二次元の中の二次元~最初の二次元は三次元に変わりました~   作:祭永遠

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筆が乗るときと乗らないときの差が激しいです……


12!!

第二層の転移門の開通が終わると、キリトはダッシュで近場にあった建物の中へ消えて行った。

 

俺もシリカの手を引いてそことは別の建物の中へ入る。

 

いきなり手を引かれたシリカは、ふえあ!?などとよくわからない言葉を口にした。

 

すぐに落ち着けそうな所を見つけ、一息ついたところでシリカが呼吸を整えながら話しかけてきた。

 

 

「はあ……はあ……。あの……どうして、急に走ったん、ですか…?」

 

 

「……もしかしたら俺たちは、裏切り者扱いになっているってさっき話したよな?転移門の目の前でボサッとしてたら、どうなるかは簡単に想像がつくんじゃない?」

 

 

「………あっ、なるほど…でも、それってなんだか少し寂しいですね…」

 

 

「今更後悔しても遅いよ?もう俺もシリカも戻れないんだから」

 

 

「後悔はしてませんよ、私にはクゥドさんもキリトさんもいます。そして、アスナさんやあのエギルさん?って人みたいにわかってくれる人は必ずいますから」

 

 

シリカはそう言うが不安が残らないはずはない。

これは言わないでおくが、俺たちの場合はそれだけじゃすまない可能性もある。

キリトはビーターを名乗りそのまま姿を消した、しかしそれだけならばゆくゆく関係性は改善できるかもしれない。

 

だが俺たちは、初心者の癖にビーターについて行っておこぼれを貰おうとするような卑怯な奴ら、という風に見られている可能性すらある。

 

そこを踏まえて考えると、若干キリトより分が悪いと思われる。まあ、勝負をしているわけではないのでどうでもいい話ではあるが。

 

 

「あれ?なんででしょう?キリトさんが出ていきましたけど」

 

 

「はあ!?どれどれ……ああ、あれならほっといて大丈夫だよ。アルゴの姐さんが追いかけられてたから、いてもたってもいられなくなったんでしょ」

 

 

「ええ!?それって大変じゃないですか!!助けに行きましょう!!」

 

 

そう言って、今にも走り出しそうなシリカの腕を掴んでそれを止める。

 

 

「だから、大丈夫だって言ったでしょうに。ちょっと見えたけど、追いかけてた奴らはベータテストの時に見たことあるからな。キリト一人でも問題ない」

 

 

俺がそう言うと理解はできるけど、納得ができないという風にわざとらしく音を立てて乱暴気味に俺の隣に座る。

 

今だに落ち着きを取り戻さない転移門周辺を窓からながめる。

二層に登ってきたのは、やはりほとんどが後々最前線のプレーヤーになるような人間ばかりだった。

 

中には俺がベータテストの時に見かけた格好をした奴もいたが、格好が似ているだけで本人かはわからないので遠目で懐かしむだけにしておく。

 

その時だった。俺の視界のはじでブレンドメッセージが受信されたのを確認した。

差出人の名前を見てみたら、なんとアルゴからのメッセージを受信していた。

 

内容がこれまた面白いもので

 

 

「キー坊がヘタレすぎるのでどうにかしてほしい、幼馴染みなんダロ?責任取レ」

 

 

といったものであった。

 

それにしても、責任ってなんの責任なんだろう。

あ、ちなみにアルゴとのブレンド登録は、一層で偶然出会った時にしてある。

向こうは俺のことをキリトと仲の良いプレーヤーとして、ベータ時代のときから認識していたらしく、俺も情報が欲しいときは便利なため登録するに至った。

 

俺とキリトが幼馴染みと知っている理由は、俺が後々第三層に行けた時点で立ち上げようとしているギルドに誘うためである。

 

最初は断られていたが、この情報はキリトにも有効(かもしれない)ですよ?と揺すりをかけてみたら最終的には落ちた。

 

流石は一級フラグ建築士、いつでも、どんなところでもフラグを乱立してくれますね。

 

 

「はあ、それにしても暇だな…なんかお話しよーぜ」

 

 

「なんかってなんですか…せめて話題を提供して欲しいんですけど……」

 

 

「んー……話題ねえ?じゃあ、シリカって何歳なわけ?少なくとも俺より下に見えるんだけど……っ!?」

 

 

何かよくわからない激痛が足の指先を襲う。

下を向くとシリカのかかとが俺の爪先を思いきり踏みつけていた。

 

 

え?あれ?激痛?なんで?圏内ってダメージ…っつか、犯罪防止コードは?女→男には反応しないの?

 

 

「女性にいきなり年齢を聞くなんて失礼ですよ!!」

 

 

なんかよくわからないことを仰っていらっしゃるので、一言だけ言い返すことに……

 

 

「マセガキ」

 

 

いだああああああっ!?

