やはり俺の出張先が女子校なのは間違っている。   作:×ロッパ

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序章③です
どうぞ…。


⓪-下 こうして無情にも比企谷八幡の出張が決まった。

刻々と進む時計の針もいよいよ最終下校時刻に近づこうとしている。

 先程まで聞こえてきていた運動部連中の喧しい掛け声も止み、グラウンドもすっかり緩やかな談笑ムードになっている頃だろう。

 

 

「さて、と…まぁここまで色々と話したわけだがそういうことだ雪ノ下。しばらくの間、比企谷は音ノ木坂学院の生徒となる。当然こちらにも顔を出す機会はほとんどなくなるだろうが、かまわないかね?」

 

 

 ふぅと一息吐くと、今度は向ける視線を変えて平塚先生は雪ノ下に確認の意味を込めて問う。

 

 

「………はい。そうですね、ここまでお話を聞く限りだと、もうこの件が覆ることはないと見てよさそうですね」

 

「うむ、まぁ確かに急な話でさらにこちらの勝手な都合で纏まったものだ。そこは本当に申し訳なく思っているよ。実は校長にも多少聞かれてね、友人と私と、そして色んな人と共に話し合ったんだ…。本当に今更だが、黙っていてすまなかった」

 

 

 雪ノ下に向かい、平塚先生は言葉と共に頭を下げる。

 

 

「そう、ですか。…それなら、私からはもう何も言えることはありません。既に今の内からデレっと鼻の下を伸ばして妄想を膨らませながら突っ立っているそこの男は、どうぞご自由にお使い捨てください。ただし、その男が公然猥褻罪で報道されても、我が部は一切の責任は負いかねますので」

 

「いやいやお前言える事出し惜しみなく超言ってるからね?なに、それは新しいツンデレなの?」

 

「へらへらと気持ちの悪い笑みを見せた挙句に訳の分からないことを言わないでくれるかしらヘラ谷くん」

 

「おい、いくら俺の眼が魚類っぽいからって淡水魚と掛け合わせるのはやめろ。…っていうか雪ノ下、お前なんか怒ってね?」

 

 

 さっきからずっと思っていたが、どうもムスッとした様子がこいつの表情から窺えるような気がしてならない…。部長である自分の所に連絡がこなかったのがやはり不満だったのだろうか?

 そんなことを考えながら雪ノ下に問いかけてみると、彼女はつーんと顔を少しだけそっぽを向かせて「別に…そんなことないわ」という呟きだけが返ってきた。

 

 

「ね、ねぇねぇヒッキー…」

 

 

 今度は由比ヶ浜が呼びかけてくる。その声音はいつもの彼女らしくないもので何か不安が入り混じったようなものだった。

 

 

「あん?なんだよ」

 

「ほ、本当に…行っちゃうの?」

 

「いやそりゃ俺だって行きたくねーっつの。でも仕事っていうのはどれだけ嫌だって言ったところで、それがまかり通ることはないからな」

 

「……何言ってんの?」

 

 

 馬鹿を見るような目で見られてしまった。

 ちっ、こいつ…。”社畜”とかいう日本社会の奴隷化システムの恐ろしさと悲しさについて一席ぶってやろうか!と考えたが、生憎と下校時刻が迫っている。それはまたの機会にするとしよう…。

 

 

「…まぁ要するにあれだ。どんだけ必死に足掻いてもその甲斐なく空しく決まっちまった以上は、拒否することすら許されずに、素直に首を縦に振って従うしかないってことだよ。つまり小学校の担任っていうのは生徒の気持ちを汲み取る気すらなく委員長を決めたがるということだな」

 

「なんかやけに話がリアルだ!?」

 

「いつものことだが君は、本当に余計かつ悲壮感漂う一言を混ぜてくるな…」

 

 

 いやだってあいつら本人の与り知らぬ所で役職とか係とかガンガン決めていくんだぜ?「図書係、君に決めた!」ってわくわくと心を躍らせていたあの頃の俺可哀想すぎるだろおい。

 もうほんと生徒会選挙みたいに委員長とかも信任投票で決めたほうがいい。

 

 

