二次元の中の二次元~最初の二次元は三次元に変わりました~   作:祭永遠

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38!!

 

 

 

 

各ギルメンの病室巡りが終わり、筋肉痛も取れた頃、俺はSAOに捕らわれる前の生活に戻っていた。

朝起きてから軽いランニングをして、キリの家の道場に顔を出して稽古に励む。

その時にはもちろん直葉もおり何回も試合を申し込まれたが、まだ筋肉は戻りきってないので断っていた。

 

どうせやるなら万全の状態でやりたいし、いくら全国経験者と言えど同じ剣道をたしなむ者として年下の女の子には負けたくないというくだらないプライドもあった。

 

 

「夏希さーん、そろそろ試合してよー。私が本気でやっても勝てないのってここら辺じゃ夏希さんだけなんだよ?」

 

 

「あー?そんなん知らんがな。それに筋肉が戻ったらいくらでもやってやるって」

 

 

「なるべく早くしてよね!!」

 

 

「はいはい……妹さ……じゃなくて、直葉もわがままになったもんだ」

 

 

今までの癖で妹さんと呼びそうになったが、それを言おうとした瞬間直葉からのキツイ視線が飛び、慌てて訂正すると満足したように頷く。

 

最後にお疲れと言って先に道場を後にする。

今日はアルゴが家に合流するため、少し早めに上がらせてもらいキリトの家から徒歩五分圏内にある自分の家に戻る。

親にもちゃんと話してあるので寝室の準備なども問題ない。家に誰かが来るなどキリトと直葉以外には滅多にないことなので無駄に気合いを入れていたりする。

長くて二ヶ月近くにもなるが大丈夫なのかと聞いたが、「あらあら、そんなにいるの?それだったらいっそずっと家で暮らせばいいんじゃない?」と言い出す始末である。

その提案はさすがのアルゴも断り、今回の用件が片付けば福島に帰ると言っていた。

 

すると俺の携帯が誰かからの着信を知らせる。

発信者の名前は後藤舞となっていたのでアルゴからの連絡であった。

何事かと思い電話に出る。

 

 

「はい、こちらクゥです」

 

 

「あ、クゥ坊?ごめん、東京駅まで来たはいいのだけど、広すぎてちょっとわからないのよ」

 

 

「あー、そこは色んなとこに繋がってるからなー。上の案内板通りに進めばどうとでもなるんだけど……」

 

 

「えーと?何線だっけ?」

 

 

「京浜東北だよ。東京の京に浜で京浜だからな?読み間違えるなよ。もしくは山手線の方に行けば自然と見えて来るよ」

 

 

「そこまでバカじゃないわよ私は。……あ!!山手線は見つけたわ!!ありがとう、助かったわ。またわからなくなったら電話するから、じゃあね」

 

 

それだけ言うと電話は切れた。あんま東京駅なんて行かないから自分でもいまいちわかってないんだよな。この説明でちゃんと来れるといいんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどの電話からおよそ三時間後、またアルゴから電話があり川越駅に着いたとの連絡があった。

それから家を出て歩いて迎えに行く。

駅に着くとちゃんとアルゴは改札近くのみどりの窓口にいてくれた。

 

 

「アルゴ、待たせたな」

 

 

「それほどでもないわ。それよりちゃんとシリカに説明してるんでしょうね?私は嫌よ?修羅場になるの」

 

 

「それについては問題ない。納得もしてくれたし……」

 

 

それまでに一悶着あったことは言わなくてもいいだろう。「貸し一つですからね」と言われたが、どうなるか今から不安でたまらない。

 

 

「それじゃあ長旅で疲れたろうし家に行くか」

 

 

「そうしてもらえると助かるかな?そろそろお昼も過ぎるしお腹もすいてきたし」

 

 

「飯だったら家に用意してあるけどどうする?それともどっかで食ってく?」

 

 

「あら?クゥが作ってくれたのかしら。それだったら無駄にするのもなんだしいただこうかしら」

 

 

「あいよー。そんなら家はこっちだから」

 

 

俺はアルゴと並んで歩き出す。車の通りが多い場所を抜けると、そこそこ自然が多くなり場所によっては歩道すら無くなってくる。そんな道をしばらく進むとキリトの家が見えてくる。

そこを通り過ぎようとしたところで後ろから声が上がる。

 

 

 

「あー!!夏希さんが女の人と歩いてる!?」

 

 

「そこは黙ってるべきじゃないかなあ!?ねえ、直葉さんや!!」

 

 

俺なら黙って後をつけて、状況を見極めてから後で問い詰める。まさか堂々と真正面からこう言われるとは思わなかった。というか会うことが想定外、いや、確かに近所なんだから想定しとけよと思うかもしれないが、そこまで頻繁にばったり会うことなんてそうそうない。

だから今回も平気かなー、なんて気持ちだったのだがミスだったようだ。

 

 

「だってお兄ちゃんと私以外に遊んでるのなんて見たことないんだよ!?そんな夏希さんが知らない女の人と歩いてるんだよ!?そりゃ声も出ちゃうよ!!」

 

 

「失礼な!!お前ら以外にも友達くらいいるわ!!」

 

 

いや、確かに遊んだりしてたのはキリトと直葉が圧倒的に多いが、それだけで他に友達がいないというのは言い過ぎである。

 

 

「ちょっとクゥ坊?この子誰なの?」

 

