二次元の中の二次元~最初の二次元は三次元に変わりました~   作:祭永遠

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36!!

 

 

 

あのデスゲームが終わってから早くも一ヶ月の時が流れた。

直葉がわざわざ俺の病室に訪ねて来た理由は、やはりというかなんというかあの手紙のことだった。直葉には二年経って戻らないかった場合の早期解決のため、と言っておいた。どうして私なの?という問いには、妹さんがおばさんの子供でキリの従兄妹だし剣道もやってるから。と答えた。直葉はALOというMMORPGをプレイしてるはずなのでこれだけ言えばおおよそわかってくれると思った。

事実直葉は納得とまではいかないものの、理解はしてくれたようであった。

 

そして菊岡は約束通りあの日の二日後に俺の病室を尋ね、ギルメン全員の情報を置いていった。

こちらのリハビリも良い調子で進んでいる。さすがに走るのは難しいが、それこそ日常生活を送るのには問題ないな、というところまで戻ってきていた。

 

俺たちはすでに退院もしており、食事の方も普通の物を摂っている。

ただ全員がそうであるわけじゃない。例えば男に比べて筋肉の戻りが遅い女性の中には未だに退院できていない者もいた。

そのなかにリズ、シリカ、サチ、アルゴの四名の名前も含まれているのを菊岡から聞き、これは今しかないと思いそろそろお見舞いという名のメンバー集めを始めようと行動を始める。

 

菊岡からアドレスやら住所やらを聞けば早いじゃないかと思ったのだが、そこはさすがに菊岡でも厳しいようだった。今回病院名や病室を教えるだけでもけっこうな綱渡りだったらしく、これ以上やると首が飛ぶそうだ。

個人情報は政府の対策室で万全の状態、どこにも漏れません、のイメージを崩すわけにはいかないらしい。

 

 

そんなわけで俺は今日、二つの病院を訪ねようとしている。

まずは神奈川県にある総合病院。ここにはサチがいるらしく、すでに退院しているがケイタとテツオもここに運び込まれたそうだ。

埼玉県の川越から大宮で乗り換えてそのまま神奈川へ、ざっと二時間以上かかったが、これもリハビリだと思えばどうってことない。

 

ここの総合病院は見た感じだと大きいが、原作の所沢の病院ほど警備は厳重ではない。

あそこは恐らく金持ちが使う病院だろうし、ここは世間一般でいう普通の家庭が使う病院である、あっさりと院内に入り、受付の看護師に病室と患者名を言ってから病室へ向かう。

 

サチの病室はすでに他の入院患者との相部屋となっているようで、騒がないようにと注意を受けた。

俺はリハビリとしてエレベーターは使わずに階段で五階まで上っていく。そして三つ目の病室の前で止まり患者名が書いてあるカードを確認してから扉を開けた。

 

 

そこにはベッドが四つ並んでおり、それぞれがカーテンで区切られていた。窓際の右側がサチのベッドのようで、二人も見舞いに来ていたのかケイタとテツオと楽しそうに話している声が聞こえる。

俺はわざと気配を殺しベッドに近づく。そしてカーテンで区切られている所からそっと顔を出して言った。

 

 

「久しぶりだな、元気にしてたか?」

 

 

「「は?」」

 

 

二人の目が点になった。

 

 

「クゥ……なの?」

 

 

「おう、サチ正解」

 

 

「「「えええええええ!?」」」

 

 

「ちょっ……声デカイって!!ここ病院だから」

 

 

「あ……ああ、すまん……じゃねえ!!なんでここにいるんだよ!?」

 

 

テツオが体を椅子から浮かせて問う。

 

 

「え?そんなんお前らに会いに来たに決まってるじゃないか」

 

 

「だけど……どうやってここがわかったの?」

 

 

「禁則事項です……ってえ!!」

 

 

ふざけたらサチから枕をいただいた。

そしてここからは少し真面目に説明を始める。

ある程度のことを話して納得してもらい、俺がここまで来た理由を話す。

 

 

「そしてまだ目を覚まさないSAOプレイヤーがいるんだ……そのなかに……アスナさんが含まれている」

 

 

三人は絶句といった表情を浮かべた。自分達は問題なく帰還できたが、それが出来てない者がいるということ、それもそのなかに一人でも知り合いがいたこと、この二つに驚きが隠せないでいた。

 

 

「必ず目を覚まさない人たちには原因があるはずなんだ……アスナさんが目を覚まさないことによってキリが目に見えて落ち込んでる。だから俺はかつての仲間である三人に協力してほしくてここまで来た……もしかしたらもう一度仮想世界にダイブすることになるかもしれない、それでも協力してほしい……頼む!!」

 

 

誠心誠意、土下座もいとわない覚悟で頭を下げる。すると三人を代表してサチからの返答があった。

 

 

「今さら水くさいよクゥ。確かにSAOは怖かったけど私たちはクゥとキリトに助けられて、黒の騎士団っていう居場所も与えてくれた。今度は私たちが二人を助ける番だよ」

 

 

