アクセル・ワールド~蒼き閃光Ⅱ~   作:ダブルマジック

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原作14巻辺り
Acceleration Second40


「水は流れ続けてこそ水。停滞はアキに似合わない」

 

 楽しい文化祭の最中、調子の悪そうだった綸が《ISSキット》を寄生させられていた事実が発覚し、全員が楽しめる文化祭を続けることができなくなったため、だったらとISSキットの本体の破壊を決行しようとしたテルヨシ達。

 一同が一致で作戦に賛成した直後、ISSキット本体があるのが《無制限中立フィールド》であることで、未だレベル1のままデュエルアバターが四神《セイリュウ》の祭壇前に封印されているあきらが作戦に参加できないことが判明。

 自分抜きでもやれと言ったあきらに皆が言葉を失う中、パドが珍しく率先して言葉をあげて諦め気味のあきらをまっすぐに見据える。

 

「……なら、どうしろと言うの、ミャア?」

 

 思えばあきらがバーストリンカーであったならば、その従姉であるパドがあきらと近しい関係でないことの方が無理な話。

 ハルユキとタクム、チユリのように幼馴染みでバーストリンカーというのもレアなケースだが、親等の上でも近いパドとあきらなら、2人が《親子》である可能性は限りなく高い。

 そしてパドがこれまで決して話してはくれなかったレベルアップをしない理由についても、今の状況からようやく理解ができる。

 

「今すぐ《無限EK》から脱出して、そのままメタトロン攻略に参加すればいい。7日もあれば、2つの作戦を連続して行うことは充分に可能。そしてこのメンバーなら、戦力的にも充分」

 

 その事に気づいているはずのユニコにチラッと視線を向けながら、パドが出した提案を聞いていると、視線に気づいたユニコも「こうなるだろうとは思ってたさ」みたいな諦めに近い視線で返してきて腹はとっくに括っていたようだ。

 そしてまさかの提案がプロミネンスの側から挙がってしまったがために割り込みをかけた黒雪姫が慌ててしまったが、すぐに落ち着いて正面に座るユニコと、その後ろにいたサアヤにも視線を向けて言葉を紡ぐ。だが何故テルヨシを見ないのか。

 

「…………いいのか、赤の王、サアヤ。レパードの提案は、我々にとっては正直願ってもないものだ。ネガ・ネビュラスの人員だけで救出作戦を行うよりも、遥かに成功率が上がるだろうからな。だが、依然として困難なミッションであることに変わりはない。作戦に加われば、セイリュウの猛攻で1度ならず死ぬか、レベルドレインの特殊攻撃を受けるか……最悪の場合」

 

「皆まで言わなくてもわかるわよ」

 

 黒雪姫の視線には不満はあったが、あきらの救出作戦はネガビュで取り組むべき問題であることが前提。

 それに協力してくれるのかと確認する黒雪姫の言葉を最後まで聞かずに言葉を切らせたサアヤは、巻き込まれた手前、ちょっと機嫌が悪そうだったが、やると決めたからにはそれにブーブー言うほど子供でもない。

 

「プロミだってユニコちゃんとユリが割り込まなかった時点で腹は括ってるし、私もテルもレパードの言い分は納得してる。ただでさえちょっと無茶な作戦なんだから人数は多いに越したことはないわ。でもアキちゃんを助ける危険な作戦を見返りもなしにやらせるのはロータスもユニコちゃんも関係性のない私達には気が引ける。詰めるならそんな話でしょ」

 

「ム、対価を求めるのは当然だが……」

 

「メンバーの引き抜きとかはやめてくれよな。ただでさえユリさんの引き抜きやろうとしてるんだし」

 

「私はそこまで鬼じゃないわよ。ネガビュとプロミには今後の7王会議でこのバカが変なことを言っても味方してやってほしいの。明確な味方じゃなくても、肯定派みたいな感じでいてくれればそれで良いわ」

 

 だからサアヤもあきらの救出作戦には賛成した上で、本来なら参加をお願いされる立場の自分達に無報酬では後味も悪いだろうと、その報酬の話に素早くスライドし、どんな要求をされるのかと生唾を飲んだ黒雪姫とユニコ。