「っというかそもそも、だ。いくら移動先の所が女子校だからって別に何かが起こるってわけじゃないだろ。ラノベの主人公じゃねーんだよ。最初は少しだけひそひそと注目されてもな、そんなもんすぐに収まってここの生活と何ら変わりなく過ごしていくつもりだっつーの」

 

「あら、私には一週間後くらいに青い制服の公務員さんに冷たいステンレスの輪っかを掛けられてたくさんのフラッシュを浴びながら付き添われるビジョンしか思い浮かばないのだけれど?」

 

「お前の中の俺は既に報道の主人公を飾ってんのかよ…」

 

 

 しかも詳しい日数とか言わなくてもよかっただろ。なんでこの娘はいつも俺を傷つけることだけを目的とした具体説明を付けてくるの?

 

 

「……えと、じゃあやっぱり、行っちゃうんだね…」

 

「だからそうだって言ってんだろ。なに、まさかお前まで俺が行った先で何かやらかすと思ってるの?」

 

「あら、違うの?」

 

「お前には聞いとらん」

 

 

 キョトンとした表情で首を傾げながら聞いてきた雪ノ下だったが、俺はそれをバッサリと切り捨てる。

 だからなんで無暗に傷つけてくるのこの娘は…。

 

 

「えっ?ち、違!そういうんじゃなくてっ!…(行って欲しくないな)

 

「はい?ちょっ悪い、聞こえなかった。いや難聴系とかじゃなくてな」

 

「う、ううん何も言ってないよ。っていうかむしろヒッキーが何言ってんの?」

 

「由比ヶ浜さん。この男の奇怪な発言は今に始まったことじゃないわ。気にしてしまっては負けよ」

 

「もうなんなのお前?さっきからどんだけ口を挟んでくるんだよかまってほしいの?」

 

「私はただアドバイスをしてあげただけよ。ほら、私って負けることが大嫌いですもの」

 

 

 えぇそれはもうあのテニスの試合の一件でじゅう~ぶんにご承知ですとも。

 もうどうにでもなーれという気分でいっぱいになり、俺はもうそこからは言葉を紡ぐことはなかった。

 ほんと我が強いわ。このアマ…。

 

 

「と、とにかく!あたしっ何にも言ってないから!いい!?はいおしまいこの話はしゅーりょー!!」

 

 

 あぁそういえば君もでしたね…。

 それにこいつの場合は内面だけじゃなくて外側も出るとこ出てるよね。どこがとは言わんけど…。

 

 

「って言われてもな…。何かは言っただろ確実に。なんだよ?あ、ごめんやっぱいいわ。聞こえないくらいの声量で言われたことが良かった試しがないからな」

 

「なんか理由が悲しいな…」

 

 

 ガチの哀れみの視線を貰ってしまった。

 しかしまぁこれで良い。世の中知らないほうが良いこともあるっていうのは真理だ。だって親父が利用してたアダルトサイトがかーちゃんにばれた時俺どんな顔していいのか分からなかったもん。

 

 

「はぁ~~~あぁぁ…」

 

 

 溜息。ただしそれは俺でもなければ、雪ノ下でも、由比ヶ浜でもない。

 溜息の発生源と思われる方に視線を向ける。そこには呆れたような、しかしどこか口角を上げて楽しそうにしている平塚先生の姿があった。

 

 

「…全く、君が奉仕部(ここ)に入ってからそんなに月日は経ってはいないものの、少しは変わったかと思えば…。相変わらずだな君は」

 

「何度でも言いますけどね、人間そんな簡単に変わるもんじゃないんですよ。ころころころころと妖怪七変化みたいに変わったら、自分が自分じゃなくなるでしょう。俺に人間不信になれってんですか」

 

「あっはっは!…小僧、屁理屈を言うな」

 

 

 ゴスっ…

 

 

「痛っ!?」

 

「そもそもあなた普段から人間不信じゃない…」

 

「あ~確かに…。たまに異常なくらい疑ってる時あるよねヒッキー」

 

「いってー……あん?いや俺は悪くねぇよ。かつての俺の純真で無垢な心を弄んだ汚い大人と周りの環境が今の俺を築き上げたんだよ。あー、痛…」

 

 

 俺は悪くない…。社会が悪い社会が。

 

 

「サラッと全てを他人のせいにする辺り、本当に清々しい程腐ってるわね貴方…」

 

「あはは…まぁヒッキーだし」

 

「まぁ下衆で汚い大人が一定数いるということには同意だけれど」

 

「同意なんだ!?」

 

 

 しかも俺下衆だとまでは言ってないしな。だが流石雪ノ下だ。俺のこんな腐った戯言に僅かでも同意してくれる奴なんて紀元前くらいまで歴史を遡ってもいないだろう。やはりぼっち同士最終的な考えは交叉するものなのだろうか?シンパシーを感じざるを得ない。おいおいこれもしかして恋の予感も感じちゃうんじゃね?フィーリングオブラブじゃね?

