにも言われてませんよ!」

 

私、怒ってます。みたいな風に言う楓さん。

確かに、一年間でトップアイドルまで登り詰めるなんて簡単にできることではない。アイドルなんて端から見ると輝かしい存在だが、実際は弛まぬ努力とファンを惹き付ける魅力がないとあそこまで登る事が出来ないものだ。だから、途中で挫折するものだってたくさんいる。というか、トップアイドルなんて極一部の云わば雲の上の存在のようなものなのだ。

楓さんがその厳しい世界で勝ち抜いたのは、彼女自身の努力と魅力だ。

 

「そうですね…まだ、何も言ってない…」

「…」

「ちょっと、寄り道しますね」

 

車を走らせ、ある場所へと向かう。

この場所に着くまでに会話は要らないだろう。俺は伝えるべき言葉を整えるだけだ。

 

目的地に着き、車を止める。楓さんは少し酔いが覚めたのか、自分で車から降りて来た。

 

「綺麗、ですね…」

「そうでしょ?昔、両親に連れてきてもらったことがあるんですよ」

 

ついた場所は、東京の夜景を一望できる場所だ。少しかっこつけすぎた気もするが、まあいいだろう。俺は鞄から、箱を取り出して、楓さんの正面に立つ。

言葉は結局整いはしなかったが、しょうがない。

 

「本当は、もっと先、正確に言えば誕生日にでもと思ったんですけど…」

「…」

 

ここからは、勝手に口が動いてくれる筈だ。

 

「楓さんはすげえ頑張ったと思いますよ…。一番近くで見てた俺が言ってるんです。誰がなんと言おうと、貴女は人一倍努力して、人一倍必死だった。まあ、月並みですが、おめでとう。それと、ありがとうございました」

 

それだけいって、俺は箱を楓さんに渡した。

なんともありきたりで面白味もないような言葉かも知れないが、きっと伝わる。

 

「…開けてもいいですか?」

「どうぞ」

 

楓さんは箱の包装を綺麗に取り、中に入っているものを取り出す。中から出てきたのは、綺麗な石が嵌め込まれたネックレス。

 

「…これは?」

「えーと…それは6月の誕生石でムーンストーンってやつが嵌め込まれた石ですね。まあ、お祝いってことで」

「ふふっ…ありがとうございます。大切にしますね、プロデューサー」

 

ここに来てやっと見せてくれた笑顔は、頬に伝った涙を含めて、すべてが輝いたそれこそ宝石のようだった。

 

…そういえば、石言葉調べてなかったな。

 

 

 

6月の誕生石、ムーンストーン

 

石言葉

健康、長寿

 

 

 

純粋な愛、愛の予感

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