1対1の対戦で使える状況はそうないテルヨシの最強の必殺技。
フルチャージ状態の必殺技ゲージをわずか5秒で使い切る燃費の悪さだが、それに見合うだけの効果。目で追うのも難しいほどの速度での連続ショートジャンプを可能にする《インジビブル・ステップ》。
テルヨシがこの必殺技を使って勝てなかった対戦は、おそらく片手の指で数える程度しかない。
千載一遇のチャンスにためらいなくそれを発動させたテルヨシは、まだこっちをちゃんと知覚できていない重い攻撃を受けたカタフへと突貫。
時速360kmの3mショートジャンプの連続使用で稲妻のような軌道で追撃したテルヨシは、まずカタフの倒れかけた体を蹴り上げて宙に浮かせ、そのカタフを追い越すようにして真上へと跳んですぐに急降下からのかかと落としを叩き込んで地面へと沈め、さらに着地から真横へジャンプして反動で浮き上がったカタフを蹴り飛ばしてみせる。
まさに電光石火の連続攻撃でカタフのHPゲージは一気に残り4割を切り、必殺技の残り時間が2秒あるかどうかとなって、決め切るにはわずかに足りないかと頭をよぎり、それでもできるだけの攻撃は叩き込もうと吹き飛ぶカタフをさらに追撃するため足に力を込める。
「…………《ジ・エンド》」
そしてショートジャンプをした瞬間。カタフが吹き飛びながらにそんな必殺技発声をしたのがわずかに聞こえ、カタフを中心に不気味な風が吹き抜けていき、テルヨシもその風を受けたがダメージはなく、何の障害にもなり得なかった。
が、それを受けてから突如としてテルヨシの消費されていた必殺技ゲージが止まり、跳んだはずのテルヨシの動きもエネルギーを消失したように止まって、上手く制御できずに着地に失敗し転けてしまう。
それでも倒れまいと《テイル・ウィップ》を支えに踏み留まろうとしたが、いつもテイル・ウィップを動かすための感覚が虚しく空振りするような感覚が襲ってきて、それに戸惑いながら転倒してしまう。
何が起こったかを確認する前に反射的に頭の後ろに手を持っていき、そこにあるはずのテイル・ウィップが消失していることに驚くが、その驚きをかき消すかのように視界に映ったのは、今までのダメージを物ともしないように立ち上がって一直線にこちらへと突撃してくるカタフの姿。
驚きの連続で思考が一時的に停止し、何をどうするかを判断できなかったテルヨシは、接近するカタフに対して反射的に立ち上がることしかできなく、繰り出された壮絶な拳の連打に為す術なくHPゲージを削られていく。
「我ながら、つまんない必殺技っす」
「何が……だよ」
それでも何とか距離を取ろうとした絶妙なタイミングで渾身の右ストレートを叩き込んで後退させてきたカタフ。
それになんとか耐えて踏み留まったが、そんなテルヨシに対してさっきまでのハイテンションが見る影もないカタフの寂しげな言葉に疑問が生じる。
その間にもカタフの必殺技ゲージは減り続けているが、その減少は毎秒2%といったところで、リチャージも可能なのか使用時からそこまで減ってないように見える。
「この必殺技は、バーストリンカーの個性を殺す禁じ手っす。これの前では如何なテイルさんでも無力っすよ」
「さっきまでのハイテンションはどこへやら、だな」
ようやく落ち着いて思考する猶予ができて、互いのHPゲージがまたほぼ五分にされてる悲しさを覚えつつ、現在進行形で発動中のカタフの必殺技について思い出す。
