アクセル・ワールド~蒼き閃光Ⅱ~   作:ダブルマジック

49 / 109
Acceleration Second49

 ミッドタウン・タワーが、消えていく。

 いや、実際に消えているわけではなく、テルヨシ達から見るミッドタウン・タワーの前に、徐々に何かが姿を現してきたのだ。

 ハルユキのレーザーの反射と《ボッシュ・ルーレット》の超攻撃を受けたメタトロンが《地獄》ステージ以外でダメージを受けて1度は沈黙。

 しかしレーザーを撃たなくなったメタトロンの周囲からぴしぴし、きしきしと何かが軋むような音がしたかと思えば、今までメタトロンが覆っていた透過の装甲が剥げ落ちてその姿を現した。

 1枚だけでミッドタウン・タワーの横幅ほどもある巨大で複雑な形をした翼。

 それが左右で2枚ずつ存在し、その4枚の翼は無数のリングを連ならせたような胴長な胴体と繋がっていて、胴体下部には多足類タイプの脚が10本以上も生えている。

 そしてその胴体の上には直径10mに迫るほどの巨大な球体の頭があり、正面の中心に集まるような放射状の起伏がデザインされていて、その中心の窪みは今は何もないが、おそらくそこがハルユキとルーレットが撃ち抜いたレーザーを放つ機能が備わっていた部分。

 頭の上にはメタトロンの全体のデザインとは少し違ったプラチナシルバーの王冠に見えるリングが載っていて、球体上部の中央からはピンと1つの突起物が伸びていた。

 

「間違いない。あれこそが、神獣級エネミー《大天使メタトロン》だ」

 

 ようやくその全容が露となったメタトロンを速攻で分析にかかったテルヨシではあったが、実物を見たことのある黒雪姫が間違いなくこれがメタトロンであると断言しつつ、これからこれを倒すことも告げてマゼンタにはさっきまでの勝負を一旦預けたいと申し出る。

 このメタトロンが倒されればミッドタウン・タワーを守る存在は消え、ISSキットの本体の破壊が近づくので、却下された上で不意打ちもあり得るかと思えた。

 が、大半の仲間も行動不能にされて戦力的にも勝つのが難しいと判断したのか、逃げることもできる状況であえてメタトロンを倒そうとするテルヨシ達の邪魔をするようなこともせずに、黒雪姫の申し出に了承し静かにアボカドと一緒に北へ向けて去っていってしまった。

 マゼンタが何を考えてそうした答えを出したのか不明だが、メタトロンを相手にしながらマゼンタ達までとなると散漫な意識で倒すどころではなかっただろうから正直、助かったと言うべきか。

 何はともあれマゼンタ達による妨害はなくなったので改めてメタトロンへと向き直れば、そのメタトロンもレーザーの機能を破壊されたスタンから回復したらしく、明確な敵意を以てテルヨシ達を見下ろし攻撃の意思をビシビシと伝えてくる。

 

「主たる武器であるレーザーを封じたと言っても、メタトロンが恐るべき敵であることに変わりはない。だが、倒さねばならん。絶対に。クロウがあれほどの決意と覚悟で大役を果たした今、我々がそれに応えられねば……」

 

 その攻撃が本格化する前に黒雪姫が皆の士気を上げる言葉をかけようと意気込みを語る。

 こういうことを言わせたら様になるのは黒雪姫の凄いところなので茶々を入れずに「おー!」くらいは合わせておこうと待っていたら、全員が黒雪姫に視線を送る中でただ1人、全く空気も読まずに雄叫びを上げる人物が。

 

「うおらぁぁあああ!! くたばれデカブツー!!」

 

 もう仕方ないとはいえ、その雄叫びの後には、叫んだ本人であるルーレットによる《エリーニュス》の一撃がメタトロンへと放たれてしまい、決戦の火蓋はこっちの意図としない形で切って落とされた。

 

「……あれは何なのだ」

 

「ルールーはルールーよ。敵対しないだけマシと思おう」

 

「あたしも実際に見んのは初めてだが、ありゃマジもんのアホだぜ……でもよ、啖呵の切り方はシンプルで好感持てんぜ!」

 

「あっ! この赤いの! 今回は調子が狂うなもう! では行くぞ!」

 

