──ここで来るのか……。
ようやくユニコを拉致した《ブラック・バイス》を発見し、拘束されて意識のないユニコも手の届くところにいて、こっちに来ていた戦力であるハルユキ達とも合流できたテルヨシ。
だが加速研究会と知らずに接点を持っていた《シーバ・カタストロフ》が真実を知り味方になろうとしていたところで即死させられてしまい、有益な情報を得る前にバイスと《アルゴン・アレイ》と対峙することになってしまった。
さらに仕掛けようとしていた寸前でテルヨシ達とバイス達の中間の中庭に空から《ウルフラム・サーベラス》が降って現れ、テルヨシ達と対峙してくる。
「『そっち側』か、サーベラス」
「まさかクロウさんだけでなく、テイルさんまでいるとは思いませんでした」
「レベルは?」
「クロウさんと同じ、5にまで上げてきました」
──驚きは不思議となかった。
このタイミングで現れてバイス達に背を向けて立つサーベラスを敵対関係にあると見るのは簡単だったし、あのバトルセンスと快進撃を見れば《無制限中立フィールド》に来られるだけのレベルアップもできたと素直に思う。
「レベルも対等か。でも……それなら、レベル1のままポイントを稼ぎ続けるっていう君の《役目》はもう終わったんだろう? 僕は君と、普通の対戦をしたい。何のしがらみもない、純粋な対戦を。だから……そこに立たないでくれ、サーベラス」
それほどのバーストリンカーがISSキットと時をほぼ同じくして登場したことも、頭の片隅で偶然ではないと思っていた。
それが現実になるとやるせないが、テルヨシよりも密な関係になっていたらしいハルユキが話しかけると、どこか悲しげな雰囲気を纏ったサーベラスはその首を横へと振る。
「すみません……ここを動くことはできません。でも、クロウさんが木曜日のバトルロイヤルのあとに言ってくれたこと、嬉しかったですよ。リアルで、僕と会ってくれたことも」
「……過去形にする必要はないよ。これからも、何度だって会えるんだ……君がそう望みさえすれば」
「さっき、クロウさんが言ったとおり……僕に与えられた役目は、ほぼ完了しました。それはつまり、僕が存在を許される理由も失われたことになります。今日を最後に、僕がこうやってクロウさん達と話すことは、もうないでしょう……」
「役目とか存在意義とか難しいこと言ってんのな。機械かお前は」
話を聞く限り、サーベラスは生まれた時から加速研究会に役割を与えられて、それを遂行するだけの道具だったことがわかり、あれほどのバトルセンスを使い捨てみたいにする加速研究会に怒りが湧く。
だがそれよりもそれを受け入れて諦めてしまっているサーベラスに苛立ったテルヨシは、ハルユキが否定し叫ぼうとしたところに割り込んで静かな怒りをサーベラスへとぶつけ、それにビクリと反応したサーベラスはテルヨシを恐る恐る見てくる。
「つまりあれか、オレに挑戦してきた時のお前も、単に自分の役目を果たそうとしてだけの行動ってことだな。あの時お前が言った『戦ってみたかった』ってのも、自分の意思に含まれてなかったってことなんだな」
「それは……」
怒気の含まれたテルヨシの雰囲気に圧されたサーベラスが、何かしらの決意と共にここに来た心を揺さぶり本心を引き出しかける。
しかしそれを嘲笑うようにして割り込んできたのは、心というものに敏感なアルゴン。
「ダメやよテイルちゃん。君、初めて会うた日からなんや危険や思たけど、どないすれば人の心が揺れ動くかようわかっとるなぁ。メンタリストかいな?」
「そう言うアンタも飄々とした態度の中にどれだけの『残酷さ』を隠してるのか、興味があるね」
「怖いなぁ。カタフちゃんを倒さんでここまで引っ張ってきたんも、カタフちゃんとウチらのいびつな関係を見抜いたからやろし、バーやんももうちょい警戒せなあかんよ」
「ふむ、確かに私にも不備はあったがね。彼……クロウ君以外の彼らをここまで導いたのは君の方なのだから、私にだけ糾弾するのは筋違いというものだよ」
