《東京ミッドタウン・タワー》攻略作戦の前に旧東京タワーの天辺にあるフーコのプレイヤーホーム《楓風庵》で休息を取ることとなったテルヨシ達は、アホみたいに労力を使って登ったテルヨシを除いて全員が無事に登頂。
どうせ休息を取るために来たから疲れるのは構わないのだが、自分だけがこうも疲労度で勝ると素直にハルユキに運んでもらった方が良かったと、後悔先に立たずなことを思いながらも、アホみたいな方法で登って呆れる女性陣と違って、尊敬の眼差しで見るハルユキとタクムには口が裂けても言えるはずもなかった。
旧東京タワーの天辺は《黄昏》ステージでも青々とした芝生に覆われた庭園で、中央には小さな泉とその中心に離脱用のポータルがあった。
こんなところから正規離脱できるバーストリンカーなんて限られてるだろうなぁと思いつつ、うっかりそこに入って振り出しに戻る。なーんてバカなことにならないように一応は注意しつつ、フーコがプレイヤーホームの鍵をストレージから出してそこにあるだろう場所に近づくと、白壁に緑屋根の可愛らしいコテージが出現。
直径20mほどの円形の塔の上に建つ楓風庵は普通の一軒家くらいの大きさはあるので、一応は全員が入ることはできそうだが、多少は窮屈な雑魚寝は仕方ないかなといった割とギリギリな感じ。
「……これは仕方ないよねぇ」
「はい女性陣ー。テルが雑魚寝にかこつけてみんなにセクハラしようとしてまーす」
「セクハラは犯罪!」
「まだ何もしてませんけど!?」
そうした考察を顎に手を当てて考えていたら、完全に思考を読んだサアヤが速攻でやりそうなことを潰しにかかってきて、即座にマリアも批判してくる。
そうなってしまうと楓風庵に入ろうとしていた女性陣の冷ややかな視線がテルヨシへとグサグサと突き刺さり、何やら集まってヒソヒソ話まで発展。
何を決議してるのかなんとなくわかっていながら、下手に何か言って印象を悪くするのは避けるべきと本能的に判断。
「すまないテル。私達も苦労して登ってきたお前を労ってやりたかったが、生憎と楓風庵で全員が休むためにはスペースが確保できなさそうでな。邪な感情を持つお前が屋根の上で休んでくれれば安泰なのだが……」
「すまないとかこれっぽっちも思ってない感じが溢れまくりの感情のなさが怖いんですけど? 姫の後ろのお嬢様方なんてクスクス笑ってるのが雰囲気でわかるんですけど?」
その決議の結果を黒雪姫が何の感情の起伏もなしで告げてテルヨシの寝床が決定されてしまい、すでに楓風庵に入りかけていた他の女性陣も完全なる無感情の謝罪の雰囲気でいた。
どうやってもここから楓風庵の中で休むには泣き落とししかないとわかりきってる状況だが、割とマジで疲労感が出てきたテルヨシもこれ以上のテンション維持も反論するエネルギーも出したくない感情が上回る。
なのでテルヨシの反応を楽しみたかった黒雪姫達を余所にため息を吐いてから《テイル・ウィップ》を引っかけて屋根の上に登り、緩やかな傾斜の上に寝転んでふて寝を決め込んだ。
「どうやらあれも思った以上に疲れていたようだ。まだ弄り足りないだろうが皆も適当に休もう。誰がどこで寝るかは公平な話し合いが必要なようだが……と言ってるそばから赤いの! ハルユキ君の隣に移動するな!」
そこからは黒雪姫達も本格的に休息モードに移行して、寝床争奪戦らしき言い争いが少しだけ勃発していたが、それも終わればこれだけの大人数にも関わらず楓風庵の中は静かなもので、静寂に包まれた旧東京タワーの天辺で時おり吹く風を受けながらテルヨシも暫しの眠りに就いていった。
──コンコンッ。
黄昏ステージの景色は時間経過でも変化はないので、起きてすぐはどのくらいの眠りであったか定かではないが、累計ダイブ時間から逆算することはできる。
