行き交う人々が思わず足を止め、彼女達を見て息をのむ。
そして、何だあの不埒者はと駿介を親の仇でも見るように睨み付けて仕方ないなと諦めた様に離れていく。
翌朝。
昨夜は真っ直ぐ二人を家まで送り届け、夜も遅くまでメールをしていた三人である。駿介は少しばかり眠たそうにしているが
二人の彼女は幸せであることを隠すことなく、むしろ自分達が世界で一番幸せだと言わんばかりにどこか光輝いている。
「まさか一緒に登校出来るなんて、あたしは幸せだなあ」
「本当に。西野さんが、一緒に登校しようって言ってくれたおかげね」
「いやほんと、今までごめんな? 」
「あ、違う違う! 別に他意は無いんだ。ただ、本当に幸せだからさ。」
えへへーとつかさが抱いたままの彼の腕にすりすりと顔を寄せた。出遅れた綾も負けじと彼の腕を抱く力を少しだけ強めた。
しかし彼女がするように甘えた仕草はどうしても羞恥心が勝ってしまい、真似する事が出来ない。
本当に残念で悔しそうである。
「なぁ、本当にいいのか。もちろん俺は二人と真剣に向き合うし、周りから何を言われてもいいけど」
「メールでも何回も言ってるけど、私は皆に知ってほしいわ。駿介君と付き合っています、って」
「そうだぞ駿介くん。もし何か言ってくる人がいてもあたし達は幸せなんだって言ってやるし、もし駿介くんのことが好きだってコがいたらどうしようか、東城さん。」
「そうねえ、きっとたくさんいるから、真剣な人だけと付き合ってほしいわよね」
「うーん…好きって気持ちが分かると良いんだけどなー」
二人だけて会話が進んでいくので駿介は居たたまれない気持ちになりながら、かつて結婚を約束したこの二人以外の彼女達の姿を思い浮かべる。
きっと可愛く、綺麗になってるんだろうなあ。
もちろん、俺の事なんて忘れてるかもしれないけど。
「あー東城さん、駿介くんが他の女の子のこと考えてにやけてるよ!」
「い、今は私達の事だけ見てほしいわ、よね!」
二人の可愛い彼女にごめんごめんと答え、再び歩き始めた。
幸せを噛み締め思わずにやけてしまいながら。
学校に近付いて行くに連れ視線の中に感じる殺気の強さが増しているように感じられる。
理由はもちろんだが、学校で一位である美少女西野つかさと、そのつかさにも負けないくらいに可愛い東城綾を侍らせているからだろう。
学校に着いてからも酷かった。予想に反し、むやみやたらに絡んでくる人間はいないがやはり恨みがましく睨んでくる。どうしろというのだ。
不幸中の幸いか、二人は駿介のことしか見ていないせいか、まわりの様子になど気付いていないが。
「でも東城さんは良いなあ。駿介くんと一緒のクラスでさあ」
階段を上りながらぽつりとつかさが言った。彼女だけが二人とは別のクラスなのだ。ちなみに三年間で一度も同じクラスになったことがない。
「ごめんなさい西野さん。私だけ同じクラスだなんて、不平等よね」
「ふふ。東城さん優しいんだね。あたしこそごめんね? ちょっといじわる言っちゃった」
「ううんいいの! 私が同じ立場なら、きっと同じ気持ちになると思うし」
「……もう可愛いなー東城さん!!だーいすき!!」
西野は正面から彼女に抱き付くと、うりうりーと甘えるように首筋に頬を擦り付けた。
まさしく目の保養。眼福眼福である。
思わず足を止めた男子生徒達が階段の上下から覗きこむように二人を見つめている。どうやら俺の事は見えていないらしい。
「はいはい。公共の場でいちゃつかないー」
「止めろ離れろ」の大合唱。仕方無いので聞こえなかった事にして、二人の肩に触れて引き離す。
「東城さん、嫉妬てしてるよ嫉妬! 」
「え、ああああ、うん! 」
顔を真っ赤にして童謡を隠せない東城だが、西野の言った言葉にきゅんとなった。
「ち、違うし」と変わらずクールな駿介だが、内心では嫉妬していると思うと、途端に可愛く思えてくる。
「大好きっ! 」
時が止まったような気がした。と、誰もが思った。
当事者である駿介はもちろん、間近で見ていた西野もだ。
三人を見ていた野郎共も石になったように固まってしまう。
そして何より東城である。
思わず彼に飛び付くように抱き付き、頬に口付けをしてしまったまま固まってしまった。
それは、十数秒後。西野によっていつまでキスしてるんだよーと引き離されるまで動かなかった。