二次元の中の二次元~最初の二次元は三次元に変わりました~ 作:祭永遠
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今日はついにキリトとヒースクリフのデュエルのある日。俺は一足早く七十五層へと赴き、入場チケットをギルドメンバー分購入する。コロシアムの入り口には、色々と怪しい物を売っていたりする商人がいたり、他の見物客で賑わっていた。
「あー!!いたいた!!やーっと見つけた!!」
特徴的な髪の色をしたプレーヤーが五人ほど引き連れて俺の所までやってきた。
「おー、リズ。こっちだ。チケットは買ったけど自由席みたいだからな、早く入らないといい席は取られるぞ」
「なんだ……と?アンタそれを早く言いなさいよね!!そうお分かればさっさと行くわよ!!」
そう言ってチケットを俺から奪い取るとそそくさと先に行ってしまった。そのすぐあとを同じように俺の手からチケットを奪い、アルゴとサチの二人が続く。キリトのこととなんとも言えない感じになるあの三人。ちなみにまだ記録結晶は見せていない。どうせなら二人の結婚式とかで流したい。というかSAO内でしか使えないからいっそのことここで挙式もあげさせよう、そうしよう。勝手に決めた、二人の許可とか知らん。
今まで貯めた記録結晶の使い道が決まった所で、戦闘メインの残り三人を引き連れてコロシアムへ入る。
すでに席は八割は埋まっていた。それなのにあの三人は凄く良い席に座っている。無理矢理武力行使でとかしてなきゃいいんだけど。そんな三人を見ながら四人で並んで座れそうな所を探すが見当たらない。
仕方がないので俺とシリカ、ケイタとテツオで別れて見ることにした。二つ並んで空いてる席を見つけそこに座る。ほとんど見えないような上段ではあったが、モニターがいくつもあったのでどこに座ろうとあまり変わらなかった。
「クゥさんはどっちが勝つと思いますか?」
隣に座っているシリカが急に問いかけてきたので、俺は思ったことをそのまま答えた。
「ヒースクリフ」
「やっぱりそうですよね……なんかあの人……雰囲気というかオーラが凄かったですから。私なんて萎縮してほとんど喋れなかったですし」
シリカも同じ意見らしく、本部へ顔を出した時の印象を話した。
「そういう割にはギルドの誘いにははっきり断りをいれてたじゃないか」
俺がそう言うとシリカは顔を赤くしながら言った。
「だって……受けたらクゥさんと一緒にいられなくなりますし……」
周りの雑音に阻まれほとんど聞こえなかったが、シリカはさらに顔を赤くし、そわそわもじもじとしきりに動き落ち着きがなくなった。
「それもそうだな」
こう答えておけば無難だろうと思われる返答をすると、シリカはボンっと音を立てる勢いでさらに顔を赤くした。一体この子の顔はどこまで赤くなるのだろうか。最早リンゴと区別がつかないレベルにまで達してしまった。
「……えへへへっ……はい…そうですね……ふふふっ、えへへへへー」
なぜか幸せそうにしているシリカに腕を組まれてしまった。座った状態で腕を組まれたら胸が当たる―――ほどシリカにはなかった。少しドギマギしながらシリカを見ると視線がぶつかる。シリカは視線が合うと「えへへっ」と軽く笑い、視線を逸らすと然り気無く俺の左腕に頭を預けた。
―――いや、別にいいんだけどこの状態じゃまともに試合を見れないじゃないかっ……
この幸福感と二人の試合のどちらかを取るかで、俺の脳内でバトルが繰り広げられていた。聞くまでもなくシリカの方に旗が上がったのだが。
それからはシリカばかりが気になり、試合がいつ始まったのかすら意識の外にあった。気づけば試合も終わっており、帰りに他のメンバーと合流するまで腕は組んだままだった。シリカは離れたあともあの状態が続き、目が合う度にニコッという擬音がぴったりな表情で笑いかけてくる。恋愛経験の少ない俺はそれはもう落ち着かなかった。精々それに顔を赤くして視線を逸らす程度しかできない。そんな自分に嫌気が差した。
「ちょっとクゥ!!聞いてるの!?」
自己嫌悪に陥っていたところを、急に大声で話しかけられてしまい大袈裟に驚いてしまう。それにリズは反応してさらに憤る。
「もう!!やっぱり聞いてなかったのね!!さっきの試合の話よ!!途中まではキリトが有利だったのよ!?それなのに最後だけ変な風に攻撃を止められて一発喰らっちゃってさ!!絶対あれはおかしい!!」
