「なっげぇなおい!」
いつの間にやら《東京ミッドタウン・タワー》付近から白金にある巨大なプレイヤーホームとなった学校内へと移動していたテルヨシは、そこで遭遇した《シーバ・カタストロフ》を振り切って現在、地上階を目指して階段を駆け上がっていた。
……のだが、踊り場で折り返して上ること、15回ほど。
高さ的にはすでに30m以上来ているし、途中に出られそうな扉などもなかった。
それくらい長いもんだから、それに嫌気がする前に別のことを考えることにして、すぐあとを追ってきているだろうカタフについて考える。
スピードタイプの青系のテルヨシと防御タイプの緑系のカタフでは速度にも差があるので、テルヨシが割とマジで移動する限りは追いつかれないだろうが、カタフが移動拡張の心意を使える場合はその限りではないからそれだけは警戒する。
そもそもテルヨシの前に立ちはだかったのも、この上の階層で合流しただろう《ブラック・バイス》が真実をねじ曲げて敵対するようにしたからだ。
加速研究会がユニコを拉致した理由は判然としないが、カタフが漏らしたバイスの台詞に『作業』という単語があったのは、とてつもなく嫌な予感がする。
そして推測にはなるが、バイス達はカタフに自分達がしていることをひた隠しにして都合よく使っている節があり、今回の作業とやらも周りから見れば「何してんだこの野郎」と言いたくなるものの可能性は高い。
だからカタフを侵入者の足止めと称して自分達からは遠ざけて、その間に作業とやらを終わらせるようにした。
悲しいことに《七王会議》では加速研究会のメンバーの名前についてはまだ告げていないため、カタフも友人とやらが加速研究会のメンバーであることに気づけていない。
だからといってここでテルヨシがそれを指摘したところでせいぜい半信半疑。良くても後日の問い詰めをさせるくらい。それだって加速研究会に良いように言いくるめられる可能性の方が高い。
「研究会の会長とやらは、恐ろしいまでに悪魔的だねぇ」
さらに考えられる可能性として最悪なことは、本人にバレるリスクも背負った上で、あの慎重派で表には出てこない加速研究会がカタフとの縁を切ろうとしていないこと。
そこに意味があるならば、必ず近い将来にカタフは何かの計画に利用されてしまう。いや、もうすでに利用されている可能性だってあるわけだ。
それを決定したであろう加速研究会の会長は、一体どんな人物なのか興味が湧くと同時に、人を人とも思わない冷酷な一面を持ち合わせる人間性に寒気がする。
それこそ今回、テルヨシ達が侵入してこなかったケースが加速研究会としては予定通りで、侵入者の足止めなど本来は役割としてないはずのカタフを事前に呼んでいた以上、何かしらに利用する算段があるとも考えられる。
カタフには偉そうに言ったものの、テルヨシにさえ今回の事の真実というものはほとんど見えてこないので、見極めるしかない。
加速研究会の企みを看破して、今度こそ阻止する。そして拉致されたユニコを取り戻す。
正直な話、今のテルヨシの消耗はカタフ1人さえも倒すことが出来ないかもしれないほど激しいものだが、ここまでまだ会えていないパド達。バイスがいたことからハルユキもいる可能性のあるここで先輩が弱音を吐くわけにはいかない。
──全てが終わったら、サアヤの膝の上で寝よう。
そんなことを勝手に決めて自分を奮い立たせたテルヨシは、ようやく見えた階段の終わりを示すわずかな光に向けてその足を踏み出した。
飛び出した先は一本道で、少し先から右折のみのルートが存在するため、壁破壊などが出来ない都合で勢いそのままに道なりに走る。
