アクセル・ワールド~蒼き閃光Ⅱ~   作:ダブルマジック

24 / 109
Acceleration Second24

 

「じゃあはいっ、ピースっ!」

 

 《シーバ・カタストロフ》との対戦に敗北して現実世界へと戻ってきたテルヨシは、早々に対面のサアヤから「なに負けてんのよ」に始まるお叱りを受けてぐうの音も出ず、単純に対戦を楽しんでいたマリアはそれを横目に呑気にジュースを飲みながら終わるのを待つ。

 待つくらいなら割り込んで流れを変えてくれとも言えないまま、3分くらい続いたサアヤによるダメ出しを飲み干して糧としたところで、時間もいい感じに経過していたから、今日は解散ということに。

 家まで送ろうかと席を立つ前に提案してみたテルヨシだったが、サアヤは家が近いから送ってもらう必要はないと断られてしまいガックリ。

 その様子を見ていた流川さんが笑いながらに近寄ってきて「本当は恥ずかしいだけだから」と小言してくれて、実はそれはわかってたテルヨシも「そういうところが可愛いのでオッケーです」と返して2人してサアヤを見てニヤニヤ。

 そんな2人に謎の怒りが湧いたサアヤが本格的に怒る前に笑いを収めた2人は、誤魔化すようにマリアへとシフトさせ、さっき言っていた記念撮影をしようと提案。

 マスターのニューロリンカーで流川さん含めた4人で撮った《視界スクリーンショット》は後日、流川さんからサアヤが貰って配布することになって店を出て、そこでサアヤと別れたテルヨシとマリアは、マリアの腹の虫が鳴ったのを皮切りにちょっと急いで帰宅し夕食としたのだった。

 

 なんだか今日だけで色々あったせいで密度が半端なかったが、全てを終えてベッドでくつろぎながらテルヨシが考えていたのは、それらを経ておぼろ気に辿り着いた1つの結果。

 バーストリンカーになって2年ちょっとが経ったテルヨシだが、そのレベルアップの速度はユニコにも負けず劣らずの速度で駆け上がってしまったところがある。

 それ故に他のハイランカーよりもひと回り……いや、場合によってはふた回りは経験値に差があることをほぼ確信した。

 その差は今日のカタフとの最後の駆け引きや、フーコとの対戦でも顕著に現れ、そうしたギリギリのところで勝ちをもぎ取るための力が決定的に不足している。そう感じたのだ。

 

「最後の最後で踏ん張れる力と、勝ちを引き寄せる運ってやつか。運と表現するのはあれだが、実力者ってのはその運を力で引き寄せる必然性を持ってるもんな」

 

 じゃあそんな経験値の差を埋めるにはどうするべきか。

 単純な話をすれば、それを培うための対戦を今の何倍も多くしてしまうのが手っ取り早いが、そんなことが出来ない身の上事情は今さら説明するまでもないし、対戦にかまけて現実世界をおろそかにしても本末転倒。あくまでブレイン・バーストはゲームなのだから。

 それではどうすればいいのか。それを夕食後からずっと考えてきたテルヨシは、寝る直前の時間になってある1つの策を思いついたが、あまりにもリスキーで事によっては全くの無意味に終わる可能性もなくはないし、得るもの以上に失うものの方が多いこともあり得る。

 

「…………だけどこの差は早急に埋めないとダメな気がするんだよなぁ」

 

 しかしそれでも今、加速世界に迫る脅威は無視できないものだし、そうした問題に直面した時にこの差が致命的な敗北を招くことになるかもしれない。

 そんなことが起きてから後悔するのは嫌だし、いつかリュウジが言っていたこともこれに起因しているのがわかって覚悟を決めたテルヨシは、ベッドから起き上がって電気を点けないままリビングに移動し、ホームサーバーと有線接続。

 

「逆算すると……まぁ50分くらいか」

 

 加速世界への時間の換算はまだちょっと遅いので、現実世界での10分が加速世界で約7日だというザックリとした計算を元に割り出した暗算で切断セーフティーを『50分後』に設定したテルヨシは、かつてないほどに長期滞在することになる《無制限中立フィールド》にドキドキしながらコマンド発声しようとする。

