アクセル・ワールド~蒼き閃光Ⅱ~   作:ダブルマジック

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 文化祭前日。

 今日はバイトも休んで午後いっぱいまで文化祭の準備をする予定だったテルヨシは、まず先に忙しすぎて話す時間もなさそうな黒雪姫を登校早々に捕まえて昨夜プロミのエネミー狩りで起きたことを報告し、わかってはいるがその犯人が黒雪姫ではないことを確認。

 黒雪姫も話を聞いて犯人が《ブラック・バイス》であることをほぼ確信したようだったが、本当に今日は忙しすぎて頭のリソースが割けないらしく、HRなどといった朝の恒例すらも参加せずに恵とほか生徒会メンバーは姿を眩ましてしまった。

 生徒主導の文化祭とはいえ、生徒会がああなるほど放任はどうなのかと思わなくないが、この自由さなしに黒雪姫が生徒会であそこまで横暴な振る舞いはできないので、なにかと緩い校風にはツッコまないでおく。

 そんな生徒会を他人事のように見ていたテルヨシではあるが、自分も自分で今日はクラス展示──生徒会は免除されてるがケーキ屋をやる──の手伝いと講演のリハやらがあって忙しい。

 クラス展示に関しては始めこそバイトの経験を活かしたテルヨシの主導で女子が中心になってやっていたが、試作などを始めた段階で女子が主導になったので今は諸々の最終チェックなどを担当。

 出す以上はオーナーも来るので妥協はなしのテルヨシの最終チェックはなかなか厳しい関門として今週の頭から女子に立ちはだかったが、今日の午前中のうちにそのチェックをクリアしてくれる。

 男子は肩身が狭い思いをしながらも装飾などの飾りつけにこき使われて、当日は裏方仕事──使った道具の洗い物など──がメインで接客も女子が担当。不憫だが仕方ない。接客は大抵、女子がウケる。

 その枠から勿論はみ出るテルヨシは現場監督なので、当日も午前中の始めは現場指揮で先陣に立ち指導する予定で、それから休みなしに講演となる。

 

「おーい、皇ぃ。若宮がメール読めって」

 

「あー聞こえない見えなーい。まだみんなとガールズトークしていたーい」

 

「テル君は女子違うしぃ」

 

 クラス展示の方はこれで問題はなさそうだといった段階に落ち着いてから、女子との昼食を楽しんでいたテルヨシだったが、体育館で現在進行形で進んでいるはずのリハーサルに行かず、20分前に届いた恵からのメールを無視していたら、案の定で体育館で出し物をするクラスの男子が使いとして出されて連行しに来る。

 ──お昼くらいゆっくりする権利はあるはずだ!

 といった主張をしたいところだが、1人のわがままが通るほど体育館でのリハーサルはなあなあで処理できないことなので、どうせメールにはテルヨシの性格を読んで早めに来るようにと10分前行動を促すことしか書かれてないだろうが、一応はメールを読みながら遅刻にはならないことだけ確認して体育館に移動。

 遅刻してないのに現場指揮でいた恵にちょっと怒られる理不尽にも耐えて、予定通りにステージでのリハーサルを開始。

 当日も使う機器の確認もあるので、使えなければ困るライブ映像配信とAR大ビジョンのスクリーンは、テルヨシのニューロリンカーの視界映像をリンクさせて映し出される。

 

「はい、めーぐみっ。ピースピース」

 

「…………視界は良好っと。音声も……後ろの方まで聞こえてるみたいね。ボリュームは当日にもちゃんとチェックしてくださいな。音割れでも起きたら大変ですから」

 

「忙しいのはわかるけど笑顔を絶やしちゃダメよ?」

 

「これでも楽しんでやってるのでお気になさらずに」

 

 その視界でステージの上からそばにいた恵を映しつつ音声チェックも兼ねるが、淡々とした進行の恵が面白くなくて笑わせようとする。

 しかしとてもそうとは思えない返事で会話を終了させた恵は、講演の中でテルヨシがやりそうな客を困惑させる発言や行動を事前に注意してチェックを終了。

 まぁ恵は嫌なことは嫌だと割と素直に言う方だし、本人が楽しんでると言うならそうなのだろうと納得しつつ「寒いジョークは飛ばさないように」とかなんとかまで注意するのはいかがなものかと内心でツッコみ、あとはステージ担当の生徒と細かい打ち合わせで調整をしていった。