 自分の役割をかっさらわれて不機嫌そうな黒雪姫にルーレットのアホさを説明したところでため息しか出ないが、そのルーレットに続いてユニコも動き始めてしまえばもうどうにでもなれな感じに。

 

 ルーレットが盛大に先制攻撃はしてくれたので、その勢いを殺さないように黒雪姫の合図で散開した一同は、大規模集団戦用の連携に切り替えて各々の役割を最大限果たせるポジションに着く。

 しかし今回は連携が取れないルーレットという爆弾を抱えているため、近接主体となるテルヨシや黒雪姫達は常にルーレットの狙いを確認しながら攻撃をしなければならない。

 本当にもうどうしようもなく面倒臭い存在なのだが、テルヨシがした約束ではルーレットのやることの邪魔をしないとしてしまったので、こっちから「合わせろ」とは言えないのだ。

 

「よっしゃああ! 《レイズ》!!」

 

 連携は取れないアホではあるが、すでにこのパーティーの中で最大火力を有しているため、近接でバシバシと2、3発テルヨシが当てている間にルーレットはエリーニュスの一撃でその5倍以上のダメージを与えてくれる。

 ダメージソースとしてはもはや不可欠レベルのルーレットにそれを差し引いても文句は言えなかったので、せめてフレンドリー・ファイア──味方に攻撃したりされることだ──は避けてルーレットにターゲットがいかないようダメージを分散していく戦術が確立する。

 その甲斐あって順調にゲージを溜められたルーレットがもう何度目かわからないレイズによる強化をしてエリーニュスがストレージへと戻され、次の強化外装にチェンジ。

 巨大だったエリーニュスに代わって出てきたのは、意外にも初期から変化が見られない丸みを帯びたフォルムのハンドガン。

 見た目上の変化がないそれには初見の黒雪姫などが戸惑う雰囲気を見せたが、ルーレットと一緒に遠隔攻撃していたマリアがそれを見てテルヨシ達へと声を張り上げる。

 

「逃げてー!! 《アストライオス》ぅうう!!」

 

「まっじかよおいおい!」

 

「ちょっと! まだ撃たないで!! 全員後退こうたーい!!」

 

 ルーレットにはハンドガンタイプの強化外装が3つあるので遠目からはわかりづらいが、マリアがちゃんと形状を把握して理解があったのでその声に反応して行動開始。

 というよりもルーレットの強化外装の中で特に危険とされる強化外装だったのでマジで焦ったテルヨシとサアヤが黒雪姫達に指示を飛ばして一目散にメタトロンから離れると、その慌てように恐怖した一同も攻撃をやめて散開。可能な限りメタトロンから距離を取る。

 その後退を待つなどあり得ないので、最中にそのハンドガンを空へと向けたルーレットは、派手さも全くなくそのまま1発の弾丸を空へと向けて発射。

 メタトロンを狙ったわけでもないその弾丸は強烈な赤い光を放ちながら上空100mほどの高さに到達すると、光はより強烈に輝いて落下を始めるよりも早く爆発して弾けてしまう。

 

「なっ!?」

 

「あらあら……」

 

 その現象は一見すればただの花火に近いものだが、ルーレットのアストライオスはここからが本番。

 おそらく初見であろう黒雪姫とフーコが近くで驚きの声をあげたのは、その弾けた弾丸の欠片1つ1つが急激に肥大化し直径5mほどの巨岩となって降り注いできたからだ。

 その数およそ30。テルヨシの知る中でも最大最多のアストライオスの『流星弾丸』は、暴れるメタトロンへと一直線に降り注いでいくが、どうしてもいくらかはその周囲に分散し後退中のテルヨシ達にも当たるかもな軌道。

 

「もうやだ災害よこれ!」

 

「弱音吐いてる暇あるなら走る!」

 

 当たったらデュエルアバターなら100%即死する速度と大きさと重量を1つ1つが秘めるアストライオスの弾丸は、動きが鈍重なメタトロンへ次々と突き刺さって、ドゴォオオ! ドゴォオオ! と重々しい衝突音と共に弾けて爆発。

 メタトロンもアストライオスの流星弾丸には少しではあるが怯みが発生し大きな隙をもたらすが、生憎と近接チームはその流星弾丸のせいで攻撃をキャンセルせざるを得なく追撃はできない。

