二次元の中の二次元~最初の二次元は三次元に変わりました~ 作:祭永遠
今回は筆?が進みました。
それもけっこうな速度で。
楽しんでいただけたら幸いです。
後半……もしかしたら、人によってはブラックコーヒーが必要となるかもしれません。
サチやアルゴのお見舞いという名の須郷を社会的にピーする会の会員に勧誘した次の日、俺は……まあ想像通りに筋肉痛となっていた。
正直ベッドから出るのも億劫で歩くたびに身体中が軋むような痛みを訴えてくる。
しかし俺の住んでいる家は埼玉県川越市にあり、今日赴く予定である二人が入院しているのは東京都であるため、多少の筋肉痛であれば問題なく動けるので予定に変更はなしだ。
二人の入院してる病院はそんなに離れていない。なんせ山手線の真逆に位置する駅が一応の最寄りであるからだ。
まあそこからバスやら徒歩やらで時間を使うが、昨日のような強行軍にはならないだろう。
まず目指すのはどちらかと言うと近い位置にあるリズの病院だ。菊岡から聞いた話だとリズの退院日が今日、シリカが明日らしい。なので選択肢的にも退院する前にリズに会えるのは今日で最後となってしまうため、後々のことを考えるとやはり先にリズの病院へ向かうのが吉だろう。
そしてリズの退院する時間がわからないため、なるべく早めに行動して、病院のロビー辺りで待ち伏せが無難かなー、とも考えている。
そんな考え事をしていると気がつけば時計の針は八時を指していた。
早朝にいきなり、はい退院です。さようなら。となるわけではないだろうが、早いに越したことはない。すれ違いになるわけにもいかないし、せめて昼前には病院に着いていたい。もしかしたらそれでも遅いかもしれない、なのでさっさと着替え朝食も取らずに家を出た。
特に道中で記入することもないので色々と割愛する。
そこは少し小さめの病院であった。入院患者はせいぜい十人ほどというくらいの規模で、よくここにSAOプレイヤーを搬入出来たな、と思う程である。
とりあえず病院の中に入り受付のお姉さん(おばさんと言うと恐らく目が光って威圧感が増すような年齢の人)にリズの病室を訪ねることにした。
「すみません、本日退院予定の篠崎さんってまだいますかね?」
「はい、まだ準備をしていると思いますよ」
「ありがとうございます。ちょっと退院したら会う機会も少なくなると思うんで顔だけ見ていきたいんですけど大丈夫ですかね?」
「まあ、それくらいでしたら問題ないと思いますよ。ご両親が迎えに来ると仰ってましたのでそれまででしたら篠崎さんも退屈してると思いますし……」
「申し訳ないです、ありがとうございます」
そう言って俺は病室も聞かないまま歩き出した。これくらいの小さい病院ならば聞かなくても短時間で見つかると思ったからだ。そしてその予想通り、探し始めて十分程度でプレートに篠崎里香と書かれた病室を見つけた。
どうやら個室のようで中からは荷物を纏めているのか物音が聞こえる。俺は二回コンコン、とノックをしながら
「ノックしてもしもーし」
と発した。
中からは「え?嘘?早くない?いや、でもお母さんたちはこんな変なこと言わないし……しかもこの声……つい最近までずっと、それこそ毎日聞いてたわよね……というかこのふざけた感じでこの声って……もしかして……」と聞こえる。
「というか選択肢なんて一つしかないじゃない!!」
リズの声とともにガラッと扉が開いた。
「よっ、元気そうで」
「当たり前じゃない!!いつまでも入院なんてしてたらそれこそ気が滅入っちゃうわ」
いかにもリズらしい元気で明るい声であった。
「それで?目出度い退院の日に何の用よ」
「それはスマンなあ……そうだよなあ、リズとしてはキリの方が良かったよなあ」
「は……はあ!?アンタ何言ってんの!?バカじゃない!?どどどうしてそこでキリトが出てくんのよ!!」
「いや、どもってるから、隠しきれてないから」
リズはくうううう、と顔を多少赤くしながら俯きがちに唸る。
なにこのかわいい生物、おもしれえ。
三〇分程リズをからかい笑ったところで本題に入る。
「アスナさんがまだ目を覚ましていない」
「……詳しく話して」
これからボス戦に挑むような空気が部屋に溢れる。アスナはリズの友人でもある、気が気でないのだろう。ゆっくりと順序立てて三回目になるこの話を説明していく。
