やはり俺の出張先が女子校なのは間違っている。   作:×ロッパ

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何番煎じか分かりませんが、宜しくお願いします。
では、まず序章を…。


⓪-上 こうして無情にも比企谷八幡の出張が決まった。

 

 

 

 

 

「比企谷、出張だ」

 

「「は(へ)?」」

 

 

 ある日の奉仕部の出来事である。

 目の前の国語教師、平塚静は相も変わらずノーノックで突然部室に入ってきて何の脈絡もなくそんなことを言い放った。

 

 

「平塚先生、何度も申し上げてはいますがノックを」

 

「おっと、流石にこれだけじゃ何のことか分からないな。悪い悪い」

 

「…はぁ」

 

 

 いつものように願いを口にしようとするも、空しくその言葉は遮られて諦めたようにして額を軽く押さえながら溜息を吐いたのは奉仕部の部長、雪ノ下雪乃である。

 

 

「比企谷。来週からしばらくの間、君には別の学校へ通ってもらうことになる」

 

「え、何で?」

 

「せ、先生っどういうこと!?」

 

 

 すぐ近くからガタッというイスを引く音と共に女生徒の声が部室内に響く。

 女生徒の名前は、由比ヶ浜結衣。

 俺と同じくこの奉仕部の部員であり、先程の素っ頓狂な声は俺と彼女のものである。

 さてさて、さっきまでは雪ノ下が紅茶を出して各々優雅な放課後ティータイムを堪能していたというのに、一瞬で重苦しい雰囲気に変わってしまった。もうこれは「うんたん♪うんたん♪」と小躍りして和らげるしかないな。え、誰がって?そんなの戸塚しかいないんだよなぁ…。 

 

 

「由比ヶ浜、少し落ち着きたまえ。今から順番に話していく」

 

「どうしてヒッキーが学校を出ていかないとダメなんですか!?」

 

 

 平塚先生が制止の言葉をかけるも、由比ヶ浜は一歩二歩踏み込んで勢いよく問いかける。

 いやなんか必死になってくれてるところ悪いんだが由比ヶ浜、出ていくってちょっと違くね?

 

 

「落ち着いて由比ヶ浜さん、その言い方だとまるで比企谷君が退学になってしまうみたいだわ。平塚先生は”しばらくの間”と言ったのよ」

 

「あ…そ、そうだっけ」

 

「けれど、それでも納得することはできないわね。平塚先生、一体どういうことか説明を」

 

「あぁ分かってる分かってる。だからまぁそう急くな、今からきちんと説明するよ」

 

 

 俺達の反応が予想通りだったのか平塚先生はすぐにゴホンと咳払いを一回してから俺達に向き合って口を開く。

 

 

「あー君達は、”音ノ木坂学院”という学校。もしくは…”μ's”というアイドルグループを聞いたことはあるかね?」

 

「? そのグループの方々は存じ上げませんが、学校名は少しだけ耳にしたことはあります」

 

「ふむ、そうか。他の者はどうだね?」

 

「みゅー…ず?」

 

「はぁ、石鹸っすか?」

 

「違う。いや私も最初耳にしたときは思ったものだが」

 

 

 俺が言うと、平塚先生は苦笑して答える。

 雪ノ下に至っては「何いってんだこいつ。ミューズとか正気か?キレイキレイこそ至高だろ。あぁん?」と言わんばかりの目を向けてきていた。

 なんだよいいだろ薬用石鹸ミューズ。リズムに乗って言いたくなるくらい語感良いし家族をばい菌どころか俺からも守ってくれるんだぜ?いや俺も守られる側じゃねぇのかよ。

 

 

「う~ん…みゅーず、みゅーず…」

 

 

 ふと由比ヶ浜を見やる。

 なにやら腕を組みながら俯いてうんうんと唸ったりみゅーずみゅーずと呟き続けたりしていた。

 しかしそれにしても、なんだかシャドーボールとかサイコキネシスを繰り出してきそうな名前だよな、ミューズ。いやースマブラでもあいつは強かったな。ずっと遠距離からシャドーボールを投げてるだけである程度は無双できていたから使いやすかった。あ?チキン戦法?何とでも言え。まぁ小町には「そのフリーザ様みたいなのズルい!」ってギャン泣きされたんだけどね。

