ようやく1話です。
どうぞ
オス!オラ八幡!オラ、東京さ来ただ!
というわけでやって参りました東京ですはい。来てしまったんですはい…。
「人多すぎだろ…」
神田駅のホームに降り立って周りを見渡すと、人、人、人でごった返していた。にぎ…にぎ…とか聞こえてきそうである。ふぇぇ、帰りたいよう…。
しかし、もう泣き言は言っていられない。遂に来るべき日が来てしまったのだ。
目の前に広がるこの人波に、今はただ何も考えずに身体を
そしてそんなこんなで改札を抜けて、出口を抜けて出るもやはり外も人の数がとんでもなかった。
早朝に家を出て、丁度今は猛烈な通勤ラッシュのピークの時間帯となっている。
しまった。こんなことならもう少し時間をずらしておけばよかった。比企谷八幡一生の不覚。
目の前に広がる雑踏の景色はただ見ているだけで息苦しさを感じ、堪らずうへぇと声が漏れてしまうが、生憎その数に圧倒されている暇はない。
前からも後ろからも人の出入りは激しく、さっきから数回に一回の頻度でドンと肩と肩とが当たったりして逐一謝っていたらキリがないほどだ。
止まることなく常に動き続けるとかこいつら回遊魚なの?さかなクンかよ。
なんにせよいつまでも立ち止まっているのはマズいと判断し、ひとまずは俺もこいつらに倣って目的地までの一歩を踏み出した。
☆
「ん?なんだこのバカ長い階段…」
GoogleMapを頼りに目的地までほろほろと歩いていると、何やらかなり上の方まで続いている石段が目に入った。
「…少しだけ見えるな。あれは…鳥居か?」
少し距離を取ってから遠くに目を凝らしてみるものの、微妙にしかその姿を確認することが出来ない。
先が見えそうで見えないとか人生かよ。まぁいずれにしても、鳥居があるってことならその先は神社か何かでもあるのだろう。これからの行く末を想って一つ参杯してみるのも良いが、生憎と今は時間に余裕があるわけでもない。まぁまた気が向いたらでいいか。
そう思って体をくるりと翻した時だった。
「あれー?お参りしていかへんの?」
「!?」
声が聞こえた。
視線を向けてみるとなんとそこには……巫女さんがいた。なんとってなんだよ。
っていうか巫女さんってなんだよちょっと。材木座がはしゃぎそうじゃねーか。
謎の巫女さんは掃除をしていたのか
っていうか巫女さんとからき☆すた以外で初めて見たわ。見たところ髪色も似てるし、「いい加減にしなさいっ!」とか言われるんだろうか…。
「あ、急で驚かせてしもたかな?なんかさっきから上の方を眺めてたみたいやったから、どうしたんかな~って気になってたんよ」
「い、いやなんでもないでひゅすみません」
「え、なんで謝るん…?」
「え?や、ほらあの悪いことしたらまず謝れってかーちゃんに言われてるんで」
よしよし少しばかり早口になってしまったが噛んだことは気づかれてないな。いいえ、どう考えても気づかれています本当にありがとうございました。HaHaHa!ウェーイ!はぁ、死にてぇ…。
ここぞとばかりにいつも教室の隅で駄弁っているリア充グループの連中に倣って少しはハイテンションになってはみるものの、やはり鬱な時は鬱なんだなと改めて現実に打ちのめされながら、俺は平常心を保ちつつ謎の巫女さんの言葉を待つ。もう二度とあんな奴ら信じない、絶対にだ。
「…ぷっ、あははっなんなん君面白いなー!」
「…そうすかね」
突然吹き出してお腹を押さえながらけたけたと笑い出す巫女さんの言葉に、俺はよく分からないまま言葉を返す。
確信した。俺この人苦手だわ。
「はぁ…ね?それで、君はどこから来たん?この辺りじゃ見かけへん顔やんな?」
「まぁそうすね。こっからだと少し遠い所ですかね」
「えー気になるわー。もったいぶらんと教えてーな」
「え、っと…」
ちょっと何なのこの人ぐいぐい来るんですけど。
おっとりとしていておとなしそうに見えるのに実は肉食系女子でしたーキャハ☆とかエロ漫画かよ。