ずっと同じようなことを延々と言っていたらしい。同じく別の二人からその話を聞かされていたテツオとケイタは若干やつれているようにも見えた。
「それでも敗けたんだろ?勝負は非常なんだよ」
「そ・れ・で・も!!納得できないもんはできないのよ!!」
これは何を言っても無限ループになりそうな気がして、同じ境遇の二人を見ると諦めろと視線で言われたように感じた。なので俺は先頭を一人で歩くシリカの背中を見つめながら、リズの話は右から左へと受け流すのだった。
その日の夜にはキリトの血盟騎士団加入の知らせがそこら中を駆け回った。そう言えばそんな話してたなー……程度にしか記憶していない俺は、関係ないとばかりに布団を被る。今日は色んな意味で疲れた一日だったので、俺はすぐに眠りに落ちた。
「あははははははッ!!似いいい合わねええええ!!お前本当明るい色が似合わないよなー」
「………うっせー」
あのデュエルから二日たち、キリトが初めて血盟騎士団の制服に身を通すということでエギルの店まで行ったのはいいが、これが壊滅的に似合わない。昔から暗い色を好んで着用してたからか、見慣れないキリトの服装に俺は爆笑するしかない。キリトは自分でも自覚があるので、明るい色は着てこなかったのだがデュエルのせいでこんな羽目になっている。
もちろん記録結晶は忘れていない。なんというかこれが俺のアイデンティティになり始めている気がしなくもない。そして然り気無くキリトがへこんでいる。
「だ……大丈夫だよ…?似合ってるよキリトくん」
「……いいんだ、わかってるんだ。俺には明るい色が似合わないことくらい……」
微笑ましいやり取りを記録結晶に納める。これでユニークスキル使いが二人、KoBに所属することになり戦力は僅かにだが確実に上がることだろう。
その次の日二人は血盟騎士団のギルド本部へと向かった。あの姿で攻略に励むキリトが見たかったので、一緒に迷宮区に入ろうと約束していたのだが、どうやらめんどくさいことになったらしく、他の団員とパーティーを組んで五十五層の迷宮区に行くと連絡がきた。副団長権限の乱用が原因なのか、アスナも含む五人一組となり向かったらしい。そうとわかれば記録結晶を持って二人を追いかけるしかない。
俺は一人で五十五層のフィールドに出て、フレンドリストから現在の二人の位置情報を確認すると、迷宮区手前の辺りで二人を示す点が止まっているのを確認できた。二人の実力ならすぐに踏破できるこの層で、何をしているのかと思った。五人一組で向かって、なおかつアスナがいるのなら、パーティーのリーダーはアスナになり、現在位置が確認できる所にいるのはおかしい。俺の考えすぎならばそれで構わないが嫌な予感がする。俺は急いで情報が示す場所へと走り出した。
道中、モンスターと出くわしそれを撃破。その間も二人の位置は全く変わっていない。これは本当に想定外の事が起きた可能性があることも考えられる。そこからはモンスターが出ようとスルー。ようやく二人のいる場所へと到達したのだが――――特に問題は見られなかった。どうやらただの勘違いだったようだ。見た感じでは休憩中らしく、それでマップから二人が動いてなかったらしい。その事実に安堵していると――
「ああああああああ!!」
悲鳴が聞こえた。
俺は即座に切り替えトップスピードで悲鳴が聞こえた方へ走る。悲鳴が聞こえた先はキリトたちが休憩していた場所。近づくにつれて、何が起きているのか理解する。すると先程悲鳴を上げたプレーヤーが聞き慣れた音と共に青い欠片となった。
「お前らああああッ!!」
叫びながら倒れているキリトとアスナを庇うように割って入る。立っているのは二人。片方には見覚えがあった。アスナのストーカーと化していたクラディール、もう一人は見覚えはなかったが血盟騎士団の制服を纏っていた。
「ちっ……まさか他にプレーヤーが出てくるとはなぁ…」
「お前ら……何をしてるかわかってるのか……?」
俺の問いには、にやにやと笑みを浮かべるだけで何も答えない。
「……俺のシナリオではなァ……ここで運悪く犯罪者集団に遭遇……善戦空しく三人死亡ォ……俺とこいつだけ生き残って本部へ帰る予定だったんだかな……」
――――もしかしてこの五人一組でということ事態が仕組まれていた?