「そこを突かれると痛いわぁ。やけどこない苦労したんやから、1個くらいこっちの目標も達成せなな」
「それは私も同感だよ」
……上手いなこいつら。
サーベラスとの会話に割り込んだ上でテルヨシを話に巻き込みつつ、好機と見て探りを入れたらぬるっと話が逸らされてしまった。
さらに話の主導権を握ろうと好き勝手に会話をするバイスとアルゴンが先制してきそうな雰囲気に目力だけでさせるかと睨みを効かせつつ、こっちも分担を決める。
「サーベラスはクロウ。お前に任せていいか?」
「…………はい。彼は、僕が相手をします」
「K。私はアルゴンを仕留める。テイル達は……」
「バイスをやる。倒すとなると難しいかもだが、何かをさせたりはしない。パイルはオレがぶつかってる隙を突いて、ベルは回復のタイミングを見極めて」
「レインの拘束のために右腕は使えないと思いますしね」
「任せて先輩、パイル。思いっきりブッ飛ばしてきて!」
言葉の中に気になるワードを混ぜてテルヨシの意識を分散しようとしていたアルゴンだが、ここまでの会話やらですでにアルゴンの性格を分析し、真実と嘘を混ぜて真意を隠すタイプと断定。
なのでバイスと会話を始めた段階ですでにアルゴンからは何も引き出せないと諦めていたので、カタフから聞いた『作業』という目的だけの阻止に集中し相手となるバイスに意識させるように両足に青い過剰光を纏わせ、パドも両前足に赤い過剰光を纏ってアルゴンへと視線をぶつける。
それに当然ながら気づいたバイスとアルゴンも、意味のない会話をやめていつ仕掛けられても反応できるように静かな闘気を身に纏った。
「《閃光の幻影》」
「《
先陣を切ったのはテルヨシ。
おそらくはハルユキ達が消えたと錯覚するほどの初速から鋭く2度、方向転換してバイスの背後へと回り込み蹴りを叩き込むが、バイスも振り返ることなく左腕の板を崩して2枚の板を割り込ませて防御。
そこでハルユキも左へと動き、パドも右へと動いてサーベラスとアルゴンを引き受け、タクムも右腕の杭打ち機から《
それを予測していたか、左腕の板の残りを防御に使ってタクムの斬撃も防御してしまうバイスだが、これで両腕が塞がっている状態に等しい。
やはり心意においてはバイスの方が上手。
そんなことはわかってたにしても、2人がかりで左腕を封じることしかできないのは何か悔しさはある。
だからといってテルヨシにも考えがないわけではない。
そうしてせめぎ合いをすればバイスにも消耗を強いられるし、反撃の手さえ出させなければハルユキとパドのどちらかが勝利した時にユニコの救出の手が増えるのだ。
それにはハルユキにもパドにも敗北は許されないし、テルヨシとタクムの精神力が尽きてバイスに余裕を与えてもダメなギリギリの攻防が必至だが、囚われのユニコを前にして膝をつけるわけもなく力ならいくらでも湧いてくる。
「うぉぉおおお!!」
「せぁああああ!!」
長期戦覚悟とはいえ倒せるなら倒したいので、バイスの心意防御の板へと連続で蹴りつけ、斬りつけとするテルヨシとタクムに対して、2人共を視界に捉えるように半身の状態になったバイスは、防御に集中するためにその場から動けないようだったものの、焦りや疲れといった感情を全く見せることなく平然としてみせる。
「いやはや、ここまでの心意を半年も満たない内に身に付けるとは恐れ入るよ」
「まるでオレ達の心意習得の時期を知ってるみたいな物言いだな、バイス!」
「憶測ではあるのだがね。パイル君はかつてのテイカー君との戦いと会話で察しているが、テイル君は……その時にはすでに習得していたようだけど、2月にあった出来事の時にはまだだった気がするのだよ」
「……ッ!!」
そんな余裕から話しかけてきたバイスは一見するとテルヨシとタクムを称賛しているようだが、言い方に引っ掛かりを感じたテルヨシがそこを言及してくることまでわかってたか、用意されていたような言葉で意識を削ぎにくる。
2月の出来事といえば記憶に新しくも苦い記憶。《災禍の鎧》によって友人《チェリー・ルーク》が加速世界から消えてしまった事件があった月。