 その2人に叩きつけたお願いは、テルヨシを指しながらの意図が分かりにくいものだったが、それを言われてから理解したテルヨシもサアヤの無理すぎない要求には凄いとさえ思う。

 

「意図はよくわからんが、アレの言うことに何かしらの意見を述べればいいのなら、いつもやっているから問題ない」

 

「だな。あたしらがやらなくても勝手にレディオ辺りが焚き付けてくるから問題ねぇ」

 

「バカとかアレとか、オレの扱いが酷すぎる件についてお説教したいのですが」

 

「そんな時間ないわよバカ」

 

「アレの言うことは無視して話を進めよう」

 

「うがー!!」

 

 ともあれ、サアヤが無理な要求をしてこなかったことでスムーズに話が進み、あきらの救出作戦は実行に移されることとなる。

 だがテルヨシの扱いが色々と酷いからその辺をツッコんだら、時間も限られているからスルーされ唸ると、結果的に皆に笑われることになるのだった。

 

 現実での時間が貴重ということで作戦会議のために通常対戦のフィールドで時間を1度使って打ち合わせをしてから、午後12時20分にあきらを残して一同が無制限中立フィールドにダイブ。

 《世紀末》ステージのフィールド属性を確認しながら今作戦に加わる一同の出現を待つこと十数分。

 どうしてもコマンドは合わせても多少のラグが生じてしまうのは仕方ないことなので、失語症の都合、かなり頑張ってくれてる謡の出現で全員が揃ってから、並ぶ一同に深々と頭を下げたのはハルユキ。

 

「……本当に、ありがとうございます。文化祭の真っ最中なのに……何も言わずに協力してくれて……」

 

「そのやり取り、またこっちでやるつもり? 鴉くん」

 

「見返り求めたオレらは何も言わずとかないしねぇ」

 

「NP。カレンの救出もISSキット本体の破壊も必要不可欠」

 

「つーか、聞いた今も信じらんねぇんだけど、ホントにあの弱気オーラ出まくりな女が《アッシュ・ローラー》なのかよ?」

 

「儂のようにキャラクター作りをしておるわけでも、たまにおる人格が変わるタイプとも思えんが……」

 

「てゆーか私はダイブしてようやくガスト姉さんとバーちゃんさんだって納得したんだけど、みんな受け入れ早すぎない?」

 

 よっしゃ行くぜ! って感じでダイブしていたのでハルユキの改めての感謝はなんかあれだと思ったか、早々にサアヤが断ち切ってテルヨシ達が便乗。

 和やか雰囲気になりかけてからのチユリのその言葉に、リアルでは初めて会ったはずの黒雪姫は「いや、2人のリアル情報は少しだけ見えていたのでな」と答え、フーコも「5年ほど前にブラジャーを着けるだの着けないだのと話したことが……」と口を滑らせて黒雪姫に言うなと口を塞がれていた。

 ブラジャー云々の話なら胸の成長具合による着けるタイミングとかそんなところかなと予想しながらその辺をサアヤに小声で聞いたら「ユリもフーコも小5で着け始めたのよ」とキレ気味に回答してくれ、その当時は小4だったサアヤと黒雪姫がどんな気持ちで聞いていたのか察してあげるのだった。

 

「ほら、雑談してないで行くわよ。カレントの出現時間はほぼ決まってるんだから、こっちが遅れたらなに言われるかわかったもんじゃないわ」

 

 ちょっと話が速攻で脱線しかけたので、ワイワイ騒ぎ出す前に手を叩いて引き締め直しにかかったサアヤは、チンタラやってたらこっちの時間で3時間後に出現する予定のあきらが出現早々にセイリュウに死亡させられるからと要点だけをまとめて事実を突きつける。

 それで和やかモードもいくらか引き締まって、それじゃあ移動しようかとなる。

 

「あっ、でもこの人数で高速移動って割と無理じゃね?」

 

「うむ、それは私も考えていたのだが、ちょっとみんなで頑張ってみるか」

 

「おいおい、それじゃ移動だけで1時間以上は消費しちまうっての」

 

 しかしそうなってから。いや、そうなる前から薄々は感じてたが、総勢12人になる集団で移動するには何らかの移動手段を選ばなければならなく、世紀末ステージは生憎と電車などの機関も動いていない。

