アクセル・ワールド~蒼き閃光Ⅱ~   作:ダブルマジック

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Acceleration Second102

 

『《マンティコア》よ。お前を縛っていた頚木は破壊されました。これ以上の争いを望むと言うのであれば、妾達も是非はないですが、どうしますか?』

 

 辿り着いた東京湾アクアライン上の海ほたるPAでは、加速研究会の会長《ホワイト・コスモス》と《ブラック・バイス》、《アルゴン・アレイ》の主要人物と、テイムされた10体の《神獣級》エネミーが《シーバ・カタストロフ》1人を追い詰めていた。

 それを止めるために《タギツヒメ》と《イチキシマヒメ》の協力を得て行動を開始し、早々と撤退していったコスモス達は放置し、テイムされたエネミーをタギツヒメとイチキシマヒメが散らしてくれたので、その間に1体目となるマンティコアをテイムしていたアイテムの冠を破壊。

 タギツヒメ達にはなるべくマンティコア自身へのダメージは抑えるようにと言われていたから、ほとんど冠のみに集中して破壊はできたはずで、破壊直後にマンティコアの瞳の色が赤から金色へと変化し、その挙動が嘘のように大人しくなる。

 ただしテイムが解けたからといってテルヨシ達バーストリンカーを攻撃するようにプログラムされているエネミーなことには変わりないので、再び攻撃される可能性は大いにあり得るため警戒は解かずに距離を保つ。

 そのわずかながらの空白時間に他のエネミーが海ほたるPAへと戻ってくるかを警戒していたタギツヒメが唸り始めたマンティコアへと語りかける。

 テルヨシ達も神獣級エネミーとまともに戦闘するとなれば異常なほどの労力と精神力を奪われるので、タギツヒメの脅しも含んだ言葉でマンティコアが去ってくれることを願う。

 唸りながらタギツヒメを見たマンティコアからは沸々と闘争心のようなものが膨れ上がっていくのが感じ取れて、やはり無理かと警戒を強めるが、次にオレ達を見たマンティコアはテイムされていた時の記憶でもあったのか、唸り声を収めて重心を低くして構えていたのを解き、軽快な足取りでテルヨシ達が通ってきた神奈川方面のトンネルを走っていってしまった。

 

「あんなエネミー、どこにいたんだか」

 

「マンティコアは私も初めて見たけど、あいつらって未開拓のところにも足を運んでるんでしょ。きっと関東圏のエネミーじゃないのよ」

 

「それよりも今のうちに俺達もここから離れるのが得策じゃないのか」

 

 どうにか戦闘にならずに済んでひと安心したのもわずかで、色んなところからエネミーをテイムして呼び寄せている加速研究会の手駒の多さはやはり厄介だと感じる。

 そんなエネミーがあと9体、ここに戻ってくるのかと思うと気持ち的にも滅入ってしまうので、まだ猶予がある今のうちに撤退しようと提案するカイの意見はド正論。

 ここに留まってわざわざエネミーの相手をする必要もないのだから、それが賢い選択なのは間違い。

 しかし……

 

『小戦士達よ。ここで退くというなら止めはしませんが、来た道を戻るにせよ、あの先へ行くにせよ、最も接近するビーイングにはどのみち追いつかれるでしょうね』

 

『他のビーイングも交戦の最中に集まるが、あの狭く薄暗い空間で戦うか、ここで足を止め確実に頚木を破壊するか、どちらが賢いかは明白だと思うがの』

 

「それはつまり、わたくし達がここで戦闘する限りはあなた方はわたくし達のサポートをしてくださる、ということですわよね?」

 

「逆に撤収するなら追ってくるやつを止めもしないってことか。脅しじゃねーかよ」

 

 あくまでも利害が一致しているだけのタギツヒメとイチキシマヒメは、その選択をするならそれ以降のフォローはしないと直接的でないにしても言ってきて、意味を汲んだクラリッサとリクトの言葉に嫌な笑顔を向けてくる。

 それでも全力で撤退する道はあるにはあると思うが、テルヨシは他にも不確定要素があることに気づいていて、仮に逃走中に追いつかれて戦闘になった際、トンネル内で大規模な破壊が起きてしまえば、トンネルの外側は海。