俺は戦慄した。あまりにも用意周到すぎる。アスナとキリトは状態異常のようで、回復していない様子を見ると結晶の類いは持っていないようだった。さらに二人のHPバーはすでに半分ほどまで減っており、二人がいたぶられていたのが目に見えてわかった。そして目の前の二人はオレンジ――――つまり犯罪者を示すカラーとなっていた。
「……ここに来たのが運の尽きだ……だからお前も死ね」
状態異常が切れるまで一人で喋ってくれれば楽だったのだが、そうはいかないようだ。脇差し程度の長さの双剣を構え犯罪者二人と対峙する。二対一の対人戦など初めてだ、どこから攻撃がきてもいいように全神経を高めていく。俺は後ろの二人も守らねばならないため、簡単には動けない。どうすれば二人を守りつつ、目の前の犯罪者たちに勝てるのか脳を回転させる。
「なんだぁ?来ねえのならこっちから行くぞ」
クラディールはそう言ってゆらりとした足取りから両手剣を降り下ろした。
「ぐうううう……らぁっ!!」
普段ならば避ける攻撃を双剣を交差させて受け止める。クラディールはさらに押してくるが、それを力任せに押し戻すと両手剣は弾かれる。今度はもう一人の槍使いがすかさず攻撃を入れてくる。主に突攻撃がメインの槍ならば、後ろの二人には当たらないのでこれはかわす。槍使いの方は攻撃から見てクラディールよりもレベルが低い感じがした。それならば槍使いから止めてしまおう。多対一の時の鉄則は弱い敵から叩く。その方が早く一対一の状況をつくれる。
ターゲットを槍使いの方に移し、俺はクラディールの動きに警戒しながらも反撃に転じる。レベルが低いと言っても最前線でトップクラスの精鋭を集めたと言われるKoB、少なくとも楽に勝てる相手ではない。感覚に任せて槍使いが動き出す前に懐へ入る。慌てて槍を反すようにして柄で対応される。右へ避けたがかわしきれずに、左腕に打撃判定が入り俺のHPが少し削れたがそれを気にせず右の剣で力の限り一閃。
槍使いはそれで怯み大きな隙を作った。そこを逃さず追撃をかける。左の剣で右手を追うように斬り、そのまま手を返して下から斬り上げ、そこからハの字に払い、両腕を横に交差させ、さらに戻しながら斬りつける。スキル技でもないただの連撃だが、槍使いのHPが一気に三割近くまで減る。
そこでクラディールに動きが見えたので槍使いから離れ、横から体当たりをするようにぶつかる。剣を振り上げてキリトを攻撃しようとしていたクラディールは、いち早く俺の体当たりに気づき後ろにかわす。かわされた俺はその勢いを殺すため倒れこみ受身と同時に立ち上がる。双剣を構え直し斬りかかるが、呆気なく防がれたので後退し息を整え目の前の犯罪者と向き合う。
「さすがあの女といただけはあるなぁ」
「………あの女?」
「俺に勝った女に決まってんだろォ?本当ならアイツもここで殺る予定だったんだよぉ……そのためにわざわざ団長に推薦してやったんだが……なかなか上手くいかねえもんだなァ」
そう言ってクラディールは口の端を吊り上げてにやりと笑う。
「お前……ほとほと救いようのないやつだな……!!」
キリトとアスナだけではなく、シリカまでターゲットとして狙われていたらしい。それを聞いた俺は覚悟を決める。
「キリト、アスナさん……悪いけど少しだけ放置する。すぐに片付けて戻ってくるから待っててくれ」
そう呟いて二人が何かを言う前にそこから離れ槍使いを即座に“殺す”べく行動をする。もう慈悲はかけない。
「らあああああああ!!」