 

 

「…なぁ雪ノ下。もしよかったらやっぱり俺と友」

 

「だけど貴方とは一生相容れることなんてないから安心して。ね?」

 

「えーだからまだ最後まで言ってないよー」

 

 

 にっこり笑顔を見せながら雪ノ下はやんわりふんわりと俺の微かな予感を一蹴した。まぁ知ってたけど別にそんな笑顔で言わなくてもいいんじゃないですかね…。

 

 

「はぁ…本当に私はなんでこんな男を紹介してしまったのだろうか」

 

「先生っ!今からでもキャンセルできますよ。ぜひ相手方にクーリングオフのお勧めを!」

 

「っ、いいやそうはいかん!私は約束は守る女なのだ!絶対に君を友人の元まで送ってやるっ」

 

(あんたは約束を破られる方だろ…)

 

「……あ?」

 

 

 直後、先生の足が動いたと思ったら鋭い衝撃が俺の(すね)を襲った。すごく…痛いです…。視線も痛いです。

 

 

「全く君は…。女性に対しての扱いもまるでなっていないな。丁度良い機会だ。その腐った精神と一緒に、デリカシーというものも学んできたまえ!」

 

「デリカシー。この男がそんなものを身に着けられるとは思わないけれど…。……比企谷くん」

 

「あはは…。……ヒッキー」

 

「?」

 

 

 さすさすと両手で脛をさすっていると二人から呼ぶ声が聞こえたのでそちらに向く。

 今度は一体何を言われるのかと少し身構えて言葉を待っていると……。

 

 

「「頑張ってね(!)」」

 

「…………」

 

 

 何の変哲もないそんな激励の言葉が、俺に向けられた。

 正直完全に不意を突かれたので俺は咄嗟に反応をすることができずにいた。

 しかし、このまま黙っているわけにもいかない。シカトされた時の辛さと虚しさは誰よりも知っているから。

 最低限返事をしようと試みた結果、俺が腹の底から捻り出せたのは…

 

 

「あ…お、おぉう……」

 

 

 …え?これ俺の返事なの?呻き声だろこれ…。やべーノーカンとか言われたらどうしよう。正直もうこれ以上の本気を出せる気しねーぞ俺…。

 しかし、俺のそんな不安はどうやら杞憂だったようであり、二人はふっと微笑んで返してくれた。なに、こいつら女神なの?

 

 

「よし!それじゃあそろそろ帰ろっか?」

 

「そうね。今日はもうこの辺りでお開きにしましょう」

 

「お、おう」

 

 

 

          ☆

 

 

 

 各々が帰り支度を済ませて、ぞろぞろと廊下に出る。

 がちゃがちゃと施錠をしている雪ノ下をよそに、俺は窓際にもたれながらぼーっと外を一望する。

 すでにGWも過ぎて五月も中頃に差し掛かろうとしているものの、桜の花びらは未だにひらりひらりと舞っている。もっとも大半は雨の影響なりで地にへばりつき、踏まれに踏まれて散り散りになり、最終的には見る影も無い運命を辿っているのだが…。

 

 

「もうすぐ、梅雨だな」

 

「うおっ!?びっくりした…。なんすかいきなり」

 

 

 突然横から声が聞こえてついぎょっとしてしまい、そちらに視線を向ける。

 

 

「あぁ悪い悪い、特に深い意味はないよ。ただ梅雨の時期で思い出したことがあったからちょっと君に言っておきたいことがあってな」

 

「あぁ大体分かります。雨の日が続くと専業主夫への情熱と想いが膨らんでくるんですよね」

 

