二次元の中の二次元~最初の二次元は三次元に変わりました~   作:祭永遠

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24!!

 

先日、俺たち攻略組は六十九層のフロアボスを撃破し、ついに大台の七十層へ到達した。

 

今日はそのお祝いということで攻略は一休み。

どこもお祭り騒ぎとなっていた。俺たちも例外に漏れず楽しもうということで、何をするか検討中である。

娯楽施設はけっこうあるが、それだけではつまらない。なにか、画期的な提案はないものだろうか。

 

いきなり問われても、今まで攻略に専念してきたメンバーである。そう簡単にいい案が浮かぶはずもなく時間ばかりが過ぎていく。

もういっそのこと、リアル暴露大会でもやってしまうか。

もちろん実名や住所などがバレるようなものは禁止だが、今までにあった恥ずかしい体験だとか過去の残念な出来事などなら大丈夫だと思う。

 

という訳でさっそく生け贄となってもらうキリトを呼び出す。ついでにキリトが来るなら、ということで釣られたアスナも含め九人での暴露大会がスタートした。

 

 

「さて、ドキッ!!人数的には女性が多いよ?暴露大会!!を始めたいと思います」

 

 

わーわー、ぱちぱちー。

こうしてまばらな拍手とともに暴露大会はスタートした。

 

 

「じゃあまずはどうする?俺が言い出しっぺだし、質問っつか聞きたい事があるならだいたい答えるよ」

 

 

「それじゃあ……ずいぶん昔だけどキリトくんとの関係を聞いたことがあったよね?私はそれが知りたいなー……なんて」

 

 

いつだったか忘れたが、確かにそんなような事を聞かれた気がする。

 

 

「んー……それはキリ次第だよね。どうする?喋っちゃってもいい?」

 

 

これは俺だけのことではないのでキリトにも確認する。

 

 

「あ?別にいいけど……というか、もうとっくに言ってるもんだと思ってたよ」

 

 

「はい、キリからのお許しが出たので言っちゃいます!!実は…俺とキリは………生き別れの双子の兄弟だったのだ!!」

 

 

「嘘をつくな!!」

 

 

――――――パシーン

 

どこから取り出したのかわからないが、ハリセンが俺の頭にヒットする。

 

 

「ふっ……キリよ……ナイス突っ込みだぜ……これでお前に教えることはもうない……頑張るのだ……!!ガクッ」

 

 

つまらないギャグは場をシラケさせるには充分すぎた。みんなの視線が痛い。

気を取り直して本当のことを話す。

 

 

「あー……オホンっ……んで俺とキリの関係だよな?別にたいした事じゃないさ。そこのケイタやテツオ、サチと一緒でリアルでも知り合いってだけだよ。まあ、三人と違う点は、俺たちは物心つく前から一緒だったから、所謂幼馴染みってやつかな」

 

 

そこで反応が二つに分かれた。

まずは普通に驚く側と、ああ、そうだったのかと納得する側である。ちなみに後者はアスナとシリカだ。他は前者の反応を示していた。

 

 

「なるほど、だからキリトくんにたいしては多少過保護になったり、扱いが適当だったりするのね。初期からの疑問がようやく解消したわ」

 

 

「さあ、他にはー?キリのことならなんでも答えちゃうよー」

 

 

「それはやめろよ!?」

 

 

キリトの他人には絶対に知られたくないことまで知っているので本人は焦る。すると今度はアルゴから質問がきた。

 

 

「これはずっと疑問なんダガ、キー坊とクゥ坊……どっちが強いンダ?」

 

 

考えたこともなかった質問に、俺とキリトは目が点になった状態で視線を合わせる。

 

 

「んー、リアルでは俺だな。ここだと多分キリじゃない?」

 

 

「そうか?お前はずっと俺の前にいるイメージがあるんだけど」

 

 

「あんまり興味なかったからねー……めんどくさいしキリでいいよ」

 

 

「はあ……やっぱりこれだよ。という訳で俺の方が強いみたいだぜ?」

 

 

溜め息とともにキリトが結論を出す。

どうでもいいことには行動を起こさない俺をよく理解していた。

そしてこういったことで、めんどくさいという言葉が出るとその話は終わりだということも。

 

 

「全然納得出来ないガ、そういうことにしておくゾ」

 

 

「ありがとうねー。ここでデュエルしてみてとか絶対やだからごめんねー」

 

