ということでお正月連続更新(3日間)になります
「突撃! 今夜のレギオンクエストぉ!」
「ですわー!」
「何そのテンション……引くわー」
「ガスト姉はもう少しテンション上げても良い気が……」
《エピナール・ガスト》ことサアヤと《シンデレラ・コントラリー》の対戦が終わってから浮上した新たな問題。
シンデレラ加入時にテルヨシがレギオンマスター。サアヤがサブマスターになることは確定したのだが、そもそもがサアヤが持っていたレギオンマスターの証を利用して作ったレギオンだったせいで、テルヨシがその証を持っていないことが露呈。
譲渡できるものでもないので、対戦が終わってから再度シンデレラを招いて話し合った結果。今夜にでも取りに行こうという話でまとまったわけだ。
そして訪れたのは《無制限中立フィールド》の池袋にある《池袋地下迷宮》という《レギオンクエスト》を行うためのダンジョンで、レギオン結成のための試練ということもあって最低人数である4人は必要なのは分かっていた。
そこでサアヤは1度だけできるシンデレラへの命令をこのレギオンクエストの手伝いに使ってくれ、残りの1人は《子》である《アイス・イーター》がほぼ強制参加になっていた。
現地集合ということで時間だけを合わせてダイブしていたテルヨシが無事に3人と合流してから、消化しなきゃいけない案件が減らない現実を直視しないように開き直りで意気込んだら、テンションについてきたシンデレラはともかく、サアヤとイーターのノリは微妙で早くもまとまりがない感じに。
「えっと……まぁレベル6以上のパーティーなんで、レギオンクエストとか今更かよみたいな空気はありますが、サクッとクリアしてお開きにしましょう」
「クエストの内容は話した通りだから、このパーティーでの選択肢は迷いなく『アレ』と『アレ』だからね」
「わたくし、このレギオンクエストで《完全一致》がどうなるか少し楽しみなんですのよ」
「あーそれ私も。今回は実験的要素あるわよね」
それでもやらなきゃいけないので、これからリーダーになるわけだしと統率に動いたテルヨシに対して、サアヤとシンデレラは何故か別の意味での楽しみを見出だしたようで、レギオンクエストが話でしかわかってないテルヨシとイーターはついていけずにポカーン。
何故かこんな時には仲良さそうに見える女子2人の神秘は深まるが、喧嘩するよりは良いのでそのままを維持していざ出陣。
長く下る階段を下りながら、楽しそうに先行するシンデレラと手を引っ張られるイーターを笑いつつ、隣を歩くサアヤと一応の情報共有をしておく。
「んで、イーターの方の収穫はあった感じ?」
「話はできたみたいよ。会えるかどうかはまた私が調整してみるけど、どうなるか」
「スピンは今はISSキットのせいで活動しづらいだろうから《
「後者の方。スピンも誘う都合、ISSキット問題も解決しないとダメよね。やることいっぱい過ぎぃ」
「何事もコツコツやらないとってことよね。土台はしっかりしとかないと崩れるのは一瞬だし」
シンデレラとの対面の時には話が終わってからテイクアウトですぐに帰ってしまったので、イーターの方の進展についてバイトが終わってから聞こうと思っていたものの、どうせ会うしなと後回しにしていたことをいま聞けば、コンタクト自体は取れたようで安堵。
《五芒星》の1人である《ゲーテ・スピン》については、先日にISSキットの感染者であることがわかっていたので、キットの寄生が解除されない限りはまともな対話は無理と判断していた。
なので消去法でイーターがコンタクトしたのが残った2人であることはテルヨシもわかっていたが、これはこれで厄介なのが残ったと思わざるを得ない。
「理屈じゃわかってるわよ……ああそうだ。この先でふた手に分かれることになるけど、イーターをお願い」
「どして? 経験者が分かれた方が効率良くない?」
「うーん……私がやるとあの子、露骨にへそ曲げるからかな。アンタがやった方が好転するような気がするのよ」
「何の話?」
「大事な話。私はアンタにこうして協力的だけど、あの子はたぶんまだ『付き合わされてる』って感じてるから」
厄介者を後回しにした感が拭いきれず、最後にしたらしたで文句を言いそうなのが容易に想像できてげんなりしていたら、急に話がレギオンクエストに戻ってくるので何事かと真意を問えば、イーターの《親》としてちょっと情けない理由を吐露する。