右折してみればやはり、この建物が学校であることを証明するように、右側の壁には規則正しく教室の出入り口のような扉があり、反対には地上階ということで窓枠が設置されて《黄昏》ステージの夕陽が入り込んでいる。
窓の外の見える夕陽の位置から自分の走ってる方角がおおよそ南であることも確認しつつ、ひときわ高い白亜の塔が見え、ここが白金であることから旧東京タワーであることもわかる。
しかしそれよりも大きな問題が前方に見えてしまい思わず立ち止まりそうになる。
かなり長い一本道の先に、3mはありそうな西洋騎士型のエネミーと思われる存在が見張りをするように前を歩いていて、テルヨシがそいつの感知範囲に入った瞬間にぐりん、と後ろを振り返ってテルヨシを敵と認識して両手に装備された大剣と大盾を構えてくる。
プレイヤーホームにいるエネミーとなれば、それは意図的なものと見てほぼ間違いないし、頭の兜の部分にはメタトロンにもあった銀色のリング状のテイム用アイテムらしきものも確認できた。
「今はお前の相手をしてる暇はない!」
加速研究会が用意した衛兵みたいなものとして、テルヨシ達のような不意の侵入者の排除が目的なら、最低でも《野獣級》はあると見ても、万全の黒雪姫でさえ倒すとなれば相当な時間を食ってしまうだろう。
それを今のテルヨシでは逆に倒されかねない事態なのはすぐに理解できたので、廊下の広さから考えてもエネミーの横を抜けることさえ難しいスペースのなさは泣きたくなる。
後ろからは角を曲がってきたカタフも追いかけてきているし、カタフは正規で呼ばれてここを通って地下に来ていることから、エネミーにターゲットされることはないと思われる。
前方のエネミー。後方のカタフ。見事な挟撃に遭ってしまったが、カタフとの距離は幸いまだ少しあるので、試しに右の教室の扉の1つを走りながら開けられるかやってみたら、普通に開いてくれたのでこれを利用することを思い付く。
エネミーもテルヨシに向けて重厚な足音を響かせて近寄ろうとしていたので、そのエネミーが教室の前と後ろの扉のちょうど中間辺りに来たタイミングで、前の扉を開けて中に侵入。
如何なエネミーと言えどプレイヤーホームとなった校舎を破壊は出来ないので、テルヨシをターゲットしてる以上は開けた扉から追いかけるしかなく、エネミーがその動きをしたと判断して今度は後ろの扉を中から開けて廊下へと戻り、教室に入ろうとしていたエネミーを見事にやり過ごして突破。
ちょっとした回り道と経過を観察したことでカタフとの距離が縮まってしまったものの、教室に入るのをキャンセルしたエネミーとほぼ横並びの距離ならまだ何とかなる。
廊下も見える曲がり角まで半分の距離まで来たのでひとまずは危機を脱したが、自分を追ってくる敵が増えてしまったのはいただけない。
「ちょっと黙っててほしいっす」
そう思いながらどうしようかと後ろをチラッと見て走るテルヨシは、そこで驚愕の光景を目にした。
テルヨシだけを明確にターゲティングしているはずのエネミーと並んだ瞬間、カタフはその身に灰色の過剰光を纏って、何か遠隔攻撃をしてくるかと思ったらそうではなく、すぐ横のエネミーの足元に急に黒い穴が出現。
その穴にエネミーの両足が突っ込まれて、音もなく穴に沈み込んで身動きが封じられたエネミーは、そこから抜けようと足掻くが、心意によって作られた深淵の穴はどんどんエネミーの足を呑み込んでいく。
そしてエネミーの両足が膝まで沈降したタイミングでカタフの過剰光が消え、同時に黒い穴も収縮して消えてしまうと、床よりも下に埋まった足がガギィィイイン!
