俺の彼女は妖狐……だけど可愛い。 作:恋愛物
買い物を済ませ、スーパーを出る。
家からスーパーまでの道はそう遠くはないが、俺の住んでるところが山の麓ということもあって道中はかなり人通りが少ない。
だからこそ、俺と彼女が二人で歩いているとより目立つ。
「ふんふんふふ〜〜ん」
ご機嫌長に鼻を鳴らす彼女を横目に、俺は「頼むから同級生に会いませんように」とだけ願っていた。
しかしまぁ嘘から出た真か、備えあれば憂いなしだったのか、俺の思念はこれでもかと言う風に粉々に砕け散る。
「……課題やったの? はやぁ。 私、まだ全然手もつけてないよ」
既に前方から同級生が歩いて来ていた。 片方は知らないが、もう片方はクラスが同じで結構話すような女子だ。
「ごめんリノ」
「んー?」
リノとは、彼女が麓に降りて来たときに呼ぶ用に付けた名前。 照れ臭いが名付け親は俺と言うことになる。
「俺の後ろにあの人から見えないよう隠れてくれないか?」
「どうして?」
まぁ、そう返されるだろうな。
「何というか、照れくさいからだよ。 それに、正体がバレたら大変だろう? だから……」
「だいじょーぶだよ! 私、今は変化上手になったし、堂々と歩けば気にされないよ」
「いやでも同級生だから万が一があったら……」
「同級生なら尚更見せつけないと! 零に変なむしが寄ることが一番だめだからね」
悲報、人生終了のお知らせ。
別にバレてもいいだろ。 という意見に関しては否定できないが、この件はバレた後がとてもめんどくさい。 何故なら、同級生の彼女はこの数ヶ月仲良くなって分かったが、基本的に誰にでもフレンドリーで、人一倍頭がキレるし、尚且つリノのような少し小さめの女の子に滅茶苦茶接したがる。
これに関しては語弊が生まれないように言うと、彼女には妹がいるのだが、両親離婚で離れ離れになったらしく、中々会えていないからだそうだ。
もしリノと仲良くなればリノの正体が何なのか、恐らくではあるが彼女の頭のキレの良さから、すぐに気づかれてしまうだろう。
「でさ〜、ん?」
「お前だな!? 零に取り付く悪いむしは。 私がたいじしてやる!」
人生終了。
ちょっと悩んでいる間に、既にリノは行動していたらしい。 相変わらず行動力の凄さには目を見張るものがあるが、それとこれとは別問題だ。
なんて言おう……そんな事を考えながらリノの元に駆け寄ろうとすると……
「何この子ちょーかわいい」
「わわっ!?」
「そー言えばあんたそんぐらいの年の子好きだもんねぇ」
彼女は軽々とリノを持ち上げ、何も聞いていないかったかのように頬をスリスリと彼女に寄せた。
ズルい、俺でもまだそんな事した事ないのに……って違う違う。
「零ー、助けてぇ〜!」
「んん〜〜って、あれ、零?」
半ばあきらめた状態で俺は彼女達の元に近づいた。 俺が近づいたのを確認するとリノは勢いよく彼女の腕から離れ、こちらに近づく。
「あーごめん、親戚の子でちょっと預かっててな」
「ちがっ! むぐ……!!!」
彼女の口元を押さえ、なるべく話を早く終わらせようとする。
「なるほどね、そうだ、今度私の家に連れて来てよ」
「……そ、そうする」
「うん、それじゃあ。 またね!」
意外にも彼女の方から早く話を終わらせてくれた。
「あ、あぁ……またな」
「まだ終わっ……ふぐぅ……!!!」
逃げるように俺はその場を去る。
彼女も負けじと抵抗するが、本気ではなく甘え程度なので男の力ならまだ何とかなった。
「ふぅん……
この時、この出会いがこの後もっと面倒臭いことを生むとは思いもよらなかった。
三年振りに更新しました……(小声)