 そうなれば必然、黒雪姫の言うように頑張ってみんなでランニーングっ! みたいな形になるしかない。

 だがそんな疲労も溜まる移動ではセイリュウ戦に使うエネルギーも消費することになるのでなるべくなら却下の方向にしたいと思っていると、やれやれな態度のユニコが割り込んできて策なしな黒雪姫とテルヨシを笑う。

 

「しゃーねぇな。あたしが丸の内までタクシーしてやるよ。特別サービスだかんな。ちょっと下がってろ」

 

 そうするからには何か策があるのだろうとは思いつつ、偉そうなユニコにイラッとした黒雪姫を抑えて言われた通りに下がり、みんなもユニコから距離を取ると、まずはユニコの主武器である《インビンシブル》を召喚しコックピットに乗ってしまう。

 これだけなら《不動要塞(イモービル・フォートレス)》としての赤の王の本領を発揮する固定砲台だが、任せろと言ったからには何かあるはずで、何も言わないパドとユリは何をするかわかった上で黙ってる感じ。

 

「んでもってこっから……チェンジ! 《ドレッドノート》!!」

 

それなら口を挟む必要はないなと見守っていると、そんなボイスコマンドの後にインビンシブルに変化が。

 まずは本体を支えていた4本の脚が前後で2つずつくっついて伸び、その上に突き出ていた機銃やミサイルポッドがせり出したコックピットブロックの後ろにに集まるように格納され、左右の主砲はそのコックピットの横にスライド。

 最後部にスラスターがズドンと収まってから、最後に脚部だったパーツの下から合わせて12個のタイヤが出現して変身完了。

 

「これは完全にトレーラーね」

 

「座席はどこかしら……」

 

 その出で立ちは全長10mを越える大型トレーラーそのもので、誰がどう見てもタクシーではないなぁと思いつつサアヤのちょっとしたボケが炸裂。

 それには変身させた本人から「んな都合の良いもんねぇから」とツッコミをいただき、何も言わずにそのトレーラーの上に飛び乗ったパドとユリに続いて全員が長方形平面の屋根の上へと乗る。

 全員が乗っても少し余裕があるのでなかなかに大きいが、その代わりに掴む場所も何もないので、動き出したら死に物狂いでしがみつくしかなさそうなのがまたワイルドな感じだ。

 

「さてと、レインの運転は荒いでの。テイル、支えておいてくれ」

 

「そんなに荒いんじゃオレも振り落とされるんじゃ……」

 

「っていうか何でテイルに抱きついてんのよアンタは」

 

「仕方なかろう。儂は風の影響を受けやすいんじゃから、誰かに掴まりでもせんと簡単に飛んでしまうぞ」

 

「それはわかってるっての。それで何でテイルなのかって話でしょ。ガタイならパイルの方が良いんだからそっちに支えてもらいなさいよ」

 

 これで《帝城》の東門までを突き進むとなると乗るだけでもちょっと神経を使いそうだなと考えていたテルヨシに、近寄ったユリが甘えるように首に腕を回して抱きつきながらそうした理由で密着してくる。

 まぁ確かにどのくらいの速度が出るのか知らないが、吹きっさらしの屋根ではユリのアバターは紙も同然の軽さで簡単に置き去りにされるのは想像するに容易い。

 それなら仕方ないかと思いかけて、ちゃんとしてるようでしてなかった理由にサアヤが鋭いツッコミ。

 それを聞いてからそりゃそうだと思いながらチユリといたタクムを見れば、確かに向こうの方がアバターとしては安定感がある重量級。わざわざテルヨシを指名する理由はない。

 

「あのバーちゃん? もしかしなくてもガッちゃんで遊んでる?」

 

「むっ、気心知れたテイルを選んだのがいけないことかの。というのは可愛い言い訳じゃが、結論としてはそうなるの」

 

「ボンバー!」

 

 ならどうしてと考えるまでもなく、最近はサアヤ弄りが楽しそうなユリだから、こんな時でも遊んでたようで、そうした本心をバラしたユリに思惑通りにやきもちを妬いたサアヤは照れながら追いかけ回す。

 そしてそうなるとわかってたっぽいマリアなんて、最初からトレーラーの先頭に陣取ったパドの腰に抱きつかせてもらう許可を取っていたし、黒雪姫さえなんか騒ぎそうと思ってたか予想通りの結果に「本当に騒がしいな、この2人のコントは」とか呟いていた。