下から屋根を軽くノックする音で目覚めたテルヨシは、そうして眠ってから5時間程度が過ぎていることを認識して、次いでノックがした足下を見てみる。
するとまだみんなが寝ているからか声は出さないものの、わずかに見える右手がひらひらと動かされて「上げて」と訴えてきていたので、テイル・ウィップを伸ばしてその人物を拾い上げて隣に座らせる。
「割とぐっすり眠ってた感じね。もう少しで声出しそうになってた」
「何回かやってたのね。気づかなくてごめん」
まぁセクハラ未遂のテルヨシに自分から近づこうなんて人はサアヤくらいのものだったが、実際に隣に座られると安心してしまうのは、ああいう未遂事件があってもサアヤが嫌わないでくれてるとわかったからか。
サアヤもなんとなく嬉しそうな雰囲気が見てとれるので肩でも抱き寄せてみようかなと思って手を伸ばしかける。
「まぁ私もあれが起きる気配で起きたところがあるしね」
しかしその前に言葉を発したサアヤは、言いながら塔の西側。
夕日を正面に据えるベンチを指差すのでそちらを見ると、そのベンチに座って和やかの雰囲気で話し合ってる黒雪姫とハルユキを発見。
あれということはサアヤが言ってるのは黒雪姫の方で、ハルユキはサアヤと同じで後から気づいて近寄った感じだろうが、向こうはこっちにも気づいた上で話をしているようなので、あんまりラブラブして他の人に弄られる元を作るのはサアヤにも悪いかと抱き寄せるのは中止。
「そういえば《ISSキット》の進展はあったの?」
「特にないかなぁ。ライダーのアビリティによって作られてることだけは疑いようがないってくらいで、実際に誰がどうしてってところはさっぱり」
話し声は抑えれば向こうにも聞こえなくはできるが、やはり良い雰囲気というのは漂う空気で察せるところがあるので、そこも抑える意味で少し真面目な話から切り出してみる。
するとストレージから渡していたISSキットを取り出して上に掲げ、そこに刻まれた交差する拳銃の紋章を見ながら返答。
「でもいいわよ。上手くいけば今回の作戦でその謎も解けるかもしれないし、もしもライダーが何かの拍子で現れるようなことがあっても、私達がやることは変わらない」
「その過程でライダーと戦うことになっても?」
「うん…………ううん。やっぱり嘘ついた。たぶん、すぐには切り替えられないと思う。きっと色んな感情が渦巻いて押し寄せてきて、何をすればいいのかわからなくなるかもしれない」
「それだけライダーと積み上げてきた歴史や思い出があるんだもんね。仕方ないよ」
珍しく弱音みたいなものを吐き出したサアヤに対して、そうなってしまうことを仕方ないと言いながらも、そこまでサアヤの心を乱してしまうライダーに少しだけ嫉妬に似た感情も抱いてしまう。
プロミの創設メンバーで黎明期からの付き合いなのだから、たかだか2年ちょっとの自分とは積み重ねた時間さえも段違いなのは言うまでもないが、密度では負けてないつもりではいたのだ。
だからライダーへの対抗心も含めてサアヤに「オレがついてる」的なことを続けて言おうとしたのだが、そんなことを言って実際にそんな状況が訪れてしまった時、サアヤをちゃんと支えてあげられるか確たる自信がなかった。
そうした自信のなさが情けなく思えて言葉を詰まらせていたら、スッとサアヤがテルヨシの右手に左手を絡めて握ってきて、視線は前のまま口を開く。
「だから、もしも私が迷ったりしたら、テルが私を引っ張って。私達がしていることが正しい。ライダーの方が間違ってるって、100%の自信で私を引っ張ってちょうだい」
内心を読まれたわけではなかったのだろうが、自分が言うべきでも躊躇ったことを、サアヤからしてほしいとお願いされて少し驚く。
サアヤは良くも悪くも自己完結タイプの他人の意見に左右されにくい性格をしていて、第2世代という微妙な時期のバーストリンカーなこともあって人を頼ることに積極的ではない。