 

 それらを全て終えて、体育館全体での出し物のチェックを全て終了したのは午後2時を回ったくらい。

 バイトも休んでいるので下校時刻にはなっているが、やはり祭りの前日は心が躍るもので帰る気にはなれなく、まずは速攻でクラス展示の女子グループに混ざろうと向かった。

 だが提供するケーキのチェックも終えて完全に後片付けに入っていた女子達からは「あとは本番に備えて寝るのみ!」とか言われると食い下がれず退散するしかなく、今もあちこち動き回ってる生徒会の黒雪姫と恵など暇潰しに捕まえようものなら、全生徒からバッシングを受けること間違いなし。

 会話相手がいないと死んじゃうテルヨシとしては下校の選択肢しかなくなっていたが、生徒が自由に動き回れるならやれることはある! と考え直して移動を開始。目指すは後輩の元だ。

 

「あー、テル先輩がサボってるー」

 

「失礼な。ちゃんとやることはやりましたけどー」

 

 そうしてまず訪れたのは、陸上部が出す予定のクレープ屋台。

 そこでは料理ができるチユリが戦力として入っていて、今も生地を焼く練習を他の部員達と楽しそうにしていたが、テルヨシが来ればイタズラな笑みで失礼なことを言って茶化してくる。

 

「明日はタッくんの演舞を見終わったらみんなで講演を聴きに行くので、失敗だけはしないでくださいよ?」

 

「何の配慮か、オレの講演の時は他の限定的な出し物は全部スケジュールから外れてるから、こういうクレープ屋台とか以外の生徒は来れるようになってるしねぇ。どんだけ大々的にやるんだか」

 

「テル先輩が表舞台で何かするのがそれだけ大きなことってことじゃないですか。そう考えたらタッくん達の演舞とかも前座にしかなってないような……」

 

「やめてさしあげろ。都大会も近いのにダンスやってるタクム君が可哀想になる」

 

「それを言ったら部活の人達みんな大会前に頑張ってますよぉ」

 

 相変わらず遠慮がないというか嘘がつけないというかなチユリの発言は話しやすい一方でなんか先輩への敬いとかそういうのも排除してそうで怖いところ。

 ギリギリのところで敬語は使ってるからいいのだが、そうやって先輩相手に物怖じせずに話すチユリを部活仲間の後輩女子も凄いみたいな顔で見ていた。

 それはそれとして現在進行形でクレープ作りの試作をしていたチユリ達の手元が気になったテルヨシは、アメリカにいた頃に作ってたなぁと思い出しながら見てみると、食べたいと勘違いしたチユリが試作品の試食を勧めてくれる。

 まぁタダ食い出来るのはラッキーなのでありがたくいただき、その感想はガチでやってから、生地の厚さだけ気になったので自分で焼いてみせたら、思いのほか女子ウケしてそのまま焼き方講座を10分くらい開催することに。

 今は機器が優秀なので人の技術など入っても大差ないが、手際だけはいくらでも詰められるもの。

 言葉で説明しづらいそれをずっとやってみせて感覚的なもので掴ませる形で済ませてしまったが、体育会系は理論派より感覚派が多いようなそうでないような気がするのでいいかと、報酬としてその生地でトッピングしたクレープをいくつか貰って次なるちょっかいへと出撃。

 

「も、物凄く視線を感じる……」

 

「気のせいだタクム君」

 

 訪れた剣道場では、創作ダンスに励む男子剣道部とその衣装作りに勤しむ女子部が楽しそうに作業していて、今はちょうど当日に着る衣装の試着をしていたようで、試着を終えたところに居合わせたテルヨシは、新撰組のような衣装に身を包んだタクムをまじまじと観察。

 ダンスの方は当日の楽しみにしたいのであまり見ないようにしつつ、女子部員がキラキラした目でタクムと、ついでにテルヨシを見るので、会話がしづらかったのか剣道場の外へと移動しようと提案されて、外ならいいかとチユリからの餞別だと適当なことを言って貰ったクレープをあげると、ハニカミながら受け取ったタクムはそれを頬張りつつ口を開く。

 

「テル先輩は暇潰しを始めるくらいには余裕なんですね」

 