そしてそれは五芒星だなんだよりもまず優先しなきゃいけなかったことなのを言われてから気づいたテルヨシは、そんなつもりはなくてもイーターのことをないがしろにしていたことを恥じる。
「……ごめんサアヤ。責任はオレが負うよ」
「いいわよ別に。私もテルに頼っちゃってるし、あの子の主張が弱いのも悪いんだし」
テルヨシとサアヤが帝城攻略を目標に掲げたのは、両者が納得した上での決定だから問題は全くなかった。
だが同じレギオン《メテオライト》に所属するイーターはその決定をほぼ一方的に聞かされた立場であり、何の確認もなしに手伝わされている現状はイーターの本意ではないはずなのだ。
そんなことにすら気づかずにイーターが手伝ってくれてることを当たり前だと感じていたテルヨシも、それを言わずにここまで引っ張ってしまったサアヤも、シンデレラに振り回されているイーターを見ながら、どんな結果になろうとイーターの好きにさせてあげようと決心するのだった。
長い階段もようやく終わり、広い部屋に出たテルヨシ達は、その空間の中央に立つ錫杖と盾を持つ戦乙女の白亜の像の前で止まり、初見ではないサアヤとシンデレラがその像に対して慣れた感じで話しかける。
「アテネ、レギオンクエストを受けたいんだけど」
「よろしくて?」
「この像ってイベントキャラ的なアレなのね」
「そういうこと」
「対話も成り立つAIですから、失礼のないようにですわよ」
一見すれば奇行に思えるその行動も、ちゃんと理由があるなら納得であり、そうした問いかけにアテネと呼称された像は閉じていた瞳をパチリと開けてテルヨシ達を見据えてくる。
「友人感覚で来られる方は珍しいですね。レギオンクエストの挑戦。承りました」
「まぁ私は6回目になるし」
「えっ? 何でそんなにやってんの?」
「旧プロミでレギマスの証が目的で何人かまとめて取ったのよ。ライダーは当然として《
「改めてあなたが第2世代なのだと思わされましたわ」
「そりゃどうも」
如何にも強そうな装備をしているが、アテネの声は驚くほどに流麗で優しい印象があり、攻撃性のないAIもちゃんと作れるんだなぁと製作側へのちょっとしたディスりも内心で入れつつ、サアヤの散歩感覚のレギオンクエストへの挑戦の理由に苦笑。
黎明期ともなるといくらかの備えとしてそうしたことが他のレギオンでもあったのだろうが、レギオンクエスト1回につき1人しか証を貰えないという非効率さは改善してくれてないんだなぁと思いつつ、話を進めていたアテネの方からさっそく指示が飛んできて、目の前の祭壇のような台座に4つの卵が出現。
「今からこの卵をそれぞれ1つずつ持って、後ろの2つの扉からふた手に分かれて進んでもらいます。その先も要所の指示に従って行動してくださいね」
「よっし。んじゃイーター、行くぞ」
「えっ? 僕とテイルさんで組むんですか?」
「男同士の方が気楽だろ? ガッちゃんとシンデレラも変な気遣いしなくていいし、サクサク進んでちょうだいな」
「まぁ、初見さんお2人で楽しんでくるのも有りですわね」
「あんまり待たせたら寝てるかもね」
「なるべく早く合流するって」
アテネの指示については事前に聞いていたので、その卵をどうすればいいかもわかっているテルヨシは、それらしい理由と共に多少は強引にイーターと組んでサアヤとシンデレラと分かれ、なんか納得したようなしてないようななイーターを無視して引っ張り、無駄に大きい両開きの扉を開けてその先へと進んでいった。
扉の先はまたも下りの階段が続き、もう地下10階くらいには来てんじゃね? と体感で推測しながら、隣を歩くイーターが気まずそうに無言なのでテルヨシから話しかけていく。
「あのさ、イーター。唐突だけど、今のレギオンはいて楽しいか?」
「えっ? 楽しいか、ですか? そうですね……領土戦は毎回、僕も活躍させてもらえますし、特に縛りとかもないメテオライトは不自由は感じません。領土だって占有してるわけじゃないですし、レギオンの恩恵は元々あまりないですから」
まずは探りを入れるように遠回しにレギオンへの不満はないかと聞いてはみたが、こんな質問でイーターが本心をテルヨシに打ち明ければ苦労はない。
おそらく話し始めるまでの間で不満はパッと浮かんだのだろうが、テルヨシに対して言うべきかと考えて言わなかったのがわかれば、やはり男同士ならストレートに行くべきだなとズバリ言う。
