二次元の中の二次元~最初の二次元は三次元に変わりました~   作:祭永遠

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22!!

 

 

ある日の朝。

俺は攻略会議に来ないおバカ様を捜していた。

血盟騎士団のサブリーダー様も大変お怒りだったので、あの空気から逃げ出すためというのが本音であるが。

 

 

「えー…なにこれ……」

 

 

おバカ様……キリトを見つけたのはいいが、先の血盟騎士団サブリーダー様……アスナも一緒にいた。

それだけなら普通に声をかければいいだけである。

しかし二人はあろうことか横並びで、仲良く気持ち良さそうに寝ていたのだ。

 

取り敢えず記録結晶で記念撮影をしておく。

後で揺すってみよう、とかは考えてない。

 

しばらくその様子を観察しているとキリトが目を覚ました。すぐに俺と目があったのでにこやかに手を挙げて挨拶をする。

するとなぜだろう。キリトから大量の冷や汗が出てるではないか。

すぐに記録結晶(動画撮影モード)を手に持ち、余すことなく記録していく。

 

ちなみに周りに人はいない。

なぜならば俺が人避けを頼んでいるからだ。こんな面白いものを他人に見せてたまるか。

 

もう一度キリトを見て、今度はニヤリ、と笑う。

キリトが焦ったように首を横に激しく振る。

 

ちなみに内約としては

 

俺―――これ、ばらまいたら面白くなりそうじゃない?

 

キリト――頼むから止めてくれ、俺の命が危なくなる。

 

である。

 

そこからは記録結晶を何回も取り替えながら、アスナが起きるまで撮影し続ける。

それから正午を過ぎ、さらに二時間以上たったところでアスナが目を覚ました。

 

まず、隣のキリトを見て顔色を三回ほど変える。その後キリトがちょいちょい、とこちらに指を向ける。

アスナの視線がこちらに向いたところで……ダッシュで逃げる。

こんなところでこれ程の面白映像を失う訳にはいかない。

 

キリトと俺の間で視線を右往左往させたあと、俺の方を諦めキリトに言い訳を始めていた。

逃げ切った安心感から一息ついているとメッセが届いた。

ちなみにアスナとは、第一層の時点でフレンド登録はしてある。

 

内約は、次の攻略会議の時にお話があるから、というものだった。

俺としてはO☆HA☆NA☆SHIじゃないことを願うばかりである。

肉体言語のお話なんて誰が考えたんだ……!!くそっ…19才になっても魔法少女なんて名乗りや…がっ……て……!?なんだ!?今なんか寒気がしたぞ!!

 

寒気のことは気にせずにホームへと戻る。

珍しいことにアルゴとサチがいたので、先程撮った映像を二人に見せた。

するとやはりアルゴは涙目になりながら爆笑し、サチはのほほんとした表情でそれを見ていた。

 

 

「それで?これはいくら出せば売ってくれるンダ?」

 

 

「いくら姐さんでもこれは売らないよ。ことあるごとにネタにしてからかうんだ!!」

 

 

「うわあ……クゥっていい性格してるね」

 

 

褒められたと思っておこう。

記録結晶は大切にストレージにしまう。後で編集して見易いようにするという大事な作業が出来てしまった。

次の攻略会議までには完成させる予定である。会議中にスクリーンで流したら面白そうとか考えてない。

赤い顔で二人して言い訳してる姿を想像して笑いそうになってもいない。

 

まず完成させたらキリトに見せてあげることにした。

今からどんな反応をするか大変楽しみです。

 

すると外からシリカが慌てたようにリビングへ入ってきた。

 

 

「大変です、クゥさん!!今さっき五十七層で圏内PKがあったみたいです!!」

 

 

「圏内PKだあ!?どういうことだよ?」

 

 

「それが方法とか全くわかってないみたいなんです…せいぜい判明してるのは死んだプレーヤーの名前くらいらしいです……」

 

 

「………姐さん、出番だ。どんな些細な情報でもいい。場合によっては、俺以外の全人員を使っても構わないから情報を集めてほしい」

 

 

「わかっタ。とりあえずサチと、そうだナ……テツオを連れていくゾ。何かわかったらすぐにメッセを入れル」

 

 

そう言ってサチを連れて出て行った。

ここで俺たちが出来ることはほぼ何もない。その少ない出来ることをちゃんとやっておく。

そしてメッセが届き、先程シリカが言った内容と、警戒体制はしておけ、と記載されていた。

 

 

「しばらくはケイタたちもここに寝泊まりさせよう。離れるのは得策じゃない」

 