顔を上げるとその言葉に同意をするように頷くケイタとテツオの姿が写った。不覚にもその優しさにジーンときてしまい口早に礼の言葉を言ったら三人に笑われてしまった。

 

 

「そうしたら……連絡先を教えてくれ。メンバーはあと三人を予定している」

 

 

「もしかして……それって」

 

 

「ああ、ケイタの予想通りにリズ・シリカ・アルゴだ。この三人にもこれからコンタクトをとって協力してもらうつもりでいる」

 

 

それから連絡先を交換し、昼過ぎになったところで俺は病院を後にした。

 

アドレス帳にはそれぞれ

 

榊智恵

仁岡慶太

矢上哲生

 

の文字が増えた。

 

 

 

 

 

次に向かったのは関東地方から飛び出して北は福島に来ていた。

 

東北地方ということでそこからさらに時間がかかってしまったが福島の病院にはアルゴがいるらしい。

さっそくサチたちの時と同じように受付を済ませ、病室へ向かう。

検問所?そんなのは金持ち限定だからなかった。多分うちのギルドにはそんなのはいないだろうな。アスナが例外中の例外ってだけだ、あれは。

 

 

今回は三階ということで先程よりは短い階段を登り病室を目指す。アルゴの病院は一番奥のようである。

ネームプレートを確認し、病室の扉をノックする。アルゴは個人部屋なので三人の時のように驚かすなんてことは出来そうになかった。

 

 

「どうぞ、開いてますよ」

 

 

一瞬誰かと思ってしまった。

しかし聞こえてくる声はアルゴそのもの。違和感が半端ない、なるほどあのしゃべり方は作ってたようだ。

 

 

「失礼するよ」

 

 

そう言って入るとそこにいたのはやはりアルゴであった。

もしかしたら違う人なんじゃないかなとも思ったが、顔はしっかり覚えているため間違えるはずはない。そ

そのアルゴはさっきの三人と同じように目を見開いて驚きを表していた。三人もそうだが現実世界でも会うことになるとは思ってなかったのかもしれない。そこは俺のギルドに所属してたのが運の尽きだと思って諦めてほしい。

 

 

「久しぶり、アルゴ」

 

 

「その顔と声……やっぱりクゥ坊か」

 

 

「まあね、捜すのに一番苦労したよ、なんたってアルゴって全く関係ないんだから」

 

 

「当たり前でしょ?いくら進化したと言ってもネトゲの世界よ。本名に繋がるものにするわけないじゃない。でもまさかここまで来るとは思ってなかったわ……何かあった?」

 

 

「うわっ……本当そのしゃべり方違和感ありすぎ。そんで相変わらず鋭いね。ちょっと協力してほしいんだ」

 

 

そこから先程したような話をアルゴにも繰り返し話す。

するとアルゴは了承する代わりにちょっとした条件を突き付けてきた。

 

 

「協力するのはやぶさかではないわ。なんたってSAOで助けてもらった身だしね……でも申し訳ないけど仮想世界にはダイブしたくないの。もし、その話が本当ならば私は現実世界からそれを調べる。その事が協力することへの条件よ」

 

 

内心そんなことで良いのかと安堵してしまった。

元よりアルゴには子安……じゃなかった、アスナの許嫁の身元やら黒い噂やらを調べてもらおうと思っていたのだ。逆にこちらからお願いしたいくらいだった。

 

 

「ギルド会議なんかは恐らく関東圏でやることになると思う。アルゴにはリハビリが済んだらうちに来てもらいたい。わざわざ福島から来るのも大変そうだしな」

 

 

「それはありがたいけど…でも親御さんとかは大丈夫なの?」

 

 

「問題ない。すでに話はつけてあるし」

 

 

「はあ……用意周到なことですこと。だったら退院が済んだらクゥ坊に連絡するわ。連絡先を教えてちょうだい」

 

 

こうしてアルゴとも連絡先を交換した。ここから埼玉に帰るのが凄く億劫だったが、親が心配するので帰らなくてはならない。なので長居もできるはずもなく、とんぼ返りとでもいうふうに病室を後にする。が、幾つか聞き忘れたこともあったので顔だけアルゴの方に向けて言った。

 

 

「ああ……そうだ。アルゴの方は大丈夫なの?親とか彼氏とか」

 

 

「それは嫌味かしら?おあいにくさま、大丈夫よ。今は一人暮らしだし、彼氏なんていないわ。仕事に忙しいから」

 

 

「仕事って何してるの?」

 

 

「……フリーライターよ」

 

 

「まさに情報屋、ネズミのアルゴに相応しい職業だな」

 

 

「ありがと、それじゃあそちらに行く時は連絡するわ。それまで元気でね」

 

 

「おう、そっちもな」

 

 

病院を後にした俺は、急いで帰りの列車に乗り込み停車駅を過ぎないよう眠らないで携帯の画面のアドレス帳を開く。

 

 

そこには新たに

 

 

後藤舞

 

の三文字が加わった。

 

 





病室でなんで携帯使えるのとか突っ込まないでほしい←

とりあえず名前は適当です。
気分で決めました、ごめんなさい((((;゜Д゜)))

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