アクセル・ワールド~蒼き閃光Ⅱ~   作:ダブルマジック

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Acceleration Second15

 加速世界での問題がいくらか進展して少しだけホッとした週末を迎えたテルヨシだったが、そのわずかな気の緩みからあまりにも急展開な事態が発生。

 テルヨシとサアヤが結果的にマリアの目を盗む形で恋人らしいことをしていたのを当人に見られてしまい、この場に居づらいと感じたのだろうマリアはまだ許可なんて取ってもいないはずのチユリの家に泊まると言って出ていってしまい、それを止められなかったテルヨシとサアヤは閉じられた玄関のドアを呆然と見つめて立ち尽くしていた。

 

 ──最悪だ。

 そんな思いがテルヨシの頭に浮かんだのとほぼ同時に隣にいたサアヤが滑り落ちるように崩れた正座をしてしまい、その瞳からは大粒の涙が溢れ始める。

 

「ちがっ……私……そんなつもりじゃ……」

 

 ただ呆然とドアを見ながらに呟くサアヤは、自分がしてしまったことに酷い罪悪感を抱き始めていて、自分よりも酷く傷ついたサアヤを見て、出ていったマリアのことを考えて冷静になったテルヨシは、ニューロリンカーをグローバル接続しようとする。

 しかしそれより前に隣のサアヤがテルヨシのシャツの裾を引っ張ってきたのでそちらに意識を向けると、泣きながらに見てきたサアヤは必死に言葉を吐き出してくる。

 

「追って……お願い……私が追ってもダメ、だから……」

 

「わかってるよ。でも……」

 

「アンタと! テルとマリアの『絆』は……絶対に壊れちゃダメなの! それを私なんかが壊していいはずが……ないから……だから……走ってでもすぐに追いかけてよ!」

 

 その悲痛さは聞いているテルヨシの心まで痛むほどの訴えだったが、追えと言うサアヤに急かされてもすぐに追えない理由がテルヨシにはあるのだ。

 その辺のことをまだサアヤにちゃんと話してなかったのは本当にコミュニケーション不足だったが、言われても追うことなく、むしろサアヤに合わせて腰を下ろしてきたテルヨシに腹が立ったのか、その胸を叩いて急かしてくる。

 

「行けってば! 私なんか今はどうでもいいでしょ!」

 

「いだいっ! ちょっ! まっ! 待てっての!」

 

 ドンドン叩く両手が止まらないもんだから、珍しくテルヨシも声を荒げてサアヤの両手首を掴んで止めて、それが出来ないようにすぐに抱きついて落ち着かせるように頭と背中を擦ってあげる。

 

「…………ごめん。すぐに追いかけたいのは気持ちとしてあるんだけど、オレまだ、走ったりとかは出来ないんだわ」

 

「…………何よ、それ」

 

「自力で歩けるようになったのは去年の終わり頃で、それまでは車椅子を使わなきゃ1人で出歩けない状態だったからさ。だからマリアに走られたら今のオレじゃ追いつくどころか引き離されちゃう」

 

 軽く興奮状態だったサアヤもどうすることもできなくなると聞く耳を持ってくれて、ようやく自分の足のことを話したテルヨシに表情は見えないながらも、驚くような雰囲気を醸し出す。

 

「幸い行き先は言ってくれたから、そっちの方に話をしてマリアを引っ張ってきてもらう。来なきゃこっちから乗り込めばいい。それにこんなに泣いちゃってる彼女を放って追いかけたら、それこそマリアに怒られるし」

 

「…………私……ごめん」

 

「謝るのはこっちだよ。オレとマリアのことをそんな風に大事に思ってくれてたなんて気づかなかった。ごめんな。それと、凄く嬉しかった」

 

 ぽん、ぽん、ぽん。

 話しながらに頭を優しく撫でるテルヨシのおかげでようやく嗚咽の声が止んだサアヤは、今さっき自分が2人を思って放った言葉でテルヨシを傷つけていたことに対して謝罪するが、知らなかったんだから仕方ないと許してあげる。

