「未熟なやつのことを『ひよっこ』とか『青二才』とか言うけど、どっちも合わせるとこうなるんだな」
「それはちょっと違う気もします……」
山積みの問題を抱えながらも1つずつ解決していっているテルヨシ達は、現在進行形でレギマスの証を獲得するために《レギオンクエスト》に挑んで、その第一関門となったエネミーとの戦闘を《アイス・イーター》の意外な健闘で突破し、それによって持っていた卵が孵化して真っ青な雛鳥が出現。
倒したエネミーによって雛鳥の色が変化するとサアヤとシンデレラからは聞いていたが、実際に目にしてみるとなかなか見ない色の鳥に変なことを言ってしまい、イーターが微妙なツッコミを披露する。
現実世界にも確かマウンテン・ブルーバードと呼ばれる青い鳥がいた気もするが、やはり外敵を考えれば目立つ色なのは間違いない。
「まぁ幸せの青い鳥ってことも言うし、縁起は良いよな」
「メーテルリンクの童話ですね」
「あれ、イーターがなんか博識」
「物心ついた頃に親が読ませてくれただけですよ」
そんなやり取りをしてから、いつまでも雛鳥にリアクションしていても仕方ないので、適当に締めて先に進もうとしたら、意外なところでイーターが食いついてきてビックリ。
テルヨシもよく知らないので深堀りはしないが、青い鳥を子供に読ませる親というのがなかなかレアな気がしないでもない。
と、そうこうしていたらまた足を止めていたので、雑談もそれくらいにして先へと進もうとなり、今度は2つの扉を1人ずつ選んで進めと指示があったので、どっちも進んだ先は別の同じ部屋と聞いていたから、特に悩むこともなく分かれて1人で進んでいった。
右に90度の方向転換と左へ90度曲がる踊り場を1度ずつ経由して下りていった階段の先には、また部屋があって中の空間も図書室といった感じで無数の本棚と収納された本。
中央奥には大きな机もあり、その上にも色々なものが置いてあったが、その中に次の指示が書かれた掲示板もあったのでそれを読む。
そこにはまた『雛鳥に与えるものを選べ』という指示と共に『剣』『宝石』『本』の3つの選択肢が与えられていて、雛鳥にはどれもよくわからない選択肢だなぁと思いつつも、事前に選択肢は決めていたので迷いなく『剣』を選択。
そうすればやっぱり近くの本棚がスライドして動き、その奥から青基調の人型エネミーが槍を持って出てくる。
「まっ。さっきはイーターに頑張ってもらったし、楽ばっかりしちゃダメよね」
レギオンクエストと言いつつもいまいちチームプレイをしない内容には疑問も残るが、個々の実力あってのレギオンってことかと勝手に納得しつつ、どうせ倒さなきゃならないのだろう目の前のエネミーを、イーターもいなくなったので相手にしなきゃと構えてみせれば、意を汲み取ったエネミーもリーチを活かして先制してきた。
しかし槍捌きは《親》である《レイズン・モビール》ことリュウジの方が段違いで上手いので、向上した観察眼と合わさって焦りを覚えるような攻撃はほぼなく、少し様子見をして予想外の攻撃を加えてくるかと思ったものの、青系として愚直なまでに素直な攻撃しかしてこないので、長引かせても仕方ないかと突き出された槍を紙一重で避けて掴み、強烈な蹴り上げで槍をへし折り武器を奪ってしまう。
そうなるとエネミーも肉弾戦に切り替えるしかなく、槍捌きよりも拙いその攻撃を受けることなくエネミーを撃破。
やっぱりレベル8になってやるクエストではないよなぁ、と苦笑しながら変化を待つと部屋内にアテネの声が響いてきて、エネミー撃破で目的を達成したとのことで最初の部屋までワープさせられる。
「おっそ」
「女性を待たせる殿方はモテませんのよ」
「テイルさん、僕も怒られました……」
「オレがラスト、だと……遊びすぎたか……」
