二次元の中の二次元~最初の二次元は三次元に変わりました~   作:祭永遠

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第三層の主街区へと到達した俺たちは、まずギルドの結成をするための準備を進めている。

 

初期のメンバーは俺、シリカ、アルゴの三名となっているが、今度キリトに会った際に声をかけることを伝えた。

 

月夜の黒猫団……これを救済するためには、キリトを他のギルドへ先に所属させてしまえばいいと俺は考えて、自分のギルドを結成することを決めた。

 

キリトには、ソロプレイでもいいし何かどうしようもない時に保険として入っておいてくれと頼めば、断られないはずである。

 

 

そしてなかなか決まらないのがギルドの名前だった。

ポジション(リーダーが俺、副リーダーがシリカ)はかなり早めに決まったのだが、特に名前にこだわりのない三人では決められないのも当然であった。

 

 

「ほらクゥ坊、さっさと決めロ。オネーサンも暇じゃないんだゾ?」

 

 

「そんな事言われましても俺の案に二人してケチつけるんだからそりゃ決まらないですわ」

 

 

「それは………クゥドさんがあまりにもセンスの欠片もないネーミングなのがいけないですよ……なんですか、チーム動物園とか意味がわかりません」

 

 

アルゴは鼠屋だし、フェザーリドラをテイムするシリカがいるしぴったりだと思う。

他にも進行形中二病軍団とか、必要な悪とか、いろんな案を出したが全て却下されてしまった。

何がいけなかったのだろう。

 

 

「別にわたしは中二病でも悪でもありませんし」

 

 

「心を読むな……ならどうすんだよー、決まらねーじゃんよー………って、んー?」

 

 

転移門が見える場所で相談していると、転移門が光ったタイミングで偶然そちらを振り替えると、茶色の髪に顔のそばかすがポイントになっている女性プレーヤーがいた。

 

ついガタッと音を立てて立ち上がってしまったが、すぐに冷静になり椅子に座り直し二人に断りをいれる。

 

 

「ちょっと外行って頭冷やしてくる。そしたら良い案も浮かぶかもしれない」

 

 

そう言って店を出る。

向かう先は、もちろん先程見かけた女性プレーヤーのところだ。

そのプレーヤーは辺りをキョロキョロと見渡していて、少し挙動不審であった。

誰かを探しているというより、間違って三層まで来てしまった感じがしている。

 

どうも最前線であるここに興味はあるらしく、戻るか街の中を軽く歩くかで悩んでいるようなので声をかけた。

 

 

「あのー、さっきからキョロキョロしてますけど、誰かお探しですか?」

 

 

「ひゃああ!?びっくりしたああ……ええと、誰かを探してる訳じゃないんだけど、最前線ってのがどんなのか見てみたくてね。ちょっとした好奇心ってやつよ」

 

 

どうやら間違って来たわけでもないようだった。

けっこう行動派であるらしくちょくちょく一人でフィールドに出たりもしているらしい。

まだ特定のパーティーに入ったりしていないようなので、これから立ち上げる俺のギルドに誘ってみる。

 

 

「いきなりで申し訳ないんですけど、特定のパーティーとかに入ってないなら…良かったらですけど俺が立ち上げるギルドに入ってくれないですかね?」

 

 

「え?なんでよ?どこか今の話であんたの興味を惹くようなことを言った覚えはないんだけど」

 

 

「そうですね、確かにそんなお話はしてないですけど、なんというか俺のギルドに必要な人だなって思ったんです。直感で……」

 

 

「直感ってねー……そんなんでスカウトされても他のメンバーは納得してくれないでしょ?それに私はレベルも低いし最前線で戦える人材じゃないわ」

 

 

スカウトは意外に難しいことが判明した。

なかなか色好い返事が聞けない。

それでも、どうしてもギルメンに欲しいので諦めずに説得を続ける。

 

 

「別に最前線で一緒に戦ってくれって訳じゃありません。そりゃ最低限レベルは上げてもらいますけど、基本的には自由にしてもらって構わないんです」

 

 

「なによそれ……ギルドの意味あるの?」

 

 