双剣スキルの高位剣技、ヘクタゴン・サイス。つい先日解放されたばかりのスキルで、離れた位置から瞬時に敵の懐まで入り、四方八方から斬りつけるスピードタイプの技である。連撃回数は七十七回だけに、かわしきるのは至難の技だ。
右に左に縦に横に、下から上から、さらには回り込んで後ろからも攻撃を当てる。幾つかは反応されて防御されたりかわされたりするが、みるみる槍使いのHPは減っていく。しかし相手も最前線で活躍しているプレーヤーだ。何回も反撃をくらい、自身のHPも減っていく。七十七回目の攻撃を当てたと同時に悲鳴があがる。
「ダメええええええ!!」
そちらを振り向くとHPがついに危険域にまでなっているキリトに、止めをさそうとしていたクラディールが目に飛び込んだ。俺はスキル後の硬直が解けたと同時に飛び出し、自分の背中でクラディールの剣を受ける。横目で槍使いを見るとすでに姿はなく青い欠片の残りがあるだけだった。
クラディールの剣を受けたのだが、どうやらスキルは使われておらず、俺のHPは危険域に入ったところで止まった。
「あの位置から反応して飛び込んでくんのかぁ……お前化け物かよ」
「はっ……はっ……はっ……当たり前だろうが……!!やっと素直になったこいつらを守るんならなあ……鬼にでも化け物にでもなるし、邪魔をすんなら神だろうが殺してやるよ……!!」
「そっか……ならお前から死んどけよ」
今までとは違い本気で仕掛けてきた。うまく双剣でいなしつつもHPは少量ずつ減る。クラディールはまだまだHPを残している。未だイエローゾーンにすら入っていない。それでも諦めるわけにはいかない、力を振り絞り攻撃を仕掛ける。
「はっ……はっ……くそっ!!」
「おいおい、どうしたんだァ?息が上がってるぞ」
「余計なお世話だ……っ!!」
横に一閃。その攻撃がクラディールの顔に当たりHPが少し多めに削れる。ここが最初で最後のチャンスだと思った。満身創痍の俺から攻撃を受けたのが、プライドに触ったのかわなわなと震えだしたのだ。ここで決めるべくスキルを発動させる。
双剣スキルの高位剣技、ホロウ・クラウン。双剣スキルの中で二つしかない重攻撃の一つである。その分攻撃力は他の技より高いが、連撃回数が十四回と少ない。クラディールに一撃当たるたびに目に見えてHPが減少していく。他の技に比べスピードもない、しかしそれでも双剣は早い。重攻撃のはずなのに、目にも止まらぬ早さで斬りつけられるクラディールは、焦りの表情を見せ始めた。
―――もっとだ!!もっともっと早く!!反撃させる隙を与えるな!!
自分の限界を越えるような斬撃の繰り返しに、脳が焼け切れそうな感覚があった。それでも気にしていられない。最後の攻撃が終わり、全ての攻撃が当たった感触があった。クラディールを見ると表示されているHPバーの色は無色になっていた。
「お前も俺らの仲間入りだなぁ。それとついでにだがアイツも連れてってやるよ」
HPがゼロになったはずのクラディールがよろよろと歩きキリトの方へ向かい、持っていた大剣を降り下ろした。
「「やめろ(て)――――ッ!!」」
今度こそ動けない俺は、キリトが止めをさされるのを見ているしかできなかった。クラディールは笑いながら体を硝子に変えて消えていった。
そしてキリトのHPもゼロになり、同じようにしてその体を硝子の欠片とした。
「いや……いやよ……キリトくん……ッ!!……いや―――――――――ッ!!」
アスナの絶叫が辺りに響きわたる。俺は膝をつき、黒猫団につぎ、また守れなかったことを―――――ッ!!
