ダンジョンで少女兵がいるのは間違っているのだろうか?   作:緋色の鎮魂歌

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名も知らぬ地で 5.45×39mm弾

サワサワと草を掻き分け進む。歩き始めてから三時間ほど経っただろうか、太陽が少し傾く頃に漸く森を抜け少し背の高い草の生える草原へと私は歩みを進めていた。未だに人はおろか野生生物の一匹も見かけていない。

 

流石に歩きっぱなしだったので手頃な突き出していた岩の上に腰掛けて下げていた水筒を取る。森を出る前に小さな澄んだ泉が有って良かったと思いつつ水筒を傾ける。コクコクと冷たい泉の水が喉を滑り降りる。

 

「……ふぅ」

 

一息ついた私は改めて自分の置かれた状況を考える。森を抜けてくる際に幾つかの木々を調べたが、恐らく(オーク)のような物だという事が分かっただけだったが、その木も完全な樫とは言い難くここがどこなのか分かりそうな気配はなかった。

 

「ホントに…どこなんだろ………ッ!」

 

常に悪意や害意、殺気に晒されてきた私の感覚が鋭い殺気を感じ取る。一つだけではない、最低でも五つ。向けられる殺意は人の物より鋭く、私に纏わり付くまるで蛇の様な物だった。

すかさず私は岩の上に立ちAK-47を左で腰だめに構え、右手でサバイバルナイフを抜く。

 

構えたまま辺りへの警戒を怠らず、私の思考は一気に冷え上がる。頭の回路(ロジック)を切り替え、周りの風景が色褪せ始め身体への要らぬ力と思考が抜け落ちる。私の雰囲気が変わったのを相手も感じたのか、更に殺気が濃厚な物へとなる。

 

 

「ーーーーーーッ」

 

ガサリと飛び出してきた陰に向かい銃口を定める。0.2秒、腰だめに構えられたAK-47から7.62×39mm弾が三発放たれる。それは眉間に一発と胸部へ二発吸い込まれるように穿たれる。

 

「グギャアアァァァァ……!?」

 

勢いを殺しきれず後方に流れていった鈍い緑色のソレをかわして、辺りに意識を注意深く向け続ける。動かなくなった緑色の物の体液が頬に付いているが、そんなのは気にしない。

 

「グキャアァ!!」

「ガギャゥ!!」

 

草むらの中から二匹の緑色が私の左右から飛び出す。右の奴は半ばで折れた直剣を、左の奴はボロボロの木製の盾と手斧を持っている。

 

(脅威度判定…右、低の中。左、中の下。右にはナイフ、左にはAKで対応)

 

脅威の度合を識別して、私はその場で半回転し折れた直剣持ちに先程と同じ所に三発放つ。

そのままスリングを押し戻し、AK-47を掛け飛びかかるもう一匹の腹部に向かって蹴りを放つ。飛び掛かってきたソレは蹴りに反応できず、吹っ飛んだ。ソレが体勢を立て直す前に私は岩の上から跳び、ソレの心臓があろう場所へナイフを突き立てた。

 

(…硬い感触……石?)

 

ビクビクと震えるソレの心臓に違和感を感じたが、ソレがまだ動いているので、すかさずナイフを抜いて頭部へ突き立てる。二、三度頭部へと同じように刺すとソレは完全に動かなくなる。

 

「ーーーーーフゥ……」

 

辺りに立ち篭めていた殺気が霧散するのを感じ取ると、色褪せていた風景に色が戻る。それにしても、()()()()()()()()()()()()()。いつもより反応速度が良くなってる。何より一切の無駄な考えが沸き起こってこない。

 

「ッ…痛ぅ……」

 

でもその分身体への反動(フィードバック)が強くなっている。頭痛に身体のあちこちが痛む。フゥ、と息を一つ付くとジクジクと感じていた痛みが薄れていく。いや、痛みは残っている。これは、この痛みにはもう慣れた。

 

「……で、これ…なに」

 

視線をさっき殺したソレに向ける。大体130cm程の人型。違いは尖った耳と三本の指、そして何より全身が緑色であること。明らかに私が居た世界ではこんな生物を見たことがない、というか居ない。でも、これが何であるかはなんとなく予想が付いた。昔、一度読んだ本に出てきたソレと一致した特徴を持っていた。

 

子鬼(ガブリン)

 

ガブリン、またゴブリンと呼ばれているソレは物語の中で出てくる魔物。ソレが今私の目の前で私が殺して死体となって転がっている。

 

「まさか、二度目の人生が御伽噺(フェアリーテイル)の中なんてね」

 

多くを殺してきた私が、まさか御伽噺みたいな世界に転がり込むとは、これはなんと言う皮肉か。

余りに皮肉が利きすぎていて嗤いが込上げてくる。クツクツとした小さな物から、やがてその声は大きなものとなる。

 

「―――――――――ハハハハハッ!!…アハハハハハハッ!!…アハハハハハ――――――――」

 

その嗤い声が暫く止まることが無かった。それはまるで狂気的なものであり、慟哭であり、諦観を篭めた様な嗤い声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――ハー……ハー…………フゥ」

 

一頻り嗤い終え、私はゴブリン()()()()()へと目を向ける。既にそれは灰の塊となって鎮座している。その中にキラリと光る物が一つ。紫色のアメジストの様な小さな塊。

 

「……なんだろ…………ま、いいか」

 

余ってたポーチに仕舞い込むと、血の付いたナイフを拭って戻し残弾を確認する。六発も消費してしまった、この世界で弾薬の補給ができるとは思えないので慎重に使わねば。

そんなことを考えつつ他の二匹の死体からも紫の石を拾い上げる。AK-47で斃した方は死体は灰にはなっておらず、ナイフでゴブリンの身体を解体すると、心臓と思しき所から紫の石が出てきた。さっき拭ったばっかりなのにななどと思いつつ、もう一体もすばやく解体してまた血を拭う。

多分死体の灰化の有無はこの石の損傷具合かな、なんて考えながら私は歩みを進める。

 

「……! 水の音がする」

 

草を掻き分け進むと、その先に小さな川があった。これを下流へと辿って行けば何処かで人の痕跡くらいは見つかるかもしれない。

 

「…行こうか」

 

私は小川を下流へ向かい進む。何処かに人の痕跡を見つけるために。





書いてて思ったんですが、主人公の名前まだ出せいてなかった…(汗)
多分、次には名前が出せると思います……
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