大体その理屈でいくと常日頃から小動物の如くおとなしい戸塚も実は裏で喰いまくってることになっちゃうだろうが。戸塚はそんなことしない。なんなら放屁もしないし排便もしないくらいまである。
そんな昭和アイドルに抱くような幻想染みたことを考えていると、一体いつ表情を変えたのか目の前の巫女さんはむぅと頬を膨らませていた。
俺なんか悪いことしましたかね…。
「むー…まぁええわ。ウチらは今知り会ったばかりやし、あんまり色々聞くのも失礼やもんな」
「…すみません」
「別に謝ることやないやん。全然いいよ、どうせまた会えるから」
「いや、そんなの分かりっこないでしょう…」
「ううん、分かるよ」
告げるんや。
ぽつりと。そんな一言を漏らし、巫女さんは懐から一枚のカードを取り出した。
「…カードがウチに、そう告げてる」
ぴっと見せられたそれはタロットカード。
目に飛び込んできたカードのイラストは赤い羽根の天使がラッパを吹いているものだった。
☆
一難去ってまた一難とはよく言ったものである。
どれくらい言うかと言うとぶっちゃけあり得ないくらい言っている。
謎の巫女さんの襲来からしばらくして、俺は再びgoogle先生が用意したレールの上を歩く作業に戻っていると少し先にある一軒の和菓子屋に目を惹かれ、その場でしばし立ち止まった。
そういや朝からなにも食べてねぇな俺…。
そんな意思に呼応するかのようにして俺の腹は情けない音をあげる。
「……後でコンビニ寄るか」
まぁ常識的に考えてこんな朝早くからやってる和菓子屋なんてないだろうということで至った結論である。
そういうわけでさっさと先を急ごうと歩を進めた時だったが、すぐにまたそれは中断された。
バシャっという音が聞こえた。
一体何の音かといつもならその音源に目を向けているのだが、今回に限ってはそんな動作はなく、何の音かという事よりも何が起こったかということに気を引かれていた。
「うわ~…お姉ちゃん何してるのさ」
「ゆ、雪穂が急に話しかけてくるからじゃん!ってそうじゃないやっ、あのっごめんなさい!」
すぐ横から二人の少女の声。呆れたような声が聞こえて、焦りと困惑が混じったような声が俺に向けられてちらっと目を向けるもすぐまた戻す。
何が起こったかというと、まぁあれだ。
このお姉ちゃんって呼ばれた娘が水撒きしてる所へ偶然にも俺が通りかかって見事ジャストミートしてしまったということだ。
わーいきょうもあついしきもちいいからちょうどよかったなー。
そんなわけあるかです。もうなんだよ今日は朝早くからこんな所まで駆り出されるしなんか変なカード持った謎の巫女さんにエンカウントするし冷水ぶっかけられるしで良いことなんてないじゃんかよう。
もしかしなくても神様ってバカなんじゃないの?こんだけ不幸指数稼いでんだから「もういい…もう(帰って)休め……」みたいなイベント出しちゃってもええんやで?(懇願)
「も~大体お姉ちゃんは周りを見ていなさすぎだよ。この間だってお母さんに」
「い、今その話関係ないじゃんっ!それになにさっ雪穂だって」
「―――。―――!」
「――っ!?―――!!」
「………」
ああ言えばこう言い、こう言えばそう言う。
まさしくそんな
ぽたぽたと前髪から足元まで滴り落ちる水滴をぼうっと眺める俺の傍らで、少女達の論争は続きむしろ苛烈さを増している。
あーどうすっかなぁこれ……。
ぼんやりと考えていると、ガラッと引き戸が開けられて中からもう一人、明らかに傍らの二人よりも年上であろう女性が出てきた。
「ん~…ちょっとあなた達~もう少し静かになさい。ご近所迷惑でしょう…」
今起きたばかりだったのかむにゃむにゃとした低い声を発して目を擦っている。
なんで寝起きだって分かるのかって?だってこの人寝間着一丁なんですもの…。っていうかボタン上二つ止まってなくてちょっとはだけてるんですけど!