 それどころか現在進行形でその流星弾丸が地面に落ちて爆発した際のスプラッシュダメージを受けるか受けないかの瀬戸際だった。

 そんなルーレットのデタラメな火力に泣きたくなるのも仕方ないが、なんとかギリギリのところで被害は免れて流星弾丸が全て爆発し終えた惨劇の現場を遠目に確認しながら、近くに逃げてきたサアヤと合流。

 あまり長くメタトロンへの攻撃をしないと依然として頑張っている遠隔攻撃チームにターゲットが向いて戦線が崩されてしまうので戻りたいのは山々なのだが、今の攻撃でルーレットの必殺技ゲージが満タンになったような気がして、2発目の流星弾丸か必殺技のどちらを使うのか見極めてから動こうとする。

 アストライオスはとにかく強力だがこっちの戦線も崩壊するので早くストレージに戻ってほしいと両手を組んでお祈り。次弾発射まではインターバルもあるのでもどかしい。

 戦闘開始から約10分でメタトロンの残りのHPゲージを4段あるうちの2段目半分まで削れたので、神獣級エネミーを相手にこの人数で考えれば圧倒的に早い。早すぎるくらいだ。

 それほどルーレットの火力がずば抜けているのだが、こっちと連携できればもっと効率が上がりそうなのが本当に惜しい。

 

「《バースト・ショット》ぉおお!!」

 

 テルヨシの祈りが通じたのか、ルーレットの次の攻撃はインターバルを待たずしてアストライオスによる必殺技が放たれて、今度はメタトロンに直接向けられた銃口から飛び出したのは、直径10mに及ぶ巨岩の爆弾。

 ユリも顔負けな特大の爆弾による爆撃はすぐに訪れて、壮絶な爆発の威力によってそれよりも巨体のメタトロンの体が仰け反りながらわずかに後退。

 ここまでで一番の硬直状態に陥ってくれたため、これを好機とテルヨシ達もまたメタトロンへと殺到して攻撃を仕掛けていった。

 

 アストライオスの次の強化外装がハンドガンタイプの《アネモイ》になってくれたので、ルーレットによる攻撃の規模が一気に縮小された──威力は落ちてないが──おかげでテルヨシ達も攻撃へのリソースが増えて効率が上がる。

 メタトロンの攻撃は一撃が重く当たれば相当なダメージは覚悟しなければならないが、戦闘経験者の攻撃予測の声に耳を傾けたり、持ち味の観察眼で今のところ全員に直撃はないが、1つの油断が戦局を変える緊張感は心臓に悪い。

 とはいえ今後、近い未来にはこのメタトロンよりも強大な《四神》に挑もうとしているのだから、こんなところで寿命を縮めている場合ではない。

 

「あの、テイルさん!」

 

 そうやって勝手に士気を上げながら攻撃していたテルヨシの元にハルユキが飛んできて、何か用なのかメタトロンの動きに注意しながら話しかけてくる。

 

「何か緊急?」

 

「えっと、どうやらメタトロンの弱点があの頭の王冠みたいで、あれを中心に攻撃したいんですけど」

 

 現在、メタトロンの足下にいるのでハルユキの言う頭の王冠は見えづらいが、デザインに違和感があったものなので覚えていて、どういうものかは記憶にあった。

 

「あれね、たぶんだけどメタトロンをテイムしてるアイテムかもしれない。だから弱点っていうか、もしかしたらあれを壊せばメタトロンを自由にできるかもな」

 

「あっ! じゃ、じゃあ今すぐにでもみんなに」

 

「いや、仮にテイム状態が解けてもオレ達への敵性が解除されるとは限らない。出来るなら倒すのと同時くらいに破壊できるのが望ましい、かもしれない。弱点がどの程度で効果があるかで判断して適時で有効打を与えるのがいいか……」

 

「確かにまだ弱点のほどもわかりませんが、それよりもちょっと困るのは、ルーレットさんのDPS(Damege Per Sesond)だとどっちかに片寄ると絶対にそっちの方が大きく削れてしまって」

 

「にゃるほど」

 