「通常時は拘束することは何もありませんが、ギルメンの非常時には何があっても駆けつける、そんなギルドを目指しているので」

 

 

女性プレーヤーの肩がピクッと反応する。

仲間は何があっても見捨てない方針が上手く効いたのだろうか。

そのまま押してみる。

 

 

「なので、何もないときは商売職だろうが職人だろうが、何をしてても問題ありません。ただギルメンには多少融通を利かせてもらいますけどね」

 

 

「………他のメンバーは…?」

 

 

心が動いたようだった。

内心でガッツポーズを取って話を続ける。

 

 

「攻略組のシリカと情報屋のアルゴです」

 

 

「はあああ!?なんでそんな有名人が所属するようなギルドに私が必要なわけ!?絶対いらないじゃない!!」

 

 

「必要か必要じゃないかは、俺が決めてます。俺が必要だと思ったからあなたをスカウトしたまでですよ」

 

 

そのプレーヤーは、はあああああ、と思いきり溜め息をついたあとこう言った。

 

 

「いいわ、あなたのギルドに入ってあげる。その代わりちゃんと他のメンバーの説得はちゃんとしてよね」

 

 

「ありがとうございます。ええと……」

 

 

自己紹介をしていないことに気づいて、どう呼ぼうか悩む。

俺は一方的ではあるが相手の名前を知っている。

なぜ自己紹介もしていないのに名前がわかるのか…答えはこれだ。

 

 

「ああ、そう言えば自己紹介がまだだったわね。私はリズベットよ。長いからリズで構わないわ」

 

 

そう、俺が店から見た女性プレーヤーとは、後に名鍛冶屋となるリズベットであった。

 

 

「俺はクゥドです。これから長い付き合いになるのでよろしくお願いします」

 

 

握手を交わしたところで悪寒が背筋を駆け巡る。

その悪寒をした方を振り向いて見ると、店の中からシリカがこちらを見ていた。

 

同じテーブルに座っているアルゴは爆笑している。

放置していた時間やその他もろもろ、全部シリカとアルゴにやってしまったことは同じなのに、どうしてあの二人に差あんなにもがあるのか。

 

それを見ていたリズが呟くように言った。

 

 

「あはは、あの子を説得するのは大変そうね、頑張ってよ、リーダー」

 

 

俺は呻くように、わかりました…と答えるのが精一杯であった。

 

 

店に戻ってテーブルに付いた後の第一声は物凄く冷えていた。

 

 

「そちらの方はどなたですか?頭冷やしてくるって言って出て行ったのに、他の女性プレーヤーをナンパですか?まだまだ決まってないことはたくさんあるのに随分と余裕ですね?ああ、成る程、全部決まったからナンパしてきたんですね。それならそうと言ってくれれば良いじゃないですか。別にリーダーはクゥドさんですし文句は言いませんよ?さあ、胸を張って発表してください。まさか決まってない、なんてことはないですよね?だってナンパしたプレーヤーをここに連れてくるくらいの余裕があるんですからね。さあ、どうぞ?でも……下らないことを言ったらどうなっても知りませんからね?」

 

 

テーブルの温度の差が激しすぎた。

シリカは言葉を捲し立てるように早口で話す。

その隣ではアルゴがニャハハハと爆笑しているだけ。

アルゴの向かいに座るリズは、早まったか…なんて表情をして顔を青くしている。

そして俺はというと、もう本当に土下座でもなんでもしてただスカウト(シリカから見たらナンパ)してただけです、ごめんなさい。と言うべきか悩んでいた。

 

今のシリカは怖すぎる。

声は穏やかなのに顔が全く笑っていない。

ここで、正直に話す…というギャンブルをしていいのだろうか…

適当にこの場を誤魔化してしまえないだろうか。

 

いや、俺の力では今のシリカに太刀打ち出来るような立派な案を出せない。

 

しかも下手な案だと何をされるかわかったもんじゃない。

ここは腹をくくるしかない…

 

俺はフロアボスに一人で挑んでるような威圧感を受けながら、ここまでの流れを話し始めた。

 

 

「ふ……二人とも…実はだな」

 