「なるほどね……それでクゥはギルメンを集めてアスナを助けようとしてるわけね?」
「その通りだ。だからどうかリズにも協力してほしいんだ」
「任せなさい!!アスナのためにもキリトのためにも……私に出来ることはやるわ!!」
「助かるわ、それなら連絡先だけ教えておいてくれ。アルゴが家に合流でき次第作戦を始めるから」
「わかったわ」
赤外線でアドレスを交換したあと俺はすぐにリズに別れを告げた。
「もう行くわけ?もうちょっとゆっくりしていってもいいのよ?」
「こんな場面をリズの両親に見られてみろ……俺は死ぬぞ」
娘を思う親父の力はハンパじゃない。退院日に娘を迎えに来てみたら娘が知らない男と談笑していたらどう思うだろう。よく考えてみよう。まず絶対にそういう関係だと誤解されてしまう、それはなんとしても避けたい。
「もう、何よ大袈裟ねー」
大袈裟ではないんだよこれが。恐らくだがリズは一人娘のはずだ。それこそ本当に目に入れても痛くない程に溺愛しているはずである。
「リズはもうちょっと自分の素材の良さを自覚した方がいい」
これは紛れもなく俺の本心である。本人は嫌いであろうそばかすも俺からすればそんなことはない、むしろそれこそがリズのチャームポイントだと言っても過言ではない。
リズが顔を赤くしながら俺の言葉の意味を模索しているが今の状態で両親が来たら本当にまずい。
「そんじゃあな、また今度会おうぜ」
そう言って俺は病室を後にした。リズの病室からクゥのバカー、なんて叫び声が聞こえた気がしたが、俺にはまだ回るところがあるので聞こえないフリを決め込んだ。
リズの協力を得られることも確定し、俺は最後のメンバーの元へと足を運んだ。
その人物の病室の前で一度深呼吸を入れる。どうしてかわからないが凄く緊張しているみたいだ。たかだか一ヶ月程度会わなかっただけなのにずいぶんと会ってない気もした。
気を持ち直して二回ノックをする。
すると中から「どうぞー」と聞き慣れた……それでいて飽きない、俺にとって何よりもこちら側で聞きたいと思っていた声が返ってきた。
意を決して扉を開ける。
そこにはベッドに腰をかけて足を外側に投げ出し、ぶらぶらと揺らして思いきりリラックスしているシリカの姿があった。
そして俺が病室に姿を見せた瞬間シリカの動きがフリーズした。
みるみるうちに表情が変わっていく。それはリラックスからの驚愕、そして安堵の表情へと変わり、最終的には泣いてるような喜んでいるような中途半端な表情になった。
そしてそれは俺も同じだと思った。いくら菊岡の話から聞いていても、やっぱり自分の目で確かめないと安心は出来ないし、確証も得られない。恐らく、もし、万が一シリカも巻き込まれていた場合、俺もキリトと同じようにしばらくは行動を起こせないかもしれなかった。
俺がシリカの病室を一番最後にしたのは主にこういうところを考えてのことだ。
「クゥさん……?」
シリカが信じられないといった風に訪ねてくる。
俺は肯定の意として一つ頷く。
返事にならないのは安心しすぎて声がでなかったから。
「本当に……本当にクゥさんなんですね」
「ああ……そうだよ」
今度はちゃんと言葉を返せた。
するとシリカはベッドのスプリングを上手く使い飛び上がる。
「クゥさん!!」
俺の名前を呼ぶとそのまま抱きついてきた。
「……ぐすっ…クゥさあん……会いたかったです……」
ついには泣き出してしまうほどである。優しく抱き止め頭を撫でながら言う。
「会いたかったのは俺もだよ。無事で本当に良かった」
「でもクゥさん……どうしてここに……?」
「ああ、ちょっと長くなるけど大丈夫?」
「はい……それならベッドの方に行きましょうか。いつまでもこうやって……その、抱きついてるのも恥ずかしいですし……」
そう言ったシリカは俺の手を取ってベッドまで進んでいく。俺は引かれるままに行くが、さすがに女の子のベッドに座るのは気が引けるので手を離して脇にある椅子に座ろうとしたが、シリカが手を離してくれない。
シリカはさっさとベッドに座ってしまう。そしてこちらを見ながらポンポンと隣を二回叩いた。隣に座れということらしい。
俺は大人しくそこに座るとシリカは満足したように頷いた。それだけじゃなく俺の腕を抱くようにして、体を預けてくる。そして隣に座っているので距離がほとんどない、おかげでシリカの体温が直に伝わり鼓動が早くなるのがわかる。