 

そんな話になっても断固拒否である。なんでせっかくの休み的な日にすらバトらなきゃならないんだ。俺はバトルジャンキーではない。至って正常な思考回路の持ち主である。きりっ

 

 

「なんか俺とキリのことばっかでつまんないな。よし、ちょっくらベクトルを変えようじゃないか」

 

 

「………なんか嫌な予感がします」

 

 

「大した事じゃないさ。これから順番に誰かの、本人は秘密にしてるけど自分は知ってることを話そうぜ。えー、つまり恥ずかしいことが明るみになる可能性は大きいよ」

 

 

どういう事か詳しく説明をする。

今回俺が例に出したのが、黒猫団時代のキリトとサチの話。サチが行方不明になりそれをキリトが見つけて、その夜以降サチは枕を持ってキリトの部屋で寝ていた。

これを話した時の周りの反応が面白かった。

サチは真っ赤になりうつむき、キリトはやましいことなど何もなかったと弁明を始め、アスナはそれに詰め寄り、リズはなにかショックを受けたように茫然とし、ケイタとテツオは井戸端会議のおかあさん方みたいにヒソヒソと噂をするようにキリトとサチへあらぬ疑いの視線を向け、アルゴは重要な情報として記憶し、シリカはこの混沌を招いた俺を冷ややかな目でみつめ、俺は爆笑。

 

こうなることが分かっていてやったのである。

騒ぎが落ち着いてきたところで、キリトが苦笑いをしながらこんなことを言い出した。

 

 

「なんでそんな事知ってんだよ……もしかして他にも知ってて言ってないこととかありそうで怖いな」

 

 

そこまで言うなら期待に答えよう。そんなに火に油を注ぎたい自殺願望のような事をしたがるなんてキリトも変わったやつである。

 

 

「そんなことないよ?実は一層攻略後にアルゴに後ろから抱き締められて、思わせ振りなことを言われたにもかかわらず圧巻のヘタレっぷりでスルーしたとか知らないし、この間リズと行方不明になってたときは、夜寝るとき実は手を繋いだままだったとかも知らないし、前にアスナの手料理をご馳走になったことも知らないよ?」

 

 

「なんで知ってんだよー!?」

 

 

あーあ、墓穴掘った。

ほら、君に惚れてる数名の空気が冷たいものに変わってしまったじゃないか。

断じて俺のせいではない。

 

 

「それにこの前はシリカが妹さんに似てるって言って、つい世話をやきたくなるとも言ってたのも知らないな。というかあんま似てないと思うけど。雰囲気的には分からないでもない……かな?」

 

 

「なっ!?お前それは言うなって!!」

 

 

「………キリトくーん…?ちょっといいかしら?」

 

 

「………は………はい…」

 

 

そのまま怖い笑顔をしたアスナにキリトは連れて行かれてしまった。ちなみにその後ろにはシリカ以外の女性陣がついていった。

付き合ってもないのにお仕置きとか言って、意味わからないことをするような人たちじゃないのでそのまま放置する。

多分詳しい話を聞きたいだけだろう。

 

そして、本当に生け贄になってしまったキリトは置いといて。シリカが話しかけてきたのでそれに答えるために向き直る。

 

 

「あの、キリトさんに妹っていたんですか?」

 

 

「おー、いるいる。俺ら……俺とキリの一つ下だな」

 

 

「へえ、どんな方なんですか?」

 

 

どんな……どんな人だったかねー。あんまり意識して見たことないから感じたままに言うか。

 

 

「そうだな……一言で言うなら強い子だったよ。まあ面白いくらいお兄ちゃんっ子だったけどな。何をするにもいつもキリの後ろにはあの子の姿があったよ。キリと遊ぶ時はだいたい妹さんも一緒だったさ、ある出来事から二人は疎遠になっちまったけどな」

 

 

その疎遠になった理由も聞かれたがそれは話さない。

これは兄妹の問題であり、俺が口出しするべきことではないからだ。

それにこのSAO事件が解決すれば、自然と元の関係に戻るはずである。

リアルでのプライベートをこれ以上喋っても仕方あるまい。

 

 

「それにしてもみんな戻ってこないな。なにしてんだ?」

 

 

「完璧にクゥが悪いぞ。うちのサチまであんなんになっちまった」

 

 