 

普段ケイタたち元黒猫団の三人は、黒猫団で使うハズであったギルドホームで寝泊まりをしている。

今回こんなことがあったのでしばらくはこちらに滞在してもらうことにする。

 

 

「一番心配なのはリズだな……あいつも元攻略組だから遅れを取ることはないと思うが……」

 

 

「一応リズさんにもメッセは飛ばしておきました。なので警戒はしてくれると思います」

 

 

さすがシリカ。仕事が速い。

この後は特に進展もなく、犠牲もなく終わる。

 

次の日、迷宮区の攻略を早めに切り上げた俺、シリカ、ケイタの三人は、二十層の主街区にある小さな酒場に来ていた。

 

アルゴからの情報で、また新たに圏内PKの犠牲者が出たのを聞き、その人物が立て続けにギルド、黄金林檎のメンバーらしくそれ経由で漁ってみたところ、グリムロックというプレーヤーの名前が浮上したらしい。

 

しかし酒場についてすぐにまたもやアルゴからのメッセが届く。

 

 

「ああ…思い出した……シリカ!!ケイタ!!急いで十九層に行くぞ!!そこにカインズがいるらしい!!どうやら死んでなかったみたいだ!!」

 

 

「ふえええ!?どういうことですか!?実は死んでなかったって意味わかりませんよ!!」

 

 

「話は後だ!!姐さんによるともしかしたらこの件……レッドの奴等が絡んでいる可能性があるみたいだ!!」

 

 

それを聞いた途端、二人の表情が変わり急いで転移門で十九層へ行く。

主街区に降り立った俺たちはさらにスピードを上げてフィールドを走る。

 

 

「二人とも!!迷宮区帰りだし回復結晶は持ってるな!?」

 

 

「「もちろん(です)」」

 

 

すると横から猛スピードで駆け抜けていく馬が一匹。その背中には見慣れた《黒の剣士》が跨がっていた。

どうやら行き先は同じようである。さすがに馬の足と人の足とでは、差がありすぎるのでどんどん引き離されていく。

 

俺たちが到着したのは、キリトと殺人ギルド《ラフィン・コフィン》の幹部三人が対峙しているところであった。

 

「………援軍が駆けつけるには充分だ。いくらあんたらでも、攻略組三十人を三人で相手できると思ってるのか?っとか言ってる間に先行グループの三人が到着したぞ」

 

 

「やあやあ、ラフコフの三名方。初めまして、最前線攻略組のギルド《ゼロの騎士団》団長のクゥドです。お見知りおきを。こっちの二人は俺のギルドのメンバーだ」

 

 

「そうだ。言っておくがクゥドの方は俺よりレベル高いぞ?女の子は俺とトントン、男は少し低いけどソロプレイも可能なレベルだ。さて……これで数の有利もあってないようなものだな?」

 

 

ちっ、と短く舌打ちをしリーダーらしき人物が捨て台詞を吐いて消えていった。

残りの二人もそれを追うように消え、場は静寂に包まれた。

 

 

「んで?なんでキリがいんの?また巻き込まれてんの?問題児は問題起こし過ぎじゃない?俺らがいなかったらどうするつもりだったの?クラインと風林火山に頼んである?クラインさんはお前のパシりじゃねえぞ?どんだけあの人に甘えりゃ気が済むんだ、このバカタレ」

 

 

ひとつひとつの疑問符にキリトは丁寧に答えていく。

最後は多少拗ねた子どものようになったが、これくらい言わないとまた繰り返すので気にしない。

 

目の前には他に三人のプレーヤーがいた。

この三人が元黄金林檎のメンバーなのだろう。

ここからは関わっていないので、先に道を戻ることにした。

 

それにしてもラフコフの三人の威圧感はヤバかった。

手が汗でびっしょりになっている。それはどうやら横にいる二人も同じらしく、シリカに至っては多少震えもきているようだった。

 

 

その後、この圏内PK事件の真相としてヤラセだったことが発覚し、全プレーヤーを安心させることとなった。

 

この事件をきっかけに、キリトとアスナの距離が一気に縮まった気がした。

 

これは余談だが、例のお昼寝映像の編集が終わったのでそれを見せるために、二人をギルドホームへ案内した。

いきなりのメッセでの招待に疑問符だらけの二人であったが、映像を見せると顔色を変えるので忙しくしていた。

 

その後映像を見ていた全員で二人をからかいまくったのがいけなかった。

記録結晶だけはなんとか守り抜いたが、色々なものが閃光さんの手によってボロボロになってしまったのは言うまでもない。

 





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