「仕事もできちゃう先輩で申し訳ない」

 

「それをマスターの前でも言えるのでしたら報告しておきますが」

 

「姫にならいい。恵にはダメ。さっきいじめられたもん」

 

「いじられたの間違いでは? 先輩は僕達の学年とかだと面白くて楽しい先輩のイメージですけど、同学年だと違うイメージを持たれてそうです」

 

「ノリが良すぎてたまに真面目なこと言っても流される時はある」

 

 忙しいだろうに話はしてくれるタクムの人の良さは今さらなことだが、真面目なだけとは違ってノリも悪くないのでテルヨシもそれに甘えて会話を盛り上げる。

 面倒な先輩という自覚はありながらそれを表情に出さないタクムはなかなかタフな部類だなと勝手なことを思いつつ、出し物の出来はどうだとかその辺の話題で適当に話をしてから、持っていたクレープも食べ終わったタイミングで視界の時刻を確認。

 

「そろそろ領土戦かぁ。忙しいのに領土持ちのレギオンは大変ね」

 

「さすがに今日は僕は参加できそうにないですがね。これから本腰入れてダンスの練習なので」

 

「チユチユも主導で動いてたから、今日はハードになりそうよ。助けてやらないけど」

 

「助けるって……マスターが嫌がりそうです」

 

「オレは問題児ですからな。領土戦中にうーちゃんやフーコさんとイチャイチャする可能性は高い」

 

「否定できないのがテル先輩の凄いところなのかもしれないですね……」

 

 時間も良い感じで潰せて30分後くらいには加速世界でも領土戦が始まるといった頃になって、メンバーの半数以上が梅郷中の生徒という偏りのあるレギオンは大変だなぁと他人事のように思いタクムと笑い混じりで会話。

 それからすぐに剣道場の中から練習するような声かけがあって、タクムもそれに応じるようにクレープのお礼を言って軽くお辞儀してから剣道場の方へと戻っていき、それを見送って次なる暇潰しにどこへ行こうかと思考。

 

「…………あっ。飼育委員といえば」

 

 しかし文化祭に頭がいっていたから完全に抜けていたが、マリアと謡が来る飼育委員は毎日欠かさずに来るので、いま行けば普通に会えることに気づき、すぐ様その進路を第2校舎の裏へと向けていった。

 

「うーちゃん今日も可愛いー!」

 

【UI> テルお兄さんは今日もお元気なのですね】

 

「テルはバカなだけだよ、うーちゃん」

 

「マリアったらぁ、うーちゃんだけ可愛いって言うから拗ねちゃってぇ」

 

「どう捉えたらそうなるんだろう。さすがバカテル」

 

 着いた頃にはすでに飼育委員の仕事は全て終了していたようで、これから体操着から制服に着替えようトイレに移動しかけていたマリアと謡の進路に割り込んで挨拶をするが、さすがに慣れてきたのか謡も笑顔を崩さずにチャットで挨拶し、マリアに至っては平常運転すぎて笑えない。

 しかし領土戦も迫ってるから謡も早く着替えてしまいたいと申し訳なさそうにチャットで伝えてからお辞儀してマリアと一緒にトイレに行ってしまい、残されたテルヨシは同じく取り残されたハルユキと一緒に備えられたベンチに腰を下ろしてみる。

 

「あの、テル先輩は講演の準備とかいいんですか?」

 

「終わってなきゃここに来ないよ。チユチユとタクム君にも言われたんだけど、オレってそんなに怠け者に見えるわけ?」

 

「そそ、そんなわけでは決してなくてですね……テル先輩はなんというか黒雪姫先輩と同じで、苦労を顔に出さないというか、いつもどこかで余裕を持っている感じがして」

 

「弱味を見せるのは彼女とマリアの前だけでいいのだよ、ハルユキ君」

 

「そういうものなんですか……」

 

 よほど後輩からの信頼がないのか、唯一と言っていい後輩3人ともが似たようなことを言ってきて少し悲しいが、そう見えるのなら仕方ないと諦めて会話を続ける。

 それでもハルユキとだと微妙に会話が弾まないテルヨシが飼育小屋のコノハズク。名前は確かホウだったはずの方を向いて何か聞こうかと思ったら、黒雪姫からメールが届き内容を確認。