「いや!!まだだ!!まだなんとかなる!!」
俺はそう言って急いでアイテムストレージを開く。ざっと目を通して、飛び込んできた一つのアイテムをオブジェクト化した。その名も還魂の聖昌石。あのクリスマスのイベントボスを倒した際に、俺がケイタたち元黒猫団の三人から預かっていたものである。
「蘇生!!キリト!!」
俺がそう発した瞬間、キリトのいた空間が何かに照らされたように明るくなり、アスナと俺は思わず目を閉じる。眩しい光が収まり、おそるおそる目を開けると四散したはずのキリトのアバターがそこにあった。
俺は即座に駆け寄りHPバーを確認、危険域のままだったのでアスナも含め二人に回復結晶を当てて「ヒール」と唱えた。するとアスナは当然ながらキリトのHPも瞬く間にフル回復する。それを確認したら安心感からか一気に緊張感が抜けてしまい俺はそこで意識を失った。
「……い!!おい!!しっかりしろ!!」
誰かの呼ぶ声で目を覚ます。目を開けるとそこには、すでにお馴染みと言える顔が二つ並んでいた。
「おー……キリ、アスナさん。どうやら大丈夫みたいだな」
「大丈夫みたいだな。じゃないでしょ!!なんであんな無茶な真似をしたの!!」
「しかもお前……俺のために例のアレを使ったみたいだな……アスナに聞いたぞ、どうするんだ?ケイタたちにはなんて説明するつもりだ?」
一気に言われても困る。俺は聖徳太子じゃないのでいっぺんにそんなには聞き取れない。
「無茶でもなんでもさ、やっとキリにいい人が見つかったんだぜ?どうしたって守りたくなるじゃん……」
「クゥドくん……」
「それにケイタたちなら正直に話せば許してくれるさ。その程度の友情は築いてきたつもりだ」
「クゥ……」
俺は回復結晶をオブジェクト化し自分にあて、「ヒール」と唱えた。HPバーは全快になったが気だるさは全く消えない。そして人を殺した罪悪感からか今頃になって手が震えてきた。
「クゥ……俺たちのせいで……すまん!!」
「なーに言ってんの。お前がやるよきゃマシさ。悪いと思うんならアスナさんとずっと仲良くいてくれ。そうすれば俺のしたことは意味のあるままだから」
「それについては言われるまでもないわね?」
アスナはキリトに視線で同意を促す。それに間髪いれず答えられるようになったキリト。それが見られただけでも成長を感じられた。
「それと……キリトくんが死んじゃった時、蘇生アイテムを使ってくれてありがとう。私、もう本当にダメかと思ったんだ……」
「俺も本当にキリが死んだ瞬間に思い出したんだよ。いや、間に合って良かった」
ちなみにキリトに死んだあとのことを聞いてみたが、自分の体が散ったあとの記憶はないなしく、気づいたらHPが全回復していて状態異常から回復したアスナに叩き起こされたそうだ。
「さて、それじゃあ戻りますかね……俺は先に戻ってるから、二人は後からゆっくり来なよ」
「そうはいかないわよ。クゥドくん疲れてるでしょ?私たちが街に戻るまで護衛をしてあげるわ。いいわよね?キリトくん」
「当たり前だろ。俺も一人で行かせる気は無かったしな」
この二人も変わらずのお人好しである。俺なんか放っておいてデート感覚で帰ってくればいいのにわざわざ心配してくれる。ちょっと照れ臭くなり、ぶっきらぼうにこう言った。
「そうかい、そんなに俺の護衛がしたいなら好きにすればいいよ」
俺が歩き出すと二人は横に並んでついてくる。俺の記憶が正しければもうそろそろこのデスゲームも終わりとなる。キリトとアスナに挟まれ、これからのことを考えながら街に戻った。