結構荒削りなので所々修正兼ねてお時間をくださいな……
—————————————夕暮れ時、『学び舎』の正門前
――――――――立川 ハル
「さて、着きましたよ。」
「お、おぉ…」
祢々と適当な雑談をしながら、ようやくと慧音先生の居る『学び舎』へ到着した。
そこまで大きいかとも図れないが、学び舎と名前が付くだけの立派な佇まいは感じられた。
驚くほどではないかもしれないけど、現代にはない独特の感じが俺にとっては不思議と高揚感を与えてくれた。
「では、夜になる前に早く慧音先生の居る部屋まで行きましょう。」
会釈のような会話もそこそこに、俺たちは正門の隣にあった入り口に向かっていく。
内装も、古めかしい雰囲気はあっても学びを教える場所というのがすぐに感じられた。廃校探索でもしてるんじゃないかって気もしてきたぐらいに、今風の学校には見えない。
「聞いてなかったけど、慧音先生は普段どこにいるんだ?」
「普段…というより、基本的に学び舎で先生は生活してます。」
「学び舎で?余程熱心な先生なんだな。」
「いえ、元々大きい建物だったのでその一部を自分の家としているんです。私の家も似たような配置になっているんですよ。」
「じゃあ、ある種住み込み先生って感じなのか。」
「そうですね。私も慧音先生のお手伝いとして家をお貸ししてもらっている次第です。」
「なるほどな…」
そうこうしてると、『上白沢慧音』と札のある部屋に着いた。
「では、私が先に慧音先生に声をかけて来ますので後から来てください。」
「分かった。」
すると、祢々は部屋の戸を三度叩く。
「慧音先生、祢々です。お話があって来ました。」
「祢々か?どうしたんだ。」
「外の世界から来た人を、暫く空き部屋で住まわせてほしいのですが…」
「外の世界の…?その人も隣に居るのか?」
「はい。」
「す、少し待っていてくれ。」
そう聞こえると、慌ただしく物音が数刻響いた後
「良いぞ、入ってくれ。」
と、戸が開いた。
「「失礼します…」」
挨拶をしながら、中へ入る。
ぱっと見、教授とか研究者と呼べるような本の山積みされた部屋。
そして、そんな部屋に似つかわしくないような綺麗な女の人が奥の椅子で座っていた。
……半日経った今も思うことだが、相変わらずこの世界の風習というか感覚ってどうなっているのか問いただしたくなる。
「とりあえず、その椅子に座りなさい。」
威圧感……とは少し違うが、何とも言えない空気感の中で椅子に腰かけた。
「祢々、この青年が外の世界から来た人か。」
「はい、ハルという名前のお方です。」
「えっと、立川ハルです。」
彼女の気に押されるように名前を出す。
「初めまして、私は上白沢慧音です。よろしくお願いします。」
「あ、こちらこそよろしくお願いします…」
身持ちが固くなっている俺に、慧音先生は優しく手を差し出し握手をした。
「そんなに固くならなくても大丈夫ですよ。」
「あはは…なんだか身構えてしまって…」
「外の世界から来てお疲れなのでしょう。今はゆっくりと腰を落ち着けてください。」
「ありがとうございます。」
気迫こそ凄いが、手厚く呼びかけてもらったお陰で落ち着いた雰囲気で話すことが出来そうだ。まぁ、色々あった手前疲れがあるのも嘘ではない。
挨拶も早々に、祢々が本題を切り出した。
「それで、先程お話した通りハルさんを学び舎の空き部屋で住まわせて欲しいのですが…」
「そうだったな。確か、隣に使われてない部屋があったか。」
「はい。そこを彼の生活部屋にしてもらえませんか。」
祢々が太鼓判を押すように慧音先生に聞くと、彼女は少し悩みながら
「…外の世界から来て、住む場所がないことを考えればすぐにでも承諾したいが…」
「……何かできない理由があるのですか?」
「……いや、特に問題はないよ。いきなり突飛なことを言い出したものだから少し悩んでしまっただけさ。」
「ということは…」
「ええ。小汚いところではありますが、住んでもらって構いませんよ。」
「よ、良かった…」
余計にホッとした……流石に許可してくれないかと思っていた分、尚のこと重荷が減るような感覚だ。
