二次元の中の二次元~最初の二次元は三次元に変わりました~ 作:祭永遠
ここは第一層迷宮区の十五階、俺とシリカはここをレベリングの拠点としひたすらに雑魚モンスターを狩っている。
ふう……そろそろ疲れてきたねえ、POTの残りや武器の耐久度なんかも心配になってきたし、なによりあと少しでここのボス部屋まで到着するはず。
ここは余裕を持って早めに街に帰ろうかな。
「シリカー!!あとPOTはどれだけ残ってるー!?」
「そうですねー、あと五本です!!」
「了解、ならそれが無くなる前に街に帰るよー」
「はーい、わかりましたー」
シリカさんは、大変素直に育っております……戦闘もそれ以外もやりやすいったらありゃしない。
本当にさ…鍛えるほど強くなってくよね、やはりメインキャラなだけあってチート入ってるよ?じゃなきゃ、MMO初心者がここまでできるかアホがっ
よし、ここのモンスターはあらかた片付いたな。
じゃあ、戻りますか。
「そろそろ帰るぞ、帰り道も敵とエンカウントするだろうからなるべく油断は禁物な」
「はーい!!ねえ、クゥドさん私って強くなれてますかね?」
ええ、大変強くなられておりますよ、最前線で攻略組として活躍できるくらいにはね……
もう、俺の立場はあってないようなものだね……笑えてくる。
あれ、おかしいな、笑えてくるはずなのに…目から汗が出てくらぁ
「まあ、そういう話は街に戻ってからゆっくりしよう。今はまだ一層で俺らのレベルも高くないしね。気を引き締めて帰らないとな」
そう言って俺とシリカは街に帰るために迷宮区をあとにした。
なお、その時十八階付近では後の閃光のアスナが無茶苦茶なレベリングをしてたとか。
はい、街に到着っと………いや、マジ早く転移結晶使いたいわ。
街に戻るまでが冒険です!!って遠足じゃねえんだからささっと帰りたくなるのは俺だけじゃないはず。
「じゃあクゥドさん、街に着いたことですしさっきのお話の続きしましょう!!」
「さっきの話?なんか途中だったっけ?」
「もう、そうやって誤魔化すんだから。私がちゃんと強くなれてるかって話ですよ!!」
あー、それね…つい話した気になってたよ。
ちょっと本音を言うのはMMOの先輩としてのちっぽけなプライドが邪魔するので、ここはあえて辛い評価をします!!
「とりあえずは問題なく強くなれてるね、だけどやっぱり問題点はいくつかある。未だにスキル発動までに若干のタイムラグがある。これはもうそろそろ慣れてもらわないと苦しくなってくるから早めに改善したいね」
「ううー……だってタイミングがまだちゃんと掴めてないんだもん、あと少しで上手く出来そうなんだけど…」
実際はそこまで言うほど目立っちゃないがこのコンマ一秒が生死を分けるからここに妥協はできない。
シリカもそれをわかっているから何も言わず練習を繰り返してくれるんだろうな、こんな後輩を持てておじさんは幸せですよ。
「さて、それじゃあそろそろ宿に戻ろうな。明日はオフにするから遊ぶなり休むなり練習するなり好きに過ごしてね。そろそろボス部屋までマッピングされて集合もかかるはずだからそれまではリラックスして過ごすように」
それじゃ、俺はやることあるしささっと行きますか。
そしてその翌々日、シリカに噴水広場に四時に来るように指示したあと、俺は近場のベンチを覗いていた。
うはは、これが後に夫婦となる二人の会話とは思えんな。
あ、どうも。野次馬根性丸出しの工藤夏希です。
主人公とメインヒロインのやり取り、内容は知ってても本人たちがいるとなれば聞きたくなるのもしょうがないよね?
俺が一方的に悪いけど気になるものは仕方ない、だってSAO大好きだったんだもの。
おっと、そんなこんなしてるうちに広場の方にシリカが見えた………え、あいつまたナンパされてんだけども、モテすぎだろう、少しそのモテ力をわけてほしい。
まあ、とりあえず早く行かないと後が恐いからさっさと合流しますかね…
「おーい、シリカー、お待たせー」
「あっ…クゥドさん。えっとそれじゃあすみません、私あの人とパーティー組んでるのでそれじゃあ…!!」
うん?なんか鋭い視線を感じるよ?
シリカが何かいったのか…?もし視線で人が殺せたら三回死んでお釣りがくるほどの殺気だぜ…いやー、そんな視線向けないでほしい、実は小心者なんだよ。
え?小心者だったらこんなとこいないって?
そりゃ、違うな。俺の2次元への憧れは命より重かったのだよ、ワトソンくん。
実際、今は楽しくてしょうがないもん。
さて、今回ここに集まったのはー………四十六人ね…
うーん……原作にそのまま俺とシリカが加わっただけの人数か。
「なんか人数がそこまで多くないですね…なんというか今からこれだけの人数だと層が上がるたびに辛くなりそうな気がします」
「多分逆にまだ様子見をしてるプレーヤーもいると思う。ここで一回でここのボスを倒せばクリアできることもわかってボス戦に加わる人も増えてくるんじゃないかないかな?」
「なるほど、そういう考え方もあるんですね。だったら早く解放されるためにもここは一回でクリアしましょう!」
やる気が上がったようでなによりです。
そろそろ始まるようだし集中しますかね。
「はーい!それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます!みんな、もうちょっと前に……そこ、あと三歩こっち来ようか!」
えらいイケメンがそこにいた。
…………っは、ハルヒコなんてやってる場合じゃねえ、イケメン過ぎて意識飛んでたわ。
しっかりしたタイプのイケメンだのー、正直羨ましいよこんちくしょー
「あははっ、あの人面白いですね、職業はナイトだそうです」
イケメンなうえに面白いと評価される人間か…これが産まれついて持った才能の差か………
「さて、こうして最前線で活動してる、言わばトッププレーヤーのみんなに集まってもらった理由は、もう言わずもがなどと思うけど……今日、オレたちのパーティーが、あの塔の最上階へ続く階段を発見した。つまり、明日か、遅くとも明後日には、ついに辿り着くってことだ、第一層の……ボス部屋に!」
すると、周りからは驚いたような声が上がる。
シリカには話してあるのでそこまで驚いた様子はない。
心の準備は早いに越したことはないからね、良い緊張感を持ってくれてるみたいだ。
いやー、このままこの状態が続いてくれるといいね。
「……ドさん、クゥドさん!!聞いてますか!?」
「え?ごめん、全く聞いてなかった。そんで何かあった?」
「何かあった?じゃないですよ!!なんなんですか、あのキバオウって人!!さっきっからずっとベータテスターのこと悪く言ってるんですよ!!クゥドさんみたいな優しい人もいるのに!!」
ええと、うん。あまりにもどうでもよすぎて興味なかったよ、キバオウさんの話。
正直そういうとこも含めてゲームなんだし、テスターを擁護する訳じゃないけどある程度差が出るのは仕方ないと思う。
よく、運も実力の内って言うしねー?
そのあとは特に変わったこともなく、会議は順調に終了した。
ただシリカの怒りがなかなか収まらなかったのがちょっと怖かったりしたけど。