「普通に雨が続くと家から出たくないって言えばいいだろう…。っていうかそうじゃなくてだな!」

 

 

 どうやら俺的ベストアンサーはお気に召さなかったご様子である。

 あれれーおかしいなー?俺だったら逡巡(しゅんじゅん)の迷いなくコイン進呈するんだがな…。

 まぁこの人的にはコインよりも恋が欲しいのかもしれない。もうすぐ六月だし。六月の花嫁(ジューンブライド)ってやつだっけか…。

 と、ここまで考えて俺は一旦平塚先生の言葉に耳を傾けるとする。これ以上考えたら悲しくなりそうだし…。

  

 

「…実はな、音ノ木坂学院の廃校は完全に決まっているというわけではないんだよ」

 

「え?や、でもさっき」

 

「六月だ」

 

「…あのー、一体何の話を」

 

 

 花嫁の話ではないだろうかと心の中でびくびくとしながらも、俺は耳を傾け続ける。

 

 

「いいから聞きたまえ比企谷」

 

「………」

 

 

 先程までとは別に、俺と平塚先生を包んでいた雰囲気が一転して変わる。

 廃校が完全に決まったわけではない。このことに対して、俺は妙な引っかかりを覚えた。

 

 

「……六月に、音ノ木坂学院は恒例行事として、”オープンキャンパス”が開かれるらしい」

 

「オープンキャンパス?」

 

「そうだ。そして見学に来る中学生にアンケートを書いてもらい、その結果が(かんば)しくなければ本決まり…ということらしい」

 

「……俺にどうしろってんですか」

 

「いいや比企谷。君は確かに捻くれていたり腐った信条を持ち合わせていたりその上高二病患者といういわゆる嫌な奴だが、ただの一介の高校生だ。別に何もしなくてもいいよ」

 

 

 ちょっと?そう言っていただけるのは恐悦至極なんだけど前半のそういう台詞って言った後から良い所とかをばんばん挙げてから(しめ)たりするんじゃないの?ただの一介の高校生!で終わらせたら俺ただの一介の高校生(クズ)じゃねぇか。マイナス要素しか残らないよ…。

 

 

「しかしな、もし君がさっきの動画の女の子達と会うようなことがあれば、その時は是非彼女らを手伝ってあげて欲しいんだ。彼女らは、本気であの学校を…救おうとしている」

 

「…………」

 

 

 廃校。それは近年少子化が進んでいる現代社会では別に珍しくもなんともない。

 入学希望者が全くいないというだけで、その学校は需要がないと判断されるところもあるのだ。

 さっきの動画の女生徒達は、その学校に一体どれだけの思い入れがあって、そしてどんな覚悟でスクールアイドルという手段を以て廃校問題に立ち向かっているかは分からない。だがそれはあまりにも、膨大なリスクが含まれている一世一代の大博打。

 

 

「……まぁ、廃校の阻止を目的にアイドルをする奴らを俺なんかにどう手伝えるかは分かりません。正直今の時点だとピンと来るものもないですし」

 

「はは…”嫌”とも”はい”とも言わない辺り、君らしいな。オーケーだ。今のところはその返事で充分だよ」

 

 

 やれやれと、平塚先生はどこか安心したように微笑んで肩を(すく)めた。

 

 

「ヒッキー、お話は終わった?」

 

「平塚先生、鍵をお返しします」

 

 

 話に区切りがついたところで、またしても横から声がかかった。

 由比ヶ浜と施錠を終えた雪ノ下がこちらにやってきて平塚先生に鍵を渡す。

 

 

「あぁすまんな、戻しておくよ」

 

「よしっ!じゃあゆきのん、帰ろっか」

 

「こら由比ヶ浜。君は職員室に来るんだろう?」

 

「あ、そ、そうだった…」

 

「はぁ…忘れてたのね」

 

「後で行くから、二人は先に行って待っててくれ」

 

「はいっ分かりました。ゆきのん、いこ?」

 

「どうして私まで…」

 

 

 そんなやりとりを経て、二人はそのまま階段の方へと歩いていく。

 「バイバイ!」と明るくこちらに手を振ってくる由比ヶ浜と、「また明日ね…」とこちらを見ながら口元だけを動かす雪ノ下に対して手だけをスッと挙げて応えてから、俺もゆっくりと歩を進ませる。 