それは簡単に人を信用しない疑心暗鬼な部分もあるが、環境がそうさせてしまったのなら仕方ないし、自力で考える力が備わった要因でもあるから全てが悪いことではないかもしれない。
そのサアヤがテルヨシのことを信用して頼ってくれたのだ。意味は十分に汲み取れる。
「…………正しさなんて曖昧なものは結局、法とか誰を信じるかとかになってくるんだよね。だからオレが正しさを説いてもサアヤがどっちを信じるかって話になっちゃう」
「……そっか」
「それでもオレはそういう状況になったら、自分の精一杯の気持ちをサアヤにぶつけるよ。それがサアヤの心に響いてくれたら良いと思う」
「……いつもなら自信満々に『オレを信じろ』とか言うくせに、たまにクソ真面目なこと言われると困惑しちゃうわ」
誰かを信じ抜くというのはそれ自体が凄いことだが、それも諸刃の剣であることをテルヨシは知っている。
信じることは大事だが、それがいきすぎて盲信的な思考に陥ってしまえば、今までサアヤが培ってきた自分で考える力を失うことになりかねない。
だからここでサアヤが言うように「任せろ!」といった言葉で安心させてしまえば、テルヨシが間違った判断をした時にサアヤまで巻き込んでしまう可能性がある。
寄り添い合うのと依存は似て非なるものだが、その境界はハッキリと見えるわけでもない。
それでもサアヤがテルヨシに依存してしまうことだけはあってはならないと考えたからこそ、テルヨシの返事は最終的な判断をサアヤに委ねるものとした。
きっとサアヤの本心は胸を張って任せろと言ってもらいたかったのだろう。
サアヤだって中身はか弱い女の子なのだから男にリードされたい本能は必ずあるし、気持ちの上下だって若いゆえに幅が大きいものだ。
「でもまぁ、たまーに頼り甲斐があるくらいの方が、テルは良いのかもね。割合的にも夫婦で主導権を握ってるのは妻の方が多いって言うし、母性を駆り立てる部分も必要か」
「私が支えてやらなきゃーってやつね。サアヤはあそこの黒い方と違って家事スキル高いから、結婚生活は甘えちゃいそうで困る」
「結婚生活って……話が飛びすぎじゃない?」
「夫婦の云々を持ち出したのはサアヤの方じゃん。それともサアヤは将来オレと結婚する気がこれっぽっちもないと?」
「そりゃあ……このまま順調に付き合っていって、どっちかが経済的に安定するなら考えるけど……って、中学生に結婚云々を語らせるな」
「でもオレは中学卒業からは本格的にミャアの店で働く予定だから、オレ的にはそう遠くない話なんですよ」
「はっ? アンタ高校行かないの? 雇用の制度が変わったとはいえ、最終学歴が中卒ってやっぱり見る人からすればあれよ?」
どうなるかわからない状況で迷いが生じた際にどうするかは決めたらしいサアヤが、堅苦しい話を嫌ってか割と脱線気味のワードを混ぜて口を開くと、狙い通りにワードに食いついたテルヨシといつもの夫婦漫才を披露。
この過程で今後の進路について初めて話したら、やっぱり高校に行かない選択は驚きだったらしい。
こういう話は今後の交際にも影響するものだが、客観的にはまだまだ批判もある雇用制度の改正で可能な選択にも否定してくるわけでもなく受け入れたサアヤは、順番的には自分も話さないとと思ったか漠然とした進路を話してくれる。
「まぁアンタがミャアやアキのお母さんに見放されない限りは路頭に迷うことがないと思うしいいけど。私はそんな大胆な決断はできないし、周りと同じで高校、大学って通うと思う。その過程でやりたいことを見つけられなかったら、その……専業主婦でもいい?」
「それでサアヤが納得できるならいいけど、やりたいことを我慢して主婦に落ち着くのだけはオレも嫌だよ」