ということでアテネがいた部屋にワープして早々、すでに待ちぼうけしていたサアヤとシンデレラが辛辣な言葉で歓迎してくれて、テルヨシよりも少しだけ早かったのだろうイーターですら怒られたなら、20分程度はかけたかなのテルヨシに対して、この2人は10分もかけずに戻ってきたのではなかろうか。
まさに電光石火の進撃だが、内容を知ってるからといってそんなに早く進めるものなのかと素直に驚くが、待たせた事実は消せないのでとりあえず謝罪しておき話を進める。
4人が揃ったことでアテネも次の指示をくれて、卵が置いてあった台座に4匹の同じ選択肢で染まった真っ青な雛鳥を置き、何故か後退するサアヤとシンデレラに倣ってテルヨシとイーターも台座から離れる。
すると雛鳥達はその身を寄せ合ってモゴモゴしだして、粘土のようにまとまり1つの塊となると、その形を体積を無視して肥大し1匹の青い鳥の姿になる。
形状はダチョウやエミューといった陸上を疾走する鳥類に非常に似ていて、頭には鶏のようなトサカも存在し、喉辺りからはヒラヒラとした長い装甲が垂れている。
明らかに飛べないタイプの地上戦に特化したエネミーへと変貌し、テルヨシ達の視界にも明確な敵として表示が出る。
そこには《
「まぁ! まぁまぁ! さすがは青の名を冠するエネミーですわ! ブレイン・バーストはわかってらっしゃいます!」
しかしシンデレラはそのエネミーの名前を見た瞬間に歓喜の声をあげて喜びを表現し、どこに向かってなのかグーサインをするが、なんのこっちゃなテルヨシ達はテンションの上がったシンデレラにその理由を尋ねる。
「皆様! あのエネミーは『ヒクイドリ』ですわよ!」
「ヒクイドリ? なーんか聞いたことあるような名前ね」
「オレもどっかで聞いた気が……」
「はぁ……何故あなた方はヒクイドリをご存じないのですか……」
テンション上げ上げのままにエネミーについてを語ってくれたシンデレラではあったが、言われてもピンとはこなかったテルヨシ達に露骨にテンションが下がってしまう。
なんか凄く申し訳ない気持ちでいっぱいになりつつも、そのヒクイドリとやらの説明を要求すると、やれやれといった態度を取りながらシンデレラは親切に話してくれる。
「ヒクイドリは未だに世界一危険な鳥としてギネスブックに載っています陸上最強の鳥類ですわ。その危険とされるのは獰猛な攻撃性と強靭な足と爪から放たれる人さえも殺せてしまうほどの蹴り……」
鳥に関して博識なシンデレラは意外な面ではあったが、現実の鳥の名前を冠しているなら、加速世界でもその特徴が反映されているだろうと説明を聞きながらに思っていたら、シンデレラが言い終えるより前に突如として真横にギャグのように吹き飛んでしまい、テルヨシ達の目の前には豪快な飛び蹴りを放って着地を決めたエネミーが降り立つ。
「世界一危険な……」
「蹴り技を持つ鳥ってことね……」
「僕の体も一撃で砕かれちゃいそう……」
エネミーもシンデレラへの攻撃が挨拶だと言わんばかりに次なる標的としてテルヨシ達を見定めてくる中、近くに来ると体高は2メートルほどもあってダチョウの大きさくらいはあることがわかる。
現実のヒクイドリもこのくらい大きいのかなと考える暇もなく、その目をギラつかせたエネミーに合わせて3人が別方向へと逃げるように散開してターゲットを明確に見定めにいくと、レベルの関係なのかイーターがターゲットされて追いかけられたので、テルヨシとサアヤはアイコンタクトで挟撃を仕掛けにいく。
イーターも自分のやるべきことがわかったのか、ギリギリまで逃げてから《ハイ・デンシティー》を使って装甲強度を上げ、あえて蹴り技を受けて隙を作り出しテルヨシ達の攻撃を援護。
エネミーの強烈な蹴りを受けてゴムボールのように吹き飛んだイーターを気遣う暇もなく、攻撃後の隙を狙って横から攻撃を仕掛けたテルヨシとサアヤの挟撃は見事にクリーンヒット。