あの時のテルヨシは完全に怒りに身を任せて暴走気味の負の心意を噴出させてしまい、寸でのところで黒雪姫とサアヤとユリに助けられた。
その事を知っている風なバイスの言い方にわずかに心が乱れたテルヨシの心意が弱まったところを、反対側のタクムが一層の気合いで圧を上げてバイスに斬りかかりカバーしてくれ、その隙に弱まった過剰光を再燃させて攻撃を続行。
「なるほどな。あれもお前達が根本的なところで関わってたってことか」
「察しの良い君ならもうわかっているはずだよ。我々は求める結果をある程度で予測し、そうなるかもしれない『タネ』を蒔く。蒔いてからは極力だが手を加えず、芽が出て育つまでは摘んだりはしない」
「要は芽が出るのも育つのも自分達のせいじゃなくて育てたやつが悪いって理屈だろ。反吐が出るね」
「現実でもそういうことはままあるものさ。ひと昔前なら、ペットショップで買ったペットを育てられなくなったからと勝手に自然に放って、野生化させ繁殖してしまって在来種を脅かすなんてこと、ペットショップの側からすれば望んでいない結果だよ」
「お前らは望んでないとかそういうことじゃないだろ」
「そこは否定しないよ」
加速研究会が加速世界の裏で暗躍し始めた時期については、ハルユキ達から聞いた災禍の鎧の誕生秘話が今の最古となり、ブレイン・バーストのかなり初期から存在する組織なのは間違いない。
そんなやつらが蒔いたタネなるものが、これまでいったいいくつあってどれだけが芽を出し摘まれてしまったのかなど想像もつかない。
ただひとつ、わかってることがあるとするなら、加速研究会は加速世界に存在するバーストリンカーを実験の道具くらいの感覚でしか見ていないということ。
表面的には加速世界に混乱や悪意を撒き散らしていても、本当は加速世界のために何かしているという可能性だってもちろんあるが、それを成すために許される範疇の行為を過ぎてしまってることを容認するわけにはいかない。
そうやって思考しながらもバイスの状態を冷静に見極めていたテルヨシは、今の段階で2人がかりでも押し切れないことはわかったが、バイスもまた余力があるわけではないと感覚的にわかる。
ユニコもここまで長い時間が経っても目を覚まさないのなら、バイスの拘束に意識の覚醒を阻害する効力があると考えられ、それも並行しながら防御までするのは如何なハイランカーでも簡単ではないはず。
──なら勝負は1度きりだ。
攻撃の手は緩めずにチャンスだけをうかがうテルヨシが狙うのは、バイスの防御を上回る攻撃、ではなく、すぐ横で磔にされているユニコ。
おそらく拘束する十字架を破壊すればユニコは意識を取り戻し戦線に復帰できるはずで、ついでにバイスの右腕を破壊するのは単純に戦闘力の低下に繋がる一石二鳥というやつだ。
その狙いに気づかれないようにするのは至難の技なのだが、限界までイマジネーションを研ぎ澄ますことで対応する前に叩き込む。
今のテルヨシの心意は移動能力拡張のみの心意のため、過剰光は青色を保てるのだが、ここに攻撃威力拡張の心意を複合させると、残念ながらその過剰光はどす黒く変色してしまう。
「1つ聞いておくぞ、バイス」
「私に答えられる範囲なら、答えてあげなくもないよ」
「お前は《オリジネーター》か?」
「…………それはいま聞くことだったのかな?」
「いや別に」
その変化に気づかせないために突拍子もない質問をしてバイスをほんの少しでも困惑させられたらと口を開けば、本当に戸惑う様子が伝わってきてビックリしたものの、チャンスはチャンスなのでそこで心意を切り替えて素早いスライド移動から渾身の右回し蹴りを十字架の裏側から叩き込んだ。
「君は本当に強かだね」
が、その渾身の回し蹴りに対して完璧に反応していたバイスは、左腕の板の全てをテルヨシの攻撃の防御へと回して受け切り、前が開いたタクムが踏み込んで斬りかかったのを右足の板を崩して防御に回し寸でのところで防いでしまう。
──くっそぉお! 嵌められた!