「それはこっちの台詞なんだけど。アンタがそうやって早くに働くことを選択してるのって、マリアのためでもあるんでしょ? マリアを預かってる事情は聞いたけど、やっぱり学生と社会人って立場の違いは大きいもんね」
「否定はしないよ。でもミャアの店で働くのはやりたいことを諦めたからじゃないよ。これでも薫さんにはミャアと同じくらい目をかけてもらってますからな。作った洋菓子が美味しいって言ってもらえるのは素直に嬉しいし、やり甲斐も感じてる。そして将来の店長候補ですぞ?」
「パティシエールって定年退職とかないから、アンタがミャアの店の店長になるとか何十年後の話よ」
「顎に立派な髭をたくわえた頃になれるんじゃないかなぁ……」
「私、髭は苦手だから伸ばすのはやめてほしいかも。やりたいなら止めはしないけど」
そんな未来予想図を描きながら、真面目な話からいつしか他愛ない雑談へと変わっていった2人の会話は、楓風庵で寝ていたみんなが起きてくるまで続き、そうして将来のことを話したことで、なおさら今のサアヤとの関係を終わらせたくないと決意することができた。
それはイコール。ブレイン・バーストを何がなんでもアンインストールしてやらない覚悟と、サアヤを守り抜く覚悟をしたということだ。
全員が起きてきて、泉のほとりに集まって腰を下ろし準備は万端といった状況になると、東京ミッドタウン・タワーのある方向に背を向けて立った黒雪姫が皆に向けて作戦の前の会議を始める旨を伝える。
「いま、ちょうど10時間が経過したところだ。残念ながら……というべきか、変遷は発生しなかった。しばらくはこの黄昏ステージが続くだろう」
それに当たって現状の確認のためにあれこれと話す黒雪姫は、神聖系ステージではメタトロンに若干のステータス補正がプラスされてしまう事実と、そもそも補正があろうとこちらの攻撃が《地獄》ステージ以外では通らないことを話す。
なのであくまでも目的がISSキット本体の破壊であることと、それが成せるならメタトロンは最悪無視しても構わないと方針を出す。
当然、事前にそういうことに決まっていたので方針に関して異論がある者はいなかったが、やはり言うべきことは言うタクムが「タワー内部に入れば攻撃が止まるのか」と疑問を口にする。
もちろん前例がないことなので黒雪姫もそこに関しては一抹の不安を拭い去れず言葉を濁しながら、実際にその攻撃を見たハルユキに状況分析を尋ねる。
それによる分析では半径200m以内に入ったデュエルアバターが即座に狙われるだろうとのことで、適当なオブジェクトをテリトリーに投げ込んでレーザーを無駄撃ちさせ、エネルギー切れを狙う作戦も出来なさそうだった。
またメタトロンの反応からレーザー発射までのタイムラグが2秒程度しかないこともあり、その間でタワー内部まで全員が走り抜けるのはまず無理だと判断。
不安要素がある中でやるしかない作戦は大小違いはあれど緊張感が漂い、話だけなら本当にメタトロンに対してはハルユキの《オプティカル・コンダクション》頼りになりそうだと思っていたら、そのハルユキが自ら立ち上がって黒雪姫と一同の間に踏み出して口を開く。
「大丈夫です……みんながタワーに辿り着くまで、僕がちゃんとメタトロンのレーザーを防ぎますから」
ハルユキが自分からこういうことを言うのは性格的にもかなり珍しいことだ。
だがハルユキも自分の役目の重要性をちゃんと理解し、自分が弱音を吐いていい場面ではないことを察して、自らに発破をかけたのだろう。
期待を背負うというのはなかなかに重圧がのしかかるが、そうしてハルユキが覚悟を示せば、謡の「よろしくお願いするのです、クーさん」の発言を皮切りに茶化すようなことを言わずに全員が何かしらの声援を贈りハルユキを鼓舞した。
そうしてハルユキが頑張ってくれるなら、自分達もまた己に与えられた役目を絶対に全うしてやるといった覚悟と一緒に。