ジ・エンドは、カタフの半径50mの範囲に展開されるフィールド干渉型の必殺技。
その効果は範囲内にある間は、あらゆるアビリティ・必殺技・強化外装・それらに関する効果を完全に無効化するというとんでもないもの。
だからさっきテルヨシのショートジャンプが途切れるように中断させられたのも、装備していたテイル・ウィップが消失したのもカタフのジ・エンドのせい。
テイル・ウィップは範囲内にいる間は装備すらできずアイテムストレージに強制的に戻されてしまうようだが、それを失うテルヨシの損失は他が思うよりもずっと大きい。
ギャラリーからの声も聞こえるほどに集中し直せてきたテルヨシだが、そこから聞こえてくる声の中には「あれが出ちゃったかぁ」とか「ここからは殴り合いだな」とかそんな少しだけ落胆したような、つまらなくなったみたいな雰囲気のある声があって、それを聞いた時にカタフの言葉を振り返ると、その理由についても理解が及ぶ。
デュエルアバターが個性と呼べるものを出せる最もな要因は、様々なアビリティ・必殺技・強化外装によってであり、それらを除いてしまうと残るのはそのアバターの色による特性のみ。
それも硬いか柔いかの差でしかなく、その中で緑系のカタフは青系のテルヨシより有利ということになる。
強力な没個性を誘発する必殺技。そんなものが存在してしまえるブレイン・バーストの可能性には恐れ入るが、こんな必殺技を持ち得たカタフという少年の心の闇はどんなものを秘めているのか。
しかし今はそんなカタフのことを考えてやれるほど余裕もないテルヨシは、目の前で相手を倒すだけの『作業』を始めようとするカタフに対してむしろ闘志を燃やす。
「没個性? だから何だよ」
この必殺技の中での戦い方を知ってるカタフは、自分自身さえもその効果を受けてアビリティが使えないという大前提が頭にあるおかげで、咄嗟の行動などでアビリティに頼ったりをしない意識の切り替えがすでに完了しているようだ。
これは今のテルヨシでは完全にはできない、隙が生じる要因になり得るが、こんなことで対戦を楽しむ心をなくしてしまっている目の前のカタフが気に食わない。
その思いだけが今のテルヨシを突き動かして、攻めてきたカタフに対してテルヨシも前進して真っ向から迎え撃ちにいく。
アビリティが無効化されてるということは、カタフの自慢の《クリティカル・ガード》も今は障害にはならない。
ならばと振るわれたカタフの拳に対して蹴りを選択したテルヨシは、全体重を乗せて放たれた拳に回し蹴りをぶつけて相殺どころか弾き返そうとする。
だがカタフは衝突の寸前で体重を後ろへと引き戻して拳を衝突させると、難なく弾き飛んだ拳を止めることなく体を回転させることで勢いを増して即座に横殴りの裏拳がテルヨシの足に命中。
威力を出し切った足に命中した拳によって簡単に弾かれた足に体を振られてバランスを崩したテルヨシに追撃するように流れるような反対の拳による正拳突きが繰り出されて顔面に命中。
ここで倒れる状態に持ち込まれて咄嗟にテイル・ウィップを使おうとするが、それができないことを思い出して自力で踏み留まろうとしたところで、その足を払われて転倒させられてしまう。
「ぐっ……クソがッ!」
惨めな背中からの転倒に悪態をついたテルヨシに対して、あくまで作業的に次の拳を振り下ろしてきたカタフの非情さは空虚さえ覚える。
──そんな拳なら振るうな!