 

「……テル?」

 

「にょわっ!?」

 

 その直前にトイレにでも行こうとしていたのか、自室から出てきたマリアがテルヨシに気づいて声をかけてくるハプニングが起き、奇声をあげてソファーから飛び上がってしまったが、そんなテルヨシにビックリしつつも有線接続をしているテルヨシを確認したマリアは、これから何をしようとしていたかを理解して首をかしげる。

 

「《エネミー狩り》とか? 夜更かししちゃダメだよ?」

 

「ぐぬ……マリアに言われるとマジ反論できないけど、明日には回せない用事だからなぁ」

 

「待ち合わせしてたり? だったら邪魔だよね」

 

「待ち合わせはしてないよ。ただ、長丁場になりそうだからマリアは付き合わせられないかな。ごめんな」

 

「ううん。テルにとって大事なことなら早く解決してきて。おやすみなさい」

 

「おう、おやすみ」

 

 勘が良いマリアには何か余計なことを言って付いてきたりされても困ってしまうので、個人的な用事だからとマリアを遠ざける言葉を選んで寝かせにいくも、なんとなく嘘を言ってる感覚もあるので申し訳なくも思う。

 それでも付き合わせるには精神的にかなりキツいので、後日にでも聞かれたらちゃんと話そうと心に決めて、トイレに行ってから自室へと入っていったマリアを見届けてから改めて加速コマンドを口にしてフィールドへとダイブする。

 

「《アンリミテッド・バースト》」

 

 おそらく自身が初めて自発的に来た無制限中立フィールド。

 誰の助けもなく、理不尽な力を持つエネミーが闊歩する危険なフィールドに1人で降り立ってわかる心細さは、何も知らず能天気に1人でダイブした2年前とは何もかもが全く違った。

 あの無知さは今になって恐ろしいほどのバカさ加減だったことを理解しつつ、自宅マンションの屋内に降り立ったテルヨシは、壁の構造からある程度フィールド属性を特定しつつ、その壁を壊して外へと出る。

 

「幸先悪ぃ……」

 

 予測した時点で嫌な予感はしていたものの、実際に見えた外の景色にゲンナリしてしまうのは、曇天の空に負けないほどの暗色に染め上がった禍々しい建物オブジェクトや普通の生物が生きていくには辛そうな毒々しい大地で形成される《煉獄》ステージ。

 これから危険を承知で武者修行に出ようというのにこの禍々しさは笑えないが、こんなことでいちいち一喜一憂していたら精神的によろしくないので、早々に切り替えて「これ以下はない」と頭で反復させてから建物オブジェクトから飛び降りて地面に着地。

 通常対戦フィールドでもいる奇妙な生物オブジェクトがうごめいているのを苦笑いしつつも、それらを潰して必殺技ゲージを溜めながら目的地への移動を開始した。

 

「うーん、そういや必殺技とか極力は封印の方がいいのか」

 

 始めは溜めた必殺技ゲージを温存して移動していたテルヨシだったが、目的地に近づくにつれてこれからやろうとしてることを鑑み、下手に必殺技が使える状況は甘えだということに気づき、どうせ使わないならショートカットしてしまおうと、割と避けてきた建物オブジェクトを《インパクト・ジャンプ》を用いて飛び越えて、途中からほぼ一直線に進めば、ものの30分程度で目的地が見えてしまった。

 エネミーとも遭遇することなく来られたのは運が良かったが、こんな運が強くても仕方ないなぁと皮肉に思ったところで、辿り着いた千代田区麹町の警察署前から、東の方角にそびえる《帝城》を見上げる。

 

「とりあえず今回はあそこは無視して……っと」

 

 しかしテルヨシの今回の目的はその帝城ではなく、割とすぐに視線を下ろして、道の先に見える巨大な門。

 現実世界では半蔵門に符合するそこは、加速世界の《超級》エネミーである《四神》が守護する四方門の西側に位置する1つ。

 情報によればこの西門は四神《ビャッコ》が行く手を阻み、かつて黒雪姫とフーコが挑み敗走した、超スピードと高攻撃力を有する四足歩行の虎型エネミー。

 