それも俺のせいではない。

もともときっと恐らく多分サチにはそういう要素があったのだ。

それが今回の出来事で開花しただけで、決して周りの影響でこんなことになった訳ではない。というかもしそうだとしたら周りの影響受けすぎということでお説教だ。自分は自分なのだから周りに合わせなくても大丈夫だということを教えてやらねばなるまい。

 

 

「つか帰ってくんの遅すぎだからもう解散で。俺はこれから一人で行くところがあるからお先な」

 

 

そう言い残し、皆の帰りを待つことなくギルドホームを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今血盟騎士団のギルドの本部へと来ている。

何故かというと、先日俺のスキルカテゴリにキリトの二刀流と似たようなスキルが出ていたからであった。

 

専用の武器などどこにも置いてないし、今までの層でドロップした形跡もないので、それならいっそのこと本人に聞いてしまおうと思いたった。

しかしそれにしても本部はなぜこんな厳重なのだろう。それにヒースクリフと会うのになんでアポが必要なんだよ。圏内PKなんて結局は出来ないことが分かってるんだから、素通りでいいじゃないか。奴は本物のチートなんだしそう簡単にくたばらないっつーの。

 

なんて悪態を吐きつつ、本部内を進んでいく。

見るからに高そうな物がそこらかしこに飾ってある。

そして無駄に通路も長い。ギルメンが全員ここに住み込みな訳じゃないのだから、ここまでする必要はないと思う。

というか住み込みだとしても部屋数はメンバーの人数をはるかに越えていた。

数える気も無くすくらい通路を曲がり、恐らくここが最奥部であろう、目的の部屋へ到達する。

 

扉も例に漏れず高い。自分の背丈の五倍はありそうなくらいの高さがあった。

正直ノックしても聞こえないんじゃね?と思ったので呼び鈴的な物がないか扉の前を何回も行き来しながら探す。

 

すると扉がいきなり動き始めたので慌てて後ずさる。

外へ向かって開くタイプだったので、避けないと潰されそうであった。

もしこれが遊び心で上に持ち上げるタイプだったらキレてるところだ。こんなデカイのどうやって持ち上げんねん!!と。

 

 

「入っていいかーい?つーか入りまーす」

 

 

とりあえずの礼儀として声だけはかけておく。

そもそも門番やらから話は通ってるので、来ることは分かっているはず。特に返事がなかったのでそのまま入ってこいという意味で解釈をする。

 

 

「おー、いたいた。こうして二人で話すのは初めてだな。ヒースクリフ」

 

 

「そうだな、クゥド君。ところで君はなんの用があってきたのだね?私も暇じゃないのでね……手短にしてもらいたいのだが」

 

 

そりゃまあ、最強ギルドの団長ですからね。うちみたいな小数ギルドとは訳が違うだろう。しかしそんな事を言っていられるのも今だけだ。

 

 

「まあそんな事を言わずにゆっくりと話そうぜ?とりあえず聞きたいんだが、俺のスキルカテゴリにユニークスキルが出てきたんだが、これどういうこと?」

 

 

「ほう……そうだったのか。私以外には初めて見るな。どんなものか教えてもらいたいものだ」

 

 

「別にいいけど…二刀流とおんなじような《双剣》っつーやつだな」

 

 

ヒースクリフはあっさりと自分のスキルを話した俺に驚愕している。

俺じゃあこいつには勝てないので隠す必要もあるまい。こいつを倒すのはキリトの役目だ。俺は本当にただこのスキルについて知りたかっただけでここまできたのである。

ついでに武器も出してほしいなーなどと考えたりはしているが。

 

 

「………いいのか?私に手の内をさらけ出すようなことをしてしまっても」

 

 

「だってお前に勝てないし。普通にチートじゃねえか」

 

 

「それは面白い意見だな。その根拠とやらはあるのかね?」

 

 

こっちには俺の記憶という根拠がある。

実際にキリトとデュエルをしたときイカサマしたのでチートでいいと思う。

 

 

「……もういいんじゃね?俺がお前にユニークスキルについて聞きにきた時点で、なんとなく察しはついてんだろ?」

 

 

「………なんの事だかさっぱりなんだが、説明してくれないか?」

 

 

「俺がお前のところに来たのは、お前がSAOの開発者だからだよヒースクリフ……いや茅場晶彦」

 

 