 

そう切り出してこれまでの経緯を事細かに話す。

それはもうシリカの逆鱗に触れないように、慎重に、慎重にだ。

全てを説明し終わったあとシリカの反応を伺う。

 

 

「ええっと…こんな感じです」

 

 

つい怖くて敬語になってしまっていた。

シリカの冷ややかな視線が恐ろしい。

すると、シリカは肩の力を抜いたあとにこう続けた。

 

 

「今回はまあメンバーを集めるためということで納得してあげます。これからはメンバーを増やすにしても私達にも一言お願いします。知らないうちに増えてても対応ができなくなるだけですからね?わかりましたか?」

 

 

俺は小さく頷くことしか出来なかった。

どこに言っても男は弱いということだろうか、いや今回は確実に俺が悪いので関係はないのかな。

 

 

「さて、それじゃ簡単な自己紹介としてレベルと主要武器を聞きたい。それでこれからの方針を決めたいと思う」

 

 

ということでまずはリーダーとなっている俺から始める。

 

 

「俺の名前はクゥド。ギルド(名前はまだ決まっていない)のリーダーをやることになっている。主要武器は片手剣でレベルは17だ」

 

 

「わたしはシリカと言います。ギルドでは副リーダーを勤める予定です。主要武器は短剣でレベルは15です、多分あとちょっとで16になると思います」

 

 

「ン?オネーサンの番カ。情報屋のアルゴだ。武器はそうだナ……情報と足ダ。レベルは……お前らギルメンにならいいカ、ちょうど13になったところダ」

 

 

「最後は私ね。初めまして、リズベットよ。長いからリズでいいわ。主要武器はメイスかしら、レベルはまだ8よ。これからよろしくね」

 

 

個人の自己紹介が終わり、アルゴにここで出た情報はあまり出さないように約束させる。

最初は渋っていたが必殺、キリトのマル秘情報をプレゼントしたら快く承諾してくれた。

 

すまんな、キリよ。

この情報が出たところで奴が恥ずかしがり、悶える姿が見えるだけなので、SAOをプレイするうえでは問題ない。

 

という訳でギルド名を決める会議を続ける。

 

 

「さて、一段落したところでギルドの名前を募集しまっす!!いい案がある方は挙手!!」

 

 

「いやいやいや、まだそこすら決まってないわけ?」

 

 

俺が言った途端リズに突っ込まれる。

 

 

「二人してケチつけるから決まらないんですよ」

 

 

「クゥドさんのネーミングセンスがなさすぎるので決まらないんですよ」

 

 

「ネーミングセンスがないって例えばどんなのよ?」

 

 

「チーム動物園に必要な悪、進行形中二病軍団などです」

 

 

「あちゃー、そりゃ確かにダメだわ」

 

 

リズにすらセンスがないと判断されてしまった。

そらなら他で決めればいいのに、こういうのはリーダーが決めるべきだと譲らないので会議が長引いている。

 

 

「攻略組に名前を連ねることになるギルドになるんだから、後ろ向きな名前は良くないわね」

 

 

リズが思案顔で言った。

凄く真剣に考えてくれているようで感動してしまった。

 

 

「そしたらこれから犠牲者を無くす、負けを無くす、という意味でゼロ。後ろにそれらしく騎士団とかつければいいんじゃない?」

 

 

「それちょっとカッコいいかも!!」

 

 

シリカがリズの提案したギルド名に賛成の票を投じる。

 

 

「オネーサンはなんでもいいゾ?クゥ坊の考えたやつ以外ならな」

 

 

だってら俺のでもいいじゃないか、と言おうとしたら先を越されてしまった。

賛成が三票入った時点で決定となり、ここに俺がリーダー(団なのでここからは団長)を勤めるギルド発足した。

 

 

ギルド名ゼロの騎士団

団長クゥド

副団長シリカ

構成員アルゴ、リズベット

 

 

ギルド名が決まったあと、急いでギルドクエストをクリアし、ここにゼロの騎士団の結成となった。

 

 

 






なんでリズかって?
俺はSAOのヒロインでリズが一番好きなんだ。

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