「さてさて、何回……何百回殺されるかわからんが、行きますか」

 

 情報だけでも1人ではどうすることも出来ない絶対的な力を持つビャッコだが、それほど覆せない相手ならば『修行相手』にはもってこい。

 何かを掴めれば万々歳。逆に本当に為す術なく蹂躙され続ければただの無駄骨。

 《無限EK》の危険もなきにしもあらずだが、西門から遠ければその危険性も低いし、通常対戦では1日に1度の挑戦権が弊害となってすぐに相手が枯渇してしまうが、ここならばテルヨシのバーストポイントがある限りはビャッコを相手に戦うことができる。

 もっと手頃な《小獣級》や《野獣級》を相手にしてもいいのだが、無制限中立フィールドでは予期せぬ《変遷》が何度か邪魔になることもあるので、不変の存在である四神が相手として最適なのだ。

 その中でビャッコを選んだのは、様々な情報を鑑みて物理攻撃に特化したエネミーであることがわかっていて、先日に相対した《スザク》は特殊すぎて相手として悪く、東門の《セイリュウ》はこちらのバーストポイントを吸い取って強制的にレベルダウンまでさせる《レベルドレイン》を撃ってくるため、そもそもの根底が覆されるから即却下。

 北門の《ゲンブ》も少ない情報ながら重力を操って超重量で押し潰すといった戦法を使うらしく、そんな重力攻撃で祭壇付近まで引き寄せられでもしたらそれこそ無限EKでさようならとなるので、結果から言えば消去法でしかない。

 それでもビャッコの現物を見たことがないテルヨシは、スザクくらいの大きさもあったらマジで洒落にならないふざけんなと言える自信があったが、本来ならばレベル9に上がるために貯めていた1万近いバーストポイントをもて余していたわけで、さらに言えばこのビャッコさえもいつか攻略する帝城の最初の関門でしかないのだ。

 それを仮定するなら、テルヨシが相手にする四神はこのビャッコになることは確率的に高い。

 同時相手が条件になるので、1番嫌なセイリュウを相手する可能性もあるが、それは実際に攻略に乗り出した時に決めることなので今は無視して、ビャッコ相手に光明を見出だす必要はあるわけだ。

 

「高度なAIを持ったエネミーなのも忘れずに……来な、ビャッコ」

 

 最後に侵入者をただ機械のように迎撃するエネミーではなく、自らが考えて動くこともある理解を上回るエネミーであることを記憶に刻んで西門に至る大橋に足を踏み入れたテルヨシは、その瞬間に最奥の祭壇に発生した竜巻を凝視し、それが収まって中から現れたビャッコに思わず足が後退しかける。

 遠目からでもわかるほどに鋭い牙と爪。

 逆立つ毛もそのほぼ全てが混じり気のない白色で、虎のように浮かぶ体の模様は真逆に位置する漆黒で染められていて、敵と見なしたテルヨシを見る目はマリアを上回る金色。

 現実世界にもホワイトタイガーという希少種の虎が存在し、テルヨシも小さい頃にサクラと一緒に動物図鑑を見てカッコ良いと思ったものだが、このビャッコは体高だけでも8mはあるし、体長などそこから計れば10mを越えているはず。

 足だけですでにテルヨシが踏み潰せてしまうほど大きいそれには悪態もつきたくなるし、爪ひとつだけでテルヨシサイズとなれば回避も全身全霊で行わないと簡単に餌食となるだろう。

 

「スザクとは違った絶望感が押し寄せてくるな……」

 

 スザクの時は黒雪姫やサアヤもいたので、及び腰になった段階でも踏ん張れたが、今は完全に孤立無援の状態で、その足を止める存在はいない。

 今ならまだたった1、2歩ほど後退してしまえば、迫り来るビャッコから逃げることは容易だ。

 だがそれをしてしまえばおそらく、もう2度とテルヨシは黒雪姫達と同じ舞台に上がることは叶わない。

 たった少し。ほんの少しの差でしかない経験値で、長い目で見れば急ぐ必要もないことだ。

 それでも……

 

