多分こうした方が見やすいよね…よね?
-----博麗神社:石段を歩く最中-----
石段を15,16段進んでる中で、すぅっと5分も前に浮かんだあの問いが巡り始める。俺はこのまま帰っていいのか。何も解決の出ないままに日常に戻って良いのだろうか。
自然と歩く速度が遅くなってきた、それを霖之助さんは見逃さず声をかけてきた。
「どうしたんだいハル君。」
「なんていうか…このまま帰るのは本当に良いのかって。」
褪めたように気持ちが沈みゆく自分は、行き場がないこの問題をまずは今一番の理解者である霖之助さんにぶつけていた。
「ふむ?もしかしてまだ観光をしていたいとか?」
「いや…なんて言えば良いのか。まだやり残した『何か』が有るって、心ではそんなことないように思えてるはずなんですけど…体がやけに引き戻されるようで…」
「ほう…それは些か、変わったことに憑りつかれているね。僕の目から見てそう難儀な問題が残されている様には思えないけれど。」
霖之助さんは、この問いに悩むような、答えを『敢えて』言わないようにしているのか分かりにくい仕草で考え込み始めた。
「僕の見立てでは、どの第三者的な視点があっても君が幻想郷に引き込まれる要因は……単なる『神隠し』の一種でしかないと思っている。勿論、僕はどこにでも居るような商いをしている人間だ。故に特殊な判別材料があるわけではない……いや、だからこそ。この場合においては特別な理由は当てはまらないと思っている。」
この言い方をされると、どうあっても納得したくなるような気がした。お互い関係が親友というほどまで良好というほど時間は経っていない。霖之助さんが特別な能力があるとか、その手の魔法的、もしくは神聖的な品を持ち合わせている…なんて思ってはいない。それでも納得できるような『必然性』がこの二言にはある気がした。
が、それを聞いても不思議とまだその逆であると思っている自分が居る。これには文句の一つも言いたくはなるだろうが、霖之助さんはその前に与えれる限りの目印を提示してくれた。
「ま、今は議論したとしても仕方がないさ。何しろ僕らには『何一つ証拠がない』。だから、その手の問題の専門家こと『博麗の巫女』に聞いてみるってわけさ。」
「ですよね…」
その通りだった。自分が答えを急ぎたいのは山々だ。でも何も知らないんだったらここで何を言っても意味がない。
それを再確認してからまた石段を上る……
が、
「言っておくけど。」
上から…幻想郷に来て初めての女性の声。
「私は慈善団体ではないんだから、もう少しご立派に言ってもらえないの?」
その声を元に上を見上げると…大きなリボンに黒の髪。服は、赤と白の巫女服に近いものだが…肩と腋が露出している何とも意味不明な恰好。
先程まで掃除をしていたのであろう竹箒を片手に、太陽を使って自分の尊さを説くような立ち姿をしている…
「お、女の子…?」
「おや、てっきり僕は…困った人には類を見ない手厚い救いをもたらす素晴らしき慈愛の人だと思っていたんだがな…『博麗の巫女』さん?」
「アンタ、それ褒め言葉にもなってないからね…」
「え…え?あそこに居るのが霖之助さんの言う博麗の巫女なんですか!?『あの身なり』で!?」
「ちょっと!私の格好はどう見ても普通に可憐な巫女でしょう!?そんな言い方する人はじめてよ!」
「あのだなぁ霊夢。仮に柄は巫女の服だとしても、普通は腋や肩ははみ出していないと思うよ?僕としては、少し露出を減らした方が美しいんだが。」
「アンタの意見は聞いてないっての!!」
…これは。厄介な出来事に巻き込まれたものだ…。
-----博麗神社-----
「…おおお。」
「…何驚いてるのよ。別に変ったところなんてない唯の神社だと思うけど。」
「まぁまぁ。誰しも神社というのは一時心を躍動してくれるものだろう?」
「霖之助さんこそ何言ってるのよ…調子狂うわ。」
確かに、これは普通の神社に見えてしまうかもしれない。しかし、先程から幻想郷の結界を維持する場所であることを思うと、これには感嘆の一つも言ってしまいたくなる。
「とにかく、話は中で聞くわ。こちらから上がって。」
「あっはい…失礼します。」
『博麗の巫女』に促されて、社の本殿正面から右側に回り、8畳程の部屋に通された。
ちょうど応接室にピッタリなテーブルと座布団4つが置いてある、現代ではまず見かけないんだろうな…という初々しさと懐かしさを含んだ部屋だった。
「今お茶用意するから。適当に座ってて。」
その言葉に沿うように座布団に腰かける。先程まで大変な出来事の連続だった俺にはこの座布団の心地一つで急速に癒されるような気がした。とは言っても、休もうにも心は落ち着けなかった。
「はは。少し気持ちが堅そうだね。」
「そりゃあ堅いですよ…。まだ完全に休めるわけではないですから。」
「でも、とりあえずは腰を落ち着けて良いと思うよ。事を急いでも良いことはない…だろう?」
「ですね…」
心持ちを切り替えて、これからの会話に備えることにしよう…
「はい。大した接客ではないけどそれは気にしないでね。」
そう言いながら、緑茶を差し出される。
「ありがとうございます…えぇっと。」
「『博麗霊夢』。さん付けとかなしで、気軽に霊夢で良いわよ。」
「分かりました…霊夢。」
「なんか、アレだね。新婚ホヤホヤの夫婦みたいだ。」
「いい加減にしないとその無駄なイケメン顔蹴飛ばすわよ。」
「ははは。雑談はさておき、本題に入ろう。」
「霊夢。事のあらましというか、全体像はわかるとは思うけど…」
「えぇ。『神隠し』でしょ?紫の奴、面倒くさい時期に限ってこういうことしてくれるんだから…代わりに金の一つでも貰わなきゃやってられないわよ。」
「やっぱり霊夢はこの手の問題の引受人…という感じなんですね。」
「まぁね。というより、結界の管理者が私だからどう転んでも最後は私の出番になる。アンタがこれから外の世界に出ようって言っても、まず私が許可しなければ通れないわ。」
「そうなんですか…でも、少なくとも帰ることはできるんですよね…良かった。」
「そうね…本来なら、ね。」
その言葉に。俺も、霖之助さんも顔を覗き込む。
「…つまり。」
「そのつまり…『厄介』な出来事があったのよ。」
-----次回「『帰れない』。そして選択肢」へ… -----
今回は前篇ですので長い後書きはまた後編で
早く投稿できるようみなさん祈ってください(((