 

 

「由比ヶ浜、何か思い当たる節があるのかね?」

 

「え~と…あ!ゆ、ゆきのんっパソコン使ってもいい?」

 

「え、えぇ。別にかまわないけれど…」

 

「ありがとう!」

 

 

 何か思い当たることがあったのかそう言うや否や、由比ヶ浜はぱたぱたと移動してノートパソコンを起動させ、検索エンジンを開く。

 それとほぼ同時に、雪ノ下と平塚先生が由比ヶ浜の所まで移動し、最後に遅れる形でのそのそと俺も続く。それは僅かばかりの配慮なのか、移動した先では画面が覗き込めるように一応の隙間が空けられていた。

 

 

「え~と確か…あ」

 

 

 少し考えた様子を見せた後に由比ヶ浜が不器用な手つきでぽち…ぽち…と検索バーに文字を打ち込んでいく。

 文字入力が人差し指や薬指だけでぎこちなく行われてる所を見ると、やはりこいつはパソコンの扱いはあまり得意ではないようだ。まぁ俺も普段から使う方ではないしな。調べ物があったら携帯を使ってやればいいのだ。家族に知られたくないことがあってもこれ一台で全て解決。そう、iPhoneならね!…まぁ俺はスマホ使いなわけだがそれはこの際どうでもいいだろう。

 

 

「ん~…あ、あった!ゆきのん、あったよ!」

 

「由比ヶ浜さん一体何の話なのかさっぱり分からないわ。人に説明をする時は主語をつけなさいって習わなかったの?文法も碌に使えないと将来ありとあらゆることで苦労してしまうのが目に見えてしまうわよ。この男みたいに」

 

「おいぼっちに急に話を振ってくるなよキョドって悪い滑舌で返しちゃうだろうが。それと俺は文法はちゃんと使えるっつの」

 

 

 どうもこんにちは。国語学年三位の比企谷八幡です。

 あまりに聞き捨てならなかったので、うっかり心中でさりげない自己PRをしてしまった。

 

 

「ほら二人共静かにしたまえ。…ふむ、スクールアイドルの動画サイトか。由比ヶ浜、君はどこでこれを?」

 

「えっと、最近友達から教えて貰ったんです。スクールアイドルって今凄く人気出てて…」

 

 

 ――――スクールアイドル。

 その名前だけは聞いたことがある。確か最近になって全国各地の高校で見られるようになって、一般の生徒だけを集めてアイドル活動をしていく集団のことらしい。

 何でも東京の秋葉原にあるUTX学院という女子校がブームに火をつけたのだそうだ。

 今ノーパソの画面に表示されているのは一つのプレーヤー画面であり、よく見ると再生画面の少し上側に『μ's START:DASH!!』と表示されている。どうやら動画のタイトルのようだが…。

 

 

「成程…。再生してもらってもいいかね?」

 

「あ、はい」

 

 

 カチッと一回左クリック。すると…

 

 

I say...♪

Hey,hey,hey,START:DASH!!♪ … … …

 

 

 スピーカーから数人の女生徒達の歌声と音楽がシャンシャンと聴こえてきた。画面に目を向けていると、なにやら可愛らしい衣装に身を包んだ女の子らが目に入ってくる。

 アイドルと聞いていたからもっとジャラジャラキラキラした装飾品を身につけているのかと思っていたが、意外にも無駄な飾りつけのないシンプルな衣装だった。

 この画面越しに見える女生徒達。

 歌って、そしてぎこちないながらも楽しそうにダンスを魅せているのが音ノ木坂学院のスクールアイドル、μ’sなのだろう。

 

 

「音ノ木坂、学院、か……」

 

 

 

 




読了ありがとうございます。
序章は3話に分けています。
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