「……追いつかなきゃ、ダメだろ」

 

 レベル8になった自分の選択。

 それに見合うだけの実力を持つ責任と覚悟。

 数々のバーストリンカーから勝ち取ったバーストポイントで上げたレベルは、決してテルヨシだけで成し得たものではなく、彼、彼女らとの経験を糧にした結晶。

 それがフーコやカタフ達に劣っていいはずがない。

 

 そんな覚悟がビャッコに伝わったのか、出現から少しだけ悠長に構えていたビャッコが、猛々しい肉食動物のそれをさらに獰猛にしたような咆哮を天に響かせてから、その巨体を物ともしない速度で走り出しテルヨシを屠らんと躍動する。

 近づけば近づくほどビャッコの巨体さが如実になって、回避に動くことすら不可能に思えてしまうが、極限だからこそ意味のあるこの修行の中で活路を見出ださねばならない初撃。

 始めから全開なテルヨシの集中力から導いた行動は、やはり全力の回避。

 接近してきたビャッコはまず、挨拶代わりの右の爪をやや斜めから内側へと振り下ろしてきて、その前足が地面へと叩きつけられるよりかなり早い段階で大きく前進しビャッコの懐へとスライディングで潜り込んだテルヨシは、頭スレスレで通り過ぎた右前足に肝を冷やしながら流れるように立ち上がり、頭上にあるビャッコの顔を見上げる。

 すると懐に入られたビャッコも驚くべき反応ですかさず伏せの姿勢へと移行して頭を下げ、そこにあったテルヨシを噛み千切らんと牙をギラつかせる。

 伏せによって退路をビャッコの前方のみにされたこともあって、迷いなくそちらに逃げようとしたのだが、ビャッコは伏せをしつつその前足を抱え込むようにして内側へと寄せてテルヨシの退路を断ち、その前足の壁に盛大にぶつかったテルヨシは、そのわずかな空洞に顔を突っ込んできたビャッコに為す術なく噛み砕かれてゲームオーバー。

 役目を終えたビャッコはつまらないといった雰囲気を出しながら立ち上がり、踵を返して歩きながらその姿を風のように消していき、それを浮遊霊状態で見ていたテルヨシは、遊んでさえいるようなビャッコの挙動にイラッとしつつも、初撃は避けられたことをまず良しとする。

 

 あれこれ1度には求めすぎても仕方ないし、こういうことになるのは想定して切断セーフティーを50分後にしてきたのだから、まだまだ焦るタイミングではない。

 1つ1つクリアすべき課題を出して、着実にクリアしていく。

 ゆっくりでもいいから後退せずに前進すれば、自分が納得のいく段階にまでは至れるはず。

 まずは初撃のパターンを見て確実に、どんな攻撃でも避けられるようにする。次に繋がる動きはそこをクリアしてから考えればいい。

 浮遊霊状態でも頭を休めることなく、先ほどの初撃の他に考えうる攻撃をいくつか予測して、ビャッコのサイズからどれだけ動けば紙一重で避けられるかをシミュレート。

 ただ避けるのではダメ。次に繋げるには余裕がなければ手詰まりだ。次に繋げるための回避はどんな状況でも必ず活きてくるから、何がなんでもビャッコ相手に習得しなければならない。

 しかしあまりに集中していたせいで蘇生時間を見た時には残り2分となっていて、少しくらいは頭を休めようとしていた計画が完全に狂ってしまったのは痛いが、幸い集中力の方は持続していたので勢いで行こうと蘇生を待ち、いざ2回戦!