 圧力によってトンネル全体が連鎖的に崩壊して道を失うことになりかねない。

 水中戦になってしまえばますます形勢は不利になって、海上で死亡し《無限EK》も十分に起きうるということだ。

 

「……トンネルが壊れる危険性もあるし、ここで戦うのが得策かもねぇ」

 

「じゃな。あの2人が1体ずつ戦えるようにフォローをするというなら、あと9回、同じことを繰り返せばいいということじゃ」

 

「あと9回って簡単に言いますけど、神獣級エネミーを相手にですよ?」

 

「テイムされてるエネミーは思考が単純になるから戦いやすい。ましてや操るやつが撤退したんだ。相手としては相当楽な部類だぞ」

 

「そうっすね。僕らがしっかりと役割分担して戦えれば、テイム用のアイテムを破壊するだけならそう難しいことではないっすよ」

 

 その辺でみんなが同じような可能性に行き当たったのか、テルヨシの意見に全員がほぼ賛同。

 やれるかどうかではなく、やるか死ぬかという極端さはあるものの、エネミーのテイムにはそれなりの労力を要することは間違いないし、ここで加速研究会の手駒を減らせるなら、気休め程度でもやらないよりはマシだろう。

 異論もなさそうなのでやると決まった以上は意思の統一は早くしようと、カタフも交えた簡易のフォーメーションを作り、どんなエネミーに対しても明確な役割を持てるようにする。

 

「んじゃ《メテオライト》+カタフの力、見せつけてやるとしますか!」

 

「見せつけるって誰によ。タギツヒメもイチキシマヒメも私達になんかそんな興味ないわよ」

 

「テイムされたエネミーも別に儂らに対して恐怖心など覚えるわけもないしの」

 

「なに言ってんだこのリーダーは」

 

「もー! どうしてそんなに辛辣なの! あんまりいじめるとふて寝するんだからね!」

 

「何で素直におー! とか言えないんでしょうかこのレギオンは……」

 

「今のはテイルの言葉のチョイスが悪かったな。俺もツッコミそうになった」

 

「もう少し締まりの良いことを言えばいいものを……」

 

「何も言わないよりはマシとは思いますけどね」

 

「な、なんだか独特すぎる雰囲気っすね、このレギオンは……」

 

 まとまる時はしっかりまとまるのは良いのだが、気合いを入れようと意気込んだところに横やりを容赦なく入れる辺りのやり取りはもはや一芸レベル。

 締まりが非常に悪くなったやり取りにはカタフもどう反応するのが良いのかと迷うことを言ってはいたものの、和やかな雰囲気もここまでで、タギツヒメがエネミーの接近を知らせると皆の纏う雰囲気が真剣さを帯びていった。

 

 爬虫類系統のドラゴン型エネミー《リンドドレイク(Linddrake)》。

 火と溶解液のブレスを使う強力なエネミーで、任意での表皮の硬質化が出来る隙の少ない個体だが、交戦経験のあったサアヤ、ユリ、カタフがほとんど視力頼りのエネミーだと教えてくれる。

 テイムが解けてから視力を失って暴れられても困るので目を潰すという選択は避けて、アキラの《ジャイアント・スノーマン》で股がって目隠しするというシンプルな手段でシャットアウト。

 暴れるリンドドレイクをアキラも必死に抑え込んでくれて、かなり効率良く首に取りつけられていたテイム用のアイテムを破壊することに成功。

 マンティコア同様にタギツヒメとイチキシマヒメの言葉で交戦をやめて海の泳いで行ってしまったのを見送りつつ、いよいよ他のエネミーもほとんどタイムラグなく到着し出してくる。

 それを食い止める役目を果たしてくれるタギツヒメは、千葉方面から伸びるトンネルの出入り口に衝撃に強いキューブを詰めるように展開し蓋をして、そこから来ていたエネミーをせき止める。

 イチキシマヒメも海を渡ってきたエネミーに対して海ほたるPA全域を取り囲む《カミカゼ》で侵入を拒む。

 そうやってエネミーの侵入をコントロールして、猛牛型の目が合うと即死する能力を持つ《カトブレパス(Catoblepas)》。

 狼型の全てを凍らせるブレスを吐き、ひと飲みに喰らう《フェンリル(Fenrir)》。

 頭が両端にある珍妙な大蛇型で酸性の霧を吹き出す《アンフィスバエナ(Amphisbaena)》。

 とにかく辺り構わずに攻撃の限りを尽くす巨人型の《グレンデル(Grendel)》。

 