強大な力に抗うことも許さないというように呆気なく砕け散り、膝から下を喪失したエネミーは床に転がって動けなくなる。
「マジかよおいおい……」
あまりの光景に足を止めてしまったテルヨシだが、カタフもまた集中するためか足を止めていたので差が縮まるようなことはなかった。
しかしだ。プレイヤーホームとなった校舎に干渉する心意技をあの速度であの威力で扱ったカタフの錬度は達人の域。
あれが完全にエネミーを呑み込んでしまえば、ほぼ一方的に倒せるのは間違いないが、そうしなかったのはあの心意技も相当な消耗を強いる可能性があるからか。
いや、そもそもとして何故、味方と言ってもいいエネミーをわざわざ自分で無力化してしまったのかの方が重要で、その真意についてを問うべきかと迷う。
だが依然としてテルヨシに対する敵意といったものをアイレンズに宿しているカタフが歩み寄るのではなく走り寄ってきたからには、追いつかれるのは得策じゃないと判断して再びのおいかけっこに。
「ん、玄関っぽいのと……こっちは」
とりあえずエネミーに追われる心配はなくなったのでそこだけは感謝しつつ全速で廊下を走り一本道の先を右折。
すると視界はすぐ左側にあった規則的に並ぶ棚のようなオブジェクトを捉え、数も相当だが玄関の靴箱であるとわかる。
そうなると左へ行けば校舎の外に出られそうだが、その玄関の正面。テルヨシからすれば右側の壁の方に口を開ける道が存在し、ルートは全部で左右と前で3つある。
右は先が見えないし、正面ルートもあのエネミーが1体しかいない可能性の方が低いから、選択肢として外に行くのが得策と判断。
外は外でまた心配事もあるが敵の拠点の中にいる不安よりはマシかと靴箱のエリアに踏み込み、同時に右のルートの先も少し確認しようと外に出る前に正面まで移動してみる。
「…………行くしかないか」
その道の先はどうやら中抜きになった校舎の中庭に通じているらしく、廊下よりも圧倒的に明るかったおかげでかなり奥の方まで見える。
その中庭の中央辺りに、いた。自らの腕を消失させ、その腕のパーツで意識のないユニコを黒い十字架に磔にしているバイスの姿がそこにはあった。
そのバイスは東の方角に視線を固定しているので、南側のテルヨシにはまだ気づいていない様子。
それならば最大限の奇襲を以てユニコの奪還に動けると踏んで、玄関から中庭へのルートに変更し可能な限りで上下左右にブレずにバイスに接近を悟らせない走り方をする。
その際に目前までカタフが迫っていたが、今は無視してバイスとユニコから視線を外さず突き進む。
そこまで広くはない通路を抜けて中庭に出てしまうと、さすがのバイスも接近に気づきそうなので、その手前2mまで走り、そこから前へと《インパクト・ジャンプ》を使うことでバイスのすぐ近くに出現。
そこから迎撃に動かれるわずかな時間で心意も使ってユニコを拘束するバイスの十字架を破壊し奪取。
あとはインパクト・ジャンプで屋上にでも上がって、そこから校舎を脱出して最寄りのポータルへと全力疾走。
そこまでを頭に描いた上でいざ、中庭へと足を踏み入れる直前まで来たテルヨシが、さぁ行くぞという絶妙のタイミング。
「──《ジ・エンド》」
張り上げたわけでもない、抑揚もない無感情な声だったが、テルヨシを絶望へと叩き落とす必殺技が確かに聞こえてきて、インパクト・ジャンプと発声し終えるより早く後ろから不気味な風が通り過ぎてきて、ジャンプと着地を跳ぶ前に考えていたテルヨシは跳んだ前提の前傾姿勢のまま不発に終わったインパクト・ジャンプの着地体勢で中庭に1歩踏み入れて頭から転倒。
すぐに受け身を取って立ち上がったものの、その時にはすでにバイスに感知されて視線は完全にテルヨシを射抜いていた。
「おやおや、これはまた珍客が来たものだね。ここに現れるまで気付かなかったのは危なかった」
「ちっくしょうが……ッ!?」
距離にして約40mほどの間で話しかけてきたバイスだが、その視線はすぐにテルヨシから先に来ていただろう東側壁際にいたハルユキ、チユリ、タクムへも向けられる。