 

 蘇生とほぼ同時に出現を終えて接近してきたビャッコの迅速さは嫌になるが、このタイムラグなら無限EKにはならずに済むなとしっかり後のことも考えてから、再び迫ったビャッコの右前足の剛爪が唸りをあげてくるのを今度は《テイル・ウィップ》で爪の先端を掴んでそこを起点に体を後退させながら浮き上がらせて1回転。地面についた右前足の上に着地してみせる。

 

「っと、とお!?」

 

 ゴツゴツした右前足にバランスがわずかに崩れてしまった一瞬の隙。

 その一瞬で今度は左前足が豪快に横から振るわれて、壁が迫ってくるような圧迫感に心臓が飛び出そうなほどの衝撃を受けて思考が停止。

 それでも何かしなきゃという生存本能が咄嗟に右前足の上でベタッと伏せる動作をギリギリで完了してくれたが、それで避けられるほど甘くはなく、避けきれなかった背中に剛爪が掠ってそれだけでHPゲージがガリッと3割も削られてしまう。

 さらに当たった衝撃で右前足から振り落とされて横へと落ちると、少しだけ浮かせてズラしてきた右前足がのし掛かってきて圧死。再び蘇生待機状態となってしまった。

 

 進歩したようなそうでないようなな2回戦にはテルヨシ自身が納得しにくいながら、何も得られなかったなんてことはなかったのだから次に繋ごうと再び思考を開始。

 今度はしっかり頭も休めようと30分は確保して休息に努めてからの3回戦は、まさかの接近しながらの大咆哮による衝撃波攻撃で、開幕から吹き飛ぶまいと踏ん張ったところに近づかれてガブリ。それでチーン。

 衝撃波自体に大したダメージはなかったものの、絶妙に大橋から出ていかないくらいの衝撃と一時的に聴覚を使えなくされる爆音は使われると厄介。

 しかも避けようにも大橋の幅いっぱいが範囲のせいで避けようがなく、耐えるとするならテイル・ウィップを壁にしつつ軽減するしかないかもしれない。

 

 予備動作は見て覚えたので2度は食らうまいと備えた4回戦。

 大咆哮は使ってこなかったが、ジクザグのステップを交えて接近してきたビャッコは、本当に最後の瞬間まで何をしてくるかわからないまま射程に入って、そこから体を90度傾けて右後ろ足を前に持ってくると、その勢いで唸る尻尾が横凪ぎに払われてテルヨシを強襲。

 尻尾なら或いはと渾身の力でテイル・ウィップを土台にして蹴りで迎撃してみるが、やはり大きさが規格外で横倒しの電柱をぶつけられたような衝撃で簡単に吹き飛んだテルヨシを、さらに左前足がバゴンッ! 叩き落とすように振るわれて死亡。

 

 ──なんか遊ばれてるよね。遊ばれてるよね!

 まるでこっちを嘲笑うかのようにその挙動を変えて攻撃してくるビャッコの統一感のなさはやはり高度なAIを持っているからなのかもしれないが、それにしてもテルヨシの出方をうかがうようなやり方にはずいぶん上から見られているような気がしてならない。

 実際に圧倒的な実力差があるので上から見られるのは仕方ないが、こちらの意図をわかって馬鹿にされてるような気がしないでもないので、ちょっと今度はマジで1発反撃するつもりでいこうと考えて色々とシミュレートしてから挑んだ5回戦。

 蘇生からビャッコが接近してくるのを待つのではなく、少しだけ前のめりになったタイミングで、突然頭に響くような声が聞こえてくる。

 ──小さき者よ。我が眠りを妨げた報いを受けよ。

 瞬間。だいぶ慣れてきていたビャッコのプレッシャーが急に跳ね上がって、それにわずかに臆して体が硬直した隙に接近を完了したビャッコは、撫でるようにテルヨシに左前足を触れさせて、そこからぐりんっ! 体を捻って器用に180度回転しながらテルヨシを自分の後方。つまりはテルヨシからすれば大橋の奥へと投げ込んできて、あまりに突然のことに《インスタント・ステップ》で停止する間もなく大橋の中腹辺りまで吹き飛んだテルヨシは、そこで投げ込むのと同時にジャンプしていたビャッコに踏み潰されて死亡してしまう。

 ──ヤバい。これはほぼ確実に、いや、間違いなく無限EKになっている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。