スピードとパワーはさすが純色の青といったところだが、こっちもこっちで始めから近接タイプのエネミーを想定してクエストを進めていたので、強力とはいえ動揺は少なく、バリバリ近接の4人なら連携すれば倒せそうなことはすぐにわかる。
「カチンときましたわよ!!」
下手な博打を打たなきゃならない状況もなさそうだなと、油断せずにターゲットを散らして攻撃していたテルヨシ達ではあった。
が、最初にエネミーの攻撃を受けて放心していたのか倒れたままだったシンデレラが、突如としてガバリと起き上がって何故かはわからないが視覚化した気がしないでもない怒りのオーラを放出しながらエネミーに向かって叫ぶ。
「わたくし、東武動物公園であなたを見て、恐怖ではなく関心が強くなりましたのよ。本当は臆病だからこそ周囲を威嚇しているものとわかって、その攻撃性も可愛いものだと思っておりました。ですがあなたは別ですわ!」
「おーい、シンデレラ姫ー」
「たとえエネミーと言えど、わたくしの説明を遮ってまで自ら攻撃してくるその攻撃性は、わたくしの知るヒクイドリではありませんわ! 制裁が必要ですわね!」
「お姫様ー、暴走するなー」
テルヨシとサアヤの落ち着かせようとする声すら無視して怒り心頭なシンデレラは、ズビシ! とテルヨシ達を攻撃中のエネミーを腰に手を当てて指差してみせる。
こうなるとチームプレイとか無理な気がしてきたテルヨシとサアヤは、適当にエネミーの攻撃を避けながらシンデレラへターゲットがいくように攻撃を控えると、地響きでも鳴りそうな力強い踏み出しでエネミーに近づいたシンデレラは、謎のプレッシャーでエネミーのターゲットをもらって攻撃を誘発。
鋭い蹴りがシンデレラを襲うが、それをさっきまでの力強さとは打って変わってしなやかな動きで躱してカウンターの蹴りを軸足にお見舞いし離脱。
「さぁエネミーさん、一緒に踊りましょうか。死のダンスを、ね」
その発言から今の一撃で必殺技ゲージが満タンになったのがわかったテルヨシは、すでに壁に寄りかかって見物に移っていたサアヤとイーターと並んで腰を下ろして、その成り行きを見守ることにするが、自分のためのレギオンクエストなのにこれでいいのかと疑問は残る。
「《マスカレード・ボール》!!」
それでもあのシンデレラを止めるのは気が引けてもいるので深く考えないようにして見ていたら、さっそく溜まった必殺技ゲージを消費してシンデレラ最強の必殺技が発動。
するとシンデレラを中心に周囲に変化が起こり、シュババババッ! とたくさんのシンデレラが出現。
普通に考えればシンデレラの色の特性上あり得るものだが、黄系特有の幻覚系攻撃と侮るなかれ。
出現したシンデレラの分身はなんと、自らが意思を持つかのようにバラバラの動きと声まで出し始めて、すでにどれが本物のシンデレラなのかテルヨシ達にさえわからなくなる。
「酷い絵面ね」
「そう? オレは好きだけど」
「あれ出されるといつの間にか負けてたりして怖いです」
エネミーもそのAIで判断に迷いが出たのか、その場で動き回るシンデレラ達にキョロキョロするばかりで、攻撃が定まっていない。
そこにシンデレラの1人が後ろから強烈な蹴りをお見舞いしてエネミーに痛烈な一撃を加えると、エネミーも背後に本物がいると思って振り返ったが、今度は別のシンデレラが背後から足に蹴りをお見舞い。
「さぁエネミーさん」
「わたくしのダンスについてこられますか」
「ついてこれなければ」
「何もできずに倒れるしかなくてよ?」
初見なら絶対に混乱すること間違いなしなこの状況で、言葉を分けて煽るシンデレラ達に、エネミーもさすがに苛立ったかようやく攻撃に乗り出すが、シンデレラ1人1人が元のシンデレラの回避性能を有していて、ヒラリヒラリと舞うようにエネミーの攻撃を華麗に避ける。