「元々メテオライトはオレが領土戦をやりたいって願望からガッちゃんとイーターが協力してくれて出来たレギオンだ。だからこそイーターには活躍してほしかったし、ガッちゃんもイーターにもっと自信が付けばって思って協力してくれたと思う。でもさ、最近はオレとガッちゃんで新しい目標を掲げたわけで、その帝城攻略に関してイーターはどう思ってる?」
「僕は別に……」
「いや、違うな。まずやるべきは謝罪だ。悪かったイーター。レギオンの決定をそのメンバーであるお前抜きで決めちまったオレとガッちゃんは全面的に悪い。お前が本当は帝城攻略なんて馬鹿げた目標に賛同できないとちょっとでも……全く以て無理だって思ってるなら、このレギオンクエストを最後にレギオンを抜けてくれても構わない。オレとガッちゃんはお前に目標を押し付けたくない。それが本心だ」
この言い方だと、テルヨシがサアヤに頼まれて話をしていると丸わかりで配慮が足りなかったが、そんなことを隠して言うくらいなら偽りなしの本音をぶつけた方がいいだろうとそのまま続ける。
それを聞いたイーターは、深々と頭を下げるテルヨシに何も言わずしばらく沈黙し、ようやく口を開いてテルヨシに頭を上げるように言うと、本音でぶつかってきたテルヨシに対して本音で語ってくれる。
「僕は別に怒ってたり不満だったりはないんです。テイルさんとガスト姉はいつも僕の前を歩いてくれて、僕のための道を作ってくれてました。今回だって帝城攻略をやるって聞いて『僕がいても大丈夫なんだ』って思ったくらいです。僕は誰かに手を引っ張ってもらわないとなかなか前に進めない臆病者で、ずっとガスト姉やテイルさん達におんぶに抱っこで、本当はそんな自分が変わらなきゃいけないって思ってました」
そんなことを聞くとサアヤが思っていたようなことはない感じのニュアンスで、むしろ帝城攻略には本当に協力的なように聞こえて、これには普段のイーターのことを考えてもテルヨシも意外ですぐに言葉が出てこない。
そして今までにないイーターのハッキリとした意思の主張はそれに終わらず、ここからどうしたいかもその口から宣言。
「だから僕は、この帝城攻略の計画から変わろうって思ったんです。ガスト姉……サアヤ姉やテイルさんの『背中』じゃなくて、隣に立って『同じ景色』を見るために、自分から前に進もうって」
「…………同じ景色、か。カッコ良いじゃんそれ」
きっとサアヤが感じていたイーターの違和感は、今までと同じ自己主張もなく言われたことをやっていたイーターが、どうすればこれまでの自分から変われるかを悩んでいたから感じたもので、元来の性格から若干ネガティブに捉えてしまっただけなのだ。
それがわかればもうテルヨシが何かを説得したりする必要はなく、隣を歩きたいと宣言したイーターが本当の意味でレギオンの一員になったことを嬉しく思いつつ、ただイーターに対して右拳を向けると、意味を受け取ったイーターも嬉しそうに右拳を持ち上げて拳と拳をぶつけてくるのだった。
そうして改めてイーターとの意思疏通が出来たところで、自分達が完全に足を止めていることに気づいたテルヨシは、あまり待たせると合流した時に寝られていそうなことを思い出して再び階段を駆け下りてまた開けた部屋へと躍り出る。
先ほどの部屋よりはひと回りほど狭いものの、中央にはまっすぐに伸びる大木。近くに池のような水溜まりがあり、天井には太陽を模した照明が。
それらには意味があるようなないようなとサアヤとシンデレラが話していたが、とりあえずまっすぐ歩いた先にあった石碑の前に移動してそこに書かれている『卵に与えるものを選べ』という指示から選択肢である『火』『水』『風』を見て、2人で迷いなく『水』を選択。
その選択を宣言してからすぐに部屋の中で変化があり、水溜まりの中から2匹の青色のワニ型エネミーが姿を現し、その目は明確にテルヨシとイーターが持つ卵をロックオンしていた。
「なぁイーター。お前の決意は聞いたけどよ。やっぱりこれまでのお前からどこか頼りない印象は拭いきれてないと思わないか?」
「そうですね。でも今それを言うってことは……」
「君のような察しの良いバーストリンカーは嫌いではないよ。卵は預かってあげるから頑張ってみな」
「テイルさんはこのエネミーに脅威を感じてないんですね?」
「パッと見でもいくらか弱点が見えたし、たぶんほぼノーダメで倒せると思うよ」
「ノ、ノーダメ……頑張ります……」
何が出てくるのかもサアヤとシンデレラから聞いていたので、驚くようなリアクションもなく観察したテルヨシは、それだけでこのエネミーが小獣級よりもふた回りくらいは弱いのがわかった。