「セイリュウ戦に続いて、またしても大役を担わせてしまうことになるが……しかしクロウ、キミの翼こそがネガ・ネビュラスと、そして加速世界の未来を切り拓いていくのだと私は信じている。ISSキット本体を破壊し、世界を覆わんとしている闇を払い……そして我々の大切な友を救うために、キミの力を貸してくれ」
「よくもまぁそんな言葉がスラスラ出てくるもんね。ロータスって割とファンタジーもの好きでしょ」
「語彙力アピールですね、わかります」
「サアヤさんもテルも言わなくてもいいこと言ってる」
その鼓舞を締めくくる黒雪姫のカッコ良い言い回しは相変わらずだが、なんとなく流れ的に緊張を和らげておこうかとアイコンタクトからテルヨシとサアヤがハルユキの返事を待たずに割り込み、マリアには呆れ気味にツッコまれて周囲から小さな笑いが起こる。
その笑いのネタになった黒雪姫はカッコ良く締めにいったからか不満そうな雰囲気を出すが、その笑いが収まってからハルユキもちゃんと黒雪姫に向き合って言葉を紡ぐ。
「僕の力はもともとあなたのものです、黒の王。一言命じてくれれば、僕はどこまでも飛んでみせます」
その言葉を受けた黒雪姫は、まだ何かやろうとしているのか、1歩ハルユキへと歩み寄ってから、右手の剣を前へと出してその手に穏やかな過剰光を纏ってみせると、1本の剣だった右手の先がハッキリとした五指へと変化してみせる。
攻撃目的ではない心意ながら、かつて握手もまともにできないことを嘆いていた黒雪姫がこの心意を生み出した意味を汲み取ることは簡単だが、こうして形にすることがどれだけ困難なことだったかは計り知れない。
「戦おう、共に」
その五指へと変化した右手をハルユキへと差し出した黒雪姫は、繋がることを拒絶していたその手でガッチリと握手を交わし、次いで残りのメンバーとも順番に握手を交わしていった。
そして最後に回されたテルヨシにも手を差し伸べた黒雪姫に手を伸ばして握ろうとした瞬間。
突如としてキンッ! という鋭い音と共に黒雪姫の右手が元の剣へと戻り、握ろうとしていたテルヨシの右手が触れる0.5秒前の出来事に慌てて手を引き戻す。
「あっぶな! 作戦前に部位欠損させないでくれる!?」
「ン、すまない。この心意もまだ持続時間が安定しなくてな。さすがに30秒も経つと限界だったようだ。決して故意ではない」
「どっちか判断がつかない感じで言わないでくれますかね。怒るに怒れない」
「だからわざとではないと言っている。お前だって貴重な戦力なのだから、こんなどうでもいいところで部位欠損させて我々に得があるのか?」
「いや、ないけど」
「だいたい、いつもギャグ担当に回るからまともな時にも弄られていると錯覚してしまうのだ。つまりお前が悪い」
「何でだよ!」
一瞬、確実に狙っただろと思ったのだが、割とマジで限界で戻ってしまったのが声色でわかると強く言えず、しかし普段が普段だから疑心暗鬼になってしまう。
そのせいで黒雪姫も開き直ってお笑い担当のテルヨシが悪いと逆ギレし意味不明なやり取りになるが、梅郷中の3年コンビの漫才には後輩達がまたやってるとクスクス笑い、釣られて他のみんなも「ナイスコンビ」と茶化してきた。
意図しない笑いには当人達が冷める法則で口喧嘩をやめた2人は、こんな時でも喧嘩しちゃう自分を反省しつつ、締まらない感じの雰囲気を引き締めるためになんとか真面目な言葉を引き出す。
「まぁあれだよあれ。笑うってのは健康にも良いわけで、これでみんなの体調も万全だ!」
「それは苦しいが……皆の緊張が適度に解けたならそれに越したことはない。ではスパッと解決して楽しい文化祭に戻ろうではないか」
こういう時に語彙力が欲しいー!
とかなんとか思いながらフォローに回った黒雪姫の言葉に一同が「おー!」と唱和し、ようやく東京ミッドタウン・タワー攻略作戦の幕が開けることとなった。