 

「そんじゃ、帝城目指して……しゅっぱーつ!!」

 

 自分の頭の上でわいわい楽しそうなのが羨ましかったか、ちょっとテンションを上げていたユニコがこっちの状態を多少無視していきなり発進の合図を出したため、騒いでいたサアヤとユリは切り替わるようにテルヨシに抱きついて今の喧嘩が何だったのかわからない仲直りを披露。

 トレーラーっぽく重々しいエンジン音を鳴らして12個のタイヤが回転を始め、梅郷中学校のグラウンドを出発して正門ゲートの鉄骨を蹴散らして公道へと出る。

 大きな道はエネミーとのエンカウント率が上がるため、東門まではほぼ裏道を進んで無駄なエンカウントを避ける方針だったので、ユニコもすぐに公道から中野第2戦域の裏道へと入ってひたすらに東に進路を取る。

 

「それにしても、あの鴉は色々とイレギュラーね」

 

 移動中のメンバーで小さなグループが形成され、テルヨシとサアヤとユリで固まり、ちょいちょいユリが《リトル・ボム》を適当なところに放り込み必殺技ゲージを溜める物騒なことをしていたが、割と一石二鳥だから真似できる人はやり始める始末。

 マリアもパドに抱えられながらトレーラーの進路上で邪魔そうなオブジェクトを撃って退け、何気に移動に貢献してたりする。

 真似と言っても近接オンリーなテルヨシには関係ないので、体を支えるユリが景気よく両手を合わせてるのを見ながら、隣で呟くサアヤの話に耳を傾ける。

 

「イレギュラー?」

 

「加速世界初の完全飛行型アバター。災禍の鎧の6代目で、その負の連鎖を断ち切ってくれた子。それから今回のメタトロン攻略でも新しいアビリティを習得とか、盛りすぎよ」

 

「話を聞いてると完全に物語の主人公よね」

 

 ダイブする前の作戦会議でメタトロンのレーザー対策にハルユキの《光学誘導》アビリティが使えるかもと話されたこともあって、参加メンバー全員がハルユキの新アビリティは認知していた。

 しかしそれを含めてもハルユキの盛り盛りな経歴にはため息が出るサアヤの気持ちはわからなくはない。

 テルヨシも加速世界に少なからずの影響は与えた自覚はあるものの、それは全体からすれば微々たるもので、ハルユキの与えたインパクトは周囲を巻き込んでのものが多い。

 

「なんとなくだけど、あの鴉の近くにいるとわかるわ。ロータスやレイカー、レインちゃん達が何かを期待しちゃうって気持ち」

 

「オレはそうじゃありませんかね?」

 

「フフッ。やきもち?」

 

「そういうのじゃないけど、頼られたいお年頃って感じのあれですかね」

 

「言っとくけど、このパーティーでレベル的な序列でいけば4番目のアンタは、みんな言わないだけで期待はしてるのよ。その分、責任ものし掛かってるわけだけど」

 

 やることなすことがいつも予想の上をいくハルユキにはテルヨシも何度も驚かされてきたし、このわずかな時間でもそうした謎の期待感を肌で感じたサアヤはさすが。

 その期待感のようなものは男として常に女から持たれたいテルヨシがちょっとだけ噛みつくと、可愛いみたいな笑いで弄ってきたサアヤは、期待してないわけじゃないことを言いつつ、しっかりとプレッシャーまで与えてくる。

 確かにレベルで見れば黒雪姫とユニコに継ぐレベル8。序列的にはまだフーコには及ばないから4番目ということになるが、セイリュウとは初対面になるので、過度な期待はやめていただきたいと急に思ってしまう。

 

 到着するまでやることもないのでそうした雑談で時間潰しをしていたら、トレーラーも裏道から靖国通りに合流し、新宿駅北側の大ガードにさしかかる。

 山手線の高架を潜るアンダーパスを通ろうと進路を取っていたトレーラーだったが、遠目に見たアンダーパスの高さ的に結構ギリギリじゃね? と思わなくもない。

 

『……あ、やべ』

 