最初からバイスはこう来ることを予測して余力がないように見せかけていただけだったのだ。
バイスの作戦に嵌まってしまったショックもあるが、元々ここに来るまでの消耗を回復させて放った一撃だったので、ここで複合心意を使うだけのイマジネーションを維持できずに、それでもなんとか青の過剰光だけは収めることなくバイスへの圧力はかける。
「君のその黒い心意には、とてもシンプルな『憎悪』と、そして『諦め』が含まれているね」
「わかった風な口を利くな」
「いやいや、これでも君よりずっと心意というものを研究してきた経験からわかる考察を述べたまでだよ。憎悪は心意の力を最も容易に引き出すが、その力を否定しながら扱う君の心までさすがに読めはしないかな」
テルヨシの攻撃の圧力が下がって本当に余力ができたか、タクムの猛攻を悠々と防ぎながら疲労が見て取れてきたテルヨシに対して好奇心からかそんな分析をしてくるバイス。
その分析はちょっと引くくらい的を射ていて鳥肌が立ったが、そうやって精神力を削ろうといった魂胆もあるのだろうそれにギリギリで耐えてみせる。
「しかし君もだけど、クロウ君も目覚ましい成長をするものだよ。あのサーベラス君が倒されてしまうとはね」
そんな揺さぶりにも耐えたテルヨシを称賛するように、言葉による揺さぶりをやめたバイスは、ここでテルヨシから横で戦っていたハルユキとサーベラスへと視線を向けて、他人事のように言うので、テルヨシも一旦バイスから数歩だけ距離を取って牽制しつつハルユキの方を見る。
そこには体を大の字にして仰向けに倒れるサーベラスと、そんなサーベラスをそばで見下ろすハルユキの姿があり、決着はついたのか何やら話をしている様子。
「僕は、バーストリンカーでいる限り、彼ら……加速研究会には逆らえない。何故なら彼らは、僕が邪魔だと思った時には、ブレイン・バーストを取り上げることを躊躇わないでしょうから。でも……そんな僕でも、1つだけ、自分で決められることがあるんです。それは、加速世界からどういうふうに消えるか、です」
そこから漏れ聞こえたサーベラスの言葉に、バイスと、パドと対峙するアルゴンの2人が初めて焦りに似た空気を醸し出す。
どうやらサーベラスにはまだ他に役目があるらしく、ここで別の『何か』に変わるはずだったのだが、それが嫌だったサーベラスはここにハルユキがユニコを助けに来ると信じて、最初で最後の真剣勝負をしてから消えようと、残りのバーストポイントを10にしてきていた。
そんな今の自分の状態を話したサーベラスは、よろよろと立ち上がってハルユキに自分をどこかへ連れていって全損させてほしいとお願いする。
勝とうと負けようと、始めから全損するつもりでこの場に来たサーベラスの覚悟が並々ならないことは十分に理解できる。
何故ならサーベラスほどの誇り高いバーストリンカーが、自分のことよりも加速研究会の企みを潰し、未来を守るために消えようとしているのだから。
「ふ、ふふ、あははは……」
その覚悟にすぐに返事ができなかったハルユキに対して、自分達の命令以外のことをしようとするサーベラスを笑ったのは、パドと戦闘中のアルゴン。
「あはは、こら参った。まさかそこまでするなんてなぁ、やるやないのイーちゃん。嬉しいで、育ての親としてはな。ほんま、大きゅうなったなぁ。
サーベラスとアルゴンの間にはパドが立ち塞がって不意打ちのレーザーは撃てない状況。
それなのにアルゴンにも、目の前のバイスにもまだ何か余裕のような雰囲気が醸し出ていて、とりあえずでもサーベラスをハルユキが飛んで運んで逃げることもでき、そうなれば作業とやらにも支障が出るのではないか。