それでも数も数なので予期せぬ一撃がシンデレラの1人に命中すると、そのシンデレラは煙のように消えていなくなってしまう。
消えるということはそのシンデレラは本物ではないのだが、依然として全てのシンデレラに攻撃判定があってエネミーもその踊るように近づいての猛攻に踊らされていき、あれよあれよと表示されているHPゲージが減少していく。
しかしエネミーもこれだけで終わるわけにはいかないとでも言うように、その身に宿る必殺技のようなものを発動し、持ち上げた右足を水平に360度回転して振るい、そこから周囲へと衝撃波が放たれ、テルヨシ達の頭上にも壁に当たった衝撃波が余波となって襲ってくる。
それほどの衝撃波だったので、周囲にいたシンデレラもほぼ全てが凪ぎ払われてボボボボボンッ! と消えてしまったが、肝心のシンデレラ本体は衝撃波の放たれた瞬間に分身の1体の力を借りて空中へと投げてもらって回避し、落下しながらエネミーの頭上を狙う。
「フィナーレですわ!!」
そして繰り出された回転力も加えた強烈な回し蹴りがエネミーの脳天に炸裂し、決めに入っただけあってそれでエネミーのHPゲージも消失。
力なく倒れてポリゴン片となって消滅したエネミーのそばに着地したシンデレラは、スカート状の装甲を摘まむような仕草と一緒に綺麗なお辞儀で締めるのだった。
「終わっちゃったよ」
「まぁ勝手にやってくれたんだしいいんじゃない?」
「テイルさんも倒せそうでしたし、誰が倒したかは気にしなくてもいいと思いますよ」
「でもなーんか釈然としないよねぇ」
結果としてレギオンクエストはクリアになったのだが、最後が見てるだけだったことが不完全燃焼な感じは否めなく、満足気に近寄ってきたシンデレラからも「勝手にやったことなのでお気になさらずに」と言われる始末。
そこでなんだか微妙な感じのテルヨシの雰囲気を察したサアヤが、帰る前に適当にエネミー狩りでもして解散しようと提案してくれて、シンデレラもダイブに使ったポイントくらいは回収したいと賛同してくれて、不完全燃焼はそのエネミー狩りで消化することになった。
そうと決まれば行動も早く、アテネからレギマスの証をもらってアイテムストレージに仕舞ってから、雑談しながら池袋地下迷宮を出ていく。
「それにしてもアンタのあの必殺技。黄系にしても異質よね」
「お褒めに預かって光栄ですわ」
その道中で先ほどのシンデレラの必殺技についてを語ったサアヤに便乗するように、テルヨシもシンデレラが使った必殺技。マスカレード・ボールについてを考察。
シンデレラのマスカレード・ボールは、溜まっている必殺技ゲージの量によって効果が変わる特殊なもので、消費されるゲージ10%毎に2体の分身体を出現させる。
1度に出せる分身体は最多で20体に及び、その分身体は驚くべきことに1体1体が独立しシンデレラの基本的な思考とポテンシャルを持って実体化しているのだ。
シンデレラ本人には分身体への絶対命令権があるにはあるが、基本的に行使はせずに好き勝手やらせるせいで動き出すと本当に見分けがつかなくて酷いものとなる。
そんな分身体と合わせて21人のシンデレラが全て襲ってくるとなれば、どんな相手も余裕はあまりなくなり、ほとんどが蹂躙されてしまうのだが、エネミーがしたように攻撃は有効。
分身体の耐久力はダメージ判定がある攻撃を1度でも受けてしまえば消滅するほど低いため、ポテンシャルもシンデレラ同様となればとにかく数を減らす攻撃をするしかない。
だがしかし、シンデレラは回避主体の戦い方で分身体もその行動パターンを基礎にしているため、数を減らすだけでも容易ではなく、本人のみしか使えないながらもアビリティ《インベート》まで使われたらもうどうしようもない。
そうやってシンデレラが分身体とダンスパーティーでもするように華麗に攻撃し鎮圧していく様から、バトロワ祭りでは《