 トレーラーでギリギリだからその上にいるオレらってどうなるんだろうなぁと考えていたら、コクピットにあるらしいスピーカー越しにユニコの何かに気づいた風な声が上がり、何事かと黒雪姫が問えば、予想通りトレーラーの上のテルヨシ達が潜れそうにないっぽいと報告。

 

「こ、こら、そうと気づいたなら停まればいいだろう!」

 

『いやー、それがさぁ、ブレーキついてねーんだよなこのクルマ。つーわけで、ロータス、任せた。通信終わり』

 

 なんとも無責任な報告には一同が呆れてしまったが、ブレーキがないのではどのみちどうにかしなきゃならない。

 なのでどうしようかと適任を探すアインコンタクトが交わされ、ユリに1度は視線が集まるが、ユリでは最悪、上の線路ごと破壊して生き埋めにされる可能性があるから却下。

 次にサアヤに視線がいくものの、こっちもこっちで加減が難しいし範囲も調整しにくいということで却下。

 そんな中で任せろと珍しく名乗りを上げたタクムが、さすがの先見性で溜めていた必殺技ゲージを使って高架下の鉄骨に《ライトニング・シアン・スパイク》を撃ち込んで出口まで大穴を穿とうとした。

 が、脆い鉄骨に加えて必殺技の威力が貫通特化していたせいで威力のほとんどが一点から抜けていってしまい、直径30cm程度の穴を穿つに留まってしまう。

 その結果にうなだれてしまったタクムを労いつつ、レギマスとしてバトンを貰った黒雪姫は、ゆらりと右足を持ち上げて目の前の鉄骨に対して水平に構えると、秒間100発以上にもなる連撃系必殺技《デス・バイ・バラージング》で抉り取りながら高架下を通過。

 黒雪姫の作った穴に入る形で落下を免れた一同はホッと安堵しつつも、謡によるボソッとささやかれた黒雪姫の蹴り技のえげつなさに相づちを打つのだった。

 

 それから話が今のやり取りからアバターの能力の伸ばし方についてになって、万能型(オールラウンダー)特化型(スペシャリスト)の長きに渡る最強議論に未だ結論が出ていないみたいな話が出てくる。

 ネガビュもプロミも基本方針で『悩んだら特化』というらしさの見える形がまた面白いが、そういうのはレギオン単位で決まるものなのかと思って《メテオライト》も基本方針くらいは掲げておくかとサアヤとちょっと相談。

 

「だがまぁ、この話をすると必ずと言っていいほどに憎たらしいアイツの名前が出てくるものだよ」

 

「そうなのよねぇ。ある意味ではこの議論に対して単体で唯一の『どっちも』なんて答えを見出だしたと言うべきかしら」

 

「やめて。その名前は私が聞きたくない」

 

「ふむ、付き合いならガストが一番あろうに」

 

『おっ? それってもしかして……』

 

 話は特化させすぎてユリや《アイス・イーター》といったアバターになると極端に弱い条件も出てきてどうしようもない場面も出てくることについて触れられ、それも努力次第ではいくらか克服できることをフーコが謡のアバターを証拠にして力説。

 テルヨシがどちらかというと6:4くらいの割合で万能型に寄ってるところがあるビルドなのは、そうした極端に弱い場面を嫌ってのことなので、マリアやユリのような純粋な特化は尊敬に値したりもする。

 が、それらの話を経て嫌そうに声をあげた黒雪姫にフーコとサアヤ、ユリ、ユニコまでもが同じ人物を思い浮かべたのか、テルヨシ含む他の人はそんなバーストリンカーがいるのかと興味津々。

 

「どっちもとか、欲張りなバーストリンカーもいたもんだねぇ」

 

 なまじ古参ばかりが納得する話だから声をあげにくいだろうとテルヨシが代表するように口を開いたら、なんか一斉にジト目がテルヨシに向けられて何事かと思う。

 しかしよく考えればそんなどっちもなんてことが理屈では不可能なことをやってしまえるバーストリンカーがテルヨシの物凄く近くにいた。

 

「……あー、もしかしてそれって《レイズン・モビール》のこと?」

 

 と、思い至ったからには口にしないわけにはいかないので、恐る恐る尋ねてみれば、ジト目を向けてきた一同からようやくわかったかといった深いふかーい頷きが返ってくるのだった。

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