LISAの声も歌詞も歌も好き。好きな人に真っ直ぐな思いを強く歌っているのに、透き通る様な歌声は今にも溶けてしまいそうに儚くていて、とても綺麗だから。
あたしはいつもより二時間も早く起きて、身支度をして家を出た。お母さんには雷が落ちるんじゃないの、なんて言われたけど「駿介くん達と勉強をするから」と言うと、笑顔で頑張りなさいなんて言って送り出された。
あたしは運がいい。とても、とてつもなく。
東城さんも理解してもらえてると言っていたけど、唯一弟くんには駿介くんとの複数いる恋人として付き合うことを反対されているらしい。
それに比べて、うちの両親は幼い頃から駿介くんのことも知っていて、なおかつ彼の父親と“母親達”とも面識があるらしく、いわゆるハーレムに関しても一定の理解をしてくれている。
本当にあたしは幸せだ。
駿介くんを好きな気持ちは誰にも負けないと信じているけど、きっと東城さんだって同じ気持ちだ。普通であれば、ライバルになっていたかもしれない。だけど、駿介くんだから、あたし達は友達になれた。そして、いつかは駿介くんの奥さんとなり、家族になるのだ。
「よーし、もっともっと勉強頑張ろうっと」
いち早く待ち合わせ場所に着き、そう宣言した西野であった。
「本当可愛いなぁ、西野さん」
少しだけ遅れて来た東城は、よしっと何かを決意するように両腕を胸辺りまで上げる西野を見てぽつりと呟いた。
どうして私なんかが駿介君とお付き合いしてもらえているんだろうと考えると、幼い頃の約束を守ってくれているからだという結論に至ってしまった。
西野さんと比べると、あんなに私は可愛くないし眩しくない。
西野さんは太陽だ。全てを照らす事の出来る目映い太陽。
私は比べるのもおこがましい。月とすっぽんだ。
昨日、駿介君が何か用があるらしく、西野さんと二人で帰っていると男子生徒達から凄い視線を集めていた。
私も駿介君と付き合い始めてからは好奇心からか、視線を集めるようになってしまっていた。だけどそんなレベルとは比べ物にならないくらい、美しいものを見つめる眼差し。
きっと私は西野さんには勝てない。いや、勝ち負けではない事は分かっている。分かってはいるのに、いつか私だけがいらないと捨てられてしまうのでないかと、自分の中の醜い私が囁くのだ。
「せっかく仲良しになれたのに、こんなことを考えちゃうなんてーー」
思わず泣きそうになってしまう。
どうしようどうしよう、と慌ててハンカチを取り出したせいで私は転んでしまいそうになる。ドジで転んでしまうことにもなれているから、次に訪れる痛みはよく知っていた。でも、痛みは来なかった。
「大丈夫か? 」
と、駿介君が抱き止めてくれたからだ。
本当に本当に本当に、どうして彼はこんなにも私の心を優しく撫でてくれるのだろうか。あんなに考えてしまっていた醜い考えが綺麗に消え去ってしまった。
そうだ。駿介君は好きだと言ってくれた。そんな彼を少しでも疑うような事を考えるなんて、最低だ。
「う、ううん。ありがとう。ごめんなさい、駿介君こそ怪我とかしていない? 」
「ん? ああ、大丈夫だよ。朝から綾に触れられて逆にラッキーかも、なーんてな」
「あ、おっはよー東城さん、駿介くん!」
「おはよーつかさ。待たせてごめんな」
顔が熱い。全身が熱を帯びてしまった。駿介君は本当にずるい。大好きだ。
ふと見ると、彼が西野さんの頭を撫でていた。羨ましい。いや、かなり羨ましい。
「わ、私も撫でて、ほしいな」
「じゃあ交代だね。東城さん、今日も可愛い! 」
駿介君に頭を撫でてもらう私を西野さんは可愛いという。
駿介君も、私を可愛いと言ってくれた。もちろんだけど、西野さんも。
そして私は決意した。
勉強もこれまで通り頑張るけど、もっともっと自分自身を磨こうと。自分で自分自身を認めてあげられるように。