そんな話をしてると、慧音先生は立ち上がり書類を見ながら祢々に指示をする。
「とりあえず、祢々はあの部屋の掃除を先にしてきなさい。随分と使ってない部屋だから、そのまま使うのは良くないだろう。」
「はい、慧音先生!」
「ハルさんは少しお話があるので残ってください、いきなりの連続でお疲れだと思いますが幻想郷…人里で生活するのに必要なこと、これからのことについてお話しますので。一通り話し終えたら部屋まで案内します。」
「わ、分かりました。」
「では、ハルさん。先生もまた後で!」
一段落したのが余程良かったのか、祢々は足取り早く部屋を出ていった。
「……少し、話し方をくだけさせてもよろしいですか?」
重い雰囲気が部屋に漂う。先程まで俺や祢々に向けていた感じとは全く別だ。
「は、はい…」
「申し訳ない。私としてもあまり重苦しく話を進めたくはないのだが、君には少し用心してほしいことがある。あまり軽々しく言える話ではないし、あの子にも聞かれてほしくはない話だからね。」
「聞かれてほしくない話……ですか。」
「あぁ。あの子…祢々は少々複雑な環境に居た子だから、尚のこと口に出せないんだ。」
「……そんなに、危険な話題なんですか?」
彼女は、机のほうを見ながら小さく首を縦に振った。
「君は、妖怪や化物を見たことがあるか?」
「え……?」
「大小は問わない、人間とはかけ離れた異形の存在と邂逅したことは?」
「いえ……見たことも、遭ったこともないです。」
「だろうな。君の世界については全く知らないが、その様子じゃあないだろうな。」
「どうしてそんなこと聞くんですか?」
「どうして…か。」
「君は、異形を目の当たりにしても冷静に居られるか?」
「……え?」
ふと、小さな悪寒が駆け抜けた。
「聞いたかどうかは知らないが、幻想郷には『幻想』と認識されている存在が居る。多少の例外はあるかもしれないが…少なくとも何度かは目にするはずだ。」
「そして、君はそれらと相対しても平常さを保っていられるか?」
「い、いったい何を…」
「いいか。君が居る場所は今までの『常識』なんて通用しない。『非常識』の住処なんだ。それをちゃんとわきまえておくんだ。」
「きっと、これから先君は避けられない真実と向き合うことになる。」
「避けられない真実…?」
『君もそうだって言えるんだ。』
「君の言う『現実』が必ずしも通用するわけがないんだ。」
『記憶が不鮮明なのも。あんな気味悪いもう一人の俺らしい何かも。俺が『幻想』だからこうなっているのか?』
「仮にその『幻想』を目の当たりにしても。」
『君も『幻想』なのかもしれない。』
「君はに向き合えるか?」
『だが、お前はいつか俺を思い出す。いや…
「ッ!!!」
あの時の寒気が一気に加速する。逃げようとしていたもう一人の俺が迫る。
逃げられない、逃げようとしても俺を捉えようと何重もの糸が絡んでくる。
俺は、俺は……
「……大丈夫か?」
「ハッ!?」
そして一気に目の前の光景に引き戻される。
慧音先生は俺を覗き込むように見て心配そうにしていた。
「だ、大丈夫です……」
……気のせい、だったのか。それにしては酷く鮮明で嫌に纏わりつくような感触が残っている。
「……兎に角、これからは外出する時は気を付けてくれ。近頃は物騒ならしいし、どうあれ幻想郷に来たのに命を落とされてほしくはないからな。」
「それと、手が空いてたら祢々と一緒に学び舎の手伝いをしてくれ。あの子一人では忙しくて手が足りなかったし、折角なら教壇に立ってくれるのも悪くない。」
「前向きに検討しておきます。」
「そうしてくれると助かる。さて、あまり変に引き留めるのも良くない。部屋に案内しよう。」
「あ、お願いします。」
祢々の居る部屋まで歩く最中、一つ気になった事がある。
「慧音先生。」
「…?どうした。」
「さっきの話、どうしてあの子が居てはダメだったんですか?」
「……それは。」
足を止め、暗い面持ちで彼女は俺を見ていた。
「……人には、色々と隠しておかねばいけない事もあるんだ。」
次回の予定としては、一先ず自室を手に入れて安心&考察回でございます。
私もまとめとして一区切り作りたい&修正したいので()