 何よりテルヨシの性格上、泣いてる女の子を放って行けるほど割り切れる都合のよい性格はしていないし、あの状態で1人にしたら危険だとわかるほどにはテルヨシも冷静に判断できていた。

 

「落ち着いたところで動くかな。ちょっとごめんね」

 

 自虐的だったサアヤが落ち着いたので、擦る左手をニューロリンカーに伸ばしてグローバル接続したテルヨシは、ボイスコールでチユリへと繋ぎ、すぐに「いま連絡しようと思ってました」という言葉と共に繋がる。

 

「悪いねチユチユ。そっちにマリアが行くでしょ」

 

『すっごい急にだったから何でだろうって思って。でもテル先輩からは許可をもらってるから大丈夫とか言ってましたけど、何かありましたね?』

 

「ちょっとした思いのすれ違い、かな。これから行くから、出来たらマリアをマンションの外に連れてきてくれる?」

 

『それはまぁ出来ないこともないでしょうけど……』

 

「……何をご所望で?」

 

『今度は正式にマリアちゃんをお泊まりさせてください』

 

「それは本人の意思を尊重しなきゃだ」

 

『説得するのはテル先輩のお仕事ですからねぇ』

 

 チユリの方に今しがたあったらしいマリアの連絡に疑問を持っていたチユリの理解力はさすがでありがたいが、空気が読め過ぎちゃうので、こっちが割と重い空気と察すると明るい方向に持っていくのに、結局なにかしらのお願いを聞くことになってしまう。

 それでもチユリのお願いは前向きに考えつつ、マリアとの対面に向けてボイスコールを切ったテルヨシは、必要になるだろうものを取ってくるために立ち上がって、サアヤはすぐ後ろの壁に背中を預けて体育座りをする。

 そしてテルヨシが玄関に戻って靴を履いていると、落ち着きながらもまだしょんぼりとした声で口を開いてくる。

 

「私達……早すぎたんだよね……」

 

「そんなことないよ」

 

「そうじゃなきゃマリアだってもっと気持ちを整理する時間があったもの。私がマリアくらいの頃に兄さんがいきなり彼女を連れてきた時のこと思い出して気づいた。自分に近しい人間関係に急に割り込みをかけられると、気持ちがね、上手くまとまらなくて、どうしていいかわからなくなるの。それまでと同じではいられないって思っちゃう」

 

「…………」

 

 わかるような、気がした。

 状況は違えど、テルヨシもサクラとの関係がぎこちなくなってしまった時期があったし、同じようにしたいと願えば願うほど、その同じが遠退くような、そんな感じが感覚的に理解できるのだ。

 だが仕方のないことなのだ。人は日々を生きていく中で少しずつでも変わっていく。

 変わらないということはそれはつまり『立ち止まる』ことと言えないだろうか。

 変化を望む望まないは色々と思うところはあるだろうが、大事なのはその変化に対してどう対応するか。今のテルヨシはそう考えている。

 

 それらを今ここで全て言葉にして伝えるには時間がかかりすぎてしまうので、とにかくマリアを連れ戻してきてから話をしようと思ったが、それより先に一方的な答えを出しかけるサアヤが嫌な雰囲気を醸し出す。

 

「……ねぇテル。私達……」

 

「その先を口にしたら、さすがのオレでもゲンコツの1つは飛び出すよ」

 

 流れ的にサアヤのことだから「マリアが悲しむくらいなら別れた方がいい」くらいのことは言いそうだと思ってたら、本当に近いことを言いかけたので、ちょっと慌てつつもその口に指をそっと添えて止めてやりつつ、全てを伝えきれないながらもサアヤを安心させる言葉を探す。

 

「…………夕飯、作っておいてくれる? もちろん、オレとサアヤと、マリアの3人分。帰ってご飯が出来てるって、凄く嬉しいことなんだよね」

 

「……うん。美味しいご飯作って待ってる」

 