 

 

 

その後はシリカの機嫌を直すのに時間をかなり使った。

それと、アルゴのメッセには一応返信はしてある。

 

 

「あれは昔からです。自分はモテないとか不器用だとか言っておきながら、然り気無い気づかいとか優しさとかをみせるのです。それで落ちた女性は数知れず。しかし、キリはそれを普通のこととしか考えてないので、その程度では好意を持たれないと思っております。つまりライバルは多いですよ?」

 

という内容である。

ちなみに返信はまだきていない、むしろこないだろう。きっと今頃は絶望しているに違いないと勝手に予測を立てる。

 

シリカの機嫌が直ったところで窓の外を見てみると、先程よりは落ち着いていたのでそろそろ頃合いかと思い外に出る。

長いこと屋内にいたせいか、太陽の光が眩しく見えた。

 

 

「さて、それじゃあ寝床を確保しに行きますか」

 

 

「あれ?一層で泊まったところじゃダメなんですか?」

 

 

「ちょうど昨日で宿泊費分が終わったからなー、ちょうどいいしここでまた探すよ。それにすぐにマロメの村、次に拠点にする村に行くし一泊するだけだからな」

 

 

「わかりました。それじゃあ私もここで探しますね。まだ一人でそこまで行動する勇気はないので、一層と同じようになるべく近場で泊まりたいですし」

 

 

一層と同じように近場で泊まれるところか……

 

なかなか難しいことを注文してくる。

どこか良いところがあったかと、ベータ時代を思い出し二人で歩いていると目の前に武具店を見つけたところで思い出した。

そして、その向かい側には防具店がある。

 

そう言えばここの武具店と防具店はNPCの兄弟が営んでいて、少々値は張るがなかなかよかったと記憶している。

 

確かベータの時はキリトと街中探し回って、やっとの思いで見つけたと思ったら所持金が足りなくてモンスターを狩りに出た苦い思い出がある。

 

 

「よし、シリカここにしよう。ここは武具店と防具店だが、ある手順を踏んで話しかけると泊まらせてくれる」

 

 

「ある手順ってなんですか?」

 

 

「ああ、それは簡単だ。二人で店に入り話しかける。それを武具店から防具店の順番で三回繰り返すだけだ。三回繰り返したあと、もう一度武具店に入ると店主の頭上に?マークが出るからそのタイミングで話しかける。それだけだ」

 

 

シリカに説明をしたあとそれを実行し、これからの寝床を確保したところで本日二度目のメッセージが届いた。

 

差出人はアルゴ、内容は短く

 

 

「キリえもん爆誕」

 

 

とだけ書かれていた。

 

 

素早く俺は

 

 

「明日見に行く」

 

 

とだけ返信し、向かいの防具店で寝泊まりしているシリカにメッセージを飛ばす。

 

 

「明朝八時に店の前に集合、行き先は東にある岩山の頂上付近。マップは明日買うので心配ない。そのままここには戻らないでマロメの村に直行するからPOTなどアイテム系も完全装備で頼む」

 

 

という訳で明日に備え、早めの就寝準備に入る。

 

便利なことにこの部屋には目覚ましがありそれを朝七時にセットして布団に潜る。

 

そうしたところで、視界のはじで手紙のアイコンが点滅し、メッセージが届いたことを知らせる。

 

シリカからの返信で中には了解と書いてあり、それと何かあるのかという疑問があった。

 

それに明日になればわかる、ただし面白いことには間違いないとだけ返信し、そのまま睡魔に体を預けた。

 

 

 

 

 

二層に到達した翌日、アルゴからのメッセでキリえもんが誕生したことを知った俺は、シリカを連れて目的地へと向かう。

 

道中はかなりの過酷を極めた。まさかこんなところでロッククライミングやウォータースライダーを体験することになるとは誰が想像しただろう。

 

ちょくちょく戦闘もあったりしたが、問題なく例の場所へ到着する。

 

周囲は岩壁に囲まれたところに小屋が一つ建っていた。

 

その岩壁の端の方で何やら誰かが素手で、二メートルはあろうかという岩を割ろうとしていた。

 

ちょうど近くにいたアルゴに声をかける。

 

 

「アルゴ姐さん。あれはどういうことですかね?」

 

 

「おー、クゥ坊カ。よく来たネ……おや?隣の女の子は初めて見る顔だヨ、まあ、誰かは想像に難しくはないガ」

 

 

「知ってるとは思いますが、こいつがシリカです。始まりの街で見つけてからコンビを組んでるんです」

 

 

「あ…初めまして、シリカです。よろしくお願いします!!」

 

 

シリカは少し緊張気味に挨拶をする。アルゴはよろしくと挨拶を返し、本題に入る。

 

 

「さて、それでは準備はいいかイ?笑わないでいられたら……そうだネ、ギルド結成の際に誓うヨ。ギルド専属の情報屋になることをナ」

 

 

あのアルゴがここまで言うということは、それほど面白いことになっているのだろう。

そのままアルゴに、キリトを呼びに行ってもらう。

 

キリトが二言三言話して、こちらを振り返る。

 

 

「「……ぶっ」」

 

 

これは酷かった。

遠目で見てもこの威力。

近づいてきたら最早笑いをこらえるのは難しいだろう。

 

なにせシリカですら、キリトから顔を背けて手を口元にやって笑いを噛み殺しているのだから。

 

キリトがアルゴと共にこちらに来る。

隣のアルゴは昨日で見慣れているはずなのに、まだ笑いが込み上げてくるようだった。

 

