ダンジョンで少女兵がいるのは間違っているのだろうか? 作:緋色の鎮魂歌
プロローグ 7.62×39mm弾
7.62×39mm弾。物心ついた私が最初に撃った銃弾。初めて敵に当てた弾丸。初めて人を殺した弾丸。
AK-47。物心ついた私が既に手にし、使い方を熟知し、私の身体の一部となった
そんな
大人、子供、老人、幼子、男、女、軍人、民間人、敵、仲間、戦友。私が殺した数限りない程の屍で私の身体は、血は、精神は、魂はどす黒く濁り切っている。
鼻に衝く硝煙と噎せ返るような血の臭いで私は目を覚ました。一面には何処かで見たことがあるような血と大量の屍。ああ、そうだ。これは全て私が殺したんだった。
あれ?でも、何で私はこの屍の中で斃れているのだろう。
「……ああ、そうか。私も撃たれたんだった」
お腹に手を当てるとヌルッとした感触と仄かな暖かさが伝わる。視線を下げると手についた真っ赤な鮮血と私のお腹から溢れ出す夥しいし量の血。
「…
多くの血を流し過ぎたからだろうか、周りの音が、臭いが、光が、意識が、感触が、全てが遠く鈍くなっていく。既に私は助からない。その事実を衝き付けられた所で生に対する執着心など皆無であった。
「さて、死んだら地獄だった、っけ? コホッ……それ、とも…何も無いのかな……」
薄れ行く視界の端、大きなターバンの様な物で顔を多い隠した数名の民兵が大声を上げながら入ってくるのが見えた。民兵達は私を見るなり、罵詈雑言を吐きながら踏みつけ、蹴りを放ってくる。だが、民兵達の虚しい事。既に私の身体の感覚は無い。
すると、一人の民兵が私の金髪を掴み上げ私を無理やり立たせた。そして眼前に彼らの手にしていたアサルトライフルを突きつけてくる。
彼らは、意味の分からないことをブツブツと呟いているが、恐らく彼らが言う所のカミサマとやらにお祈りでもしているのだろうか。殺すならさっさと殺せばいいのに、何故か彼らが可笑しくて嗤えてくる。
「最後に何か言い残すことはあるか」
漸く私の分かる言葉で話したかと思えば、なんとそんなことを聞いてきた。これは本格的に嗤える。だけど、殆ど意識が遠くなっていた私は残る力を振り絞って中指を立てる。
その場に居た民兵達が苦い顔をした所で、
一瞬の閃光と共に私の意識は完全に消失した。
だが、沈んだ筈だった意識がゆっくりと浮上してくる。そう、まだ死ぬべき時では無いと。
目を覚ますと、視界一面に青々とした木の葉とその間からの木漏れ日が降り注いでいる。
とても驚いた。私が戦っていたのは草の一本も生えないようなどす黒い雲が立ち篭める荒野の中だったというのに。
「…ここどこ?」
身体を起こし辺りを見回す。死の幻覚だろうか?などと思っていたけど、森の澄んだ匂いに木漏れ日の眩しさ、サワサワと手に感じる草の感触と小鳥の鳴き声、その全てを感じ取れている。
「どういうこと?私、死んだ筈なのに?」
突然のことで頭が回らないし考えが纏まらない。その時、私の手が冷たく硬い物に触れた。無骨な形をしたそれ。私の身体の一部で多くの血を啜ってきたソレ。
「…AK-47」
幾多の戦場を共に乗り越えてきたそれは私の罪の形。それを見ると混乱していた思考が落ち着いて考えが纏まる。
「取り敢えずは、現状把握が最優先事項かな。それとここがどこか、それを知ってから身の振り方を考えなくちゃ」
AK-47の周りには私が身に付けてた装備が幾つか。今の私は元居た部隊の黒いタクティカルスーツを纏っていて、落ちていた装備を拾い上げる。
スーツの上にタクティカルベストを着込み、マガジンポーチ全てに散らばって落ちていた装填済みのマガジンを入れ、空いているポーチに残っていた二個の
空の水筒をベストの後ろに下げ、右の太腿にレッグホルダーを付けた。入っていたサバイバルナイフの刃の状態を見た限りで刃毀れが無いのを確認したらホルダーに戻す。
そして、AK-47を軽く分解し状態を確かめた後、上から白い布を巻きスリングで肩に掛ける。
その上からボロボロのローブを羽織、フードを被せて準備は完了した。
「……行こっか」
こうして私は見知らぬ地で新たな一歩を踏み出した。
この先、私がどうなるのかはわからないが元は捨てた筈の命だ、どうにでもなるだろう。