 そして出てきたのは鳴りそうだった腹の虫からの腹ペコな言葉で、それでもなんとかそれらしいことを言って笑ったテルヨシに、サアヤもまた少しだけ呆然としてからぎこちないながらも笑顔で返してくれる。

 それを見届けたテルヨシは絶対に失敗できないミッションに挑むために玄関を出て、そのドアの向こうで少し待機。

 するとドア越しのサアヤが少しの沈黙から「よしっ!」と切り替えたような声をあげたので、サアヤへの心配を少し減らし改めて出発。

 

 これから夏本番ということもあって、午後6時近くになってもまだ明るい外の景色は、遠くにいたマリアとチユリを一目で見分けられるほどで、ある程度まで来ればその表情まで見て取れた。

 厄介事に巻き込まれても嫌な顔ひとつしないでマリアを連れてきてくれたチユリは、テルヨシが来たことでマリアの背中をポンとひと押しして送り出し、1度だけ笑顔を向けてマンションへと戻っていく。

 対してマリアはと言えばここに呼ばれたこともだが、自分なんかに構って何してるのみたいな不機嫌丸出しの表情でテルヨシが近づいてくるのを待っていた。

 

「その顔は好きじゃないなぁ」

 

「……サアヤさんを1人にするなんて最低」

 

「そうかもね。でも今のマリアほど酷いことはしてないよ」

 

「…………」

 

 笑ってるマリアが大好きなテルヨシにとって今のマリアは好きとはほど遠い顔をしていたので、不機嫌具合を探る意味でもあえて口にして反応を見るが、ちょっと思ったよりも深刻そうなので優しさだけではダメなことをすぐに悟る。

 聡いマリアはたぶんだが、自分が何をしたかをなんとなくわかってはいるし、それでもそうするしかなかったからここにいることも理解はしている。

 幼いながらにテルヨシとサアヤに気を遣った結果だからテルヨシも怒るわけにはいかないし、むしろ謝る立場にはあるが、大事なのはこれから先のこと。

 その場その場で今後もこれと同じことが起きて謝ったりなんだりをしていたら、本当にサアヤが別れ話を切り出してしまうし、マリアだって家を出るとかなんとか言いかねないのだから、腹を割ってちゃんと話をする必要がある。

 だからこそテルヨシはムスッとするマリアがこのまま微妙な沈黙をしてしまうのを避けるため、懐から持ってきたXSBケーブルを取り出して近くの座れそうなところを指して移動。

 ムスッとしながらもちゃんとテルヨシの隣に座ったマリアは、周囲に人がいないことを確認してから渡されたケーブルの先端をニューロリンカーに繋いで直結。

 

「そんなにオレとの直結を見られるの嫌ですか?」

 

「嫌」

 

「そうですか……じゃあそのモヤモヤしてるものはあっちで吐き出してもらうからな。バースト・リンク」

 

 その挙動がテルヨシ的にはちょっと傷つく行為だったが、今のマリアでは仕方ないと割り切って加速してマリアとの対戦を選択。

 初期加速空間でも良かったが、何事にも言葉だけでは足りないものは存在するのはわかってるので、全てを曝け出す意味でも対戦の方が良いと判断した。

 

 ブレイン・バーストの粋な計らいかどうかは不明だが、降り立ったフィールドの属性はマリアと初めて降り立った《平安》ステージで、あの頃からもう3ヶ月も経つのかと少し考えていたら、ガイドカーソルの表示がないので一瞬、マリアが近くにいると思ったが、よく考えたら対戦は最低でもガイドカーソルの出現する位置に配置されるのでこれはマリアのアビリティ《インキュベーション》による恩恵だと理解するのに時間はかからなかった。

 しかしそのわずかな思考時間でもマリアにとっては好機。

 対戦が選択されて開始の合図が出て早々にテルヨシの視界から消えていたマリアは、発射音のほとんどしない狙撃銃型強化外装《シャープネス》から1発の銃弾を発射してテルヨシの後頭部を強襲。