こうなったら数的有利を活かしての奪還といこうかとハルユキ達とタイミングを合わせようとしたが、後ろから「《エンド・ストップ》」のコマンドと共にカタフが強襲してテルヨシの後頭部を掴んで力技で地面へと押し潰し、うつ伏せのテルヨシに頭を押さえたまま背中に乗っかってくる。
「カタフ……」
「大人しくしてるっす。ここまで逃げられたのは僕の失態っすが、もう自由には……」
と、そこまではカタフが自分の役割を全うしようと必死だったことがよくわかる真面目ぶりだった。
だがテルヨシというブラインドを退けて、中庭へと入って目の前の光景を見たカタフは、そこで言葉を切ってテルヨシの頭を掴む力を少し緩める。
その反応は完全に予想外の人間が陥る注意力の欠如に当たるが、このあとのカタフの反応でテルヨシはどう動くべきかを判断しようと、今はあえて拘束から抜けようとしない。
「……お前は『誰』っすか」
テルヨシを拘束したままに視線を前へと固定していたカタフは、ユニコを拘束するバイスを見ながら、テルヨシすらも予想外の反応をする。
てっきりバイスが正体を隠してカタフを良いように使っているのかと思っていたが、まさかバイスとは『初対面』であろうとは。
「……あれが加速研究会の副会長、ブラック・バイスだよ、カタフ。自称だからシステム的に正式な名前かは知らないがな」
「ブラック……バイス……」
ユニコを拘束するバイスという構図に驚いていたのかと思えばそうではなかったから、テルヨシも少し戸惑ったものの、動揺するカタフに今なら言葉は届くと信じて目の前の人物についてを教える。
そうするとカタフはまっすぐにバイスを見つめたまま沈黙してしまい、見られているバイスも少々予定外だったかどうしたものかと高速で思考しているように見えた。
「なぁカタフ。オレ達は確かにこのプレイヤーホームの侵入者かもしれないが、ならあいつは……ブラック・バイスは侵入者じゃないのか?」
「……侵入者っすよ。あんな奴が僕の友人の家に入り込んでたなんて、怒りすら覚えるっす」
「侵入者とは心外だね、カタフ君」
その頭の整理がされてカタフを丸め込まれる可能性はなくはないので、バイスに先手を打たれる前にカタフへと疑問を投げかけて、それには明確にバイスを敵と見なす言葉を返してくれた。
だがそれがいけなかったか、ある種の決断をしたように割り込んできたバイスは、あくまで冷静な口調で眼光鋭くしたカタフに否定を込めた言葉をかける。
そしてテルヨシは見逃さない。話をしながらもユニコを拘束してすでにない右腕はともかく、上手く見えないようにしていた左腕の板が中庭の地面に沈み込むのを。
「カタフ! 避けろッ!」
その動作は非常に静かながら、狙いは明らかにカタフとわかったため、どう動くかと迷っていたカタフには叫び警告。
しかしバイスの技についてを知らないカタフはテルヨシの警告にどう避けるべきなのかわからずに逆に迷いを大きくしてしまった。
「《
そこに割り込んだバイスの技名の直後、カタフの左右の地面からバイスの左腕を構成する板が2枚、音もなく出現し間にいたカタフを万力のごとく押し潰しにかかり、その力に抗うようにカタフも両腕を広げて《クリティカル・ガード》で応戦したものの、心意技であるそれには如何なアビリティも効力を持たずあっという間に身動きが取れないほどの力で挟まれてしまう。
そこからさらに板はその厚さを数cm程度から1mほどにまで増して圧力を上げカタフの腕からスパークが迸る。
しかも発声すら妨害する心意技なのか、抗う声すらも出せずにいたカタフは、苦しそうにしながらも立ち上がって倒れるテルヨシから退き、目で脱出しろと訴えてくる。
おそらくそれが今のカタフに出来る最善の選択だったのだ。
その行為を無駄にしないためにもバイスの板の範囲から転がり出たテルヨシは、この攻撃を止めようとバイスに詰め寄りかけたが、直後にバイスの奥の校舎屋上から4つの紫色の光が煌めき、テルヨシの頭の上を通過。