 それで何故テルヨシの元へとやって来たのかよくわからなかったが、いざ弱点を攻撃するとなってもルーレットのDPS。秒単位でのダメージ効率は他の追随を許さないほどなので、どうしてもこっちがやろうとしてることにルーレットが合わせなきゃならない。

 だがそうなるとルーレットをコントロールしないといけないが、それはハルユキには不可能なこととわかりきっていたから、それをどうにかできるかもしれないテルヨシを頼ってきたのだ。

 自分でもどうにもできなさそうに思えて苦笑してしまうテルヨシだったが、なんとなくあのテイム用のアイテムは壊しておかないといけない気がして、撃破はもちろんだがそちらもやるべきと判断。

 

「……よし、やるだけやるか。ルーレットのところまで運んでくれるか」

 

「はいッ!」

 

 あまり直感とかは持ち出すべきではないのだが、それが悪い予感なら無視して状況を悪化させる方が最悪。

 ましてや《加速研究会》が取りつけたアイテムなら、壊しておくことに越したことはない。

 それができるかどうかがルーレットに左右されるとあっては話だけでもしなきゃならない。

 通じるかどうかはさておき、今もばかすかと撃ちまくっているルーレットに近づくためにハルユキの手を取って運んでもらった。

 

 アネモイで射程も縮んでいるのに果敢に前線へと出て撃ちまくるルーレットは、メタトロンに一番のダメージが出る徹甲榴弾《ボレアス》を撃ち込んで、弾頭をメタトロンに食い込ませて遅延爆発によって削っていた。

 さすがにレイズによる強化もかなり進んでゲージの溜まりが遅そうだが、すでに通常攻撃で全員の必殺技以上の威力が出てるから過剰なほどなので気にしない方向で、とにかく当たるところに当ててるルーレットの後方から近づき話しかける。

 

「ちょっとルールー! ルールーに集中的に狙ってほしい場所があるんだけど!」

 

「ああ!? いま忙しい!」

 

「やってくれたらもうちょっと早くメタトロンを倒せるかもしれないんだけど!」

 

「ああもう! どこだよ!」

 

 ボレアスの爆発範囲のギリギリ外まで近づいて撃ってるせいでボッカンボッカンうるさい中を声を張り上げてお願いしてみるが、やはり言うことを素直には聞いてくれそうにない。

 それでも効率の話をしたら場所だけでも尋ねてきたので頭の王冠だと言えば「高い! アネモイじゃ狙えない!」と却下されてしまう。

 

「じゃあ次のレイズで出てきた強化外装で決めよう! 頭の王冠が狙えたら狙って。狙えないならそのままでいいから!」

 

「わかったから油売ってんな! いい加減に撃つぞ!」

 

 ルーレットをコントロールできないならこっちが合わせてやればいいかと開き直りからのどっちに転んでもいい提案をして、それに了承したようなしてないようなな返事から銃口を向けられてしまう。

 確かに話してる間に攻撃くらいしろと思うルーレットは正しいので反論できなかったため、ハルユキと一緒にすぐに逃げるように移動をして、メタトロンから50mの距離から攻撃していたユニコ達に近づいて作戦会議。

 

『あ? 頭の王冠だぁ? ホントに効くのかよ』

 

「私はクーさん達を信じるのです!」

 

「とりあえず1発集中攻撃だね!」

 

 ルーレットの攻撃が未だアネモイなので、今のうちにハルユキ情報の弱点が本当に有効かを試す流れとなり、ユニコが《ドレッドノート》の主砲を。謡は《フレイム・コーラー》から必殺技《フレイム・ボルテクス》で。マリアも《炸裂弾》を装填して、ハルユキも心意技だが《光線投槍》で声で合わせて一斉に攻撃を放った。

 ほぼ同じ位置から放たれた攻撃はマリアの炸裂弾のみ先行して王冠に直撃し炸裂。

 次いで途中で混ざり合うように1つとなった3人の攻撃が強大なエネルギーとなって、マリアが撃ち抜いた場所へ追撃するように炸裂。

 ルーレットの攻撃にも負けない壮絶な攻撃を受けたメタトロンは、これまで見せた中でルーレットのアストライオスによる必殺技と同等レベルの怯みを発生させる。

 

「本当に効いたのです」

 