 

「しかも工藤でも夏希でもなくまさかのあだ名呼び!!どれだけ距離が近いの!?」

 

 

「ええい!!ややこしいからアルゴは黙っててくれ!!」

 

 

「夏希さんもあだ名で読んでる!?そんなの滅多にないのに!?」

 

 

「ああああ!!もう本当にめんどくさい!!」

 

 

思わず叫んでしまった。

 

 

「SAO内のクゥ坊しか見てないと工藤夏希って可愛らしく感じるわ。病室でアドレスもらった時も多少なりとも驚きがあったもの」

 

 

「うん、そうね。今は俺の名前はどうでもいいよね。それよりもこの子は桐ヶ谷直葉、アイツの妹みたいなもんだよ」

 

 

「……アイツ?……ああ、キリトのことね。初めまして直葉さん、私は後藤舞よ。貴方のお兄さんとは一緒に戦った仲よ、よろしくね」

 

 

そこまで言ったところで直葉も俺とアルゴがどんな仲かわかったらしい。明らかに表情が先ほどと違う。

 

 

「あら?そんな顔しないでよ。私もクゥ坊もキー坊もちゃんと生きてるわ。確かにこの二年間……辛いこともあったけど楽しいこともあったんだから」

 

 

アルゴが見せる会心の笑み。それを見て直葉も笑顔を浮かべる。

直葉もアルゴに挨拶を交わし当時のことを色々と質問したりしている。

 

 

「お兄ちゃ……兄のこと、もっと詳しく聞きたいんですけど……」

 

 

その後によろしいですか?と続きそうな表情でこちらを伺う。アルゴは俺にどうする?と表情で語りかけてくる。

 

 

「しゃあない……アルゴ、少し飯は遅くなるかもしれないがかまわないか?」

 

 

「それくらいなら平気ね」

 

 

「ならキリのこと、話してあげるよ。家でいいかな?」

 

 

「夏希さん……!!後藤さん……!!ありがとうございます!!」

 

 

たまにはこんなのもいいだろう。俺からもキリトの話はしなかったし、キリト自身も話すのは遠慮してたし、辛くなるから避けていたんだろう。

 

俺としてはいつまでも引き摺りたくないので、ここらで思い出にしてしまおうと思う。直葉には悪いが今回は俺の精神の成長のため、言い方は悪いが利用させてもらう。

 

 

 

 

 

 

そこから直葉が夕飯で家に帰るまで話は続いた。なるべく気落ちするような場面は話さないようにして、キリトの活躍を全面的に押し出した。そうなると自然と俺の話しも多くなるのだが、そこは勝手に俺が脚色し誤魔化した。

 

 

だって昔から知ってる相手に知られるのって少し恥ずかしい気がしたからね。

 

 

 

 

「結局遅くまで話し込んだな」

 

 

「まさかあんなに聞かれるなんて思ってなかったわ」

 

 

「直葉はキリのこと大好きだからしょうがないよ」

 

 

驚いたような表情でこちらを見てくる。

 

 

「お兄ちゃんっつってもあの二人は従兄弟だから問題はないよ」

 

 

今度は納得の表情を浮かべ、今では懐かしいアルゴスマイルを見せてくれた。恐らく今度会ったら直葉はからかわれるんだろう。ざまあ。

 

 

「「ただいま」」

 

 

すると玄関から両親の帰ってきた声が聞こえる。

どこで二人は合流したのだろう。珍しく母親も出掛けていたので駅あたりかもしれない。

 

 

「あら、その方が舞ちゃん?」

 

 

母親が普段はいないアルゴを目敏く見つけ声をかけた。

 

 

「初めまして、今日からしばらくお世話になります後藤舞です。よろしくお願いします」

 

 

アルゴが見たこともない礼儀正しさで挨拶をする。両親は顔を綻ばせてアルゴを歓迎すると、荷物がそのままなのに気付き今日からアルゴの部屋となる洋室へ案内することとなった。

 

 

「それじゃあ家にいる間はこの部屋を使ってちょうだい。室内にあるものは自由に使ってかまわないからね」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「荷物を置いたら居間に来てね、せっかくだからおばさん、今日は頑張って料理しちゃうから」

 

 

母親は無駄に張り切ってリビングの方へ消えていった。父親の方は先に着替えてリビングにいるようだ。二人の会話がこちらにまで聞こえてくる。

 

 

「いい両親じゃない。大事にしなさいよ?」

 

 

「本当にな、俺にはもったいないくらいだよ」

 

 

心の中で俺とアルゴの関係に探りを入れてこなければな、と付け加える。

どこの親もこういうところは一緒なのだろうか。弁解する必要があるため無駄に力を使ってしまう。

それさえなければ本当にいい両親なのに。さすがにそこまで望むのは贅沢者か。

 

 

 

 

その夜、本当に無駄に張り切った母親の料理のレパートリーに驚いた。

結局この日は今後のことなど何も話せず終わったのは言うまでもない。詳しい日時は覚えてないのであやふやだが、ALO開始まですでに一ヶ月を切っていたと思うが大丈夫だろうか……

 

 

 





文字数が話によってバラバラ……

でもなるべく3000~5000になるようにしてますので見捨てないでください←


気づいたらお気に入りが800超えとか((((;゜Д゜)))
こんなダメ投稿者の作品を呼んでいただいて本当にありがとうございます。

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