だから覚悟は見せてもらったイーターにこれからの計画で役に立ってもらうため、腰の引けた戦いはしてほしくないという思いで背中を押し、エネミー2匹を相手にどう戦うかを見る。
テルヨシのそんな意図がイーターにもわかったからか、余計なことも言わずにノーダメージでいけると言うテルヨシに負けないように前へと踏み出して構えてみせた。
今のイーターの実力だとノーダメージは厳しいだろうが、倒すだけなら必殺技なしでもいけそうかなと戦力分析を済ませていたテルヨシの視線を受けながら、大きな口をガチガチ鳴らして迫るワニ型エネミーをまずは距離を保つように円を描いて移動し動きを観察。
正面に対しては強そうなエネミーだが、横の動きへの対応はそこまで早くもなく、転回になると十分な隙が生じる。
それと現実のワニなどもそうだが、視野も狭くイーターの動きに常に顔の正面を向ける動きを強いられているようで、背後を取ってマウントしてしまえばほとんど勝ったも同然。
とはいえ相手は2匹なので攻略となると少し工夫は必要。その辺でどうするかと見ていたら、イーターも考えがまとまったのか、ターゲットが自分に向いているのを確認してから部屋内にあった大木を勢いよく駆け上がってパルクールさながらの壁蹴りジャンプを披露。
それによって追ってきていたエネミー2匹が揃ってイーターの動きを目で追えずに口をあんぐりさせて、頭上を取ったイーターは落下の勢いと共に強烈な踏みつけを2匹にお見舞い。
──ドゴォォオオン!
…………したのだが、そのインパクト音がかなり硬質な物がぶつかったかのような鈍い音を響かせたため、そんな音が出ようはずのないイーターをまさかというような目でガン見。
見た目には全然これっぽっちも変化はなく、踏みつけ後に1匹にマウントしてゴッスンゴッスン猶予の限りに拳の連打を背中に叩き込んでみせるが、やはりそのインパクト音は金属質とは違った硬質さから来る音。
何かを手足に仕込んでいるとも思えるが、履き物に見えるミトン装甲や長靴は等しくイーターの体の一部なのでそもそも中身という概念はない。
あるとすれば『イーター自身が硬質化している』か『視認できないタイプの強化外装を装着している』か。
謎のイーターの現象についてを考察していると、マウントしていなかったもう1匹が助けるようにイーターを襲い、いち早く察して離脱したイーターは、2匹から正面以外の角度になるように待避しながら懐に手を突っ込んで《フリーザー・アイス》を2つ取り出すと、振り向いてきた2匹の大きく開いた口の中へと投擲。
何か反射的なものなのか、何の疑いもなく口に飛び込んだきたフリーザー・アイスを飲み込んだエネミーは、直後にその体を硬直させて動かなくなってしまう。
フリーザー・アイスには食べた者の必殺技ゲージを満タンにする驚くべき効果があるが、その副作用として食べた後は約1分間──ゲージの上がり幅に影響するらしい──の完全思考停止に追い込まれてしまう。
それはどうやらデュエルアバターのみならずエネミーにも有効のようで、どの程度の効力を発揮するかは待ってみないとわからないが、1分間も止まってくれるはずもないので、後退から反転して効き目が出たと見るや接近に切り替えて時間の許す限りまたメッタ打ち。
「おおぅ……ノーダメおめぇ……」
結局そのまま動き出す前にエネミーを倒してしまったイーターは、終わってみれば無理そうだと思っていたノーダメージでの達成に言葉が上手く出てこない。
イーターもこの結果には満足なのか、珍しくテンションが高くガッツポーズなんてものが飛び出す。
結果には驚いたが、しかしテルヨシが気になるのはその結果に導いた謎の現象。
「なぁイーター。もしかして新しいアビリティとか取得してたり?」
「はい。ガスト姉から帝城攻略の話を聞いて、それに乗ろうって決めた後に加速してみたら《
「あれと同等レベル……小さな凶器だなそれ……っていうかそういうことなら覚悟なんて試す必要なかったし。アビリティ発現させるほどの決意ならオレもガッちゃんも認めますってば」
そこの疑問を解決するためにした質問にテンション高めで即答したイーターは、おそらくこの事をサアヤにもまだ報告してないのだろうと予測しつつも、そういうことがあったならこの課題も半分くらいは意味のないものになっていたので、いつもはテルヨシ達のハチャメチャぶりにツッコんでばかりのイーターにツッコミを入れてしまうのだった。