そう叫びたかったテルヨシだが、その余裕すらない中で行動にだけはしようと思考する。
テイル・ウィップはテルヨシにとって手足の延長であり、補助でもある。
《レガッタ・テイル》は上半身と下半身の強弱がかなりアンバランスで、強靭な下半身とは違って非力な上半身を補う意味でもテイル・ウィップはその手の代わりを担う場面が非常に多かった。
だからこそ、テルヨシ自身もいつからか『上半身は脆弱』という意識が強くなり、戦い方も蹴りが主体になっていったところがある。
思えば対戦の中で手を使うことさえも珍しいテルヨシの片寄り方は異常で、その代わりを担っていたテイル・ウィップの消失で使わざるを得ない状況となった今。ようやく気づくことがあった。
迫る拳に対してテルヨシは咄嗟に両手で手首を掴んで止め、その間に足を上半身に寄せて溜め、足裏を見せてカタフを蹴り上げる両足を揃えた蹴りをお見舞い。寸前まで掴んでいた腕のせいで逃げられなかったカタフはこれを逆の手を割り込ませて直撃は避けるも、威力を殺しきれずに仰け反りかける。
蹴りと同時にカタフの腕を放して、今度は両手でしっかりと地面を捉えて蹴り上げた足を横へと動かして体をコマのように回転させて、それに合わせて腕の力で体を持ち上げてカポエイラに繋げてカタフを蹴り飛ばしながら立ち上がる。
そんな華麗な足技に後退しながら驚いた様子のカタフは、すでに構え直したテルヨシにすぐ突っ込んでくることはなかったが、これにはやった本人が1番驚いてしまう。
以前までのテルヨシ……とはいってもそれが指す状態がどこから以前かはハッキリしないが、レベル1の頃にはやろうと思っても腕が支えきれずに沈んでいただろう今の動作が、今になって出来るようになっていたのは何故か。
その答えは単純明快。テルヨシのレベルアップボーナスによるアバターの強化は、何も『下半身のみ』に適応されるものではなく、アバター全体に反映されるボーナスだったということ。
「……あらら。こりゃ新発見」
それに気づいた時、テルヨシは新たな戦略が頭の中に浮かび笑みがこぼれる。
否。正確には浮かんだのではなく、このブレイン・バーストという対戦格闘ゲームを始めた頃に実現できなかったことができるようになって選択肢が増えてくれた。
レガッタ・テイルは言わずもがな、テルヨシの心の傷を体現して生まれたデュエルアバターで、歩けなかった足は再び自由に走り回りたいという願望から強靭な下半身を生み、母親への憎悪と嫌悪がテイル・ウィップという醜悪な強化外装を生み出した。
だからその他の部分が脆弱で、現実のテルヨシとはほとんど真逆の特性を持って生まれたレガッタ・テイルを操るために、テルヨシは上半身を使うことをやめた。
──強靭な下半身と脆弱な上半身。
それは現実のテルヨシには当てはまらない特性であり、本来のテルヨシは車椅子に乗ったままでも逆立ちして階段を登り降りできてしまうほどには上半身は鍛えられていて、その扱い方だってよく知っているのだ。
だからテルヨシはいくつもの対戦をする中で、パウンドのような所謂《
現実の自分のように強靭な上半身も持ち得たらと、心のどこかで無い物ねだりをしていた。
だからこそテルヨシは笑う。ただ嬉しくて笑う。
そんなテルヨシの内心を知る由もないカタフは、未だ冷めたようなテンションでテルヨシの隙をうかがう構えだが、必殺技ゲージは動かないと減る一方なので大したインターバルもなく再び突貫してきて、選択肢の増えたテルヨシはその迎撃にワクワクする。
ただ腕が使えるとはいえ、さすがに元が脆弱なことを加味すれば攻撃や防御への直接の運用は向いていないため、あくまでも足技の補助が主になるが、それを念頭に置いて行う迎撃は、やはりテルヨシらしくトリッキーなもの。
迫ってくるカタフに対して後退しながら地形を確認し、すぐ後ろに建物オブジェクトの壁も迫り来る位置へとやって来る。
カタフには追い詰められて来たように見せるため余裕のない演技もしていたのが功を奏したか、逆に追い詰めたかのように拳を振るうカタフに迷いはない。