「「お母さん!」」
「ん~?…」
「…どうも」
女性が「ふぁ…」と一回欠伸をしながら俺の存在に気づき、今にも瞼が落ちそうな眠たげな
べ、別に万乳引力の法則とか働いてないよ?ホントホント目線そのまま、ハチマンウソツカナイ。
「あ、あらいらっしゃいませ。…あの、もしかしてお客さん?ごめんなさいまだ開店時間じゃないんですよ」
「いや、違います」
「ちょっ!?お母さんっ!!」
「なによ雪穂、騒がしいわねさっきから…」
「いや前!!」
「えー?…あ、あらやだごめんなさい…」
言われて、お母さんと呼ばれた女性は頬を赤く染め、いそいそとしながらもおぼつかない手つきで前のボタンを閉め始めた。
…っていうかさっきから気になっていたが、お母さん…だと?どこからどう見ても平塚先生とタメを張れる程の若々しい印象が持てるんだが…。
いや、でもこれならさっき俺が目線を吸い寄せられそうになったのも無理はないな!え?平塚先生の谷間?あ、大丈夫っす…。
と、そんなことを考えながら明後日の方向に目を向けていると先程お姉ちゃんと呼ばれた女の子、つまり事の張本人が頭を下げてきた。
「あの、本当にごめんなさい!私、ちょっと妹と話してよそ見しててっそれで」
「あ、あーいや別にいい。気にしてない。っていうかこっちも不注意だったからな。それより、そっちは濡れたりしてないか?その、返り水とかで…」
「へ?」
「あ、いや………」
…………。
やべー吃りまくって聞きとられてないパターンじゃないのこれ?
ほらなんかあちらさんぽかんとしてるよ。呆気に取られてるよ…。
あーやっぱ余計なこと言わなきゃ良かった。ちょっと余裕見せてたまにこうやって相手のことを気遣う紳士的スタイルで行ってみたらこれだよ。男ならガンガンいけとか言ったやつは今すぐ出てきて俺に謝った方がいい。
「あー…その、だな」
お互いに上手く会話が始まることがない、妙な空気が漂い続ける中で堪らずこめかみの辺りをぽりぽりと掻きながら上手く繋げられる言葉はないかと脳内で模索する。
しかし、言葉を見つけるよりも先にふと沈黙は破られた。
「あ…は、はい!私は大丈夫です!ありがとうございますっ!!」
「え~っと…私にも、責任の一端はあるので…。だからっごめんなさい!」
「全く、本当にこの娘達は…。私からも言わせてもらうわね。本当にごめんなさい。それと、ありがとう」
「あ、いやちょっ、本当に気にしてもらわなくて大丈夫ですから」
三方向からそれぞれ頭を下げられて、俺は居心地の悪さを痛感するしかなかった。
だって今ここはどこだと思う?路上だぞ?しかもこんな朝っぱらから複数の女性を謝らせるとかそれこそ雪ノ下の思い描いた脚本に近づいてしまうじゃねぇか。っていうかいまこの状況を目撃されて通報でもされたらまじでチェックメイトだっつの。そして俺は何回頭に「あ」をつけるんだよ医薬品メーカーかよ。
そんなぶれぶれな俺の心情も知られることはなく、それどころか次の瞬間とんでもない提案が突き付けられる…。
「いいえ、そういうわけにもいかないわ。…ねぇ、もし良かったら朝御飯をご馳走させてくれないかしら?」
「はい?」
「おーいいねそれ!私それ賛成っ」
「いやいやちょっと待っ」
「こんな事でお詫びになるか分からないけど、どうかしら…?」
結構です、と喉元まで出かかってるその一言。
しかし、つい先程から限界の音を上げている俺の腹が中々言わせてくれない。
まぁでもあれだな。女の人がわざわざここまで言ってくれてるし、頑なに断るのも失礼なんだよな。
ソースは小町。
っということで、気が引けるが俺は彼女らの提案を甘んじて受け入れようと思う。
オナカ、スイタ……。
「あのっ私からもお願いしますっ!ぜひお詫びさせて下さい!」
「……そうだな。じゃあお言葉n」
グ、ググ~ッ…! … … …
「………」
おぅふ……。
本日一の大きい返事ありがとうございましたー、ってか?
無性に気まずくなって目を思い切り逸らすが、瞬間目の前からぷっと噴き出したような声が聞こえた。
まぁ、そりゃそうなるよね…。
「っぷ、あはは!」
「あははははっ!」
「くすくす…ごめんなさい、それじゃあご飯の支度をするわね。なるべく早くに…ふふっ」
「…うす」
まぁ生理現象だからな。
うん仕方ない仕方ない…。
読了ありがとうございます。
今回はラブライブキャラ数名出てきましたね。
一体誰でしょう(すっとぼけ)
では次回もよろしくお願いします!