「これで6体目ぇ!!」

 

 戦ってみると《巨獣級》も中にはいて、6体目のグレンデルなんかはかなり危険な暴れ方をしていたから、テイムが解けたところで攻撃を続けてきそうな勢いだった。

 ただ巨獣級ならタギツヒメとイチキシマヒメは上位存在として命令で退けることが可能らしく、予想通り暴れ出したグレンデルにはその命令で大人しく神奈川方面に行かせてくれた。

 そしてここまで1体平均20分くらいでテイムを解除することには成功していたテルヨシ達ではあったが、何気にダイブしてからハードな戦闘が多かったせいで、まともな休息も蘇生待機の間のみ。

 残り4体とはいえ精神的な疲労が明らかに見えてきて、容赦なく次のエネミーを入れてきたタギツヒメをみんなで睨み付ける。

 強力なエネミーを長時間足止めするだけでも大変なのかもしれないので、堂々と文句は言えない立場ながらも、そろそろ連係にもほころびが生じてきそうな予感はしていた。

 

 グレンデルに続いて巨人型の全身に不気味な瞳を光らせる《アルゴス(Argos)》。

 100はありそうな瞳で死角のない巨人は隙もなく、近接組の攻撃も冠に届かせるのが難しいこともあってかなりの苦戦を強いられる。

 ただ連戦の後半ということもあってシズクのアビリティが順調に育ち、火力面ではトップに躍り出てくれて一撃がデカい。

 特に電磁投射砲の《エリーニュス》の弾丸《アレークトー》は必殺技ゲージの溜まり具合に比例して威力が上がるため、的が大きいこともあって超絶威力を連発。

 エリーニュス自体が肥大化していたので機動力が極端に落ちているのをテルヨシ達が必死のターゲティングで攻撃が向かないようにフォローしながら10分とかからずに冠を破壊。

 グレンデルのように暴れ回ることもなく、元はだいぶ大人しいっぽいアルゴスはテイムから解放したテルヨシ達にお辞儀をしたようなしてないような仕草を見せてから、自力で泳いで立ち去ってくれた。

 残り3体!

 シズクの火力も十分すぎるくらいになったのでペースアップは確実に出来ると意気込みを新たに集中力を上げたテルヨシは、それが幸いして次の動作に迷いがなかった。

 アルゴスの解放で次のエネミーを引き入れようとタギツヒメが力のコントロールで栓をするキューブを縮めた瞬間、その隙間から2体の肉食獣型のエネミーが恐ろしいスピードで入り込んでテルヨシ達を強襲。

 ライオンやトラほどのサイズはあるのにテルヨシの最大速度よりも速い2体のエネミーにわずかながらのインターバルで気を緩めていたユリとクラリッサが真っ先に狙われて、相当な重量があったらしい2体の体当たりと吹き飛んだ先での余剰ダメージでほぼ即死。

 さらに止まることなく鋭い切り返しで再加速した2体はシズクとカイを狙い、シズクはしっかり反応しながらもエリーニュスを持ったままでは回避は不可能と見て自分だけが動いて難を逃れたものの、残したエリーニュスを剛爪が切り裂いて後ろ足で蹴り飛ばして破壊されてしまう。

 これでシズクのアビリティはリセットされることとなってしまい、火力面での期待値がグッと下がったのはかなりの痛手。

 そしてもう一方のカイはスピードに対応できずに防御に回ったまでは良かったが、襲ってきたエネミーには頭が3つもあり、両腕を噛まれて拘束されたところを残った真ん中の頭がカイの頭をガブリ! 容赦なく噛み砕いたことでカイは死亡してしまう。

 その一連の出来事の間にテルヨシは近くにいたサアヤとアキラを庇うように立ちはだかったことで2体は攻撃の優先度を下げたように見え、カタフとリクトも背中合わせで構えていたから狙われずに済んだ節があった。