『んじゃあたしらはあれを狙えばいいわけか!』

 

「ちょい待ってレイン、メイデン。狙うのはいいんだけど、それはこのあとのルーレットの動きで変わってくるんだ」

 

『ああん? あのアホに合わせんのかよ。んなの近接組だけで十分だろ』

 

「あの王冠が破壊されてどうなるかわからないから、メタトロンの体力も平行して削りたいんだ。だから次のレイズの後にルーレットが王冠を狙い始めたら、レイン達は王冠は狙わなくていい。狙わなかったらレイン達とオレやクロウが狙っていく。そうしないとダメージバランスが……」

 

 確かに弱点であることは確認できたが、王冠の耐久がイコール、メタトロンの体力というわけではないのはテイム用のアイテムであることから確実。

 だからそのバランスを取るためにルーレットの狙いと別の動きをテルヨシ達がしなきゃならず、ユニコ達にはこのあとのルーレットの動きに注視してもらう。

 そうしたテルヨシの話が面倒臭くてユニコがグチグチと文句を言ってきたが、自分以上の火力になってるルーレットの状態は理解してるので、マリアと謡に宥められながら攻撃を再開していった。

 

 弱点の王冠による怯みが思いのほか大きく、近接組のテルヨシ達も攻撃される頻度が下がると、そこからのメタトロン攻略戦はペースアップ。

 強力な攻撃をしてくる予兆を正確に見極めて、それをキャンセルするようにユニコ達が王冠を攻撃すれば、キャンセルまでいかなくても攻撃までのタイムラグを発生させることができて、テルヨシ達にも回避の余裕が増える。

 攻撃のバランスもほぼ均衡が取れて、戦闘開始から30分ほどが経過し、ところどころにひび割れが発生し出して、何かの決定打で完全に壊れるほどになった王冠。メタトロンの残りのHPゲージは最後の4段目の半分も削るまでに。

 ここまで来たらもう王冠が破壊されて不測の事態になっても対処ができるかと攻撃しながらに思っていたら、メタトロン削りに多大な貢献をしてくれていたルーレットが突如としてメタトロンから距離を取っていったため、その挙動を観察。

 アホな子だが対戦勘というか、位置取りに関しては天才的なまでに優れていて、いま移動した位置はこれからどんな強化外装が出てもすぐに対応できる絶妙な距離。

 つまりレイズによる強化がここできたようで、高々と叫ばれた「レイズ!」と共にアネモイがストレージへと戻されて、ルーレットの近くに次の強化外装が現れる。

 

「…………はぁ!?」

 

 出てきたのは初期では手で持てるはずのボウガン型の《アポロン》だったが、今やその原型でしか残っていないほど巨大な弩弓(どきゅう)へと変化し、アレースと同様にコマンド操作が可能になっているようだ。

 そして弾となる矢は1度に何本も発射できるのか10本は装填されていて、その狙いはギリギリと上へと向けられていく。

 

「バースト・ショットぉ!!」

 

 動きとしては約束通りに王冠を狙ってくれているのだが、あの強化状態で必殺技は確実に王冠が破壊されるし、こんな終盤でユニコでもできそうな役割をやるのもタイミングが微妙としか言いようがない。

 しかしそんなこともお構いなしなルーレットは即座に必殺技を発動し、装填された10本の槍とさえ言える矢は強烈な光を放って撃ち出され、ある程度で扇形に拡散した矢はメタトロンの頭部と王冠に次々と着弾し、重さも相当だったのか大きく仰け反ったメタトロンがその動きを止めたのと同時に王冠が粉々に砕けてしまう。

 それには必殺技を放とうとしていたユニコがスピーカーから『あっ! ずりぃ!』とかなんとか言っていたが、王冠が破壊されたことでメタトロンがどう動くかに注視していたテルヨシは耳だけ傾けて視線を固定。

 だがメタトロンは仰け反った体を静かに元に戻すだけで、むしろさっきまでの激しい攻撃が急に収まってほぼ沈黙してしまう。

 これには黒雪姫も戸惑ったようだが、好機であることに変わりはなく、全員に攻撃の指示を出して数十秒後。

 黒雪姫による《奪命撃》が決まったところでようやくメタトロンのHPゲージが尽きて、その体が地へと伏したのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。