そしてついに壁を背に止まったテルヨシがそれに驚く演技をした瞬間を見逃さず、渾身の右ストレートを放ってきたカタフにニヤリとしながらその拳に添えるように左手を乗せて自らは真上へと跳び、その左手をわずかな支点にして身を捻ってカタフに肩車させてもらい、そこから後ろへと倒れながら回転で勢いをつけてカタフの体を持ち上げ地面へと叩きつける変則フランケンシュタイナーで反撃。
さらにうつ伏せに倒したカタフから絡めていた足を抜いてカポエイラのように巧みに手足を使って倒立へと持っていき、そこからグッと全身のバネを利用して跳び上がってカタフの真上から渾身の蹴り下ろしを叩き込む。
しかしさすがのカタフも倒立するまでに気づいて転がりながら落下地点から逃げて回避させてしまうが、上手く受け身を取って地面を蹴らずに、立ち上がられる前に一撃だけでもと即座にカタフを追って不十分な体勢から1発だけ叩き込む。
カタフも必死だったのかそこからギリギリで両腕のガードをして後ろへとさらに転がりながらリカバリーして立ち上がり、そうなると追撃も難しいテルヨシも止まって構えることになる。
「…………不思議な人っすね」
何度目かわからない見合った状態で、依然としてテンションは低いような声色でテルヨシに語りかけたカタフ。
何が不思議なのかと自覚のないテルヨシは疑問しかないが、カタフが何を思ってそう言ったのかはすぐにわかる。
「必殺技もアビリティも、強化外装さえ失って、戦術を根本から覆された人のほとんどは、ことごとく僕の拳で沈んでいったんす。中には反撃してくる人もいたんすが、それも仕方なく僕の土俵に上がってって感じで。でもテイルさんは何故かこんな状況になってから、どんどん生き生きとしていってるのがわかるっす。とてもじゃないっすが個性を失った人がなるような精神状態ではないっす」
「……かもな。いやなに。普段から使い慣れてそれが当たり前になってて、気づかないうちに出来るようになってたことに気づけた今が楽しいのは確かだよ。その点ではお前に感謝してる」
「僕はこの必殺技が好きではないっす。自分と相手の個性を殺して、ただの殴り合いにしてしまうこの必殺技を持って生まれた自分を恨むこともあるっす。それでもこうして使ってしまうほどに追い詰められると思うんす。これは自分の弱さが招いた結果だと」
「はっ? なに言ってんだよ。相手の個性を殺すってのは確かにつまんねー必殺技かもしれないけどな。その必殺技は紛うことなくお前の『個性』だろうが。その個性をお前自身が否定してやるなよ。そんなの《シーバ・カタストロフ》が可哀想だ」
カタフが言うように、多くのバーストリンカーはこの必殺技の前では無力になってきたのだろう。
事実、考えられる中で影響を強く受けるのはその強化外装に全てを注ぎ込んできたユニコや赤系のアバター全般。
相手によっては完封さえ容易なカタフの必殺技は確かに強力だが、それだけで勝敗の全てが決まるほどブレイン・バーストは甘くない。
カタフほどのハイランカーとなると、覆せるほどの相手とぶつかる機会も減ってそのことを実感しにくくなるのは仕方のないことではある。
それでこのテンションの落差を生み出しているなら、ハッキリとこう言おう。
「それから、オレをあんまりナメるなよ。没個性になろうと、この身ひとつありゃ、お前を倒すなんて朝飯前だ」
「…………フッ。それじゃ僕が弱いみたいな言い草っすよ。ハンデを背負った人に負けるほど、僕も甘くないっすよ!」
カタフがテンションを下げる理由は、こうなったらほとんどの確率で自分が勝ててしまう故。
つまりは自惚れもいいところで、言動もどこか上からの物言いなのも気になっていた。
だったらテルヨシがさらにその上から物を言うことで喧嘩を売り、それが妄言や強がりじゃないと思えれば、カタフも笑うしかなかったのか、売り言葉に買い言葉。自分の強さを誇示して突貫してくる。
自分の強さに自信を持つのは必要なこと。
それがどこから自惚れになるかは価値観で変わってくるが、今のカタフに負けるのは嫌なテルヨシは、完膚なきまでの勝利のために集中力を増して迎撃に構えた。