 しかし、一歩二歩と進ませたその時だった。

 

 

「比企谷」

 

「はい?」

 

 

 背後から、再び平塚先生から声が掛かって俺は渋々そちらに向いた。

 まだなにかあるのか?と視線で聞く。すると

 

 

「健闘を祈る」

 

 

 ぐっと親指を突き立ててそう言ったあと、平塚先生はクルっと背を向けて廊下を歩いていく。

 窓から差し込んできている日差しによって、廊下の影が実に良い味を醸し出し、まるで青春ドラマのようなワンシーンを見事に演出している。

 

 

「なんだよ健闘って…」

 

 

 そして、それからはもう振り返ることもなく、平塚先生は廊下のなお奥へと消えて行った。

 ヒールがタイル仕様の廊下をかつっかつっと叩く音だけが辺りに残り、俺はそこから動けずにいてぽっつんと残される形になってしまっている。

 あー…鬱だ。鬱だよこれ。来週からのことを考えると鬱すぎて胃に穴が開きそうになるどころかハチの巣になりそうなレベル。女子校に行くって男子だったらもっと血湧き肉躍るものじゃなかったのかよ。吐き気しか湧かねーし心が沈みしかしねーよ。

  

 

「はあぁ~………ん、でも待てよ?」

 

 

 平塚先生は向こうの生徒と会ったら協力してやってほしいとか言ってたけど、向こうはそんなこと思ってないんじゃね?むしろ女の花園に男が土足で立ち入ってくるなんて話になってるだけでも、学院中の女子とか黙ってないだろ。ソースはビリビリな中学生が所属している常盤台中学。

 そうだよそうだ。仮に俺の方から協力を申し出たところで絶対に歓迎されない自信がある。

 十中八九「ちょっとこいつ誰ー?www」「女子校で手伝いしたいとか変態じゃね?www」「まじキモいw訴訟www」「「「…え、つーかマジで誰?(真顔)」」」ってなるのが目に見えるんだよなぁ。

 やっぱりあれだな。女子の頑張る姿っていうのは近くでみるより遠くからたまにチラッと見るくらいがいいんだよな。仮に俺が可愛い女の子と仲良くしたいと思っても可愛い女の子は「ひっ!?嫌…近づかないで…」って思ってるもんな、分かるぜ。

 

 

「はあっぁぁ~…」

 

 

 さっきよりも深く長い溜息を漏らして、俺はようやく引きずるようにして歩を進ませる。

 あー…帰ったら質問責めにされそうだなこりゃ…。帰りたくねぇ…。

 

 

「はあっぁぁぁ~……」

 

 

 もはや溜息しか出ない。

 終わりの見えない課外活動とやらの始まりは、丁度一週間後の今日…。

 しばらくの間とは言え、ここで過ごせる僅かな期間などあっという間に過ぎ去ってしまうのだろう。

 そして、時間というものは待ってはくれない。

 静かな空間にじーっ…と壊れたラジオが放つような音がした直後、いかにも合成音声だと言わんばかりのメロディ、もといチャイムが校舎内に響き渡った。

 それは完全下校時刻を知らせるものであり、同時に、今の俺にとっては早くも一日が過ぎてまた近づいたと、憂鬱な気分を増幅させるには十分なものだった。

 

 

「っ!?」

 

 

 校門を抜けると、ふと夕日が視界に入って突然の眩しさに目を細めて顔をしかめた。

 眩しさから逃れるように、手で顔の上辺りを覆い隠して指の隙間からしばらく夕日の方をぼうっと眺める。

 そして、丁度今よぎったこのどこかやりきれない気持ちを喉元まで持ってきて、俺はそのまま吐き捨てるようにしてぼそっと呟いた…。

 

 

 

 ―――やはり俺の出張先が女子校なのは間違っている。

 

 

 

 

 




読了ありがとうございます。
また、ここまで読んでいただきありがとうございます。

やはりどこかキャラ崩壊とも思える部分があったかと思いますがいかがでしたでしょうか?
さて、この作品のタイトルにも使われてる『出張』というワードですが、正直日本語的にはどうなんだということですが、お気にされないようであれば今後も是非読んで頂けたらなと思います。
ではまた次話で!
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