ハッとして振り返ってみれば、バイスに拘束されていたカタフの眉間と心臓の辺りに2つずつの貫通した穴が開き、直後にバイスの板が無慈悲に閉じて死亡時のライトエフェクトが発生した。
「我々は君の『友人である会長殿』から正式に許可をもらってここにいるのだからね」
「何やのバーやん。カタフちゃんを攻撃するとか心が痛むんやけど」
「仕方ないと思うがね。会長殿がもしこの場にいたならこうしていたはずだよ」
そして地面へと沈み込んだ板が消えたあとにはカタフの死亡マーカーだけがその場に残り、そのカタフを撃ち抜いた《アルゴン・アレイ》は北の校舎の屋上で心にもない悪態をバイスについてから、すぐに屋上から中庭へと飛び降り、入れ替わるようにアルゴンのいた場所に現れたのは、傷を負いながらもここまで追ってきたパドだった。
パドも中庭の状況を把握するのに数秒を要したようだが、拘束されるユニコを見た瞬間に吠えて、しかし冷静さは保ったまま中庭へと飛び降りてハルユキ達と合流。
アルゴンも中央のバイスの元へと駆けて合流してしまうが、状況はわずかにこちらが有利か。
「……ふぅ。カタフを死亡させたのは、一時的にでもこっちに有益な情報を漏らさないための口封じか、バイス」
「説明の必要がなさそうで助かるね。彼とはこれまでとても良好な関係を築いていたのだが、まさかこんな些細なことでそれが崩れてしまうとは、こちらとしても予想外だったよ」
あまりに無慈悲で冷酷な決断と行動に頭に血が上りかけていたテルヨシだったが、現れたパドとユニコを前にしても怒りに任せて飛び出そうとしないハルユキ達を前にして自分がそれをしてしまえば、連携不足によってバイス達に有利に働く可能性があった。
ただでさえこっちの消耗は激しいので、数的有利さえもわずかな均衡の崩れで覆されかねないのだから、事は冷静に運ばなければならず、そうした意味で自分を落ち着かせるようにバイスへと語りかけつつ、ハルユキ達と合流しながらストレージへと戻っていた《テイル・ウィップ》を後頭部に再接続。
「お前たちは、カタフさんすらも利用していたってことだろ」
「心外だねクロウ君。言っただろう、彼とは良好な関係を築いていたと。それは本心だし、会長殿だってカタフ君には期待をしていたのだよ。テイル君。君が『面白い催し』をしてくれたおかげで、カタフ君も滞りなくポイントを稼げていたわけだからね」
「催し? バトロワのことか」
「本来ならば、彼は『王達にさえ先んじてレベル9になれるほどの実力を持っていた』のだがね。彼なりの葛藤が邪魔をしてしまって足踏みをしていたのだが、君が頭角を現した頃から活力が戻ってきて、先日には見事レベル8になってくれた」
「ちょっとバーやん、喋りすぎやて。カタフちゃん死んどるけど声は聞こえとんのやで。今ごろ本人、相当へこんどるやろし、その辺でやめとき」
隠す気もなくなったか、ハルユキの核心に触れる言葉に対して坦々とした口調で珍しく饒舌に語るバイス。
その話には興味があったものの七王会議の時にテルヨシへの警戒をいち早くしたアルゴンがこれ以上の話は危険と判断したか、バイスの口を止めさせ、バイスも自分の語りすぎを自覚したか素直に口を閉じる。
「申し訳ない。これ以上の話は今後に差し障る可能性もあるので控えさせてもらうよ。あとは予定通りに事を進めたいのだが、やはり君たちがそうさせはしないのだろうね」
そしてこれ以上の会話は不要といった雰囲気になったバイスが戦闘もやむなしと暗に言ってみせると、テルヨシ達もあるかもしれない奇襲に備えて構える。
が、次に起こったのは、両陣営の間に突如として巻き起こった土煙による急襲。
轟音と衝撃波を伴って巻き起こった土煙だが、それが何かが落ちてきたことによる余波であると理解したテルヨシ達は、その土煙が晴れるのを待つ。
そして土煙が晴れてその中から現れたのは、ここ最近にテルヨシを戦慄させ、その後も驚異の快進撃で名を馳せていた《ウルフラム・サーベラス》だった。