「話しを聞くんじゃなかったの?」
それを誤魔化すために真面目な雰囲気で聞いてみた。
「ええええ……もうちょっとー」
が意味がなかったようである。
この間もずっと手は離さないままだが、顔を赤くしながら首をイヤイヤと振って甘えてくるシリカを見てると、しばらくはこうしててもいいかなと思える。
しかしそれがいけなかったのかもしれない。シリカはそのまま倒れ込んでしまった。
「ちょっ!?シリカ!?大丈夫か!!」
「……クゥさん……えへへへ」
だがシリカは俺の腕を離し、その手を腰に回して太ももに頭を乗せてベッドへ寝そべってしまった。
今のシリカは膝枕の状態で頭を体の方に向け腰を抱くようにしている。
「座ってるのが辛くなったのか?それなら普通に寝てていいんだぞ?」
「違いますー、別に辛くないですよ、ただこっちの方が……うん、いいってだけです……」
「そうかよ、ならシリカの好きにしてくれ」
「あ!!あと名前!!ちゃんと呼んでください夏希さん」
夏希と呼ばれた瞬間にまた心臓が一つ跳ねた。シリカの本名を呼ぼうとするが、なぜか鼓動が早くなる。SAOではあんなに簡単に呼べたのに、である。
「……わかったよ……珪子」
そして名前を呼んだ瞬間、さらに鼓動が早くなる。人間の心臓が鼓動する回数って決まってるって聞いたことがある。もしそれが本当ならば確実に俺は早死にしそうな気がした。
「やっと名前で呼んでくれましたね……えへへ……嬉しいです……でも、ちょっとなんだか恥ずかしいです……」
下を向いてシリカがどんな顔をしてるのか確認したかったのだが、いかんせんシリカの顔は俺の体で隠れてしまっているので後頭部しか見えない。
まあ、真っ赤になっているのは耳を見てわかるので確認するまでもなく照れているのはわかる。そしてそれは俺も同じ。
「はああああ、ったく……」
「あはは、溜め息つかれちゃいました。でも……今はそれすらも感じられることが凄く嬉しいです」
俺もだよ、と言いかけたがやめておいた。かわりにシリカを撫でてやる。すると「ん……」と声を出してそのまま俺の手を受け入れてくれた。
しばらくたつと静かな寝息が聞こえてきた。
「寝たのか……やっぱり疲れてたんだな」
起こすのも悪いと思い、起きるまで大人しく待つことにすた。
しかしまさか面会時間目一杯まで寝てるとは思わなかった。
「ふああああ……ごめんなさい……つい気持ちよくて寝ちゃいました」
てへっ、と効果音がつきそうな可愛らしい笑顔で謝られると、痺れた足以上の価値はあったなと思う。
「気にすんなよ。それじゃあそれそろ面会時間も終わりだし帰るな」
「はい、今度はちゃんとお話してくださいね?」
「ああああ!!結局話せなかったし!!大事なことなのに!!ごめんシリカ、アドレスだけ教えて!!あとでメールで教える!!」
「え、メールで大丈夫なんですか?」
「まあ、あんまよくはないけど色んな意味で時間もないから!!」
「わかりました、じゃあ赤外線で送りますね」
そうやってシリカの連絡先を教えてもらい、看護師が巡回に来る前に病室を出ようとしたら、声をかけられた。
「夏希さん!!何度も言いましたけど会えて嬉しかったです……今度デートしましょうね!!大好きです!!」
「おーよ、デートな、楽しみにしてる。今さらすぎるけどなー、俺も大好きだ」
俺はすぐ顔に出るタイプだから言いたいことはちゃんと言ってすぐ病室を出た。
何回も赤くなった顔とか見られたくないし。
後日、シリカにはちゃんと経緯を話し協力も取り付けた。
これで全員が揃うことになった。多少オーバーキルになりそうだがそれはそれ、これはこれ。
ソフトを何本手に入れられるかはわからないが必ず痛い目に合わせてやるよ。
俺はそう心の中で呟いた。
リズとシリカをメインに置いたら前話より文字数が1500近く増えた……
勝手にキャラが動き始めて大変なことになってます……
主にそれが1500文字の原因でしょうorz
文字数とか大丈夫ですかね?読みにくくないですか?
二次創作なのでなるべく気軽にスラスラ読めるものを目標にしているので、そこら辺の感想もお願いします。
あっ、もちろん普通の感想もお待ちしております♪ヽ(´▽`)/