俺の言葉にヒースクリフ……茅場はよく見ていないと分からないレベルではあるが表情を変えた。

勿論茅場もたかだか一回そんな事を言われた程度では己の正体を晒しはしない。

なので俺の過去話をする。

当たり前だが俺が工藤夏希となる前の話だ。

 

 

「なかなかユニークな発想だね。どうして私が茅場だと思ったのか、詳しく聞かせてくれないか?」

 

 

「そうだな……実はな、俺前の世界の記憶を受け継いで産まれたんだよ。よくTVとかでやってる前世の記憶ってやつをな。そして前世だとよ、このSAOってのは人気作だったんだ。……現実ではない、小説……ライトノベルとしてな」

 

 

「……なに?」

 

 

そこから俺は茅場にその事を話始める。

さすがに他人のステータスに触れるようなことは言わないが、それでも出来る限り簡潔に、なおかつ真実であると分からせるために。

これまでの事も、これから起こりうる事も全て話した。俺がいるせい、もしくは俺が話したことでまた少し改変される可能性がある事も含めて。

 

 

「なるほど、そこまで分かっているのであれば隠す必要は皆無だな。確かに私が茅場だ。それが分かっていてどうして私を殺そうとしない?」

 

 

「結局は俺も狂人だからさ。お前とは同じ穴の狢だよ。それにお前を倒すのは俺じゃない」

 

 

「ふっ……そうか……それでは私を倒してくれるプレーヤーが来るのを大人しく待っているとしよう」

 

 

「楽しみにしとけよ?それまでアイツの枷になることは全て俺が排除する。………でそれはそれでいいんだけど、双剣の武器ってなくね?どうすんのよ!?宝の持ち腐れなんだけど……いや、割とマジで」

 

 

………ん!?今茅場がずっこけた!?あまりの切り替えの速さにびっくりしたのか?あいつってけっこう面白いやつなのかもしれん。顔に出ないだけでリアクションは面白いというわけか。なかなかやるな。

 

 

「……その双剣スキルは少々特殊でな、本来は出ないはずだったのだか……君というイレギュラーのせいで出現してしまったようだ。だから武器もどこにもないのだよ」

 

 

それを聞いてうちひしがれた。まさかバグだとは思わなかった。ちゃんと茅場が出現条件を満たせばスキルカテゴリに出てくるように設定してあるものだと思ってた。

それじゃあ本当に宝の持ち腐れになってしまった。

 

 

「だが私の権限であれば、武器も出すことは出来る。ただそれには条件がある。聞いてもらえれば武器を授けると約束しよう」

 

 

「条件次第だ。言ってみろ」

 

 

「もし彼が私を殺せなかった場合………君がこの、私が渡す剣で私を殺しに来てほしい。それだけだ」

 

 

「そんな事はないがな。アイツは絶対にお前を倒す。だがいいだろう。万……いや、億が一お前に破れたら、その時は俺がお前を殺してやる」

 

 

手間をかけるな、と言って茅場はウインドウを操作する。

しばらくすると俺のアイテムストレージに一つ武器が加わっていた。

 

 

「今君のストレージにアイテムを転送しておいた。その武器は性能的には百層まで使えるものとなっている。だがその事を怪しまれないよう性能に鍵をかけている。その鍵は一つ層を上がるごとに自然と外れるようになっているので心配は無用だ」

 

 

なるほどね。それなら全力を出しても大丈夫というわけだな。

二刀流と違うところは二刀一対ってところと、あとは連撃スピードが全武器中一番ってところか。その分パワーの方は二刀流より若干落ちるようである。

 

 

「うん、ありがとな。じゃあまた死ぬ時に会おう」

 

 

「ああ、それが君でないことを祈っておこうか」

 

 

最後にちょっとしたジョークを挟んで血盟騎士団のギルド本部を後にした。

それにしても、案外話の分かるやつであった。

 

いや、狂人同士気が合っただけかもな……

 

敬語?

敬語ってのは言葉通り敬う人に使うもんでしょ。

この騒動の元凶と言えるヒースクリフに俺たちが知るところで敬うべき箇所があるか?

 

 





今、ALOまでとGGO以降が同数となっております……

というか同数の場合は決めてなかった


なので同数の場合はSAO編で終了させていただきます。
票数が同じなのにALOやGGOまでいくと投票の意味がなくなってしまいますので。


投票の期日は今月末までとさせていただきます。
よろしければご協力お願いします。

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