 そこには「領土戦前の会議に参加しろ」との命令があって、プロミの件で話すことでもあるのかなと予測しつつハルユキにも報告。

 

「なんかこれからの領土戦会議に参加しろって姫が。何か理由は知ってる?」

 

「えっと……テル先輩に関係あるのかはわかりませんからなんとも……」

 

「んー? ということは隠し事はあるわけか。まぁ問い詰めても言葉を濁したってことは話す気はないだろうし、楽しみにしておくか。ネガティブ方向じゃないよね?」

 

「それは、はい。大丈夫です。あっ、黒雪姫先輩と僕しか知らないので他の人にはまだ……」

 

「余計なことはしないって。信用ないなぁ」

 

 一応テルヨシが知らない何かがあるのかもしれないので、それとなくハルユキにも報告がてら探りを入れてみたら、凄く分かりやすく言葉を濁してくれたので、悪い話ではないことだけは確認しておき言及はやめてあげる。

 そうこうしながらマリアと謡が戻ってきて割とすぐに領土戦前の会議のための対戦が始まり、ギャラリーとして入ったテルヨシは《月光》ステージに降り立ってすぐに近くにいた謡と合流し、対戦者になっているハルユキが移動するのを手を振って見送る。

 そしてちょっと待ってからギャラリーの自動追従機能でテレポートし、黒雪姫、ハルユキ、チユリ、タクムと集まった中に出現。

 

「あれ、何でテル先輩がいるの?」

 

「お呼ばれしたの」

 

「マスター、もしかして文化祭で何か問題があるんですか?」

 

「ン、別に問題が発生したわけではない。ただ話がしたいと言う者がいたのでな」

 

『話がしたい者?』

 

 そうなれば本来ならいないはずのテルヨシが話題になるのは当然で、その辺で鋭いタクムが先読みしたのだが、ネガティブな方向じゃないとわかってたテルヨシはその返答がどうなるかと思っていたら、本当に予想外の返答にハルユキ以外のみんなと口を揃えてしまう。

 しかしそうなるとこの場にいないフーコがその人物に当てはまってしまうが、わざわざ黒雪姫が名前を伏せる理由が全くないので疑問が浮かんでいたら、そのフーコもすぐ合流してきて話に加わる。

 

「えっ? わたしからは特に何もないのだけど……サッちゃんは誰のことを言っているの?」

 

「それはだな……」

 

 だがやはりフーコから話があるわけではなく、フーコからまでそう言われてしまえばもう言うしかなくなって、まだ言い淀む黒雪姫は言葉ではなくその顔をある建物オブジェクトの屋上に向けることで示し、それに釣られてみんなして同じ場所を見てみると、月光を背にして屋上に立つ1人のデュエルアバターが姿を現していた。

 その姿を見た瞬間。フーコと謡は揃って息を呑み、タクムとチユリも存在しないはずの人物に驚き固まり、テルヨシもかつて1度だけ対峙したことがあるそのデュエルアバターに笑みがこぼれる。

 屋上に立つ人物は沈黙した一同を他所に壁面をその『流水装甲』を崩して流れるように降りてきて、再び人型の姿になると、吸い寄せられるように歩み寄ったフーコと謡に近づきようやく言葉を発する。

 

「……ただいまなの、レイカー、メイデン」

 

「カレン……なの……?」

 

「レンねえ、ですか……?」

 

 ずっと秘めていた勇気を振り絞るようにして2人に言葉をかけた人物《アクア・カレント》は、まだ信じられないといった感じで約3年ぶりに再会した2人の問いかけに静かに頷き、それでようやく実感が湧いた2人は人目もはばかることなく目の前のカレントに抱きつき、カレントもそんな2人を優しく抱き止めた。

 

「ハロハロー。2年ぶりくらいになるかな、カレント」

 

「あなたは相変わらずの飄々っぷりみたいなの、レガッタ・テイル」

 

「まさかこのタイミングでカレントと会えるとは思わなかったよ」

 

「私もロータスから聞くまでこんなことになるとは夢にも思わなかったの」

 

 空気を読むべきかもと思いつつも、本来この場がネガビュの会議であることを考えて早々に退場した方がかえって良さそうと考えて話があるというカレントへと挨拶。

 カレントもフーコと謡と抱き合いながら顔だけをテルヨシへと向けて会話をしてくれる。

 