 思わぬ形で相手することになった2体のエネミー。

 1体は三つ首の番犬《ケルベロス(Kerberos)》。もう1体は双頭の番犬《オルトロス(Orthros)》。

 今の攻撃を見る限り、2体は別々の個体ではあっても共闘するタイプのエネミーである可能性は高い。

 テイムされても連係できる辺りに危機感を覚えたテルヨシは、唸りながら挟み込む形で周囲をゆっくりと歩いて回り仕掛けるタイミングを探る2体を同時に相手するのは早々に諦める。

 

「オレとガッちゃんとイーターでケルベロス。ルールーとスピンとカタフでオルトロスを狙おう。合流しないようにある程度の距離を離れるよ。よーいどん!」

 

 2体を6人で相手取るのは注意力が分散して割と厳しい戦い方になるため、3人で1体ずつ、分断して戦う形の方が勝率が高いと判断し指示を飛ばすと、異論もない全員が合図に合わせて移動を開始し、東西で大きく分かれてケルベロスとオルトロスを誘導する。

 ケルベロスは大きさはともかく巨獣級の格付けにあり、オルトロスと組むと神獣級の強さにもなり得る可能性があるほどには個体として強力。

 スピードとパワーもさることながら、攻撃への対応が基本的に回避という珍しいタイプで受けに回ってこない厄介さでテルヨシ達を翻弄。

 サアヤでさえ初見だったため行動パターンなども探り探りになったので時間はかかってしまったものの、スピードに関しては目が慣れ始めればそこまで脅威ではなく、回避のパターンもいくつか判明させたところでアキラに《フェニックス・ブレード》を装備させて回避を誘発させる攻撃を仕掛けてもらう。

 その回避した先にテルヨシがさらに追撃して無理矢理の回避を促し、最後に回避不可になったケルベロスへサアヤが強力な一撃でテイム用の首輪を攻撃。

 このサイクルが嵌まり出せば危険度もだいぶ下がり、順調に首輪にダメージを蓄積していく。

 カタフ達の方も行動パターンを掴んだ上で攻撃のサイクルを組むことに成功したようで、なんとかなりそうな雰囲気。

 そのわずかな油断とでもいう気の緩みを見逃さないと言うように、サアヤの攻撃を受けて怯むはずだったケルベロスが、突如としてその三つ首の頭から強力な火炎ブレスを吐き出してきて、フェニックス・ブレードのエクストラスキルを使う暇もなくアキラがその炎に焼かれて死亡。

 さらに向こうでも同じような奇襲があったらしく、シズクとリクトが同時に沈められたようだった。

 

「テイル!」

 

 思わぬ窮地に思考が停止しかけたのをサアヤが無理矢理に引き戻して叫び、その意図をすぐに理解したテルヨシは、火炎ブレスによる大きな硬直の隙に首輪を同時攻撃。

 そこでようやく首輪が壊れて正気を取り戻したケルベロスが、まだ戦闘中のオルトロスを発見してそのフォローに回ってしまう。

 

「《インパクト・ジャンプ》」

 

 そうなっては3人になってしまったこっちが圧倒的に不利になるのは目に見えていたので、オルトロスがカタフの《クリティカル・ガード》によって動きを止められた瞬間を見逃さずに必殺技で急接近からの飛び蹴りで首輪を破壊。

 これで壊れなかったら本当に危ないところだったが、なんとか難を逃れて戦闘の意思を消したケルベロスとオルトロスは、タギツヒメとイチキシマヒメの威嚇によってキャンキャンと犬のように吠えて逃げていってしまった。

 

「まさか今の2体に6人も持っていかれるとは思わなかったねぇ……」

 

「あと1体って考えれば気は楽だけど、最後があれでしょ?」

 

「一番厄介なのが残ったっすね……」

 

 疲労の蓄積によるほころびで一気に壊滅状態になるほど余裕がなかったことを現実として突きつけられたテルヨシ、サアヤ、カタフの3人の士気はかなりネガティブな方向に向いてしまっている。

 その原因というのも最後に残ったエネミーが5体目のアンフィスバエナの戦闘中からずっと風の防壁に阻まれていたエネミーで、その姿は確認できていたのだ。

 イチキシマヒメも残りがそのエネミーだけになったとあって風の防壁を解除して侵入を許し、大きな翼を持つそのエネミーは雄々しく羽ばたきながらテルヨシ達のすぐ近くまで降下して咆哮。