「でもまぁ、テイルの必殺技とやり合ったら勝ち目ないんじゃない?」
「そ、そんなことはなくてよ?」
「そうかしら? テイルの《インビジブル・ステップ》なら、アンタの分身に移動して触れるだけで倒せるし、相性は悪いわよね?」
「やめなよガッちゃん。どっちもゲージ全消費だから優劣も付けづらいし」
「そうですわよ。5秒しかないのでしたら、わたくしもどうにかしてしのげますもの。テイルはわかってらっしゃって嬉しいですわ」
「女性の心は常に把握してるのさ」
「うっざ」
シンデレラの必殺技にはかつてテルヨシもサアヤも手痛い思いをしたおかげでその威力に関しては認めざるを得ないが、鼻が高くなったシンデレラが気に障ったのか、すぐに弱点を突くような発言でぐぬぬとさせる。
確かに言うようにテルヨシの必殺技であるインビジブル・ステップなら、シンデレラの分身体を移動しながら処理できるが、全滅させて本体まで攻撃に及ぶとなれば時間的な猶予はあまりない。
それでは互いに必殺技ゲージが空になっての振り出しに戻るだけである種のリセットになってしまうから、根本的な攻略にはなっていないので、そこだけは指摘しつつ余計なことも言って割り込めば、彼氏が目の前で他の女を持ち上げたのが気に食わないのか明らかにイラッとした雰囲気になる。
そんなところも素直で可愛いものなので、冗談であることを補足してご機嫌を取りつつ、思い出したように出入り口の直前でイーターの《フリーザー・アイス》を使って必殺技ゲージを満タンにして外へと出れば、このわずかな時間で《変遷》があったのか、イーターにとって好都合の《氷雪》ステージになっていて、エネミー狩りをする都合で余計な手間が省けたと歓喜。
「そういえば知っていまして? この氷雪ステージにしか出現しないエネミーがいるというお話」
「オレはエネミー狩りにはほぼ無関心だったから知らなーい」
「僕もよくは知らないです」
「私は実際に倒したことあるけど」
「…………あなたは本当に面白味がありませんのね……」
「褒めないでよ」
「褒めてませんわよ」
歓喜ついでにこれからするエネミー狩りに関してシンデレラの方から情報提供があったので、ポイント的に美味しいのかもしれないそのエネミーを探す流れかなと思っていたら、さすが古参のサアヤはすでに討伐済みで話が終了してしまった。
ここは知らない流れでシンデレラに詳細説明をしてもらうところだったのでは?
といった空気はわかっていたのだろうが、サアヤはそのエネミーを探す手間を知っているからか、その流れを拒否するようにブッタ切るから、シンデレラも気持ちが萎えてしまったのだった。
一応の話では氷雪ステージらしく雪男のような巨獣級の巨人エネミーがいるみたいで、遭遇率に関しては徘徊しているから運が絡むとのこと。
しかしサアヤはまた空気を読まずにさらなる情報として神獣級エネミーに雪女がいるとか言うもんだから、もうシンデレラのいじけ方が半端なく可哀想になる。
「ちなみにその雪女って倒したことあるの?」
「倒した報告は聞いたことないわね。面倒臭いことにそのエネミーって標高2000m以上の山にしか出現しないっぽくて、東京近辺にないから遠征してまで倒そうってパーティーがいないのよ」
「じゃあ誰が遭遇したんだそれ……」
「たまにいるのよ。辺境調査が趣味の危険を承知で探検するバーストリンカーがね」
まぁそれらの討伐は今回は見送るにしても、情報くらいは仕入れておこうと話を広げてみると、加速世界で8000年の時の流れがあってまだ討伐されたことがないエネミーというのには少しばかり興味が湧く。
が、それを見越したサアヤが釘を刺すように「手伝わないからね」と言ってしまうと、ソロ討伐など考えられないテルヨシは保留にするしかなかったのだった。