「それで話ってのは?」

 

「話というほどのことでもないの。ただあなたにお礼だけ言いたかった」

 

 その状態で話し続けるかと思ったが、テルヨシが本題に入るなり2人から離れたカレントは、唐突に心当たりのない感謝を述べたかったと言うから疑問が浮かぶ。

 これには黒雪姫も何のことやらと首をかしげたが、カレントは言葉に困るテルヨシにさらに言葉を続ける。

 

「あなたがいてくれたから、ロータスが長いグローバル切断を経ても、変わらずに外の情報を得られたし、対戦を繰り返すことでブランクもなく復活できた」

 

「あー、それね。別にカレントが感謝することじゃない気もするけど。姫とは利害の一致でやってたことだし」

 

「そうだぞカレン。その代わりに私がアイツを鍛えていたのだから対等な取引だったのだ」

 

「それでもなの。私達のレギオンマスターの剣が錆び付かなかったというのは、それだけ大事なことだったの。だから元《四元素》として感謝するの」

 

「だそうよ、ひーめっ」

 

「……まったく。どうしてこう皆、私に対して過保護なのだ」

 

 何に対しての感謝かはそれで判明し、感謝されることでは全然なかったから物凄く照れ臭かったものの、真面目なカレントに言われて黒雪姫までが照れ臭そうにして笑いを誘うと、フーコと謡まで便乗して笑ってしまった。

 しかしカレントはそれだけで終わらずに笑いが収まってから改めて口を開き、またも予想外なことを言ってくる。

 

「それからレパードとも仲良くしてくれてありがとうなの」

 

「んー、ん? それはまぁパドは好きだし仲良くしてもらって感謝するのはオレの方……だけど、何でカレントが感謝? っていうかバトロワの時にもそんなことを言ってた気が……」

 

「……秘密なの」

 

 どうしていきなりそこでパドの名前がと思わざるを得なかったのだが、話しているうちにかつてのバトロワでもパドの名前を出していたことを思い出す。

 何か関連があるのだろうことまでは勘づいたものの、本人がそれ以上は口を閉ざしてしまっては言及も出来ず話は終了。

 これについてはパドからも聞いたりはできそうだから今ここでの問い詰めはやめるが、次に会ったらこれだけは聞いておこうと決めていたことを今のうちに言っておく。

 

「まぁそれはいいや。じゃあ最後にオレからも。あの時にカレントに言われた足りないもの。この2年で積み重ねてきたつもりだけど、今のオレはカレントからどう見えてる?」

 

 それはかつてバトロワでカレントに言われた埋められない差。すなわち対戦による経験値に他ならない。

 あの時は確かに圧倒的に経験値の差を実感しうちひしがれたものだが、この2年で埋まらなかった差を少しでも詰めることはできたのか。それだけは確認したかった。

 

「…………難しい質問なの。この2年であなたの対戦を直接見ることはほとんどなかったけど、今こうしてギャラリーでも相対してみて感じたのは、わたし達ともそこまで差がない雰囲気はなんとなく伝わるの」

 

「カレン。一応だけどテイルさんはわたしと僅差の勝負をしているわよ」

 

「私も少しだけ交えさせていただいて、実力のほどは認めているのです」

 

「そうなの。ならもう自信を持っていいの。レイカーとメイデンが認める実力なら……ううん。近いうちに直接見てあげるの。その方があなたも納得するはず」

 

「悪いけどあの時みたいな絶望はもうしない予定だからよろしくっ」

 

 でもさすがのカレントと言えど今のテルヨシの実力を正確に把握しているわけもなく、漠然と強くはなってるだろうと言ってはくれる。

 そんなカレントにフーコと謡が補足するように自らの対戦経験を報告し、それを聞いて少し明確な判断をしかけるが、やはりバーストリンカー。

 相手を理解するなら対戦の中でと言うように近いうちの対戦を約束し、バトロワの時にはいかなる攻撃も無力化された悔しさを忘れていなかったテルヨシも、この対戦には熱が入り宣戦布告。

 それを受け取ったカレントは「楽しみにしてるの」とだけ言って、それを聞いたテルヨシもこれ以上の時間の消費はネガビュに悪いと思って自ら対戦フィールドから退室して現実世界へと戻っていったのだった。

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