そう思っていたのだが、やはり加速研究会。事前の対応策を何重にも用意していたようだった。
「イーちゃん、ごめんなぁ。どうやら《零化》せえへんかったら自分のまんまでいられるみたいに思てるみたいやけど……会長はんの《反魂》は、そんな生やさしい技やないねん。ほんま、どないな悪魔と契約したらあんな……」
「アレイ」
まだサーベラスについての謎が解けていなく、度々出てくる自分が消えるだのに理解が及ばないが、そのリセットのような処理をさせたらユニコまで危険なことはなんとなくわかった。
そしてここで初めてバイスがベラベラ喋るアルゴンに怒りに似た感情を込めて注意し、それには肩をすくめたアルゴンも言葉を切る。
「ま、そういうわけやから、堪忍やでイーちゃん。向こうに戻ったら、こっちの学食でゴハン奢ったるから、気ィ悪くせんとってな」
「……何を言われても、僕はこれ以上命令に従うつもりはありません。あなたたちは間違ってる。こんなこと……しちゃいけないんだ」
そしてアルゴンの最終通告のような言葉にも強い意思で拒絶を示したサーベラスは、その手をハルユキへと伸ばして連れていってくれと懇願。
ハルユキとしてはユニコの救出が今の最優先事項だが、サーベラスのやろうとしてることが結果としてユニコを救うことになると話で理解してテルヨシとアイコンタクト。
こっちは任せろと目で訴えてやればハルユキもサーベラスの手を取って背中の翼を広げる。
「ひとまず君の言うとおりにする。でも、全損なんかさせない。きっと何か方法があるはずだ。レインも、君も、両方を救う方法が」
「あるわけないやん」
それがハルユキの答えであり決意だったのだが、そんな言葉すら幻とでも言うような冷たく残酷な言葉で割り込んできたアルゴンは、さっきまでの陽気さを完全に消失させる。
「誰かを助ける方法なんて、この世界にはいっこもないんや。だってこの世界には最初から、救済は用意されてへんのやから。あるんは憎しみ、争い、裏切り、
まるでこの世界に恨みでもあるような怨念に近い感情をぶちまけるアルゴンは、ここで何かのコマンドを口にする。
それがサーベラスに対しての何かに作用するコマンドなのはすぐに理解できたが、ただの音声で他人をどうこうできるはずもないと、そう思ったのだが、そのコマンドのあとにサーベラスが突如として苦しみ出してしまう。
見ればサーベラスの顔の牙を思わせるバイザーが上下に閉じようとしていて、それがサーベラスの意思によるものではないようにサーベラス自身が左手で食い止める様が見て取れる。
しかしその抵抗も虚しく、すぐにバイザーは強力な力によって完全に閉じてしまい、サーベラスが沈黙。
次いで変化が起こったのは顔の装甲と限りなく似た造形の両肩のアーマーの内の右肩の牙がギチギチと音を立てて開き、その中から暗い紫色の光が浮かび上がってくる。
そして直後にサーベラスの手には紫色の鉤爪状の心意のオーラが武器となってハルユキに襲いかかり、寸でのところで後退し直撃は避けたハルユキだが、明らかに雰囲気からして変わったサーベラスにテルヨシも驚愕。
さらにそのサーベラスからは、かつて聞いたことがある、人を嘲笑うことに愉悦を覚えている人間の神経を逆撫でするような小さな笑い声がかすかに聞こえてくる。
本能が察した。こいつをオレは知っている。
それを証明するように、笑い声を収めたサーベラスからは、さっきとは全く違う人間の声が発せられる。
「……ようやく、会えましたね。お久しぶりです、有田先輩」