 構えすらしてなかったテルヨシにとってこの一撃はクリーンヒットと同時に思考停止に追い込むこととなり、ガリッと1割弱は減ったHPゲージを見てなんとか踏み留まる。

 テルヨシとしてはまず話をしようと思っていた。からのこの不意打ちなので思考停止は仕方ないとも言えるが、対戦となったら即攻撃に転じてくるマリアの容赦のなさは割り切りすぎではなかろうか。

 ──我が《子》ながらあっぱれ。

 相手の隙は見逃すなと狙撃手としての在り方を教えてきたからには全然オッケーな攻撃だが、今回はそういうのじゃないでしょと思いつつ、銃弾が飛んできた後方を振り向いて即座に物陰に身を潜めるが、マリアの姿はすでに見えない。

 インキュベーションのおかげでその姿が見られるまではガイドカーソルも表示されないため、こうなったマリアの面倒臭さは《親》が1番わかっている。

 

「なぁマリア。1つ賭けをしないか? オレが勝ったら否が応でもマリアを連れて帰る。んで、マリアが勝ったらマリアの好きにしていいよ。もちろんレベル差もあるから、オレは必殺技を使わないハンデありでな」

 

 状況はマリア優勢だ。その上でどこかにいるマリアへとそんな賭け事を持ちかけたテルヨシに応える声はない。

 

「沈黙は了承と取るぞぉ。んじゃスタート」

 

 一方的ではあったが、テルヨシがそうやって賭け事を持ちかけたのは、マリアに本気でぶつかってきて欲しいからに他ならない。

 中途半端な気持ちでぶつかってこられてもテルヨシも困るし、マリアだって秘めたものを吐き出すチャンスが必要。

 だがマリアは頑固だからテルヨシがただ「言ってくれ」と言ったところで、気を遣って自分を押し殺してしまう可能性が高い。

 そうならないようにテルヨシは対戦の中で自分の気持ちをマリアに吐き出して、マリアの本心を吐き出させる必要がある。

 純粋な対戦の方が性には合ってるが、これは心の戦い。そう自分に言い聞かせて物陰から飛び出したテルヨシは、すでに再装填を終えているだろうマリアに狙い撃ちされないように出せる最高速でフィールドを駆ける。

 

「マリアの気遣いは嬉しいよ! オレのこと。サアヤのことをちゃんと想って行動したりしてるのも痛いくらいにわかる!」

 

 駆けながらマリアを探すテルヨシは、それと同時に思いの丈を姿なきマリアへと聞こえるように叫び、それすらも作戦だと思ってるマリアがそれでも反応せざるを得ないように言葉での追い込みをかける。

 その間にマリアの狙撃はなく、今のテルヨシに当てることはできても、速度の差でそのあとに続かないと判断して何かのチャンスを待っているのだろう。

 

「でもな! それでマリア自身が傷付いたり、遠慮したりする姿はオレもサアヤも見たくなかった! そうしちゃったサアヤはマリアが出ていったあとに悲しんで泣いちゃったよ! オレも痛かったよ! 心がな!」

 

 そうしてくれるならテルヨシも話に集中できていいので、こっちがチャンスとばかりに言葉で畳み掛けながら、マリアの心が痛む言葉を選んでみせる。

 マリアを傷つけずに済むのが最善ではあるが、自分のしたことによって起きたことを認識させ、良かれと思ってしたことでも、本人の意に沿わない結果になり得ることを教えてあげる。

 優しいだけではダメと周りに散々言われてきたテルヨシなので、この行為自体に心が痛むが、ここでマリアの本心を吐き出させないとこれからの関係が崩れかねないことも職業柄わかっていた。

 

「マリアはオレとサアヤが恋人らしくしてほしいって思ってるのは今回のでわかったよ! でもそれでマリアが邪魔者扱いになるなんてこっちが願い下げだ! マリアのいないところでコソコソしてたのはオレ達が悪い! 悪かったよ! でもそれならマリアはオレ達にどうして欲しい! 逃げてないで教えてくれ!」