連打。連打。連打。
繰り出す拳と足が何度もぶつかり合って、その度にガッ、ガッ、と互いのHPゲージが削れていく。
HPゲージも残り3割を切って、互いが勝負を決める攻撃を仕掛けるタイミングを探り合って、射程ギリギリでの単発技が繰り出されていたが、その攻防も残りHPゲージが2割になればクリーンヒットの1発で決まる圏内に入るため、戦術も大技の1発にシフト。
たった1手のミスが、相手の決定打を引き寄せてしまうギリギリの駆け引きはギャラリーにも緊張感を与えたのか、固唾を飲んで見守るギャラリーからの声援は全く聞こえない。
単にテルヨシが集中しすぎて耳に入ってこないだけかもしれないが、それだけの集中力をもってしても崩す隙を与えてこないカタフは本物の強者といえる。
「ハッ! ハハッ! 初めてっすよ! ジ・エンドを使いながら対戦を楽しいと思えたのは!」
「そりゃ勿体ない戦い方してたんだな! お前の気持ちひとつで簡単に変わるのによ!」
「そうっすね! テイルさんには感謝するっす!」
そんな極限の状態でさえ、徐々にテンションを上げてきたのが目に見えてわかったカタフは、ついにそれを言葉にして拳に乗せて語ってくるが、テルヨシもアドレナリンが出まくりで蹴りを繰り出しながらそれに応えてしまう。
そうして再び対戦を楽しむカタフになって、テルヨシもそれを嬉しく思った瞬間。
「《エンド・ストップ》」
カタフの口から何らかの発声があり、それを意識するより先に出てしまった右足の蹴りに対して、カタフは左の拳を『当てるだけ』で防御。
そして訪れたあの気持ち悪い感覚がテルヨシを襲い、ピタリと止まってしまった右足をどうするかと思考を巡らせた隙にカタフの右拳がテルヨシの胸の中心を撃ち抜き、思わず後ずさる。
クリティカル・ガードが戻っている。
そうとわかったのが遅かったテルヨシが次に陥るのは、カタフのジ・エンドがその効力を失ったことに対する対応。
無駄に頭の回転が早くなっているからこそ陥る選択肢の多さによる硬直。
テイル・ウィップの再装着。必殺技による離脱。アビリティも用いた応戦。
それらの出来ることが一気に雪崩れ込んできたせいで最優先の行動を決められなかったテルヨシは、カタフの繰り出してきた左の拳にガードを構えるしかなく身を固めたが、カタフの拳はガードに当たることなく幻のように消えてしまい、思考を完全停止させるような《ファントム・フィスト》にはもう打つ手がなし。
当たらなかった左拳にわずかに緩んだガードの隙間を正確に撃ち抜いてきたカタフの本物の左拳を顔面に叩き込まれたテルヨシは、仰け反る頭を反射的に戻して踏み留まってしまい、間髪入れずに叩き込まれた渾身の右ストレートでそのHPゲージを全損。
【YOU LOSE】
視界に浮かんだその炎文字を見ながらに物言えぬ浮遊霊になったテルヨシは、目の前で大歓声に応えるカタフを見ながら、このギリギリで必殺技さえも餌にしたカタフの戦術に感心してしまった。
サアヤからは必殺技を任意で解除できるようなことは教えられなかったので、カタフもほとんどやらないことだったのだろうが、あそこで相手に選択肢を増やすのは1つの賭けではあっただろうと思うし、なまじ集中していたからこそ様々な思考が頭の中を巡ってしまったのは運が良かったと言える。
だからこそカタフの勝負強さは認めるし、次は負けないと思いつつも、この対戦でおぼろ気にわかった自分に足りないものについてを思考しかけたところで、ギャラリーに応えていたカタフがテルヨシのいるだろう位置に向き直ってペコリとお辞儀。
「ありがとうございました! テイルさんとの対戦は凄く……物凄く楽しかったっす! またどこかで、今度は僕のホームの墨田戦域で戦いたいっす!」
物言えぬ浮遊霊のテルヨシに対して答えを待つわけでもなく、そんなことを言ってからギャラリーにも丁寧なお辞儀をしたカタフは、清々しいまでの楽しい感情を剥き出しのままフィールドを去っていき、それによってテルヨシもギャラリーも対戦の余韻に浸る間もなくフィールドを去ることとなったのだった。