そして、キリトが目の前まできて話しかける。

 

 

「昨日ぶりだな、どうしてここに?」

 

 

「いやな……昨日…アルゴ姐さんから……キリえもんが……誕生したって……聞いたから…来てみたんだ……ああ!!もう無理!!うはははは!!なんだその顔!!マジキリえもんだな!!キリえもーん、またいじめられたよー、なんか道具出してよー。うはははははははは!!」

 

 

「キリトさん、すみません……そのお顔…ちょっと笑いを堪えられそうにありません……」

 

 

そして、シリカもあははは、と声を大にして笑い転げる。

 

 

「そんなに酷いことになってるのか……?」

 

 

「気になるなら、泉で見てみりゃいいじゃない」

 

 

切ない表情を作り出すキリトだが、それがまた面白くうつり笑いが止まることがない。

 

しばらく堪能して、そろそろ笑いの方も落ち着いてきたところでマロメに行くことを伝える。

 

 

「それじゃあキリえもん、俺らは先にマロメの村に行っておくな。修行がんばっ」

 

 

「な……お前はこの体術のクエ受けてかないのか!?というか受けろ!!そして一緒にひげをつけようじゃないか!!」

 

 

「いや体術とかいらないし、拠点確保したいし、レベル上げたいから遠慮しとく」

 

 

そう断りを入れてから移動を始める。

 

 

「それじゃあ、キリトさん、頑張ってくださいね。アルゴさんもまた機会があればよろしくお願いします」

 

 

シリカも別れが済み、俺のあとを追いかけてくる。

今回は最短でマロメに向かうのではなく、Mobが出やすいルートを選択しながら先へ進む。

 

道中のいくつもの戦闘でお互いにレベルが一つずつ上がり俺のレベルが13、シリカが12となった。

 

マロメの村に到着すると、すでに何人かのプレーヤーが通りにいた。

なるべく見つからないように行動しながら、腰を落ち着けられる場所を探す。

 

 

「さて、これから村のクエを一通りクリアしたら、東の岩山で狩りをする。そのモンスターが片手剣用の素材に使えるのと、近場には短剣用の素材に使えるモンスターと両方いるから都合がいい」

 

 

「わかりました。そしたらもうお昼も過ぎちゃいましたし、今日は村のクエだけにして明日の朝一から狩りをしませんか?ちょっと強行軍で疲れちゃいましたし……」

 

 

「そうだな……それほど出遅れてる訳じゃないし…むしろトップに近いからな……それなら今日は村のクエを中心に、明日朝一で狩りに出かけよう。そうと決まればまずは昼飯だな」

 

 

少し離れたところにあった食事処に入って腹ごなしを終えたあと、二人で別々にクエを受注しそれをお互いが手伝うという方針で進めていく。

 

ベータ時代にあったクエの中で、今の俺とシリカに必要そうなクエを中心にひたすら受ける。

 

 

そしてある程度必要なクエをあらかたクリアしたのは、夕日が落ちる寸前であった。

 

 

「よーし、こんなもんかな」

 

 

「思い返せば、今日は動きっぱなしでしたねー。今日はぐっすり眠れそうです」

 

 

昼にお邪魔した食事処がけっこう良かったので、夜もここで食べながら今日を振り返る。

 

 

「それにしても、キリトさん面白かったなー…私もやりたいかと言われれば絶対やりたくないですけど」

 

 

「あー、あれは傑作だったな…なぜここにはケータイがないのだ…待ち受けにしたかったのに」

 

 

キリえもんの話でまた盛り上がり、ゆったりとした時間はあっという間に過ぎていく。

 

すでに時計の針は十一時を回っており、さすがに眠くなってきたので解散といく。

 

 

「じゃあ、今日はここまでにしようか。そろそろシリカも眠いだろ?遅くまで付き合わせて悪かったな」

 

 

「いいえ、こちらこそこんな遅くまですみませんでした」

 

 

店で会計を済ませて帰路につく。

また、ここでも宿泊先は近くにしてあるので、途中までは一緒に歩きながら話す。

 

 

「いや、楽しかったよ。それじゃあ、明日は朝一にこの店の前に集合でいいか?」

 

 

「はい、大丈夫です。遅刻しないでくださいね」

 

 

「わかってるよ、それじゃあ俺はこっちだから、それとも送って行こうか?」

 

 

別れ道になったところで会話を終わらせる。

 

 

「いえいえ!!大丈夫ですよ、すぐそこなの知ってるでしょ?それと、今日はご飯ありがとうございました。それじゃあ、おやすみなさい」

 

 

「おー、気にするな。気を付けて帰れよ」

 

 

そう言って別れたあとは俺も自分の宿に戻り、明日の予定を確認しながらいろいろ済ます。

 

明日も何も問題がなければいいなと思いながら、キリトに……じゃなくキリえもんに一通だけメッセージを飛ばし布団に入り瞼を閉じた。

 




シリカってSAOスタート時で12歳、しかも誕生日が10月なんですよ…つまり小学6年なんです……そう考えるとどれ程シリカが凄いのかわかる。

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