 

 心理学は人の心を学ぶ学問だが、その人の考えの全てがまるっと全部わかるならこんなことにはならないし、テルヨシだって普段の生活に心理学は持ち込まないようにはしているのだ。

 加速世界の密度のせいで忘れがちにはなるが、マリアは幼馴染みのサクラのように長い時間を一緒に過ごした深い関係ではなく、一緒に暮らしてその性格やらをちゃんと理解し始めてまだ4ヶ月に満たない程度の、言い方は悪いが浅い関係でしかなく、本気の喧嘩すらしたことがない未熟な家族なのだ。

 それなのに相手のことを理解したつもりでいたり、究極的に他人だから本当の家族に対しての気遣いとは違った気遣いをしてしまう。

 そういった所謂よそよそしさがまだテルヨシとマリアの間には無意識ながらもあるのだ。

 ──家族同然ではあるが、家族ではない。

 その無意識がこの状況を作り出してしまったなら、責任は壁を作っていたテルヨシにあるし、マリアの不安、不満といったマイナス面のケアを怠った怠惰。

 

「じゃあオレが、サアヤがマリアにどうして欲しいって言ってもいいのか! どうしたいか決めていいのか! それなら最悪、オレとサアヤは別れることになるかもしれないな! サアヤもマリアがそんな風になるならいっそ、別れた方がいいかもって言ってた……」

 

「──ダメェッ!!」

 

 そのマイナス面を面に出さないマリアからそれを引き出すには、マリアの都合が悪い現実を突きつけるしかない。

 そう思って最後の切り札を切ったところで、その言葉を切るようにマリアが叫び、直後にテルヨシの胸部装甲に強烈な《炸裂弾》が命中し激しい爆発に巻き込まれる。

 ダメージも相当で一気に3割も削られてしまったが、発生した煙を突っ切って怯むことなく銃弾が飛んできた方向に抜けたテルヨシは、その視界の先。

 今は五重の塔のような建物オブジェクトの自宅マンションの屋上でシャープネスを構えて立つマリアを発見。

 これによってインキュベーションの発動条件を満たせなくなりテルヨシの視界にもガイドカーソルが出現したが、今も隠れることなく立つマリアの様子からしてあえて見つかった節がある。

 

「そんなのダメェ!! それでテルとサアヤさんが別れたら、私のせいになっちゃう!!」

 

「……そうだよ。マリアのせいだ。マリアのせいでサアヤが泣いたし、オレも悲しいことを言われた」

 

「私の、せいで……うぅ……」

 

 そうならばとテルヨシも立ち止まってマリアを見上げていると、マリアも腹から声を出してその本音をぶつけてきて、決して、絶対に、98%くらいはテルヨシの責任だが、今は非情となってマリアを追い詰めると、自分のせいでテルヨシとサアヤが別れるかもと知って戦意を失ったマリアはその場で泣き始める。

 

「…………泣いても状況は変わらない。泣けば誰かが解決してくれるような歳じゃなくなってきたんだよ、マリア。あの時だって……オレのところに来ると決めた時だって、マリアはちゃんと自分の意思を示してくれただろ。なら今度もちゃんと教えてくれ。マリアは本当はどうしたくて、オレ達にどうして欲しいのか。それを言うことがわがままでおこがましいって思ってたなら、それは間違いだ。両親を退けてまでマリアを預かったオレの最高のわがままに比べたら、なんだって些細なことなんだよ。そんな願望も要望も聞けないような覚悟でお前と一緒に暮らしてないんだよ!!」

 

 胸が張り裂けそうな罪悪感に駆られながらも、泣いているマリアに対して厳しい言葉をぶつけるテルヨシだったが、その言葉の中にも確かな優しさが含まれていることに気づいたマリアは、ゆっくりではあるが嗚咽の声を小さくしていき、完全に泣き止んで再びテルヨシを見下ろすと、先ほどの叫びほどではないが、確かに芯の通ったはっきりとした意思のある声で言葉を紡いだ。

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