 顔だけでテルヨシ達3人分の体積を持つ猛禽類型のエネミーは、その体毛が毒々しいまでの黄色と白で構成されていて、瞳は紅蓮の炎のように紅い。

 体長15m。幅は翼も合わせれば30mに迫るだろう巨大さは神獣級でも相当なもの。

 その固有名は《サンダーバード(Thunderbird)》。直訳で雷鳥だ。

 現実世界で雷鳥と呼ばれる鳥はもっと小さくて可愛らしいものだが、加速世界のサンダーバードはおそらくその源流が違う。

 タギツヒメなどが神の名を冠するように、サンダーバードもどこかの国の伝承などにある存在が元なのだろう。

 それなら名前の通りの技は使えそうだなと考えたら、闘争心がむき出しになったサンダーバードはその体にバチ、バチと帯電させながら発電し始める。

 

「おいおい、雷攻撃とかトラウマしかないんだけどぉ!」

 

「飛んでるのも最悪よ。攻撃とかどうするの」

 

「あの帯電じゃ体に乗るのもダメージ覚悟っすよね」

 

 飛ぶ。雷。神獣級の面倒臭さ詰め込みセットなサンダーバードに3人で挑まなきゃいけない精神的負担は、やる気を失うのに十分すぎるくらいにはキツい。

 直近でイチキシマヒメの試練で雷攻撃を受けまくったこともあってテルヨシとサアヤのやる気は割増しで減ってしまう。

 そんな感じで具体的な対策を練るのが少し遅れたのも災いして、充電を完了させたサンダーバードが再び咆哮し、羽ばたきと同時に雷を飛ばしてくるのを地上から見ることしかできない。

 

『《タケミカヅチ》』

 

 ここは最後の1体というところから1度全滅して立て直しを図るのも手かと考えた矢先。

 直接の戦闘は加減が出来ないからと避けていたイチキシマヒメが容赦なく最強技のタケミカヅチをサンダーバードへと放つ。

 その攻撃は同じ属性ということもあってサンダーバードには力を増幅させる効果しかなくて何してくれてんの!? という気持ちが口から出かけるが、貫いたタケミカヅチのエネルギーにサンダーバードの放った雷が吸い寄せられてテルヨシ達への攻撃がかき消される。

 

『妾の前で雷を操るとは、愚かな』

 

 さらに唸りながらイチキシマヒメに向き直ったサンダーバードに対して生意気だと言わんばかりに抜いていた剣をサンダーバードへと向けて、落雷すらエネルギーにするその剣にサンダーバードが帯電する電気エネルギーを吸収。

 みるみるうちにサンダーバードの全身からエネルギーがなくなり、また作り出そうとしても根こそぎ奪われる現象が発生する。

 

『《センジュ》』

 

 サンダーバード最大の攻撃手段であろう雷を封じた形にはテルヨシ達も歓喜しかけて、そのまま攻撃もしてくれないかなと思っていたら、タギツヒメも水晶の1つを割って試練の時に出した無数のキューブを周囲に展開。

 イチキシマヒメが攻撃妨害のみに留めているところを見ると、タギツヒメも同じかもと出現したキューブを触ってみると、簡単に運動エネルギーを得ていた試練の時とは違って空間自体に固定したように動かない。

 見ればサンダーバードもこのキューブのせいで動きを大きく阻害されてしまっている。

 

『何をしていますか。早くこのビーイングの頚木を破壊しなさい』

 

『何故このビーイングを最後に残したのか、試練を乗り越えたそなた達がわからぬわけはあるまい?』

 

 その光景に呆然としていると、ここまでのお膳立てをしたタギツヒメとイチキシマヒメがさっさと動けと命令してきて、あの10体の中で最も苦戦を強いるだろう個体をいち早く見抜いて最後に回したとわかる発言には驚かされる。

 最後になればタギツヒメもイチキシマヒメも侵入阻止の技を維持する必要がなくなり、技の制限がなくなるから、こうした妨害にも手が回せるということを考えていたのだ。

 さすがにここまでのお膳立てをされてやる気がなくなったなどと言ってもいられないので、残りの力を振り絞ってタギツヒメの出現させたキューブを足場にしてサンダーバードへと肉薄したテルヨシ達は、エネミーの解放へと乗り出した。

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